藤本健のDigital Audio Laboratory

第926回

自在ループバックやボイチェンが魅力! PreSonus「Revelator io 24」を試す

PreSonus「Revelator io 24」

昨年、米PreSonusが発売し、かなりの台数が販売されているという配信用オーディオインターフェイス「Revelator io 24」。ループバックを含めたルーティングの自由度が高く、また内部DSPでボイスチェンジャーを含めたさまざまなエフェクトが行なえるのも特徴だ。

配信用のオーディオインターフェイスとしては、ヤマハ「AG03」「AG06」、TASCAM「MiniStudio」などが人気だが、それに対しRevelator io 24はどのような製品なのか。音質テストなども含め、機能、性能についてチェックしていこう。

ステレオ3系統を自由にルーティング! 強力エフェクトもかけられる

PreSonusは、古くは業務用のマイクプリアンプメーカーとして知られ、数多くのオーディオインターフェイスやミキシングコンソールを開発・販売。それと同時に、ドイツのソフトウェア部門が開発するDAW「Studio One」は国内ではCubaseに次ぐ第2位のシェア(DTMステーション調べ)を持つ。

昨年11月にはギターメーカーのFenderと資本提携し、Fender傘下となったことが大きなニュースともなったが、現在のところ体制はあまり変わっていないようで、着実に新製品や新バージョンなども発表されている。

今回取り上げるRevelator io 24は、先にUSBマイクである「Revelator」が発売された後、同じエンジンを搭載しつつ、より汎用性の高いオーディオインターフェイスとして登場したもの。PreSonusは、現行製品としてもさまざまな音楽制作用のオーディオインターフェイスを出しているが、それとは少し異なる位置づけの配信用オーディオインターフェイスとして発表したのが、今回のRevelator io 24なのだ。

USBマイク「Revelator」

ほかのオーディオインターフェイスとは少し異なり、フロントのほうがリアより大きいパネルで横から見ると台形となっているちょっとユニークなデザインを採用。フロントには小さいけれどクッキリと表示する液晶ディスプレイを搭載しており、ここで入出力のレベルメーター表示ができるとともに、その下のボタンや右にあるロータリーエンコーダーなどを用いて、ゲイン、ボリューム設定などができるようになっている。

台形型のユニークなデザイン
ゲイン設定
ボリューム設定

入出力的には、フロントにマイク/ラインを取り込むコンボジャックをステレオで搭載。リアには、TRSでのバランス出力がステレオで用意するほか、ヘッドフォン出力も装備。また配信用途として考えるとどこまで必要かはわからないが、MIDI入出力もある。PCとの接続はUSB-Cだ。

フロント
リア

基本的には2in/2outのオーディオインターフェイスであり、サンプリングレート・分解能は最高で96kHz/24bit。ただ、ここにはさまざまな機能が搭載されており、一般的なオーディオインターフェイスとはさまざまな点で異なっている。

そのもっとも顕著で特徴的な部分が、PC側から見ると6in/6out、正確にはステレオ3系統の入出力があるということ。つまり仮想的にステレオ2系統分の入出力が追加されているのだ。

ここではWindowsで見ていくが、出力においては「Playback L/R」という標準のドライバのほかに「Virtual Output A L/R」「Virtural Output B L/R」の3つがある。同様に入力においても「Mic/Inst 1/2」のほかに、「Stream Mix A L/R」「Stream Mix B L/R」となっている。この構成はmacOSでも同じだ。

出力の設定画面(Windowsの場合)
入力の設定画面(Windowsの場合)

何を意味しているのか。それは、Revelator io 24のドライバとセットでインストールされるUniversal Controlの画面を見ると、正体が分かってくる。

この画面下にあるRevelator io 24のアイコンをクリックすると、ミキサーのような画面が登場する。これがステレオ3系統のカラクリだ。この画面はメインミックスの画面で、左にあるChannel 1、Channel 2は先ほどのフロントのコンボジャックからの入力。フェーダーの上にある48Vをクリックすればファンタム電源も入り、コンデンサマイクを駆動できるようになっている。

Reavelator io 24のアイコンをクリックすると……
ミキサーのような画面が現れる

隣にあるPlayback、Virtual A、Virtual Bというのが、先ほどの出力側のドライバ。通常はPlaybackを選べばいいのだが、アプリごとにVirtual AやVirtual Bを選んで出力すると、このミキサーに入ってくるので、必要に応じてMuteしたり、音量調整することができる。

そして、画面右側にあるミックスという部分で、Mainが選ばれているときは、リアにあるメイン出力から音が出てくるが、Stream Mix A、Stream Mix Bに切り替えると、メイン出力用とは別に、それぞれ独立した形でバランス調整ができ、それが仮想入力へ送ることができるようになっているのだ。つまり、かなり自由度高くループバックの設定ができるということなのだ。

Stream Mix Aの画面

何を言っているのか、ちょっと分かりにくかったかもしれないので、少し例を交えて見てみよう。

例えば、Zoomで友達と話しをしながら、YouTubeでゲーム実況をする、という場合を考える。この際、Zoomではオーディオ出力先をVirtual Output Aにしておき、ゲームのオーディオ出力先はVirtual Output Bにする。その一方で、OBSの音声デバイスとしてStream Mix Aを選んでおく。

