レビュー

7,000円の“どジャンク”ツイーター大改造! 気付いたら10本になっていた

夏に購入したどジャンクのヤマハ・ホーンツイーター「JA-0506」

今年の夏、ホーンも磁気回路もサビサビで、しかも2本とも断線しているという“どジャンク”なヤマハ・ホーンツイーター「JA-0506」を7,000円で入手した。じつは我が家には、既に8本のJA-0506が鎮座しており、これで計10本になってしまった。

「このオヤジ、また始まったか……」と思われるかも知れないが、ただ単にモノを集める趣味は、僕にはない。以前書いたLo-Dの「HMA-9500」は、個体の違いを確かめるため。そしてオンキヨーのスピーカーは、エッジ修理に開眼したことが何台も集めてしまった理由である。

では、JA-0506が増えた理由は何か? と言えば、メンテを通じてその音に魅了されたこと。そして“弱点”を何とか補おうと改造を繰り返すうちに、意図せず10本も集まって(集めて?)しまったのだ。というわけで、今回はそんなJA-0506の改造方法と、音の魅力をお話ししたい。

ホーンツイーターとは。JA-0506との運命的な出会い

そもそも“ホーンツイーター”とは何か。

高音を再生するユニットのことをツイーターというが、振動板の形状や音を発する構造によってドーム、コーン、リボン、ホーンなどいくつかの種類がある。ホーンツイーターは振動板の前面にホーン(ラッパ)を取り付たもので、能率が高く切れのいい音質が特徴だ。オーディオの初期からあった古い形式であり、1970~80年代には非常に多くのメーカーから発売されていた。

今回取り上げるJA-0506は、1970年代初めに発売された古い機種で、当時の価格は15,000円(1本)だった。高能率で切れのいい音質と、アルミ削り出しの美しいホーンの造形が持ち味のツイーターで、「JA-0506 II」(27,000円/1本)へとモデルチェンジした後、80年代初めまでロングセラーを続けた。

重量は1.3kg。片手で持つとズシリと重い

元々はPA用だったが、一般向けにも販売され、当時は多数派だった自作スピーカーユーザーに愛用された。能率が高いこともあって、バックロードホーンと相性がよく、特にフォステクスのフルレンジスピーカー「FE」シリーズと組み合わせて使う事例が多かった。

オーディオ評論家の長岡鉄男さんが「FE203」の自作バックロードホーンと組み合わせていたのは有名な話で、僕もそれを見てJA-0506の存在を知った。ただ、当時は高価で手が出せず、安価な別の機種で我慢していた。その後、社会人になり、オーディオ好きの先輩から1組のJA-0506をタダでもらったのが最初の始まりだった。その個体はホーンにアルミ特有の白サビをふいていたが、音はきれいに鳴っていた。

ただ、憧れのホーンツイーターをタダで手に入れるという幸運に恵まれたものの、そのとき既にフォステクスの「T925A」という高級機種を使っていたので、もらったJA-0506は軽く試聴して、そのあと仕舞いこんでしまった。

それから10年ほどが経過。T925Aがくたびれてきたため、ツイーターの交換を考え始めたときにふとJA-0506を思い出し鳴らしてみたところ、これが実にいい音!! 先輩が使い込んだJA-0506を長年寝かしておいたにも関わらず、なんとも切れのいい美音を奏でたのである。僕はすっかりJA-0506の虜になってしまった。

木製台が付属する

弱点は「断線しやすい」「独自ターミナルで使いにくい」

ただその一方で、JA-0506の弱点にも気が付いた。

まず1つは、断線しやすいこと。これまで入手したJA-0506の中で正常動作品だったのは先輩から貰った最初の1ペアだけで、ジャンクで入手した3ペアはいずれか片方が断線。記事冒頭で話した直近入手の1ペアに至っては、2本とも断線していた。つまり、10本中5本が断線していたことになる。しかも驚くべきことに、5本とも、同じ個所の断線だった。

2つ目の弱点はターミナル。弱点というよりも特徴なのかもしれないが、専用コードを差し込むだけで接続できる独自ターミナルが今となっては非常に使いにくい。ヤマハも気が付いたのか、後継のJA-0506 IIでは普通のターミナルに改良されている。JA-0506とJA-0506 IIではターミナルが違うだけらしいが、価格は8割増しとなっている。ターミナル云々ではなく、初代の価格の採算がそもそも合わなかったのだろう。

背面。専用コードを差し込む独自ターミナルを採用しており、今では正直使いにくい

改造1:断線を補修する

それでは、JA-0506の具体的な改造方法に話を移そう。

夏に入手した個体のメンテと合わせ、断線の修理から説明していく。この個体はハイファイ堂で7,000円で購入したもので、前述の通り“どジャンク”と言いたくなるほどホーンも磁気回路もサビサビ、しかも2本とも断線という状態だった。普通なら完全に不燃ゴミだが、僕にとってはごちそうである。

まずは分解だ。最初に裏の銘版をはがす。強力な両面テープで張り付けてあるので、シールはがし液をたっぷり流し、スクレーバーを使って丁寧にはがしていく。銘版そのものは薄いアルミ板なので曲げないように慎重にはがしていく。

