AV Watchアワード

2026年ベストテレビはソニー液晶「BRAVIA 9 II」、パナソニック有機EL「Z95C」に決定!!

“読者に本当にオススメしたい、いま最も優れたモデル”を選ぶテレビNo.1グランプリ「AV Watchアワード」。テレビメーカー全7社・11台のフラッグシップテレビの中から、主観評価と測定評価を基にベストモデルを決定。2026年は、ソニー液晶テレビ「BRAVIA 9 II」、そしてパナソニック有機ELテレビ「Z95C」を大賞モデルに選定しました。

AVWatchアワード2026 結果

・液晶テレビ大賞
 ソニー「BRAVIA 9 II」(K-65XR90M2)

・有機ELテレビ大賞
 パナソニック・ビエラ「Z95C」(TV-65Z95C)

本稿では、AV Watchアワードで審査を務めた西川善司氏(連載「大画面☆マニア」担当)、秋山真氏(元コンプレッショニスト)、そして阿部邦弘(AV Watch編集部)の3名による、大賞・2モデルに対するインプレッションと総評を掲載しました。

文末には、機種の選定方法から具体的な取材方法、そして測定の概要を記載しています。各モデルのインプレッションを話した「アワード座談会」は、11月上旬掲載予定です。

座談会の様子

液晶テレビ大賞:ソニー「BRAVIA 9 II」(K-65XR90M2)

ソニーの65型4K液晶テレビ「BRAVIA 9 II」(K-65XR90M2)

他の液晶を圧倒。「参りました」という言葉以外ない(阿部)

聞いていた話と違うではないか。

昨年あたりから「RGBミニLED方式には弱点がある」「制御がまだ難しい」などの声が方々から上がっていたものだから、今年は接戦になるだろうと予想していた。しかし蓋を開ければ、放送やネット動画、映画、テスト信号、そのどれを映しても、明るい環境・暗い環境を問わず、BRAVIA 9 IIの描写が他の液晶を圧倒していた。

色は驚くほど自然で、グラデーションも豊かで柔らかい。ピークはまるで現実の光線を見ているかのように力強い。液晶離れしたコントラスト感も白眉で、宇宙空間の画は、星がひときわ明瞭。星の周辺にハローも感じず、暗部は十分に締まって見える。

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の低輝度シーンにおいては、陰影が潰れることなくキャラクターの細かな表情まで描き出す。スタンダードモードでも不満はないが、プロフェッショナルモードに切り替えれば、マスターモニターをそのまま大きくしたような精緻な画が家庭で堪能できる。

無論、意地悪な映像・信号を入れればRGB方式のカラークロストーク現象は確認できる。しかしそもそも他のテレビは、カラークロストーク云々を語る以前に、基本的な階調表現やコントラスト性能がBRAVIA 9 IIに全く追い付いていない。

パネル表面の低反射処理は、まさに異次元のレベル。明室でシネスコ映画を流しても、上下の黒帯に余計なものが映り込まない。映画作品にここまで没入できた液晶テレビは存在しない。また、アワードで指摘してきたゲームモード時の遅延も今回大幅に改善された。これと言った弱点が見当たらず、「参りました」という言葉以外ない。

いま私が一番欲しいテレビ(秋山)

読者からは「またか」という声も聞こえてきそうだが、今年の液晶大賞もブラビアに決まった。これで液晶部門はソニーの4連覇だ。

本機については、5月に公開されたタイアップ記事を私が担当したこともあり、発売前にじっくりと検証する機会があった。バックライトのRGBミニLED化だけでなく、超低反射パネルの採用や、画作りの大幅な方針転換といったビッグサプライズまで用意された、“ブラビア史上最大のマーク2化”だったわけだが、その完成度の高さに、思わず私は頭を抱えてしまった。これをそのまま書いたら、「秋山はソニー贔屓」とか言われるんだろうなぁ。

でも自分の評価には自信があったし、実機を見てもらえれば読者も分かってくれるはずだと腹をくくった。

その自信が確信に変わったのが、今回のアワード審査だったといえるだろう。3年連続でワーストだったゲーミング性能にまでメスが入り、蓋を開けてみれば、審査員3人の総合得点は、有機EL部門まで含めたナンバーワン。一昨年の初代BRAVIA 9以来、2度目の完全優勝を果たした。

詳しくは上記のレビュー記事や、来週公開される座談会の中で語っているので、そちらをお読みいただきたいが、なかでもスタンダードモードにまでニュートラルな画作りを貫徹した開発陣の英断には最大限の賛辞を送りたい。また仕事柄、自宅リビングでの撮影が多い筆者にとって、消画時に部屋の物が映り込まない実質“無反射”レベルの新型パネルも、他には代え難い魅力だった。