Zoomは、オーディオ出力先をVirtual Output Aに
OBSの音声デバイスは、Stream Mix Aを選ぶ

そのうえで、先ほどのRevelator io 24のミキサー画面で、Stream Mix Aのバランスを自分のマイク=Channel 1、Zoomの相手からの声=Virtual A、ゲームの音=Virtual Bでミックスを取ると、それがOBSへと配信されていくのだ。仮に同時にニコニコ生放送も立ち上げておき、そちらでは隣にいる友達がChannel 2に入力したマイクから、裏実況をしていく別ミックスを設定する……なんて使い方もできる。

この際、非常に面白いのがChannel 1およびChannel 2にはリアルタイムでエフェクトがかけられる、ということ。それが画面上にある設定だ。

Channel 1およびChannel 2にはリアルタイムでエフェクトがかけられる

あらかじめBroadcast、Vocal、Slap Echo……とプリセットが用意されているので、これを選べば、即マイク入力にエフェクトがかかるようになる。これはPCのCPUパワーは一切使わず、Revelator io 24の内部にあるDSPで処理するのだ。

先にプリセットさえ選んでおけば、本体フロントにあるPresetボタンを押すことでエフェクトのオン/オフができるようになっている。

そのエフェクトの中身が、右にあるFat Channelというもの。上からHPF=ハイパスフィルター、Gate=ノイズゲート、Comp=コンプレッサ、EQ=イコライザ、Limiter=リミッター、Voice=ボイスエフェクトとなっており、オン/オフの設定ができるほか、メニューで設定を変更することが可能だ。

各エフェクトはオン/オフが設定可能
メニューで設定変更ができる

さらに細かいパラメータ設定を行ないたい場合は、Fat Channelという文字の頭にあるアイコンをクリックすると、詳細画面が表示される。

詳細画面

HPF、Gateはいいとして、EQは4バンド+ローシェルフ、ハイシェルフの設定が可能。Compを選ぶとUniversal Audioの1176風な画面が現れ、ここで設定ができるようになっている。ほかにも、メニューをTubeに切り替えると、LA-2A風な画面、さらにStandardにすると、グラフ表示のコンプレッサになる。

イコライザー設定
Compの画面
メニューをTubeにした場合
Standardにした場合

その隣にリミッタがあり、一番右にあるのがVoiceエフェクト。メニューを見るとDoubler、De-Tuner、Vocoder、Ring Modulator、Filters、Delayとあり、それぞれいくつかのパラメータをいじることができるようになっている。

Voiceエフェクト

とくにハッキリと違いが分かりやすいのが、Voiceエフェクトだ。

実際、どんな声に代わるのか試してみたので、以下のYouTubeビデオをご覧いただきたい。プリセットで用意されている9つを試してみたが、これだけのことが内蔵DSPで簡単にできるのだから、かなり使える機材といえると思う。しかも、Channel 1、Channel 2それぞれ別の設定でエフェクトが掛けられるようになっている。

Revelator io 24

Fat Channelとは別にリバーブも用意されている。

これはChannel 1、Channel 2にあるReverbからセンドする形でリバーブを送り、ミキサーの一番右にあるReverbを上げていくことで、リターンしてくるというもの。この際、リバーブサイズをスモール、中、ラージの3段階で選べるほか、HPF、Size、Re Delayの3つのパラメータで細かくいじることができるようになっている。これらのエフェクトだけでも十分元がとれそうな充実具合だ。

Fat Channelとは別にリバーブも行なえる

なお、このエフェクトがかけられるのはChannel 1とChannel 2の入力のみ。つまり、PlaybackやVirtual A、Virtual Bとして入ってくる音声には掛けられない。要するに先ほどの例でいうと、マイクで入力する自分の声や、隣にいる友達による裏実況の声には掛けられるけれど、Zoomの音には掛けることができないのが、ちょっと残念なところ。可能であればファームウェアのアップデートなどで対応してくれると嬉しいのだが……。

入出力の音質とレイテンシーを検証

機能豊富なRevelator io 24だが、オーディオインターフェイスとしての音質やレイテンシー性能はどうだろう。いつものように音質測定ツールであるRMAA Proを使ってテストしてみた。

以下を見ると、超高音質というわけではないようだが、SNは非常にいいので、配信用途であればかなり優れているといえそうだ。

Revelator io 24の計測結果
44.1kHzの場合
48kHzの場合
96kHzの場合

レイテンシーもCEntranceのASIO Latency Test Utilityで試してみたところ、44.1kHz、48kHzは測定できたが、96kHzにおいてはどうもうまく使うことができなかった。そこで、今回に限り、以前紹介した別の測定ツール、RTL Utlityを使って試してみた結果がこちら。

Revelator io 24のレイテンシー
128 Samples/44.1kHzの結果
16 Samples/44.1kHzの結果
16 Samples/48kHzの結果
32 Samples/96kHzの結果

これらを見ると各サンプリングレートともに5~6msecとまずまずの値。配信などの用途であること、さらにはエフェクトが内蔵DSPで充実していることを考えれば、まったく問題ない性能であることが分かるだろう。

以上、PreSonusRevelator io 24について紹介してみたが、いかがだっただろうか?

ステレオ3系統を自由にルーティング、レベル調整でき、2つのアナログ入力には、強力なエフェクトをリアルタイムにかけられるなど、ほかのオーディオインターフェイスにはない機能もいっぱいだし、AG03/AG06やMiniStudioともだいぶ異なるアプローチだ。

細かな設定はPCの画面を見る必要があるが、入力ゲイン調整やエフェクトのオン/オフなど、主な機能は本体だけでも操作できるので、配信においてかなり便利に使えそうだ。

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto