日沼諭史の体当たりばったり!

第52回

ナウなヤングにバカウケ(?)の80年代風ラジカセ、懐かし新しい装備でバイブス上がるッ!

ヘイメ〜〜ン! ヨーメ〜〜ン! 今日も元気にやってっかい? こっちは原稿執筆、報酬受領、支出大量、減収郷愁、けれど体重増量、からの腰痛発症、で毎日がエブリデイなんだZE! フーーゥ!!

それはそうと、世の中ではここのところ80年代ブームが巻き起こっているとか、いないとか。街に繰り出すとファッションや広告、建物などにレトロ感あるデザインが目に留まったりするし、音楽系で言うとCDの売上が激減している代わりにレコードが改めて注目されているらしい。今回のラジカセも、まさしくそんな80年代を代表するモノの1つだ。

80年代といえば、筆者は小学生まっただ中。いつも外を出歩いて、持ち前のナンパテクニックでブイブイ言わせていた(昆虫とかカエルとか魚とかを追っかけていた)ことを思い出す。

しかし中学生あたりからは、ラジオのエアチェックをしながら、お気に入りの番組や音楽が始まるジャストタイミングで再生ボタンと録音ボタンをガシャコン! って同時押ししてカセットテープに録音したり、大して音質の違いもわからないクセに、とっておきのアニソンをメタルテープに録音して永久保存版にしたり、みたいなこともやっていた。

そんなナツい80年代のラジカセの雰囲気を再現したのが、今回紹介するドウシシャ(ORIONブランド)の「SCR-B9」(直販価格4万3,780円)。ただただレトロでノスタルジーを感じさせる見た目にしているだけでなく、当時は存在していなかった新しい機能も盛り込んでいて、いろいろな用途に使える。昭和っぽいのにまさしく令和最新版なアイテムに仕上がっているのだ。

ラジオ・カセット・CDに、MP3やBluetoothにも対応するイケイケ装備

ドウシシャのステレオCDラジオカセット「SCR-B9」

SCR-B9は、「俺たちの青春ラジカセ」をコンセプトにしたドウシシャのラジカセシリーズの1つ。80年代風デザインを特徴としつつも、「ステレオCDラジオカセット」ということで、ラジオ放送、カセットテープ、オーディオCDを再生でき、さらには現代のオーディオ機能も搭載するなどして最近のデバイスらしい使い方も可能にした製品だ。

できることをひとまず列挙すると……

  • カセットテープの再生
  • カセットテープへの録音
  • オーディオCDの再生
  • データCD内のMP3ファイルの再生
  • AM/FMラジオの受信
  • Bluetooth接続(スピーカー機能)
  • AUX(3.5mm)入力
  • USBメモリ内のMP3ファイルの再生
  • microSDカード内のMP3ファイルの再生
  • USBメモリ/SDカードへのMP3録音
  • マイク入力×2(他機能とのミックス出力も可)
  • 内蔵マイクでの録音

ということで、ずいぶんと盛りだくさんの内容。音声は10+10Wの2Wayステレオスピーカーで鳴らすことができ、AC電源に加えて電池での動作にも対応する。屋内で使えるのはもちろん、屋外に持ち出して音楽を鳴らすこともできるし、マイクをつなげばいつでもどこでも路上(対バン)ライブができるわけだ(もちろん路上ライブなどは許可を得てから!)。

リモコン付き
AC電源の他に単一形電池8本でも動作する
USBメモリやmicroSDカードで再生・録音もでき、マイクは2本接続可能

なお、本体は防水・防じん仕様ではないため、屋外で使用する際は晴れている日のホコリっぽくない場所に限られる、ということに注意しておきたい。

アナログ感満載の見た目と機能がマブい

では、具体的にどんな使い勝手なのか、機能を細かく見ていきながら紹介しよう。

外観の雰囲気はたしかに80年代らしさを思わせるたたずまい。ブラックとゴールドを基調としたカラーリングはシャレオツ……と思うかどうかは人によりそうだが、あまり80年代っぽくない気がしなくもない。ただ巨大な2つのスピーカーグリル、ラジオのチューニングゲージ、入力切り替えのスイッチ形状なんかは「あー、こんなだったかも~」と懐かしさを覚える。