銘版はがしには、シールはがしを使う
はがし液を十分に塗布
塗布後はラップで密閉し、液が浸透するまで放置
スクレーバーを使って丁寧にはがしていく

銘版をはがすと3本のネジが見える。これを外すとホーンが外せる。固着していることもありうるので慎重に外す。

3本のネジを外す

ホーンを外すとご本尊の振動板が姿を現す。30μm厚のジュラルミン箔でできているリングダイヤフラムだ。艶やかに神々しい輝きを放っている。こんなのを拝めるのもメンテの妙味である。真ん中にある砲弾型のフェーズプラグは回せば外れるのだが、ダイヤフラムが固着していることがあるので、ガスケット(ベークライト板)を手で押さえながらゆっくりと回す。

ホーンを外す
フェーズプラグは回せば外れる

なお、フェーズプラグが固く締まっていて手で回すことができないときは、ソフトタッチプライヤーを使う。決して鉄のペンチやプライヤーでじかにつかんではいけない。キズがつくと特性が変わってしまうので要注意だ。

固くて回せない場合は、ソフトタッチプライヤーを使う

断線する箇所は察しがついている。

ダイヤフラムアッセンブリーを取り外して裏返すと、案の定ボイスコイルから直に引き出されたリード線部分が断線しているのが確認できた。線の表面が焦げたようになっているので、恐らく入力オーバーで焼損したものと思われる。腐食による断線と思われる固体もあったが、これまで直した個体はすべて同じ箇所が断線していた。

ダイヤフラムアッセンブリーを取り外す
線の表面が焦げているのが確認できる

該当の箇所は細い線1本が這わせてあるだけで、過大入力のときは真っ先にここが切れる。電気的にはウィークポイントだが、ここがヒューズの役割をはたしていて、結果的にボイスコイルを守っているのだ。まさにケガの功名である。

ボイスコイルとリード線の素材はエッジワイズ(平角断面)のCCAW(COPPER CLAD ALMINIUM WIRE)。CCAWは文字通りアルミに銅コートを施した線で、軽量で電気特性が優れているのが特徴だ。またエッジワイズはコイルにしたとき隙間なく巻けるので、ボイスコイル向きなのである。さらにアルミははんだ付けが困難な金属なのだが、CCAWは銅コートのお陰で普通にはんだ付けができるのがメリットになっている。

断線部分の補修は、接ぎ木と同じ要領で行なう。ここはさすがに肉眼では厳しいので、実体顕微鏡を見ながらの作業だ。まずリード線の表面の絶縁層をアートナイフの先で極めて慎重に削いでいく。やりすぎると銅の層まではがしてしまうので注意が必要。リード線に先にはんだをつけてから細い銅線をはんだ付けする。ここは息を止めながらの作業だ。はんだ付けが完了したらテスターで導通を確認、見事イッパツで成功した。

リード線の表面の絶縁層を、アートナイフの先で削いでいく
細い銅線をはんだ付け
断線の補修が完了した

改造2:独自ターミナルをネジが使える仕様に

次に、もうひとつの弱点であるターミナルの改造について説明しよう。

JA-0506には先端に棒状の端子がついた専用コードがあり、本体のターミナルに挿し込むとワンタッチで接続ができる。専用コードは付属品なのだが、中古だと紛失していることがほとんどだ。

普通の先バラコードは使えないので、棒状の端子を模して自作するしかないのだが、そもそも確実な接続という観点ではイマイチ。そこでタップを切ってネジが使えるように改造することを考えた。何度かトライアンドエラーを繰り返して、このやり方にたどり着いた。

ターミナルの改造は、磁気回路の分解から始める。

まず2本のネジを外す。ネジを外しただけでは強い磁力で貼りついているのでビクともしない。この磁気回路は内部に磁石がある内磁型なので、外側の黒いところは磁石ではなくヨークである。このヨークとトッププレートの境界線にカッターナイフの刃をハンマーで慎重に叩き込んで、少しずつコジ開けていく。

2本のネジを外す
ヨークとトッププレートの境界線にカッターナイフの刃をハンマーで慎重に叩き込み、少しずつコジ開ける

わずかに隙間が開いたら、マイナスドライバー、ヘラ、割りばし、と少しずつ厚みのあるものを挿し込んでいくとトッププレートが外れる。とにかく磁気が強力なので注意が必要だ。トッププレートが外れたら、同じ要領でヨークとバックプレートを分離する。

少しずつ厚みのあるものを挿し込んでいく
トッププレートが外れた
ヨークとバックプレートも分離する

2枚のプレートを外すとターミナルがあらわになる。ターミナルの本体はツバ付きの筒状の部品で、中には板バネ状の接点が入っている。

露出したターミナル
板バネを外す

とても凝った構造なのだが、バネ圧が弱いので確実な接続は望めない。この板バネを外して、筒状の部品にM4のタップを切る。こうすることでM4のネジでガッチリ締め付けることができるようになる。

