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IMAX版「TENET」でアドレナリン大噴出! 巨大キレキレ映像と爆音を体感した
2020年10月8日 08:00
国内の観客動員100万人・興行収入16億円を超えるヒットとなっているクリストファー・ノーラン監督の最新作「TENET テネット」。本作は一部シーンをIMAXフィルムカメラで撮影しているが、東日本で唯一、その“フルサイズ映像”が堪能できる「グランドシネマサンシャイン」(東京・池袋)のIMAXシアターで鑑賞した。
結論を先に言うと、IMAX版「TENET」のフルサイズ映像と音の迫力は、ハンパない。
目の前の巨大スクリーンに投影された高解像な映像に、筆者の瞳孔は開きっぱなし。その上IMAXの爆音が全身を襲って、まさにアドレナリンドバドバの150分間だった。
頭で考えないで、感じる映画。それが「TENET」
映画「TENET」の概要を超簡単に説明しておこう。
本作で、監督・製作・脚本を務めるのは、鬼才クリストファー・ノーラン。「メメント」(2000)、そして「バットマン ビギンズ」(2005)から続くシリーズ3部作“ダークナイト トリロジー”のほか、「インセプション」(2010)、「インターステラー」(2014)、「ダンケルク」(2017)など、常に新しいビジュアルとストーリーを生み出してきたハリウッドを代表するクリエイターだ。
物語の主人公は、ジョン・デイビッド・ワシントン扮する“名もなき男”(役名はProtagonist)。
CIAエージェントの彼は、あるテストに合格したことで第三次世界大戦(全生物消失!!)を回避するための極秘ミッションに加わることになる。しかし作戦の詳細は告げられず、与えられたのは、“指を組んだジェスチャー”と、“TENET”という言葉だけ。名もなき男は、その情報を頼りに、相棒や協力者らとともに極秘任務を遂行してゆく……。
あらすじだけを読めば、ジェームズ・ボンドの「007」か、トム・クルーズの「ミッション:インポッシブル」系のシンプルなスパイ映画にも見えるが、「TENET」は常人の想像を突き抜けたストーリーになっていて、展開は早いわ、弾丸も人間も車も何だか逆行してるわで、ノーランパイセンの変態的世界観が炸裂している。おそらく、内容を一回の鑑賞で理解できる方は少ないと思われる。
お恥ずかしいことに筆者は、初見は全くワケ分からず“アタマぽかーん”。把握できたことといえば「主人公の相棒・ニールは最高にいい奴」という薄っぺらな事くらいだった。鑑賞後、パンフレットやYouTube、ブログ等にアップされている考察動画や図解説明の助けを借り、再度観返すことでようやく分かったような、やっぱり分からないような……という感じだ。
作品の楽しみ方は人それぞれだけれど、劇中に登場する女性研究員の「頭で考えないで。感じるの」というセリフの通りに、あまり深く考えずに鑑賞するのがいいと思う。
圧巻のフルサイズIMAX。バキバキ映像に瞳孔ガン開き。そしてトランスへ
冒頭でも触れたとおり「TENET」の撮影にはIMAXフィルムカメラと、65mmシネカメラの2種類が使われている。
洋画好きの方には有名な話だが、クリストファー・ノーランはデジタルで撮らずフィルム、しかも画質に優れる大判フィルムを好んで使用する監督として知られている。中でもIMAXフォーマットを高く評価していて、従来は紀行ものやドキュメンタリー作品などにしか使われてこなかったIMAXフィルムカメラを、初めて長編映画(ダークナイト)に採用。以降、自身が手掛ける映画でIMAXフィルムカメラを積極的に使ってきた。
1.43:1というアスペクト比が特徴で、1コマの面積が35mmフィルムの約8倍、映像情報は15Kに相当するとも言われるIMAXフィルムカメラで、作品の重要パートを撮影。しかもただ撮るだけでなく、70mmフィルムでの上映を働きかけるなど、IMAXフォーマットを最大限に利用した“従来とは違う映画体験”を観客へ提供しようとしている。
そんなわけで「TENET」においても、IMAXシーンが満載だ。
冒頭のオペラハウステロに始まり、飛行場保管庫への潜入や高速道路での強奪ミッション、クライマックスの敵陣襲撃といったアクションシーンほか、重要なドラマパートや舞台の切り替えなどに、これでもかとIMAXフィルムカメラで撮影されたショットが登場する。公式データはないが、最もIMAXシーンが多い長編映画になっているだろう。