改めて本体外観
背面。バスレフポートがあるのはちょっと現代的かも
13.5cm径の大きなフルレンジスピーカーを搭載
3cmのツイーターもある
入力切替スイッチ

なかでもアナログっぽさに浸れるのが、チューニングゲージの操作。FM放送は108MHzまで受信できるので、今どきなワイドFM対応ではあるのだが、横にあるダイヤルで針を左右に動かしてチューニングしていくときの操作感は当時を彷彿とさせる(アナログチューニングなラジオ機器は今も普通に販売されているけれども)。

ダイヤルを回してチューニング

プリセット設定した周波数にワンタッチで切り替える機能などは存在せず、少しでもズレればノイズの嵐、もしくは狙いとは違う放送局に合ってしまう。東京エリアだと特に79.5MHzのNACK5と80.0MHzのTOKYO FMは慎重に操作しないと間違えかねない。ただダイヤル操作は滑らかで、かつてのラジオよりクリアな音声のところでピタッと止めやすい気がする。

ラジオを聞くときは、もちろんアンテナを伸ばすのがベターだ。こういう伸縮アンテナを見る機会もずいぶん減ってしまった気がする。もともと感度が高いので、アンテナを伸ばさなくても問題なく聞けることの方が多かったりするが、アンテナは大事。アナログラジオ世代的にはアンテナを立てるのはマナーみたいなものである。

ラジオを聞くときは感度がすでに十分だとしても伸縮アンテナを伸ばすべし

SCR-B9はCDラジカセなので、CDプレーヤーとカセットデッキを1機ずつ搭載している。よりレトロチックなダブルカセットではないのが少し残念。カセットテープからカセットテープへ直接ダビングしたいときは、もう1台別のラジカセを用意しよう。

CDプレーヤー(左)とカセットデッキ(右)

で、カセットテープを挿入するときは、テープが露出している側が下にくるようにする。ラジカセによっては逆さまに挿入するものもあったが、あれはなぜだったのだろうか。ホコリ防止とか格納スペースの問題とか電気的な設計上の都合とかだろうか。それともヘッドが上下に2つあってB面再生の時だけ逆さまにするのだったか。

今となってはよく思い出せないが、とにかくSCR-B9では無理矢理逆さまにカセットを差し込んでしまうとチョベリバというか、破損する可能性があるので気をつけてほしい。

イジェクトボタンを押すと、ゆっくり滑らかな動きでカバーが開く

肝心のカセットテープは今もわりとフツーに手に入る。筆者宅には見当たらなかったので、ネットで空のカセットテープを購入した。片面60分、両面120分のノーマルテープだ。が、価格は1,280円となかなかのインパクト。かつてのカセットテープの値段は覚えていないが、きっとそこまで高くはなかったのでは?

片面60分のノーマルテープを購入。SCR-B9はハイポジ、メタルテープには対応しない
テープを挿入

SCR-B9でカセットテープに録音するときは、録音したい他の音源を流しながらRECボタンを押すだけ。それに合わせてPLAYボタンも勝手に押されるタイプで、2本の指でカタいボタンを同時押しするような緊張感はあまり味わえない。でも、RECボタン(+再生ボタン)の重さはそれなりにあるのでまあまあ力が必要だ。

ちなみに、カセットテープは完全に巻き戻した状態だと序盤に数秒程度のブランクがあるので、録音する時には記録面が出てくるまで手動で回してから本体にセットしたい。鉛筆をカセットテープに差し込んでくるくるするの、みんなもやったよね?

録音ボタンを押すと再生ボタンも勝手に押されるタイプ
鉛筆とかを差し込んでくるくる回して記録面を出してから録音しよう
カセットのツメを折ると上書き録音が不可になる
でもツメがあったところにセロハンテープとかを貼れば、また録音できるように

一方、SCR-B9のCDプレーヤー部分には現代的な仕組みが取り入れられている。CDから逐次データを読み出して再生するのではなく、数十秒分の音声データを先読みして本体内蔵のメモリにキャッシュし、そこにあるデータを再生する形になっているのだ。

