レビュー
結局どれがオススメ? アンカー「Soundcore Liberty」4機種聴き比べた
2025年7月7日 08:00
アンカー・ジャパンが5月に発売した完全ワイヤレスイヤフォンの最新モデル「Soundcore Liberty 5」。人気のLibertyシリーズ最新機種ということもあり、気になっている人も多いのではないだろうか。発表会での試聴では“ややクセつよ”と感じたが、発売から1カ月弱を経て、改めてそのサウンドをチェック。併売されているLiberty 4シリーズ3機種とも聴き比べて「結局、どれがオススメなのか」をチェックしてみた。
Soundcore Liberty 5は、2020年10月の発売以来、日本国内でシリーズ累計販売台数が150万台を突破した「Soundcore Liberty 4」シリーズの後継機。前モデルからノイズキャンセリング性能や音質、機能などが全面的に強化されており、「新定番となる一台」と位置づけられている。全5色で、価格は14,990円。
その国内累計販売台数150万台を突破したLiberty 4シリーズは、初代の「Soundcore Liberty 4」、ノイズキャンセリング(NC)に特化した「Soundcore Liberty 4 NC」、“究極のノイズキャンセリング”と“究極の音質”を追求したという「Soundcore Liberty 4 Pro」の3バリエーションで展開されている。価格はLiberty 4が14,990円、Liberty 4 NCが12,990円、Liberty 4 Proが19,990円。
各モデルの特徴は以前のレビューや記事などで触れているので、詳細はスペックはそちらを確認して欲しい。ここでは音質とNCに関連した機能だけおさらいしておこう。
Liberty 5は9.2mm径のダイナミックドライバー1基と低音を増強するダクトをデュアルで採用。Dolby Audioにも対応し、アプリ「Soundcore」から設定すれば、より没入感のある音楽が楽しめる。
NCは周囲の環境変化やイヤフォンの装着状況に合わせて強度を自動調整する「ウルトラノイズキャンセリング 3.5」を採用している。
初代のLiberty 4は、9.2mm径と6mm径のダイナミックドライバー2基をひとつのモジュールに統合し、同軸配置したアンカー独自の音響構造「A.C.A.A 3.0」を採用。イヤフォン部にセンサーを内蔵し、心拍モニタリングやストレスチェック、姿勢リマインダーといったヘルスケア関連の機能も備えている。
NCは騒音レベルにあわせてNC強度を自動調節する「ウルトラノイズキャンセリング 2.0」を採用している。
NC性能に軸足を置いた「Liberty 4 NC」は11mm径ダイナミックドライバーを1基搭載。ノイズキャンセリングは、装着時に耳の形を検測してひとりひとりにパーソナライズしたNCを実現する「ウルトラノイズキャンセリング 3.0」を採用している。
Liberty 4シリーズの最上位モデルとして登場した「Liberty 4 Pro」は、低域用の10.5mm径ドライバー、中高音域用の4.6mm径ドライバーを同軸配置した音響構造「A.C.A.A 4.0」を採用。ケースにディスプレイとタッチバーを搭載し、アプリを使わずにNC強度などを変更できる。
NCは、環境音やノイズを1分間に180回検知し、シーンに合わせて動作する「ウルトラノイズキャンセリング 3.5」を採用。また気圧センサーも内蔵。別途アプリから操作が必要だが、このセンサーを使うことで飛行機など気圧変化が大きい場所にも適応するという。
また全モデルがBluetoothコーデックでSBC、AAC、LDACをサポートしている。
Libertyシリーズ4機種を聴き比べ
今回の試聴では、それぞれのイヤフォンをiPhone 16 Proとペアリングし、Apple Musicを音源として使用した。楽曲は「サカナクション/怪獣」や「tuki./月面着陸計画 - Moon Landing Plan」、「嵐/カイト」、「三浦大知/Horizon Dreamer」などを聴いている。
またSoundcoreアプリではカスタムEQなどが利用できるが、それらはデフォルトのままで試聴した。
まずは最新モデルのLiberty 5から。改めて聴いてみても、5月の発表会で短時間試聴したときと同様、低音の迫力が印象的。低音を増強するデュアルダクト仕様になっていることもあり、Liberty 4シリーズと比べても、よりパワフルな低音になっている。
引き締まったタイトさはないものの、適度な締まりがあるため、ボーカルを邪魔するほどボワボワと広がることはない。ボーカル自体も解像感がしっかりあるので「歌が聴き取りにくい」ということはまったくなかった。
一方で、やはり気になるのが中高音域の鋭さ。女性ボーカルだけでなく、楽曲によっては男性ボーカルのハイトーンでも刺々しく聴こえてくる。
