レビュー

約50万円で最強オーディオ、マランツ「MODEL 40n」×Polk Audio/B&W。TVの音も激変

マランツ「MODEL 40n」

ぼくの友人知人で、リビングルームの大型テレビの両脇にお気に入りのスピーカーを置いてオーディオを楽しんでいるという人間は多い。「自宅のいちばん広い部屋で気持ちよくスピーカーを鳴らしたい。とすればリビングルーム」ということなのだろう。

そんな友人の一人から「テレビの音がひどいので、サウンドバーを買おうと思っているんだが、何がいい?」と相談を受けたことがある。

「いやいや、Blu-rayレコーダーの音声出力をアンプにつないで、CDと同じようにテレビ番組も動画配信もブルーレイも、そのリッパなスピーカーで聴けばいいんじゃないの? 中途半端なサウンドバーなんて要らないよ」と答えたのだが……。

後日その友人から「調べてみたけど、うちのレコーダー、HDMI出力しかないよ。これじゃオーディオアンプとつなげない……」との返事が。

たしかに現在発売中のBlu-rayレコーダー/プレーヤーのほとんどは(高級機を除けば)HDMI端子しか装備していないのは調べるまでもない事実だった。ごめんごめん。

わが国の場合、ピュアオーディオとAVはまったくの別物と考えているメーカー、オーディオマニアは多い。

しかし、先述のようにリビングルームの大型テレビの両脇にお気に入りのスピーカーを置いているのだから、映像コンテンツもそのスピーカーで楽しみたいというのは、当然の感覚だろう。

多くのメーカーは「AVやる人はサラウンドをやるでしょ?」と思っているフシがあるが、リビングルームにスピーカーをたくさん置くなんてまず家族が許してくれない、絶対無理。という人のほうが断然多いように思う。コレが長年この世界でメシを食ってきた筆者の実感だ。

でも、映画も音楽ライブもアニメもドラマもいい音で観たいと願っている人はもちろんたくさんいる。しかし、そのソリューションがサウンドバーだけというのは、あまりにもつまらない。手持ちのステレオ・システムとつないだほうがずっといいじゃないか…。

とぼくは以前から考えていたので、マランツが2019年の秋にHDMI端子付プリメインアンプ「NR1200」を発表し、予想をはるかに上回るヒットを記録したという話を聞き、「ほらほら、そうだと思ったよ」と心の中でつぶやいたのだった。

HDMI入力を5系統備えたステレオアンプ「NR1200」

そして昨年の春、NR1200コンセプトをいっそう洗練させ、音質を磨き上げた「MODEL 40n」(286,000円)が登場、大きな注目を集めた。

「MODEL 40n」

ぼくも何カ所かでその音を聴き、MODEL 40nは現在20万円台でもっとも音の良いプリメインアンプかもしれないとの手応えを得ていた。

今般、AV Watch編集部から「このアンプと組み合わせると、約50万円でシステムが組めて面白そうなPolk Audio R200AEと、B&W 707 S3をヤマモトさんの部屋に持ち込みますので、それぞれがどんな感じで鳴ったかをリポートしてもらえませんか」との依頼が。

もちろん断る理由などない。 3月上旬、MODEL 40nと二つのスピーカーを借り受け、さまざまな音源で聴き比べ、とても楽しい1週間を過ごしたのだった。

何気ないニュース番組すら、音が激変

MODEL 40nは、70W+70W(8Ω)の2チャンネル・プリメインアンプ。横幅443mmのフルコンポ・サイズで、フロントパネル中央に円窓の表示部、左右両サイドに金型成形によるディンプル・パターンをあしらったマランツ新デザインが採用されている。

左右両サイドにディンプル・パターン。イルミネーション機能もある

AVアンプの「CINEMA 40」や「AV 10」と同じデザインだが、高さを130mmに抑えた本機MODEL 40nのほうがプロポーションが美しく、視覚的な安定感がある。まあいずれにしても、以前に比べてこのデザイン、個人的には断然好きだ。

アンプとしてはオーソドックスなつくりで、アナログ・リニア電源回路を搭載したAB級増幅方式が採られている。

高音質設計に抜かりがなく、マランツ独自のディスクリート構成高速アンプモジュール「HDAM」をプリ部に採用、出力段は瞬時電流供給能力の高い、最大68Aのフルディスクリートのパラレル・プッシュプル構成を採っている。