いま私が一番欲しいテレビ、それがBRAVIA 9 IIだ。

ゲームファンの皆さん、もうブラビアを買っても大丈夫です(西川)

2025年最後期から実用化が始まったRGBミニLEDバックライト技術。はっきり言って、2026年発売モデルに関しては、この新バックライトシステムを完璧に使いこなしているメーカーは1つもなかった。

広色域を過度に強調したモデルもあれば、広色域を手なづけられなかったモデルもあり、それらを目の当たりにして量子ドット技術活用初年度の状況を思い出した。

ソニーの「BRAVIA 9 II」が、この新技術に対してどう取り組んだのかと言えば、こんなイメージだ。やはりRGBミニLEDバックライトのポテンシャル活用にはかなり消極的であり、自社のマスターモニター画質への合わせ込みに注力している方針を感じる。

しかし、その上でカラーボリューム内の暗部から明部までの色域において、従来モデルでは出しづらかった色については、しっかりRGBミニLEDの広色域からつまんでくるというチューニングになっており、RGBミニLEDの良さは活きている。

ソニーをこの堅実路線に導いたのは、世界初のRGBバックライトの広色域に翻弄された「QUALIA 005」での苦い思い出だろうか。もしかすると、今、ソニーは「待ってろ。オレがRGBミニLEDの本当の実力を見せてやる」と目を光らせているのかもしれない。

毎年、筆者は「プレステを有するソニーが、入力遅延が大きくて何やってんの?」と苦言を呈してきたが、今年モデルでついにそれが解消された。ゲームファンの皆さん、もうブラビアを買っても大丈夫です。はい。あ、でも、低遅延になったのは液晶だけです。驚いたことに有機ELへの低遅延はまだ未実装。来年が楽しみです。

有機ELテレビ大賞:パナソニック・ビエラ「Z95C」(TV-65Z95C)

パナソニックの65型4K有機ELテレビ「TV-65Z95C」

いま最高の映像美が堪能できる有機ELテレビだ(阿部)

高輝度・高コントラストな最新モデルが出揃う中、Z95Cが持つ「階調の美しさ」と「色の正確さ」、そして「クリアで抜けのいい放送画質」に魅せられた。

ビエラの階調表現力は毎年定評あるポイントだが、「明部は飛ばさない・暗部は潰さない」という階調の“粘り”は今年も健在だった。テスト信号(グレースケールなど)を入れると段差が見えたり色が付いてしまったりしたモデルもある中、本機は最も忠実かつ滑らかに階調を再現した。

色の正確さを示す指標ΔE測定も、シネマプロで1.98、FILMMAKER MODEで0.59とトップクラスの値をマーク。入ってきた信号をできるだけ正確に描写しようとする原画忠実の思想が最新モデルにも徹底されている。

低輝度シーンにおける色抜けも改善。前世代のZ95Bでは『デューン 砂の惑星PART2』の暗いシーンで赤成分がゴッソリ抜けてしまう傾向が見られたが、本機は低輝度でも、彩度とコントラストを維持。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』においても、暗がりを歩く人物の顔のディテールまで鮮明に描写した数少ないテレビだった。

放送の画質も素晴らしい。ベースが原画忠実の思想ゆえ、他の有機ELに比べて華やかさはないが、文字が鮮明で周辺のモスキートノイズが目立たず、非常に抜けのよい映像を表示してくれる。ニュースキャスターの輪郭や髪の描写も自然で、超解像処理に癖がないのは好印象だ。従来に比べ、映り込みがより一層少なくなっている点も嬉しいところ。いま最高の映像美が堪能できる有機ELテレビである。

いま私が一番好きなテレビ(秋山)

有機EL部門はパナソニックが2年ぶりの大賞に返り咲いた。ご承知のとおり、当アワードではパナソニックとLGが熾烈なデッドヒートを繰り広げていて、毎年どちらかが僅差で勝利している。そのため、結果だけ見れば「またか」と思われるかも知れない。

しかし、今年の採点結果には予想以上の開きがあって、ビエラがアタマ2つ分くらい抜け出たかな、という印象を持った。LG G6には明らかに歯車が噛み合っていないところがあったが、仮に本調子だったとしても、Z95Cには及ばなかったように思う。それくらい本機の完成度は高い。

ここで過去の私のコメントを振り返ってみよう。

まず第1回のMZ2500では、「放送や配信でソース起因のMPEGノイズやアーティファクトがそのまま出ている」とダメ出し。続く第2回のZ95Aでも、「放送や配信のノイズリダクションはマシになったけど、YouTubeの補間フレーム設定がダメ。細部まで気を配ってほしい」と、大賞だったにも関わらずイチャモン。