これは「アンチショックメモリー機能」というもので、振動でCDが音飛びするのを防ぐためのもの。ラジカセを担ぎながら音楽を流すときに役に立つ、かもしれない。まあ、本当に担いで使う人がいるのかはわからないが、この仕様のために、キャッシュが溜まったときには再生中であってもCDの回転が停止する。停止しているのにCDの音楽が流れているのは少し不思議な感じだ。

80年代と言えば尾崎豊よね
再生をスタートすると勢いよく回転し始める
キャッシュが一杯になるとストップ、しばらくするとまた回転する

できれば大ボリュームでバイブス上げてこ

で、音質はどうかというと、バスレフ方式で巨大な13.5cmコーン(と3cmのツイーター)を2つ搭載していることもあり、低音域のキャパシティには余裕を感じる。出力される音自体にはかつてのラジカセのような雑味はなく、中〜高音も含めてクリア。音質的には“レトロ”さは薄いが、その分音源による違いはわかりやすい。

TREBLEとBASSを調整可能。調整レベルが右側のディスプレイに表示されるのはわかりやすい

たとえばCDやUSBメモリのデジタル音源だとそこそこピュア感のあるチョベリグなサウンドだけれど、カセットテープに録音したものは、やや安っぽいというか中域に音が集まったようなサウンドになって、「おお! これぞカセットテープ!」と感動してしまうほど。

ただし、これはおそらく意図的にそうしているのだと思うが、どの音源を再生するときにも常に一定音量のホワイトノイズが乗り、(ボリュームの上げ下げが影響しないので)ボリュームを絞ったときにはそれが目立つ。ラジオを聞くときはAM感が出るし、カセットテープもアナログ感がより出るような気がするが、CDやデジタル音源でも全く同じホワイトノイズが聞こえてしまうのは気になる。

なので、どちらかというとボリュームは上げ気味にした方がノイズが目立たなくなり、SCR-B9の個性を体感しやすいように思われる。となると、壁の薄い集合住宅だと近所迷惑になってしまうので本領を発揮できないかもしれない。やはり公園とかに持ち運んで肩に担ぎながらノリノリでかき鳴らすのがいいのだろうか。それはそれで迷惑だが……。

VUメーターもある程度ボリューム大きめにしないと針が動かなかったりする

しかしどこかに持ち運ぶにしても、デカくて重い。幅は670mm、高さは275mmもあり、重量は単一形電池8本を内蔵した状態だと8.5kgを超える。持ち運び用のハンドルももちろん備えているが、どうやら重心が左寄りになっていて、それに合わせて握る位置も左寄りにしなければならない点にも注意だ。80年代当時の都会のヤングたちは、本当にこんなにデカくて重いラジカセを持ち出していたのだろうか。尊敬してしまう。

重心が左寄りなので、ハンドルも左寄りを握ると安定する
電池8本入れた状態だと重量は8.5kgを超えた

スマホや家電との連携、キャンプ用や自宅カラオケにもバッチグー

SCR-B9はノスタルジーに浸りたい40代以降の人たちや、80年代カルチャーがむしろ新しいと感じている若者たち向けの製品だとは思う。その意味では文字通りCDラジカセとして使うのもいいのだけれど、多機能さを考えると活躍の場面はかなり多い。

Bluetooth接続でスマホ連携したり、家電の外部スピーカーとして使ったりするのもOKだし、電池駆動もできるのでキャンプなどアウトドア用のスピーカーにするのにもチリバツだ(もちろん周りの迷惑にならない音量で使いたい)。ただ単純に「電池で動くBluetoothスピーカー」として見てもイケてるだろう。

Bluetooth接続してスマートディスプレイの外部スピーカーにした例
テレビの外部スピーカーにもなる

最近は自宅でカラオケする層も少なくないと聞く。その点、マイクをつないで音源を流せば即席カラオケにもなるというところにズッキュンとくる人もいるのではないか。ホームパーティなんかで2本のマイクを使ってデュエットすれば盛り上がること間違いナッシングである。

デカくて重いので、宅内であっても移動にはひと苦労してしまうのだが、もっとフレキシブルに持ち運びつつ使いたいならコンパクトな姉妹機の「SCR-B3」を選ぶのも吉だ。

さあ、みなさんもトレンディな80年代ファッションをまとって、80年代の音楽とともに80年代風ラジカセでハッスル、ハッスル!

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。