筐体内部
電源部には直径129mm、重さ3.4kgの大型のトロイダルトランス

内蔵されたDAC素子はESSテクノロジーの「ES9016」で、D&M独自のネットワークオーディオ機能「HEOS」やBluetooth受信機能を持ち、HDMI入力の他、フォノ入力(MM)も備えている。ちなみにHDMIはARC(Audio Return Channel)仕様で、テレビのHDMI端子からリニアPCM変換された音声信号をもらうタイプだ。

細長い銀色のシールドケース内に、デジタル回路を収納している
シールドケースの内部。DACとPhono基板の間にもシールドプレートを追加している

実際に本機のHDMI ARC入力の音を、ぼくのサブシステムの65型有機ELテレビ「REGZA 65X9400」とHDMI接続し、「ELAC 330CE」で聴いてみたが、さすがに音質向上のために意を尽くしたというだけあって、ダイナミックレンジの広いキレのよい音が聴けた。

背面。HDMI端子を備えている
REGZA 65X9400
ELAC 330CE

もうテレビ内蔵スピーカーなんて二度と聴きたくない、サウンドバー? そんなもん要らんでしょ、という気持ちになる。

とくに何気ないニュース番組のアナウンサーの声がドキリとするほど生々しい。声の帯域のリニアリティ向上を目指して音質設計したのだろうナと思う。

ユーザーの実使用状態を考えてのARC仕様だと思うが、ぼくが愛用しているパナソニックDMR-ZR1のようなHDMI出力の音質にこだわって設計されたモデルが存在することを考えると、テレビの(音質面であまり信用できない)ビットストリーム/PCM変換を経ることなく、良質なUHD BDプレーヤーとダイレクトにつなげるHDMI入出力も欲しい。そこが少し残念なポイントだ。

それから、本機は先述のようにネットワークオーディオ機能・HEOSを積んでいて、Amazon Music UnlimitedのFLAC形式のハイレゾファイルを簡単に聴くことができる。

このサブスクのハイレゾファイルが聴ける機能を積んだ製品は案外少ない。筆者の知るかぎりデノン&マランツ以外では、ヤマハ、ブル-サウンド、アーカム、サイレントエンジェルくらい。これはプリメインアンプとしてたいへんなアドバンテージだと思う。

ネットワークプレーヤーなど新たに買い足すことなく、この高音質サービスがいい音で楽しめるのだから。

実際に本機MODEL 40nで聴いたAmazon Music UnlimitedのFLAC形式のハイレゾファイルの音は、文句なしにすばらしい。少なくともこのサブスクで楽しめる音源のCDを買おうという気持ちにはならないはず。ぼくのような音楽の専門家はブックレットが読みたくてCDを購入することがあるにはあるが……。

Polk Audio「R200AE」と組み合わせる

Polk Audio「R200」(ペア103,400円)は、同社最上位シリーズ「Reserve」の中核モデル。

R200AE

今回うちで聴いた「R200AE」(ペア176,000円)は昨年発売された同社50周年記念の特別限定モデルだが、わが国割り当て分はアッという間に売り切れてしまい、米本国から融通してもらって、4月上旬に限定100ペアで再び日本市場でお目見えすることになったという。なお、メーカーによれば再入荷分への予約も既にどんどん入っているようなので、欲しい人は急いだ方がいいだろう。

R200AEは、16.5mmウーファー搭載のバスレフ型(リアポート)2ウェイ機。高域エネルギーの拡散性を改善するウェーブガイドを備えたリングラジエーター型トゥイーターが採用されている。

R200のウーファー振動板(ポリプロピレンに発泡剤を加えた素材)表面は流線型のタービン形状が採られている。この工夫によって質量を増やすことなく、剛性と内部損失を高めたという。

タービンコーンウーファー

レギュラーモデルのR200との違いは大きく二つ。一つは外装のフィニッシュで、R200は塩化ビニール製だが、R200AEは見た目が断然高級なダークチェリー色のツキ板張り。

R200AEは見た目が高級なダークチェリー色のツキ板張り

もう一つはクロスオーバーネットワーク基板。R200AEにはポリプロピレンならびにポリエステルのフィルムコンデンサー(R200は電解コンデンサー)と空芯コイルが奢られている。音の色付けを排して高S/N化を図ろうということだろう。基板面積も断然大きい。

ぼくの部屋のメインスピーカー「JBL K2 S9900」の前に鉄製スタンドを置き、その上にR200AEを載せる。そして、量販店で売っている比較的安価なスピーカーケーブルでMODEL 40nとつないだ。MODEL 40nのスピーカー出力端子はプラスチックのカバーが付いていて、簡単に安全に結線できる点も気に入った。