グランドシネマサンシャインの巨大なスクリーン(横25.8×縦18.9m)で見る、フルサイズのIMAXシーンたるや、圧巻の一言。
“映画の世界に入り込む感覚”とはまさにこのことで、視界を覆い尽くす映像で没入感はハンパない。しかも「TENET」の撮影のため、接写撮影ができるようIMAXフィルムカメラのレンズ装填部を改良したそうで、劇中の寄りショットが増加。手持ち撮影を多用したアクションシーンは迫力が倍増している。これが巨大スクリーン一杯に表示されるのだから、観客は映像を観ているというより浴びている感覚だ。
そして大画面投影でも鈍らない、キレキレの画質もヤバい。
少し前に制作された同監督の作品「インターステラー」や「ダンケルク」は若干甘めのシーンも散見されたが、「TENET」は全編バッキバキ・エッジもゴリゴリの仕上がりになっていて、ディテールまでハッキリ見て取ることができる。空撮全景のカットはもちろん、アクションやドラマパートも目が覚めるような精細感で、瞳孔はガン開き必至だ。
被写界深度浅めのショットでは、カミソリの如くシャープなガチピン部と前後のボケの対比が最高に美しい。しかも、このバキバキは65mmシネカメラの撮影パートも同様で、IMAXの撮影パートにも匹敵するくらいの高精細な画になっている。これまではIMAXカメラシーン→通常カメラシーンになると画質の大幅低下が如実でしょんぼりしたが、最大4K解像度のデジタル上映で観る限りは、カメラシステムが切り替わった時の落差は少なくなっているように感じる。
もちろん、精細感以外の色やコントラスト、階調なども素晴らしい仕上がり。ベトナム洋上でヒロインを捉えたカットは透明感に溢れ、彼女の美しさが最も際立っていた。惜しむらくはカット割りが細かく、IMAXシーンがじっくり観られないことくらいだろうか。
映像を盛り上げる、大音量のサウンドもヤバい。
「上映の規定音量超えてませんか?」と聞きたくなるほど、劇場の音量はマシマシだ。冒頭のドンパチ戦から耳をつんざく轟音が続きアタマが朦朧としてきたところで、畳み掛けるように作曲家ヨーランソンが低いビートを刻んでくる。これでトランス状態にならないわけがない。
その後もジャンボジェット爆破や、はたらくくるま大集合からの路上プレス加工、そしてチヌーク4機の空撮ショットから始まる地上戦など、爆音・トランス祭りが何度も開催され気絶寸前。ついにエンディングかと思ったら、アメリカの人気ラッパー、トラヴィス・スコットの爆音ソングが鳴り響き、わたしはいよいよ昇天した。
「TENET」は数年に一度の、ガチIMAX映画。遠出してでもIMAXで観るべし
物語の向き不向きは置いておいて、息もつかせぬスピーディな展開とアクション、そして高品位な映像と迫力の音声が詰まった「TENET」は、一級の娯楽エンタメだ。
IMAXフィルムカメラ撮影の作品は、この後「ワンダーウーマン1984」、「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」が控えるが、公開までもうしばらく時間がかかるだろうし、「TENET」ほど長尺のIMAXパートはないだろう。とすれば、「TENET」は数年に一度あるかないかの“ガチIMAX映画”。この祭りに今乗らないのは、あまりにもったいない。
まだまだ気軽に外出し難い状況ではあるけれど、「TENET」はスマホやテレビではなく、是非映画館で、そして近隣にあればIMAXシアターで、時間と懐に余裕があるなら池袋か大阪エキスポシティのIMAXシアターに遠征してでも観ることを強くお勧めする。
「TENET テネット」作品情報
監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス
製作総指揮:トーマス・ヘイスリップ
出演:ジョン・デイビッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ディンプル・カパディア、アーロン・テイラー=ジョンソン、クレマンス・ポエジー、マイケル・ケイン、ケネス・ブラナー
公開日:2020年9月18日(金)公開
配給:ワーナー・ブラザース映画