小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第938回
もはや「プロスマホ」、Xperia 1 IIを試す。快適AF、秒20コマ連写
2020年5月21日 08:30
早くもMark II登場
2019年のMWC19にて、Xperiaシリーズのフラッグシップ「Xperia 1」が登場した。21:9のディスプレイ、3カメラといったスペックは、メディアでも高い評価を受けた。
だがスペックだけでなく、本当の実力を認識させられたのは、2019年のNABでの展示であった。ソニーのプロ用マスターモニタと並んで、シネマカメラからの出力を表示させた展示は、プロの現場でも通用するHDRディスプレイとしての仕上がりを感じさせた。
6月に発売された折には、同社のシネマカメラ「VENICE」のトーンで撮影できる新アプリ、「Cinema Pro」をテストしたが、スマホとは思えぬその映像に驚いたものだった。
Xperia1は、スマホ不振が騒がれる日本メーカーの中にありながら、ソニーが独特の足場を固めるのに成功したモデルだと言える。その後もXperia 1 Professional Edition、Xperia 8、Xperia 5とラインナップを拡充させてきたわけだが、初代Xperia 1から約1年、その直系として「Xperia 1 II」が登場した。
通信系の最大の目玉は、ソニーでは初となる5G対応という事になるが、やはりAV Watch的に気になるのはカメラスペックの進化である。5月下旬よりdocomoとauから発売が予定されているところであるが、今回はいち早くデモ機をお借りすることができた。ただし国内販売モデルではなく、グローバルモデルのため、若干挙動に違いがあるかもしれないことをお断りしておく。
Xperia 1を超えられるのは、Xperia 1だけだ。1ナンバーの実力を、さっそく試してみよう。
スリムボディはそのまま
まずボディだが、前作と変わらず6.5型、21:9のOLED(有機EL)で高色域、高コントラストを極めた「シネマワイドディスプレイ」を採用しており、ルックスの特徴である「長いスマホ」がポイントだ。解像度は水平3,840画素×垂直1,644画素となっている。
カラーはブラック、ホワイト、パープルの3色展開だが、パープルを扱うのは国内ではdocomoのみとなる。今回はブラックをお借りしている。
ディスプレイ側から見るとあまり大きな変化は感じられないが、裏面はかなり違う。まず3カメラの配置が、前作ではボディ中央に配置されていたのに対し、今回は左肩へ寄せられている。また前作では高コントラストで目立っていたSONYロゴがグレーとなり、大人しめの主張となった。
気になるレンズだが、前作が35mm換算で16mm、26mm、52mmであったのに対し、今回は16mm、24mm、70mmとなっている。標準レンズがややワイドになり、望遠側を伸ばした格好だ。さらに標準レンズにはZEISSを採用。T*コーティングと合わせて、光学系が大きく進化した。スペックは表組みでまとめておく。なおスペックは画角の広い順に並べたが、実際のレンズの配列は上から16㎜、70㎜、24㎜となっている。
手ブレ補正は光学式と電子式を組み合わせたハイブリッド方式で、24mmと70mmにのみ搭載されている。元々超広角は手ブレの影響を受けにくいので、搭載しても効果が低いという事だろう。
また標準レンズのみ、センサーサイズが1/2.6型から1/1.7型と大型化されている。初代Xperia 1の1.5倍の感度だという。また超広角と標準レンズのみ、「デュアルPDセンサー」を採用している。
カメラ性能としての今回の目玉は、αで培われた技術が投入されているところだろう。標準レンズの下には、3D iToFセンサーを搭載。被写体へ赤外線を照射し、反射した時間を検出することで、被写体までの距離を測定する。暗いシーンにおけるAF性能が大幅に向上している。加えて最高20コマのAF/AE追従高速連写、瞳AFなど、動画だけでなく写真性能も大きく上がっている。
これらの性能を引き出すため、静止画用にもプロ向けアプリが投入された。それが「Photography Pro」である。初代Xperia 1は「シネマ」の文脈で語られる機会が多かったが、本機はさらに静止画での評価も高まるだろう。
なお今回は専用アクセサリとして、「Xperia 1 II Style Cover View」もお借りしている。カバーが半透明のポリカーボネイト製となっており、カバーをしたままでも時間等の確認ができる。なおカバーのカラーは本体に合わせてブラック、グレー、パープルの3色展開となっている。
画角のバリエーションが広がった動画撮影