改めて試聴して気がついたのは、この刺々しい中高音域に“キンッ”という金属がこすれているような音が混じっていること。振動板自体の鳴りが混ざって聴こえているような印象にも聴こえたので、使い続けてエイジングが進めば、音の角が取れてくるかもしれない。
ただ後述するが、アプリからEQを調整すると刺々しさはかなり抑えることができたので、エイジングが進むまでは積極的にEQを活用するのもアリだろう。
続いてLiberty 4 Proを聴いてみると、Liberty 5よりも全体的に高域に寄ったような、腰高なサウンドに聴こえる。このあたりは搭載しているドライバー数の違いも影響しているかもしれない。
高域は耳に刺さるような鋭さはないものの、中高域はシャリシャリとしていて線が細いサウンドに感じられる。解像感もLiberty 5と比べるともう一歩物足りなさを感じてしまう。低域はLiberty 5ほどの迫力はないが、音楽を楽しむには必要十分な量感だった。
Liberty 5と同じくダイナミックドライバー1基構成のLiberty 4 NCは、全体的な音のバランス感はLiberty 5に近い。高域はLiberty 5のように金属がこすれるような音はしないものの、特に女性ボーカル楽曲ではサ行などが耳に少し痛い場面もある。低域は程よい量感とタイトさだ。
ただ音のクリアさは、Liberty 5と比べるとベールが1~2枚かかっているような印象で、少し物足りなさを感じてしまう。
最後は初代のLiberty 4。2022年の発売時は「これで良いじゃん」と評したモデルだが、3年を経て、あらためて音を聴いてみるとLiberty 4シリーズのなかでも最もサウンドが高域寄りでピーキーな印象。また低域の量感・沈み込みもシリーズのなかでは一番大人しく感じられ、3年間でLibertyシリーズの音が進化していることを感じさせられた。
ちなみにノイズキャンセリングは、最新の「ウルトラノイズキャンセリング 3.5」を採用していることもあり、Liberty 5がもっとも強力。電車内でもっとも騒音が大きい連結部付近でもノイズがしっかりカットされ、音楽に没頭することができた。
Liberty 4 Proも、同じくウルトラノイズキャンセリング 3.5を採用しているのだが、Liberty 5は「ゴーッ」という低い音がかすかに耳に届いてくるのに対し、Liberty 4 Proは「サーッ」という電車の車輪が線路とこすれるような金属音が耳に届いてくる。
どちらも音楽を流せばまったく気にならないのだが、無音状態で比べると、個人的にはLiberty 5のNCのほうが好みだった。
また「ウルトラノイズキャンセリング 2.5」を採用しているLiberty 4 NCも、ノイズキャンセリングでは上位2モデルに負けていない印象。同じく電車の連結部付近で使い比べてみると、Liberty 5よりも「ゴーッ」という走行ノイズが少し大きくなるものの、それでも音楽を楽しむには十分なNCに感じられた。
これらの上位モデルと比べると初代のLiberty 4は、やはりNCのパワーは弱め。同じ音量で音楽を聴いていても、少しノイズに負けてしまうようなところもあり、1~2ステップほどボリュームを上げたくなる。またLiberty 4はNCをオンにすると耳が詰まるような感覚が一番強かった。
オススメはLiberty 5の“高域抑えめEQ”。Liberty 4 NCも
4モデルを聴き比べて、音のクリアさやバランス、NCの使い勝手など、総合的にパフォーマンスが整っていると感じたのは、やはりLiberty 5。中高音域に混じる金属がこすれるような音はネックだが、アプリのカスタムEQで高域帯を抑えめにすると金属のこすれるような音は気にならなくなる。
高域を抑えた分、バランスを取るために低域も少し整えれば、適度な迫力の低域と伸びのある高域で、気持ちよく音楽を楽しめた。
ちなみにカスタムEQを利用しない場合、一番好みだったのはLiberty 4 NC。高域がほんの少し鋭い印象だが、サウンド全体のバランスや解像感、NCの強さなど、全体的なパフォーマンスがもっともまとまっている印象だった。
また細かい点では、Liberty 4 NCを除く3モデルはいずれもケース蓋はスライド式。丸みを帯びた形状なので手触りだけでは上下左右を判別しにくく、蓋を間違った方向にスライドさせようとしたことが何度かあった。
Liberty 4 NCも、ケースは丸みを帯びた形状だが、前面にあるボタンで蓋を開閉できる仕組みなので、手触りだけでケースの向きを判別でき、スムーズに開閉できるのも使い勝手に大きく影響するポイントだと感じた。
Liberty 5とLiberty 4 NCの価格差は約2,000円だが、Liberty 4 NCは発売から時間が経過しているのでセール対象になる可能性も十分にある。少しでも出費を抑えてコスパの良いモデルを使いたい場合は、セールのタイミングでLiberty 4 NCを狙ってみるのも良いかもしれない。