日沼諭史の体当たりばったり!
第42回
寝ながらテレビが見たいんだ! nasne×3パターンの視聴スタイルで比較
2021年8月9日 08:45
東京オリンピック・パラリンピックが、なんだかんだでいい方向に盛り上がりを見せている。多くの種目がテレビ中継されているほか、ありがたいことにネット配信(gorin.jp)も行なわれているため、ほとんどすべての競技を家にいながら観戦可能だ。
とはいっても、時差のない国内での開催で、競技が行なわれるのはまさに仕事をしている日中がほとんど。昼間にのんびり見るわけにもいかず、あらかじめ予約録画しておいて就寝前に見る、みたいな形にせざるを得ない。が、テレビのあるリビングは家族が寝ているすぐ近くなので、夜中にテレビをつけることもできず、録画したところで貯まっていく一方……。
なんとかして自分の寝室で快適にテレビを見る方法はないものか。どうせなら就寝前だし、寝転がりながらテレビが見られると最高なのでは? などと考えていたところ、バッファローのチューナー「nasne」とプロジェクターなどを組み合わせたいくつかのソリューションが思い浮かんだので、全部試してみることにした。果たしてどれが一番快適だろうか。
ネットワーク経由でライブ放送・録画がいつでも見られる「nasne」を活用
今回の検証にあたり、最初に必要になるのはチューナーだ。チューナーのないプロジェクターなどを使うことになるので、別途アンテナで受信したテレビ番組をネットワーク経由で再生可能にする単独のチューナー機器を利用するのが都合がいい。
近頃はテレビに外付けするHDDレコーダーやBlu-rayレコーダーなどでも、ネットワーク経由で放送・録画番組を視聴できるようになってきている。けれども、だいたいどれも高額で、気軽に導入するというわけにはいかない。その点、比較的リーズナブルで購入しやすく、必要十分な機能を備えているのがバッファロー製の「nasne」だ。
かつてはソニーが製造・販売していたnasneだが、2021年3月からはPC周辺機器で有名なバッファローが後を引き継ぎ、売り切れが続出するほどの人気を集めている。スマートフォンやタブレット用の「torne mobile」アプリから番組表の閲覧、予約録画、リアルタイム放送と録画番組の視聴(「視聴再生機能」のプラグイン購入が必要)などが、完成度の高いUIで快適に行なえる。先代nasneの強みはそのまま受け継がれていると言っていいだろう。
ネットワーク経由でテレビ番組を視聴することが前提の製品なので、普通のテレビと一緒に使うのにはあまり向いていないが、今回のようにネットワークにつながるプロジェクターやタブレットから利用する形であれば、ちょうどいい選択肢になるはずだ。
パターン1:天井照明兼プロジェクター「popIn Aladdin 2」で壁に映す
最初に試したパターンは「popIn Aladdin 2」(9万9,800円)を使う方法。popIn Aladdin 2は、調光可能なLED照明と、フルHD(1,920×1,080ドット)、明るさ500ルーメンの本格的なプロジェクター機能を一体化した、天井に固定して使えるユニークな製品だ。条件に合った照明用の天井コンセントさえあれば、簡単に天井に固定して利用できる仕組みになっている。配線の手間がほとんどゼロなのがうれしいところだ。
設置する筆者の寝室には、照明用の天井コンセント(引っ掛けシーリング)が元から取り付けられていたので、悩むようなところもなく、数分で設置が完了した。4畳半ほどの狭い部屋ということもあり、本体側面のプロジェクターのレンズ部から壁までおよそ104cmと短い焦点距離となったものの、天井面から60cmほど下方向に映像を調整したことで、70型相当の大画面が出現した。
姉妹製品には「popIn Aladdin SE」(7万4,800円)という少し安価なタイプもある。が、焦点距離が大きく取れない場合に投影面積が小さくなってしまう制約がある。筆者のような狭い寝室だと、画面が小さく見にくい可能性があるので、popIn Aladdin 2を選ぶのが正解だろう。もちろん、もっと広い部屋に設置するならpopIn Aladdin SEでも全く問題ないはずだ。
