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第480回

プレイステーション 5実機でプレイ体験! 高速読込と「DualSense」が変えるゲーム体験

PS5実機でゲームを先行プレイ体験。実は世界的にもまだほとんど例のない、特別なものである

大人気で予約合戦が大変なことになっているPlayStation 5(PS5)。筆者もまだ予約できていない。

だが、みなさん、ごめんなさい。一足先に実機でプレイする機会をいただけてしまった。今回はそのレポートをお送りする。

といっても、チェックできたのは本当に「ゲーム」の挙動。システムメニューやネットワークサービスなどの詳細は確かめることはできなかった。また、特徴の一つである立体音響についても、ヘッドフォンでのテストではなかったので試せていない。この辺は(できるなら……)また別の機会に取材してご紹介したいと考えている。

まずは本体の外観をチェック

プレイの前にPS5実機の外観を見ていこう。

今回用意されていたのは、PlayStation 5の、いわゆる「ディスクあり」バージョン。正真正銘の「実機」だ。管理用のシールなどがあるため本体裏の端子部の撮影は認められなかったが、それ以外は自由に撮影できた。本体はHDMIケーブルでソニーの4Kテレビ・BRAVIAにつながっていた(型番不詳)。

今回のプレイ状況。4Kの液晶ブラビアにPS5実機をつないだ形だ

ボディを見ると、やはり白いプラスチックの部分が目を惹くデザインだ。第一印象として、確かにPS4などに比べて大きいと感じる。ただ、この大きさの意味も感じたのだが、それはまた後ほど述べることとしよう。白いボディと黒い部分の隙間にはLEDが仕込まれていて発光するが、電源直後は「青」で、稼働中は「白」だ。これはPS4初期型と同じである。

PS5本体とコントローラー「DualSense」。白い曲線のボディが目を惹く
右側面。ディスクドライブが見える。立てる場合には下にスタンドをつける
本体正面。起動時にはLEDが青く光る
本体上面。エアフローのためのスリットが見える

プレイに使うのは、もちろん新コントローラーである「DualSense」だ。

DualSense。デザインは大きく変わったが、サイズ・もった印象はDUALSHOCK 4と大きく変わらない

デザインこそ変わっているが、持ってみた第一印象は、多少表面がサラッとした感触ではあるが、PS4向けの「DUALSHOCK 4」とほとんど変わりない、慣れ親しんだ持ち心地だ。ボタンやトリガーの位置も、タッチパッドの位置もほとんど変わっていない。ただ、ボタンやトリガーの使い勝手についてはけっこうな変化があるのだが、その点はあえて後ほど語ることにしよう。

DualSenseを各方向からじっくりと。背面から見るとリセットボタンと思われる穴や、マイクが見える
プレイ中の写真。握った感じ・プレイした時の印象は意外なほどDUALSHOCK 4に近い

細かいところでは、PSボタンが丸から「PSロゴ」型に変わっていたりする。その下には、細く小さなボタンがあるが、これは「ミュート」ボタン。コントローラーにマイクが内蔵されたこともあって、ゲーム中のボイスチャットでの音声をミュートするために使うという(ただし、今回のプレイでは使用していない)。

PSボタンが「ロゴ型」になっているのに注目。その下には「ミュート」ボタンがある

充電用インターフェースは時代を反映し、microUSBからUSB Type-Cになった。さらに、3.5mmのヘッドホン端子がある。

充電用端子。コネクタはmicroUSBからUSB Type-Cに

PS5、ボタン設定がついに「×で決定」に統一

冒頭で述べたように、今回は自由にPS5を試せたわけではない。PS5のゲームタイトルの体験が目的だ。そのため、ゲームの起動・切り替えなどはSIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)側が行ない、こちらは一切触れていない。メニューなどの挙動は「もう少し秘密にしておきたい」というところなのだろう。

ただ、システム周りで重要なことがわかったのでお伝えしておきたい。

PlayStationをはじめとして、日本のゲーム機では伝統的に、右側の4つのボタンの「右」が決定の役割を果たしてきた。任天堂なら「A」、Playstationなら「◯」がそれにあたる。

しかし欧米では、4つのボタンの「下」を決定に使う場合が多い。Xboxでは「A」、欧米のPlayStationでは「×」だ。PCは欧米に倣い、この設定が主流である。欧米のPlayStationで「×」が決定なのは、「バツ」ではなく「チェックマーク」と認識する文化的背景があるため。

そんな事情もあり、過去PlayStationでは、日本のゲームでは「◯」決定、欧米のゲームでは「×」決定と別れることが多かった。システムの設定で切り替えることもできるのだが、ゲームの全てが従っているわけではないし、PCやXboxでもゲームをプレイするとごっちゃになってわかりづらかった。

