西田宗千佳のRandomTracking
第591回
Google「Pixel 9」触って感じる進化ポイント。Google TV Streamerも発見
2024年8月14日 18:14
Googleの新製品発表イベント「Mede by Google」の取材で、米・マウンテンビューにあるGoogle本社にきている。
すでに製品は日本でも発表・予約が始まっているが、写真とともに現地からのファーストインプレッションをお送りする。
スマホからイヤフォンまでフルラインナップ刷新
今回Googleが発表したのは、同社のスマートフォンである「Pixel 9」シリーズと、スマートウォッチの「Pixel Watch 3」シリーズ、そしてノイズキャンセル対応イヤフォンの「Pixel Buds Pro 2」だ。
例年ならもう少しあとの発表だが、今年は暑い最中の8月に発表された。スマートフォンの発売自体は「Pixel 9」「9 Pro XL」(8月22日発売)と、「9 Pro」「9 Pro Fold」(9月4日発売)の二回に分かれる形になる。
昨年のPixelは初夏に「Pixel Fold」が、秋に「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」が出るという構成だった。
しかし今年は前出のように、一気に4機種が登場する。
昨年の「Pixel 8 Pro」と同じサイズ感のものは「Pixel 9 Pro XL」(6.8型)となり、新しく6.3型ディスプレイの「Pixel 9 Pro」が登場する。同じ名前でサイズが変わるので多少まぎらわしくはあるが、Pixelの「Pro」はサイズが大きすぎる……という声も聞こえてきていたので、これはこれでアリだと感じる。
折りたたみ型である「Pixel Fold」は、縦横比を変えて「Pixel 9 Pro Fold」になった。
カメラ性能ではPixel 9 Proに見劣りするが、薄く持ちやすい、という意味では前モデルより「Pro感」「進化」の度合いが強い。個人的にはPixel Foldの縦横比が気に入っていたのだけれど、「より普通のスマホらしい」ものが求められたのかもしれない。折り畳んだ際のディスプレイサイズは6.3型でPixel 9 Proと同じ。そこが今回のウリでもある。
どれもディスプレイがかなり明るく、見やすい印象だ。
デザインについては大きく方向性が変わったようにも感じる。
カメラ周りのデザイン処理は似ているが、全体形状はかなり“スクエア”な印象だ。並べてみると、Pixel 8シリーズよりもiPhone 15シリーズに近い。別にアップルに近づいたという話ではない。Galaxyもスクエアなデザインになってきているので、「薄さなどを強調するためにスクエアデザインを採用する」というのが今のスマホのトレンド……と考えた方が良さそうだ。
ハイエンドスマホの新製品では、カメラの進化が常に注目される。Pixel 9シリーズの場合には、特にビデオ周りの強化と超広角用センサーの強化が目に付く。メインのセンサー以外の画質を向上することは特に動画画質の向上につながるため、これもまた今年のトレンドをなぞる動きと言えそうだ。
「Geminiのスマホ統合」に本腰、日本ではまだ使えない機能も
同じくトレンドをなぞる動きではありつつも、Googleとしての強さを発揮しているのが、同社のAIである「Gemini」の活用だ。
以前はGoogleの中でも、AndroidとPixelは別々の部隊が担当していた。だが現在は組織が1つにまとまり、「幅広く使われているOSであるAndroid」と、「Androidを使った最新のデバイスであるPixel」を同時にアピールする体制になっている。
GeminiはAndroidへの統合が進められている最中。今回の発表会でも、Pixelだけでなく、サムスンやモトローラのデバイスも紹介された。Pixelの進化と同時に「GeminiによるAndroidの強化」も進んでいる、というアピールだ。
Geminiは、GoogleのクラウドとオンデバイスAIを生かした「ハイブリッドモデル」で供給される。ただその中でも、特にプライバシーを重視する必要がある機能はデバイス内で動作する「Gemini Nano」で動く。
Pixel 9は、スペック的には「Pixel 8シリーズからの正常進化」というところだが、特に強化されているのが「オンデバイスAI処理」だ。
Pixel 9シリーズに搭載されたプロセッサーである「Tensor G4」について、Googleは「マルチモーダルAIについて、過去機種より3倍の有用性があり、毎秒45トークンを処理する」と説明している。メインメモリーが12GBもしくは16GBへと強化されているのも、オンデバイスAI活用のためだ。
今回でいえば、通話音声を自動的に書き起こしてサマリーを作る「Call Notes」や、スクリーンショットに含まれる文字や内容を認識、検索・分類する「Pixel Screenshot」はオンデバイスのGemini Nanoで動作しているという。
どちらも現状英語向けであり、そこが残念ではある。しかし、この先で日本語対応するのは間違いなく、その時には、強力なプロセッサーが必要になる。
同じくGeminiが絡む機能としては、自然な音声で対話する「Gemini Live」に注目が集まった。
こちらはオンデバイス処理ではなくクラウドによるものだが、対話の素早さ・自然さはかなりのもの。同様の音声対話をOpenAIも「GPT-4o Voice」として発表しているが、かなり印象は近い。
ただ、GeminiはGoogleの各種サービス、そしてAndroidと連携していることが強みであり、Google側も「スマートフォンとの関係を再定義するもの」(同社 シニアバイスプレジデントのリック・オステルロー氏)とかなり力が入っている。英語以外の言語への対応予定はアナウンスされていないが、開発は進められているという。
新しいイヤフォンである「Pixel Buds 2 Pro」も、Gemini Liveのような対話形式での利用が増えてくるとすれば、さらに重要なものになっていくのは間違いない。
また、こちらも現状アメリカのみの機能となるが、Pixel 9シリーズは、衛星を介したSOSにも対応する。仕組みは違うものの、アップルも同様の機能を持っており、こちらは日本でも対応が開始された。だとすれば、Pixel 9の衛星SOS機能についても、「いつかの段階では日本でも使えるようになる」と予想できる。
Google TV Streamerも展示
なお、会場にはPixel 9シリーズなどだけでなく、今回の発表の直前に公開されたスマートホーム製品も展示されていた。
特にAV的に注目は「Chromecast with Google TV」の後継となる「Google TV Streamer」だろう。
テレビに挿しておくのではなく“前に置く”デバイスに変わったからだろうか、思った以上に薄くなっている。写真からイメージされるサイズよりコンパクトでスマホを一回り大きくしたようなサイズ。イーサネットコネクタがあるのでその分端が分厚くなっている印象だ。
今回のイベント内ではあまり言及されなかったものの、スマートホームの中核として使われる。英語の場合、ここでもGeminiによるAI機能がフィーチャーされており、年末に向けてテストが始まるとされているが、日本語についてはまだアナウンスはない。
この辺は、PixelでのGeminiと同じく、もうしばらく時間がかかりそうだ。