壁までの距離が短くなったこともあり、投影した映像はかなり明るく、日差しが直接差し込まない寝室であれば、昼間でも映像を視認できるレベル。フルHD解像度で精細度も高い。壁への投影になるので、寝転がりながら見るときはできるだけ枕を高くしなければならないが、設置スペースは実質ゼロだし、見たい時にいちいちセッティング・調整することなくすぐに使える。
頭上から斜め下に投写するため、物や人で映像を遮ることが少ないのも大きなメリット。本体から視聴ポジションまで距離があることから、プロジェクターにありがちなファンノイズが聞こえにくいのもうれしいところ。満足度はすばらしく高い。
スピーカーも本体に内蔵されている。映画向きとは言えないものの、テレビ番組の音声程度なら不満を感じることはない。今回のように1階の寝室に設置した場合、天井に固定しているだけに、音を大きくすると2階で寝ている家族の迷惑にならないか、という不安はある。が、音量を8割くらいまで上げて、(木造)2階の床に耳を付けると、ようやくそれらしい音が聞こえるなあという程度で、音漏れを心配することはあまりなさそうだ。
少しの音漏れもさせたくない集合住宅なら、別途Bluetoothスピーカーを組み合わせることをおすすめしたい。手持ちの小型Bluetoothスピーカーを接続してみたところでは、寝転がった耳の近くにスピーカーを置いておけるので、音量を絞りながらも聞き取りやすくできた。音声遅延もほとんど気にならない。1人で見るならBluetoothヘッドフォンを使うのもいいだろう。
ただ、popIn Aladdin 2でテレビ視聴しようとすると、使い勝手の面で少々面倒なところはある。nasneは、スマートフォンなど向けのアプリ「torne mobile」アプリから利用するのが基本となるが、popIn Aladdin 2向けには今のところアプリが提供されていないからだ。
とはいえ、テレビ視聴ができないわけではない。代わりに、popIn Aladdin 2にプリインストールされている「テレビ」アプリを使えばOKだ。nasneはDLNAによるストリーミング再生に対応しており、popIn Aladdin 2のテレビアプリもDLNAに対応している。
しかしながら、DLNAの仕組み上コンテンツが細かく分類されないことについては注意が必要。録画番組が貯まってくると見たい番組を見つけるのがつらくなってくるのが難点と言えるだろうか。
そして、もう1つネックになる部分があるとすれば、テレビではなくネット配信されている動画を視聴したいとき。たとえばオリンピック・パラリンピックの動画配信サイトの動画を視聴しようとしても、プリインストールのWebブラウザーである「Firefox」ではエラーが発生してしまう。
popIn Aladdin 2はMiracastにも対応しているので、スマートフォンやPCなど他のデバイスで再生している動画を映し出すこともできるはずだが、相性の問題からか、筆者が所有しているスマートフォンやPCでは、いずれもキャスト先として認識されなかった。
こういった場合には、近日発売予定とされている「Aladdin Connector」(1万5,800円)が利用できるだろう。これは、HDMI端子に入力した映像をWi-FiでpopIn Aladdin 2などに送信し、ワイヤレスで映像再生できるようにするもの。
ここにChromecastなどを接続すれば、スマートフォンなどからネット動画をキャストして、popIn Aladdin 2で再生するのも簡単のはず。Aladdin Connectorもセットで購入することで、ベストなごろ寝視聴の実現につながるだろう。
パターン2:コンパクトなプロジェクター「Nebula Vega Portable」で天井に映す
なんかもう「popIn Aladdin 2」でいいのでは、という気持ちに半分なりかけてしまったのだが、次にAnkerのバッテリー内蔵プロジェクター「Nebula Vega Portable」(7万9,990円)を使ってみると、これもまた実に魅力的なアイテムだった。
似たようなタイプのプロジェクター製品は多々あるが、「Nebula Vega Portable」を選んだのは、比較的高性能なスペックをもちながら、まさに寝転んだ状態で天井に向けて投写できる仕様だったため。
