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第559回

ついにUSB-Cへ。iPhone 15・15 Proを実機でチェック! ハンズオンイベント速報

iPhone 15 Pro・ブラックチタニウムを正面から

今年もiPhone発表の季節がやってきた。筆者は例年通り、アップル本社にて新製品発表イベントを取材中だ。

日本時間深夜に行なわれたキーノートの配信も終わり、新製品のリリースも出揃った。製品それぞれのリリース詳細はすでに記事になっているので、そちらをご確認いただきたい。

現地からはまず、各種ハードウェア新製品のうち、「iPhone 15」および「Pro」シリーズと、「Apple Watch Series 9」のハンズオンを中心にお届けする。

アップル本社内のスティーブ・ジョブズ・シアターでイベントが行なわれた
ハンズオン会場にはティム・クックCEOも来場。プレス関係者からの“セルフィー責め”に

チタン合金で大きく変わる「iPhone 15 Proシリーズ」

今回の新製品の中で、最も大きな変化があったのは「iPhone 15 Pro」シリーズだ。

フレームがチタン合金になり、プロセッサーも大幅に進化している。

性能・カメラ画質などについてはレビューの時に確かめるとして、まずは質感を見ていこう。

iPhone 15 Pro Max・ホワイトチタニウム
同・ブラックチタニウム
同・ブルーチタニウム
同・ナチュラルチタニウム

写真で見ればお分かりのように、落ち着いたマットでテクスチャー感のあるフレームになり、さらにディスプレイ周りの「ベゼル」も細くなっている。

iPhone 15 Pro Max・ホワイトチタニウムを持ってみた。サイドの仕上げが良い

持ってみてまず感じるのは「軽さ」。数字上は19(iPhone 14 Proシリーズ比。Max同士の比較でも同様)の変化だが、かなりはっきり違いがわかる。数字より軽く感じるのは、フレームの「角」の仕上げがより丸くなり、さらに左右の幅がほんの少しだが細くなって、持ちやすくなったせいかもしれない。

iPhone 15 Pro Max・ブルーチタニウムを背面から。角の仕上げがより丸くなっている

iPhoneの最上位モデルはずっと重くなり続けてきたが、iPhone 15 Proシリーズは、2019年発売の「iPhone 11 Pro/Max」より軽いところまで戻してきたことになる。

なお、15 Pro Maxは5倍(120mm相当)の望遠対応となったが、3倍望遠の15 Proと比較しても、カメラ部の違いはあまりない。

iPhone 15 Pro(左)とPro Max(右)のカメラ部。違いはあまり目立たない。カラーはブルーチタニウム

もう1つ、Proシリーズの特徴と言えるのが「アクションボタン」の採用だ。

iPhone 15 Proの左側に用意された「アクションボタン」(一番上)。いままでなら消音モードへの切り替えスイッチがあった場所だ

いままでの「消音モード切り替えスイッチ」の場所に、その代替として搭載されたものなのだが、もちろん消音だけに使うわけではない。

デフォルトでは着信モードと消音モードの切り替えになっているが、カメラの起動やボイスメモ、翻訳の起動などにも使える。いつも使う機能をサッといつでも呼び出すための「アクション」に使うボタン、という扱いだ。

なおカメラについては、単にカメラアプリを起動するだけではなく、「静止画か動画か、それともポートレートなのか」といった、特定モードでの起動にも対応している。

「設定」の中にアクションボタンに関する項目が用意され、機能を入れ替える。UIも他の設定項目とちょっと異なる感じ

しっとり質感で持ちやすい「iPhone 15」シリーズ。ダイナミックアイランドも

スタンダードモデルと言える「iPhone 15」シリーズは、今回もサイズが2構成で、15と「15 Plus」に分かれる。

iPhone 15のカラーバリエーション。左から、ピンク・イエロー・グリーン・ブルー

チタン合金のような派手さはないものの、仕上げなどはiPhone 14に比べかなり変わった印象を受ける。

カラバリは5つ用意されているが、どれもしっとりとした肌触りの加工がされたつや消しのガラスの向こうに色が乗っている感じで、かなり落ちついた色合いだ。

グリーン。左がiPhone 15 Plusで右がiPhone 15
ブルー。左がiPhone 15 Plusで右がiPhone 15

Proと違いアルミフレームだが、こちらも角の仕上げがより手にフィットしやすくなっている。

15シリーズのもう一つの大きな変化は、ディスプレイの通知領域にあった切り欠きが「ダイナミックアイランド」に変わっている点だ。

iPhone 15 Plusのディスプレイ。上部にProシリーズと同じ「ダイナミックアイランド」が

ダイナミックアイランドは昨年モデルの「iPhone 14 Proシリーズ」から採用されたものだが、iPhone 15シリーズに搭載されたものも、機能的には全く同じ。採用機種が増えたことで、アプリ側の対応拡大も期待したくなる。