今回SIEは、日本のゲームも含め全ての設定で「×」が決定に変わる。これは欧米に合わせた、と見ることもできるが、「複数の国のゲームがプレイされる環境になり、システムとゲームの間で使うボタンが変わったりすることを避けるため……という意味合いが強い」(SIE広報)そうだ。

DualSenseから感じる「一体化したゲーム体験」

さて、そろそろゲームプレイに移ろう。

今回試せたのは2つのタイトル。1つは、PS5にバンドル提供される「ASTRO's PLAYROOM(アストロ プレイルーム)」。そしてもう1つは、PS5のサードパーティーによるローンチタイトルの一つ「Godfall」(開発元:Counterplay Games、日本でのパッケージ版販売元:PLAYISM)だ。

どんな様子なのか、文章以外に動画を用意したのでこちらもご覧いただきたい。

プレイ中の様子
プレイしたゲーム画面
【※編集部注】録画に使用したストレージの書き込み速度の問題で、映像がカクついている場面がありますが、実際のゲーム画面はなめらかです。

「ASTRO's PLAYROOM」から行こう。

まずは「ASTRO's PLAYROOM」をプレイ

これは、PS4やPSVRのデモ開発を行ない、VRゲーム「ASTRO BOT: RESCUE MISSION」の開発も手がけた、SIE・ジャパンスタジオ内の「ASOBIチーム」が開発を担当している。そのため、キャラクターもそれらでお馴染みのASTRO BOTだ。

ASOBIチームは各ハードでの新しい遊び方を研究してきたチームでもある。そのため今回も、PS5と新コントローラー・DualSenseの可能性を生かしたショーケースとしての役割を担っている。

コントローラーの操作を学ぶチュートリアル的な意味合いもある

といっても、いわゆるデモソフトやミニゲーム集ではない。コントローラーのチュートリアルもあるのだが、しっかりとしたボリュームのある3Dアクションで、遊びごたえがある。

「ASTRO's PLAYROOM」はかなりしっかりとした長さのある3Dアクションゲーム。内容には過去のPlayStationに関わる事物も多数。PlayStationのデモには欠かせない「アヒルちゃん」も健在

「ASTRO's PLAYROOM」を遊び始めてすぐわかるのは、振動と音で伝わる「感触」をすごく大事にしている、ということだ。

DualSenseの振動はDUALSHOCK 4以前に比べると圧倒的に微細でバリエーション豊かなものになっている。

1番わかりやすいのは床の感触。金属なのか樹脂なのか、砂なのか雪なのか氷なのかがちゃんとわかる。走っているときと歩いているとき、スケートで滑っている時の違いまで再現されている。タッチパッドやトリガーを使っているときも、振動演出は加えられているので、操作の違いが文字通り「手触りの違い」になって帰ってくる。

従来も、こうした違いを「音」で演出することはあったが、PS5では音に加えて「振動」でも表現しているわけだ。

音も、テレビのスピーカーからだけ出るのではなく、コントローラーからも出ている。これはDUALSHOCK 4にもあった機能なのだが、音質がかなり向上しており、クリアな音で聞こえる。コントローラーからの音は「自分に関する音」が中心。なので、振動と音の両方から「そこにいる感覚の演出」が行なわれている。

さらに、トリガーの変化が一体感を強化している。

DualSenseのトリガーは、その時の操作に合わせて「硬さ」が変わる「アダプティブトリガー」になっている。何もなければ従来からの軽くサクサクした操作感なのだが、操作に演出が加わる時には「硬さ」「重さ」が現れる。ASTRO's PLAYROOMの場合、DualSenseの傾きで方向を決め、トリガーでバネの沈み込みを決めてジャンプする、という操作があるのだが、その時の「バネの硬さ」がトリガーの硬さとして再現される。だから、「このくらい押し込めばこのくらいの強さでジャンプできる」ということが体感的にわかるのだ。

コントローラーを傾け、トリガーを押し込んで「バネ」でジャンプ。この時トリガーには、バネの反発を思わせる「硬さ」が感じられる

本体動作音もボタンを押す音もPS4より小さくなった!