標準の内蔵スタンドでは多少の角度を付けるくらいしかできないものの、底面にあるねじ穴を使ってカメラ用三脚で固定すれば、より自在な角度で設置できる。壁はもちろんのこと、天井に向けて映し出すことも可能。解像度はフルHDで、明るさも500ルーメンと、コンパクトながらプロジェクターの性能としてはpopIn Aladdin 2と同等だ。
そしてなにより、OSはAndroid TVであり、Google Playの豊富なアプリをインストールして活用できるというメリットがある。nasne専用のtorne mobileアプリも利用可能だ。popIn Aladdin 2ではDLNAを介した、ある意味機能が限定された状態でしかテレビ視聴できなかったが、Nebula Vega Portableならnasneの機能をフルに使いこなせる。
リアルタイムのテレビ視聴だけでなく、詳細な番組表も表示できるし、当然ながら予約録画もできる。リモコン操作ではあるものの、nasneならではのサクサクな操作感はしっかり実現していて、スマートフォンなどから利用するのとほぼ同じ快適なユーザー体験が得られる。
それでもってNebula Vega PortableはChromecast Built-inでもある。PCやスマートフォンで見つけたさまざまな動画コンテンツをその場でキャストして、Nebula Vega Portableで直接的にストリーミング再生できる。オリンピック・パラリンピックのネット配信動画も、相性の問題など気にすることなくキャストして視聴可能だ。
リモコンを使ってNebula Vega Portableで投写した画面を見ながらアプリを操作するのもいいが、スマートフォンの方がやはりコンテンツの検索性は高い。手元のスマートフォンで見つけたコンテンツを気軽にキャストして楽しむ、というスタイルも個人的にはおすすめしたい。
というわけで、寝室の天井に向けて投写してみたところ、165cmの焦点距離で投影サイズは56型相当となった。この距離とサイズであれば、照明をやや暗めにした状態でも十分に視認が可能な輝度となる。画面サイズとしても大きすぎず、小さすぎず、いい感じだ。
天井に投写し、完全に寝転びながら視聴できるのは、極楽以外の何ものでもない。壁に投写した場合、枕を高くして身体を起こさなければならず、それなりに首筋や腹筋に負荷を与えてしまう。しかし天井投写であれば、横になって真っ直ぐ天井を見るだけなので、全身脱力しながらの視聴という、まさにリラックスタイムの極致を味わえるのだ。寝落ち待ったなし!
なお、天井へ投写する場合、設置台などを使ってある程度調整できるにしても、焦点距離を大きく変えることができないため、投影サイズと明るさはほぼ固定となってしまうことには注意したい。popIn Aladdin 2に比べ、同じ焦点距離でも投影サイズが小さく、天井高によっては満足いく視認性が得られない可能性もある。
また、設置場所が床か台の上ということになるため、壁・天井とNebula Vega Portableの間を人が遮って影を作りやすいという通常のプロジェクターの弱点は避けようがない。コンパクトで、しかも内蔵バッテリーでの駆動が可能ということもあって移動はしやすいが、設置場所に気を使わなければならないことは確かだ。
4W×2の内蔵スピーカーはリッチなサウンドを奏でるとは言いがたく、音質面では物足りなさを感じる人もいるかもしれない。頭の近くに本体を設置することになるため、ファンノイズも少し気になる。できればこちらもBluetoothスピーカーやヘッドフォンを連携させて使いたいところだ。
パターン3:汎用スタンドに固定したタブレットで見る
最後、3つ目のパターンは、タブレットをスタンドに固定して寝ながら見る、というもの。他のプロジェクターを使うパターンより、おそらくずっと低予算で実現できるスタイルだ。スタンドはECサイトで3,000円ほど。最近では2万円も出せば動画視聴に支障のないスペックのAndroid系タブレットが手に入る。