ついにUSB-Cへ。「MFi認証」は採用せず

そしてもちろん、今回多くの人が気にしているのが、インターフェースのUSB Type-Cへの移行だと思う。

端子の位置は、従来Lightning端子であったところがそのままUSB Type-Cに変わった形。シンプルな変更と言える。

iPhone 15(ブルー)のUSB-C端子
iPhone 15 Pro(ホワイトチタニウム)のUSB-C端子

ただし、iPhone 15シリーズはUSB 2.0までの対応なので転送速度は最大480Mbps。一方で15 Proシリーズは「USB 3.0」となるので、最大10Gbpsになる。

実物をチェックすることはできなかったが、どちらの機種でも、付属するUSB-Cケーブルは同じもので、「USB 2.0対応」だという。そのため、15 Proシリーズで高速転送を必要としている人は、サードパーティー製の「USB 3.0対応ケーブル」を用意する必要がある。

ここがポイントなのだが、用意するケーブルは「アップルの認証を受けたものでなくても良い」。

iPhoneの場合、アップルの技術基準に準拠した「Made for iPhone(MFi)」と呼ばれる認証を通った周辺機器を使うのが基本で、LightningケーブルにはMFiがつきものだった。

だがUSB Type-Cへの移行に伴い、USB Type-CケーブルではMFiのような特別な認証は行なわない。これは、MacやiPad用のUSB Type-Cインターフェースでは認証がないのと同様である。

カメラUIもより便利に進化

外観以外の違いとして、カメラアプリの進化がある。ポートレートモードの品質が上がり、操作も楽になったのだ。これはiPhone 15全体で採用されている。

主な変更点は2つある。

まず、フォーカスを合わせる場所を「後から変更可能になる」ということ。どこにピントを合わせて他をボカすのか、画面上の好きな場所をタップして「再指定」できるようになっている。従来通りF値を変えていくUIでも操作できるが、ピントを合わせたい位置をタップする方が楽だし、わかりやすい。

画面の好きな場所をタップすると、そこに合わせてピント(四角の領域)が調整され、ボケる範囲が変わる

そして2つ目が「ポートレートモードへと変更してから撮影する必要がなくなる」ことだ。モード自体は存在するが、普通に「写真」設定で撮影し、アプリから「編集」するとき、あらためて、ボケのあるポートレート写真に変えられる。撮影した写真に必ず深度情報があるので、撮影後に自分で好きなように変えられるのだ。

普通に「写真」モード撮影後にも「PORTRAIT」ボタンを押すことでポートレートモード撮影したものと同じ調整が可能に

この辺のシンプルさも魅力的である。

Apple Watchは「ダブルタップ」に注目

今回はiPhoneに加えApple Watchの新製品も発表になった。

「Apple Watch Series 9」

特に「Apple Watch Series 9」と「Apple Watch Ultra 2」には、新しいプロセッサーである「S9」が搭載されたのが大きな変化だ。

「時計で性能って?」と思うかもしれないが、性能アップによるマシンラーニング性能向上を生かしたUIが、10月のアップデートで搭載される「ダブルタップ」ジェスチャーだ。

まずは動画をご覧いただきたい。

人差し指と親指の“ダブルタップ”操作

画面には触れず、人差し指と親指を「パチパチ」と打ち合わせることで画面を操作できる。通話の開始やアラームのスヌーズにも使えるものだ。

指同士を打ち合わせる時の手首の小さな振動を感知するもので、当然高度なマシンラーニング処理が必須だ。また、振動をしっかり検知できるよう、「バンドは手首に対してしっかりと巻いておく」必要もある。

S9搭載のモデルでないと動作しないのが残念だが、操作としてはとてもシンプルな上に実効性も高そうだ。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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