筒状の部分をM4のタップで切る

相変わらず先バラコードは使いにくいが、Yラグを使えば極めて強固な接続が実現する。最後にM4のネジを切った筒状部品にスズメッキ銅線をはんだ付けして、元の位置にエポキシ接着剤で固定する。

スズメッキ銅線をはんだ付けする
元の位置にエポキシ接着剤で固定

組み立ては、分解と逆の手順で行なう。

念のためスズメッキ銅線に絶縁チューブを被せてプレートのハトメに通して短くカットする。ガスケットを元通りに貼り付けたダイヤフラムをプレートにはめて、リードをハトメに慎重にはんだ付け。フェーズプラグとホーンを元に戻せば、ひとまずは作業完了だ。

念のためスズメッキ銅線に絶縁チューブを被せる
プレートを被せたら、銅線を短くカットする
ガスケットを貼り付けたら、ダイヤフラムもプレートへ戻す
リードをハトメに慎重にはんだ付けする

ホーンを組み直したら、仮試聴を行なう。テスト信号を鳴らしてみて異常音が出ないことを確認し、適当なコンデンサーを入れて音楽を鳴らしてみる。うん、なかなかいい音で鳴っている。

仮試聴。なかなかいい音で鳴っている

今回購入したペアはホーンが超サビサビだったため、耐水ペーパーを4段階切り替えて、水を垂らしながらゴシゴシと2時間かけて磨き上げた。フェーズプラグはネジの部分をドリルドライバーの先端にくわえ、高速回転させて磨くことができる。

耐水ペーパーを使い、ひらすら磨く
フェーズプラグはドリルドライバーの先端にセットし、高速回転で磨いた

最後はピカールで丁寧に磨き上げる。鏡面仕上げとまではいかないが、遠目にはいい感じになる。この流麗なアルミ無垢削り出しホーンの造作を見ると、僕は「カサブランカ」のイングリッド・バーグマンの横顔を思い出す。本当にきれいだぁ、と思わずため息が出てしまう。

磨いた後(左)と、磨く前の比較
2本とも磨いた状態

磨いた後に特性も測ってみた。2本ともよく揃っていて、なかなかいい特性だ。そもそもホーンツイーターはバラつきが大きいが、これまで入手した中でも優秀なほうだった。

2本とも特性が揃っていて、なかなか優秀

試聴と記念撮影

まずはじめに、以前メンテしたオンキヨーの「D-202A」につないで音楽を聴いてみた。D-202Aのハイエンドは十分伸びているので、そもそも他のツイーターで補う必要はない。また、JA-0506のレベルが高すぎるので、アッテネーターで約15dBも絞る必要があるため、本来の音ではないと思うが、それでも全体の音色が一変してしまった。

ジャズのシンバルは鋭く切れ込んできて、エレキギターは存在感がグンと増してくる。また、中音の表情まで変化するのには驚いた。ボーカル明瞭感は明らかに向上し、クラシックのバイオリンは弓のこすれが生々しく、まるで目に見えるかのようだ。さすがJA-0506。名機はダテではないと思わせる。

以前メンテしたオンキヨー「D-202A」と組み合わせる
ちなみに、これが改造前のターミナル。オリジナルは、穴に棒状の端子を挿し込むだけ
改造後のターミナルは、M4のネジでガッチリと締め付けることができる

これは具合がいいと、気をよくしてメインシステムに組み込んでみた。ネットワークは0.47μFのコンデンサー1個だけでアッテネーターは使っていない。まずレベルの確認をしたところ、聴感ではわずかにハイ上がりに感じるので、コンデンサーを0.33μFに変更してもいいかもしれない。ただ、容量を減らすと高音が薄くなりがちなので、JA-0506の持ち味を生かすためこのままで鳴らすことにした。

ここ数年、メインシステムのツイーターは機種を決めずに、半年くらいでとっかえひっかえしているのだが、結論からいうと最近のローテーションではトップクラスの美音である。JA-0506の音の特徴は鮮鋭でありながら艶があって、しかもしなやかでキメが非常に細かい。

そして特筆すべきは、高音でありながら厚みを感じさせることだ。厚みのある、という表現は、本来は中音や低音の修飾なのだが、JA-0506は「厚みのある高音」なのだ。もう少し具体的にいうと、シンバルの金属の厚さが増したような感じ。というか、あるいはシンバルよりも厚みのある楽器、砲金のゴングや青銅の銅鐸が奏でる高音を想像させるのだ。言葉で表すのが難しいのだが、聴いてみれば誰でもすぐわかるだろう。特にレコードを聴くとわかりやすいと思う。

メンテしたJA-0506をメインシステムに接続

今回の試聴で最も印象的だったのは、往年の名フュージョンバンド、Dr.Strutの「Struttin'」のレコードだ。A面1曲目から目が覚めるようなシンバルと、ギターの浸透力に驚かされる。低音の表情もJA-0506の高音に彩られて、分厚くソリッドになってくるようだ。とにかく、JA-0506の支配力は圧巻。この“どジャンク”はいい買い物だった。

最後に、僕を慕うJA-0506の皆さまに並んでいただき記念撮影をパシャリ。……うん、こりゃ、やっぱりビョーキだな。

市川二朗