では早速撮影してみよう。まずは動画からだ。撮影アプリは前作同様「Cinematography Pro」を使用した。4K・HLG・29.97fpsで、LOOKはVENICE CSを使っている。なおキャプチャ画像はカラーグレーディングを行なっている。
撮影日はあいにくの曇天ではあったが、光量はそこそこあった。ディスプレイの輝度を最大にして撮影したが、それでも海辺の光量ではOLED画面が見えづらかった。これから夏に向かっての撮影では、何かフード的な物が必要だろう。
アクセサリの半透明カバー部分がひさし代わりにならないかと考えてみたのだが、シャッターボタンの都合もあるのか、Cinematography Proは上下が反転してくれない。したがって半透明カバーをひさしがわりにするとアプリが上下逆になってしまうため、うまくいかなかった。撮影メインのスマホを名乗るからには、この辺りにもう一工夫欲しいところである。
前作と比較するとカメラ画角は超広角のみ変わらないが、標準と望遠の焦点距離が変更になっている。その理由としては、一般的な標準ズームの大半が24-70mmであることに由来するという。各カメラの画角としては次のようなイメージとなる。
24mmと70mmでは間が空きすぎているように思えるが、画角のバランスとしては悪くない。24mmを基本に、ここぞという時に引ける、寄れる画角があるという点では、1台のスマホでバリエーションのある画角が撮影できるのが強みだ。
ただ気になるのは、望遠側の発色である。静止画撮影では差が分からないが、HDRで撮影すると、発色の鈍さが気になる。特に肌色が黒ずんだ感じになるのは残念なところだ。
最終的にはカラーグレーディングで合わせ込むことは可能だとはいえ、撮ったはいいがこれでは他のカメラと絵と繋がらないというケースも出てくるのではないだろうか。この辺りは望遠のみセンサーが「デュアルPDセンサー」でないことによる影響かもしれない。
手振れ補正については、16mmは補正が効かないものの、それほど大きな影響はない。一方24mmでの補正力は素晴らしいものがあり、レールを敷いての撮影と遜色ない補正力である。70mmではかなり健闘はしているものの、補正力としては限界を感じさせる。
AFに関しては、レンズに絞りがないので常に開放で撮影することになるが、遠景ではそれほど被写界深度が浅くならないこともあり、接近する被写体に対しても実用上問題はない。シネマ撮影の場合はマニュアルフォーカスが基本ということもあるのか、静止画撮影ほどには高機能なAFが使えるようにはなっていない。
夜間撮影も行なってみたが、動画撮影では最大ISO感度が800までしか使えないため、シャッタースピード1/30程度ではそれほど明るく撮影できるわけではない。
圧巻の静止画撮影
動画では画角の違いのほかはあまり変化点がないが、Xperia 1 IIの真骨頂は拡張された静止画機能にあるようだ。新搭載の「Photography Pro」では、UI上で常時カメラのフル機能にアクセスできるため、かなり凝った撮影も可能になる。
静止画撮影時は雨天で、しかも光量の乏しい室内だったが、何がなんでも明るく撮るのではなく、シックな雰囲気を残しつつ明るく撮れる。これは楽しいカメラだ。
なお最高ISO感度はカメラ毎に異なる。16mmはISO 1600まで、24mmはISO 3200まで、70mmはISO 1000までとなっている。以下24mmで撮影した夜景ショットを掲載する。
連写性能としては、秒間20コマの撮影が可能だ。ただしこの速度で撮影できるのは24mmカメラのみである。連続での連写枚数は筆者が試したところ、200枚のようである。
総論
初代Xperia 1は、シネマ方向へ大きく振った、というか、ある意味振り切ったスマホだった。シネマを見るだけでなく、撮影まで踏み込んで、プロのワークフローにも影響を与えた点は、“ソニーの本気”を見た思いであった。
そして2世代目となる本機では、ソニーが総力戦で仕上げてきたマシンである。特にαのエッセンス注入は、かなり大きいインパクトを与えずにはおかない。絵作りの良さもさることながら、標準24mmカメラの突出したスペックと性能には舌を巻く。その両サイドを固める16mmと70mmのカメラも、画角のバリエーションを広げるにはちょうどいい焦点距離だ。
撮影していて個人的に感心したのは、AFの正確さだ。タッチしたポイントにAFがくるのはもちろんのこと、撮影中のAFの追従も外れることがなかった。唯一夜間撮影において、Cinematography Proでの動画撮影時、ISO感度を下げた時のみAF動作が怪しかった。これは暗すぎて光源しか写らなかったため、被写体がセンシングできなかったためだろう。
Xperia 1は動画職人が食いついたが、加えてXperia 1 IIは写真職人が食いつきそうな仕上がりである。ディスプレイの見やすさ、コントロールのしやすさも相まって、「これでいい」から「これがいい」に変わる瞬間が今かもしれない。