この状態でMODEL 40nで鳴らしたR200AEはとても美しい音がした。「声を聴くならロクハン(6インチ半=16.5cm)ユニット」と昔から言われているが、たしかに声の生々しい再現はもっとも得意とするところで、男声も女声もじつに生々しい。低域から中低域に厚みがあり、本格的なエネルギーバランスを訴求するのだ。

それから、このスピーカーで感心するのはローレベルの再現。ピアノの余韻などをじつに精妙に克明に描写するのである。

ディクレッシェンドしていく音楽の微妙な変化、このローレベルの表現にこそレギュラーモデルのR200との音質上の最大の違いだろう。比較すると、R200は音の消え際が少しざわつくイメージなのである。

塩ビ仕上げとツキ板仕上げ、ネットワーク回路のパーツ性能がこのあたりの表現力に大きく効いてくるのだと思う。

また、これは後ほど聴いたB&W「707 S3」との比較でつよく感じられたのが、本機R200AEの音色の美しさ。木管楽器やチェロなどのアクースティック楽器のふっくらと柔らかい音色は本機ならではの魅力だ。

ペア20万円以下のスピーカーで、こんな品位の高い音を聴かせてくれるスピーカーは稀だと思う。

B&W「707 S3」と組み合わせる

707 S3は、昨年発表されたB&W「700 S3」シリーズの末弟モデル。13cmウーファーと25mmツイーターを組み合わせたリアポートのバスレフ型2ウェイ機だ。価格はペアでサテンホワイト、モカ、ローズナットが各281,600円、グロス・ブラックが293,700円だ。

B&W「707 S3」

わが家にやってきたのは、ローズナットのツキ板仕上げで、隙のない高級感に満ちている。ウーファー口径がR200AEよりも一回り小さく、手に持ってもR200AEよりも軽いが、値段は約10万円高い。

う~むコストパフォーマンスならPolk Audioの勝ちじゃ? との思いがアタマの中をよぎったが……。

実際にMODEL 40nで707 S3を鳴らしてみて、スピーカーとしての完成度の高さ、表現力の多彩さにおおいに感服することになったのだった。とくにすばらしいのは、ステレオイメージの再現性だ。

ライブ録音されたクラシックのピアノ・コンチェルトなど、幅と高さと奥行を伴った広大なサウンドステージが出現し、そのスケールの大きさに瞠目した。まさにコンサートホールのS席で演奏を目の当たりにしている気分が味わえるのだ。

この音場再現の見事さは、音の反射や回析を抑え込むラウンドバッフルの採用が大きく効いているだろう。また、後ろの壁から1mほど離して中空にぽっかりと浮かべた今回のセッティングが奏功したのも間違いない。

音色はR200AEに比べると寒色系だが、音がにじんだり曖昧に感じさせたりすることはまったくなく、音数(情報量)はR200AEよりも多く、透明度も高い。小さなスピーカーではあるが、いわゆるハイエンドオーディオのスリルを感じさせる俊英モデルと言っていい。

オーディオマニア心を激しく刺激するスピーカーと換言することもできる。さすがスピーカー技術の最先端を走るB&Wとの思いを強くした。

またこの707S3は感度が84dBとかなり低いが、その負荷としても難しさをものともしないMODEL 40nの実力の高さにも改めて感心した次第。

約50万円で、現代最強の組合せ

いいスピーカーで音楽を聴く楽しさを満喫させてくれるのがPolk Audio R200AE、スピーカーの存在を忘れさせ、目の前に音楽だけがあるというイリュージョンを味わわせてくれるのがB&W 707S3 。これが両モデルをMODEL 40nで比較して聴いたインプレッションだ。

ふっくらと柔らかい音色の美しさを味わいながら、音楽をリラックスして楽しみたいという方ならR200AE、セッティングを吟味してハイエンドオーディオの深淵をのぞいてみたいという方には707 S3 、という総括もできるかもしれない。

いずれにしても両モデルとマランツMODEL 40nとのペアリングは、約50万円で現代最強の組合せだと断言したい。

(協力:ディーアンドエムホールディングス)

山本 浩司

1958年生れ。月刊HiVi、季刊ホームシアター(ともにステレオサウンド刊)編集長を務めた後、2006年からフリーランスに。70年代ロックとブラックミュージックが大好物。最近ハマっているのは歌舞伎観劇。