ただ、スタンドを選ぶにあたっては、タブレット本体の重量も考慮に入れて、安定して低い位置で下向き(仰向けで寝そべったときに眼前に来る位置)にセットできるかどうかをチェックしておきたい。自在に曲げられるフレキシブルアームだと調整幅が広くて好都合なように思うが、タブレットの重量に耐えられず、いくら調整しても位置が決まらない、というケースもあるので注意が必要だ。
今回選んだタブレットスタンドは台座が広く、その上から布団を被せることでより安定させられそうな構造。アームを折り曲げることでタブレットをかなり低い位置まで下げることができる。ポール部分が長いので、寝転がったときにちょうどいい位置までアームを下げるのは難しいかとも思ったが、問題なし。左右に重心がずれると転倒しやすいので、そこだけ気を付けながらセッティングしたい。
ちなみにポール部分は2分割でき、購入したECサイトの説明には「半分の高さでも利用できる」旨の記載もあったが、実際には構造上不可能だ。ポールをねじ込んで連結した状態で横から見ると若干くの字に曲がっており、加工精度もイマイチである。3,000円なので、こんなもんか、と割り切るしかない。
とまあ、わりとチープな「ごろ寝テレビ環境セット」ではあるものの、その快適度の高さはパターン2のNebula Vega Portableに匹敵する。Androidタブレットでも、iPadでも、torne mobileアプリが使えるし、当たり前だけれど画面を直接タッチして操作するので、プロジェクターのリモコンよりはるかに直感的な使い心地だ。
ただし、頻繁に画面タッチするような使い方、たとえば電子書籍を読んだり、Webブラウジングしたり、といった用途では、たびたび手を持ち上げて画面操作することになるせいで、腕が疲れたり、億劫に感じたりする率は高い。やはり動画のように、一度見始めたらしばらく画面操作が不要なコンテンツを楽しむ用途に最適なスタイルと言えそう。
あとは、タブレットの性能にもよるとはいえ、音声をきっちりステレオサウンドで聞けるのもメリット。ヘッドフォンを組み合わせるのも容易ではあるけれど、そのまま寝落ちして寝返りをうったときに、ヘッドフォンを破損してしまう可能性がなきにしもあらずなところが心配ではある。
そしてもっと心配なのが、スタンドの転倒やタブレットの落下だ。布団で台座を覆っているのでよほどのことがなければ顔側に倒れることはないと思うが、眠っている間に無意識に手や頭をぶつけて倒してしまうことがないとは言えない。顔面にアームやタブレットが落下してきたときのことを考えるとゾッとするので、できるだけ脇に片付けてから眠りにつくべきだろう。
どれも快適すぎて1つには絞れないが、予算に合わせて最高のごろ寝テレビを
3つのパターンのなかで、最も満足度が高いのはpopIn Aladdin 2だろうか。配線も、映像を遮ることもほとんどなく、再セッティングなしに使いたい時にすぐに電源を入れて使える気軽さがある。それでいてプロジェクターとしてのスペックも高い。一度でも体験すれば離れがたく感じる、まさに魔法(のランプ)のような魅力をもつ実用度MAXな製品だ。
Nebula Vega Portableは、ごろ寝テレビだけに使うのはもったいないくらいの高機能で、寝室よりはどちらかというとリビングのエンタメマシンとして活躍させたくなるタイプ。HDMI入力端子を装備しているから、ゲーム機を接続するのもいいし、コンパクトさを活かして仕事用を兼ねた公私両用のプロジェクターにしてしまうのもアリかもしれない。個人的には、メインはごろ寝用で、時々リビングに移動して家族で動画を楽しむ、という使い方が一番楽しめそうだ。
眠っている間に顔面直撃する不安に怯えることさえなければ、タブレットとスタンドの組み合わせはコストパフォーマンスが高い。自分1人のみの、パーソナルなごろ寝テレビ視聴環境を作り上げるのに最適なパターンでもある。手を持ち上げて操作しないで済むように、ワイヤレスマウスも一緒に使うとより怠惰なごろ寝視聴がはかどるに違いない。
どのパターンもそれぞれにメリット・デメリット、楽しみ方の違いなどがあって、どれか1つに絞るのは難しいが、予算や室内設備の条件などが合えばぜひともpopIn Aladdin 2やNebula Vega Portableをおすすめしたい。予算がなければ、まずはタブレット&スタンドで始めてみて、とりあえずごろ寝テレビの良さを体感してみてほしい。