……と、この時あることに気づく。

ボタンを押した時、トリガーを押したときの「音」が小さいのだ。

DUALSHOCK 4、特にトリガーは、戻る時に結構な音を立てる。マンガなどでゲーム中に「カチャカチャ」という擬音が入るが、まさにアレだ。配信などでは、マイクでこの音を拾ってしまうこともある。実は筆者も、ゲーム中ではないが、オンラインプレゼンで画面操作にDUALSHOCK 4を使っている最中に、操作音が先方に伝わって申し訳ない思いをしたことがある。

コントローラーがまだ新しいせいもあるかもしれないが、DualSenseはボタン・トリガーの操作音が非常に小さくなっている。前述のように、DualSenseにはボイスチャット用のマイクが内蔵されたので、そこでボタンの音が邪魔にならないように……という配慮かもしれない。

というところでさらに気が付いたのだが、本体の動作音も非常に静かだ。

ゲームプレイ中は集中するので忘れてしまうが、本体の近くに行っても「轟音」はしなかった。PS4は負荷が高まるとすぐにファンの音が目立つようになるが、PS5はそれより目立ちにくい印象だ。もちろん、厳密な環境でちゃんと「ファンの音だけ」に注目してテストしたわけではない。とはいえ、今回の取材に撮影のための同行した本誌編集長も、「ボディに背面に耳を近づけても、『ああ、ファンがまわってるな』くらいの音しかしない」と感想を述べていたので、主観的には“だいぶ静かになった”という感想は間違いではなかろう。

ロード時間なしで「瞬間やり直し」

さて、次のタイトルに移ろう。次にプレイしたのは、PS5のローンチタイトルの一つ「Godfall」。インディー系デベロッパーのCounterplay Gamesが開発、世界での販売をGearbox Publishingが、日本でのパッケージ販売はPLAYISMが担当する。PS5だけでなくPCにも同時に登場する予定だ。

次は「Godfall」をプレイ。PS5のサードパーティーによるローンチタイトルの1つ

画面を見ればお分かりのように、HDRを活かした「ピカピカ」な外観が特徴のアクションRPG。キャラクターをビルドして高難易度ミッションに挑み、レアアイテムを取得してまた自分を強化して……という、いわゆるハック&スラッシュ要素が強いタイトルだそうだ。プレイできたのは最初の数十分だが、サクサクと敵を倒し、ダンジョンを周回するのが楽しそうだと感じた。

HDRの光沢表現が生きるキャラクターを操作して楽しむアクションR PGだ

このゲームは、外観以上にやはりDualSenseへの最適化が特徴。武器の種類によって振動の伝わり方が変わる。ハンマーのように重くて振り回す武器と、剣のように素早く斬りつける武器とでは、映像だけでなく「振動の感覚」も異なるわけだ。

特に面白いのは、「右手と左手の振動」を使い分けていること。右手に剣、左手に盾を持っていた場合、盾で攻撃を防ぐとコントローラーの左側だけに鋭い振動が伝わる。右手武器での衝撃はもちろん右手に伝わる。この一体感の演出は非常に面白い。

振動は「右手側」と「左手側」で違う。画像のように盾を構えている時は、盾で防いだ攻撃の衝撃を「左手側」で感じる

とはいえ、ゲームシステムも完全に把握できているわけでもなく、さらには筆者のゲームの腕前も拙いものなので、ちょっと強めのボスが出てきたらすぐやられてしまった。やられればちょっと前のチェックポイントからやり直しである。

ここで普通なら面倒になるが、PS5ではそうではない。再開までの時間がほぼないからだ。ボタンを長押しして「再開」を選べば瞬時にゲームプレイに戻れる。

これは実に快適だ。

今までのゲームでは、やり直し時のロードが面倒、という場面は結構あるが、Godfallと同じようにサクサクやり直せるならありがたい。この速度感が「PS5ならでは」ということになれば面白い。

実のところ、「やり直しでもロードなし」は、ASTRO's PLAYROOMでも同様だった。3Dでリッチなグラフィックのゲームだが、2Dのシンプルなスクロールアクションと同じようにサクサクと「やり直し」が可能である。

PS5はSSDを採用し、さらにゲームに最適化したインターフェースへと接続している。そのため、SIEは「PS4に比べ読み込み速度が100倍速い」としているが、その一端は「やり直し」からも十分体感できる。この読み込み速度をゲームシステムと深く融合させたら、どのような利点が出てくるのだろうか?

読み込みとコントローラで「いつもより快適で新鮮な体験」を演出

以上、限定された短時間でのプレイからのレポートだったが、PS5の特徴がお分かりいただけただろうか?

新型ゲーム機が登場する際、我々は映像や音に注目しがちだ。その点ももちろん、PS5は大きく進化している。

だがそれ以上に、「ロード時間短縮」という要素と、DualSenseという新しいコントローラーを使うことで、「いつものゲームプレイのようでいて、もっともっと快適で新鮮なものになる」というのがPS5の美点だ。

ゲーミングPCよりも安価な環境で、いかに独自の快適なプレイを実現するのかが、今のゲーム機に求められる重要な要素だ。そこをPS5はうまく突いてきた。カタログでは見えづらい要素だけに、本当はこういう体験プレイの場を増やせればいいのだろうけれど、コロナ禍の現状ではそうもいかないのがもどかしい。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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