そして第3回のZ95Bに至っては、「平坦部分のカラーノイズが全体のS/Nに影響して、奥行き方向への展開力が感じられない。グレースケールΔE値も悪くなっている。だからLGに負けるんだ」と、言いたい放題だ。

きっとビエラ開発陣も「何様のつもりなんだ、秋山は」と憤ったに違いない。それでも彼らは実直に問題点の改善に取り組み、毎年アワードにエントリーし続けてくれた。Z95Cはその集大成である。

これほどまでに上品で端正な画作りのフラットテレビがかつて存在しただろうか? 特に、絶妙なガンマカーブが生み出すフィルムライクなSDR画質は白眉。自分がPHL時代に作った『魔女の宅急便』のブルーレイがこんなにも美しい映像で観られる日が来るとは。

いま私が一番好きなテレビ、それがVIERA Z95Cだ。

もはや有機ELビエラに死角はないのか(西川)

2026年モデルの有機ELは画質が底上げされていて、採点結果ははっきり言って僅差だった。それぞれのモデルに多少の優劣はあれど、たとえ「劣」のモデルであったとしても目くじらを立てるほどのものではない。今年の審査対象となった有機ELモデルは、どれを購入しても大きな後悔はないと思う。

自分の多項目にわたる審査評を100点満点に換算したところ、最上位と最下位の点差はわずか4点のみ。ちなみに、筆者の採点表では「TV-65Z95C」が2位で、別のモデルが1位となっていた。

他の審査員の採点表も集計して総合したところ、Z95Cが大賞となったワケだが、そこに異存は全くない。自分の採点表でもZ95Cが多くの項目で1位をとっていたし、筆者の中の1位とも2点差しかなかった。

結果的に一番高い評価が集まった理由は、やはり全方位に弱点が少なかったためだ。地デジは綺麗だし、映像ディスクも配信も綺麗、Dolby Visionも文句なし。

かつて、パナソニック・ビエラはゲームプレイには適さないと言い切れるほど入力遅延が大きかったが、今や有機ELテレビの中では、ゲームが得意なイメージの強いレグザやLGを抜いてトップだ。いつの間にか、ビエラはゲーミングモニター適性がナンバーワンとなってしまった。

もはや有機ELビエラに死角はないのか。

選定を終えての総評

バックライトの制御に決定的な技術差があった(阿部)

量子ドット×ミニLED、SQD(スーパー量子ドット)×ミニLED、そしてRGBミニLEDという“液晶バックライト異種格闘技戦”を制したのは、ソニーの「BRAVIA 9 II」だった。3名の合計点は開示していないがその差は歴然で、最下位のモデルとは2倍以上、2位のモデルでさえも40点近い差を付けた圧勝劇であった。

バックライトがミニLED化したことで各社の液晶テレビは、数千ニットものピーク輝度を実現した。加えて量子ドットやRGB LED技術が導入されたことで、今年はBT.2020色域のカバー率は90%を超えるまでに至った。明るさや色域の数値だけを比べれば、各モデルともそれなりに拮抗しており、読者の方には、あまり差がないように見えるかもしれない。

では、どうして2倍や何十点もの点数差が付いたのか? と言われれば、バックライトの制御に決定的な技術差があったとわたしは考える。どれだけ高輝度なLEDを採用しようが、LEDの色数を増やそうが、光源のコントロールがプアでは意味がないのだ。

本来見えるべき星が見えず電源が落ちたのではないかと思ったテレビ、ハローが顕著で人物の周りに後光が差しているように見えたテレビ、暗部が浮いてしまいコントラストが出せないテレビなどが現れる中、様々な映像・テスト信号を入力しても、ほぼ完ぺきに表示できた液晶は、BRAVIA 9 IIだけだった。

わたし自身、新しい技術名称を聞くだけでワクワクするし、その技術の有無だけで画質の甲乙が決まると勘違いしがちだ。しかしそうした技術は、画を構成するひとつの要素でしかない。今回に関して言えば、20年近くも前にQUALIAやBVMでRGB LEDバックライトを実現していた経験値に加え、新しい技術を巧みに使いこなした開発陣のテクニックとセンスが、他との大きな画質差につながったのだと思う。

一方、液晶の中で唯一BRAVIA 9 IIに食らいついていたモデルも存在した。それがTCLのSQDミニLED液晶テレビ「C8L」だ。

総じて画が明るく派手で、原色の出方にはやや癖も残る。しかし、星空のコントラスト感はソニー以外の4モデルを凌駕していた。ビコム『青森 ねぶた祭』のHDR映像に関しても、山車の発色の良さとピークの輝きはBRAVIA 9 IIと同等、いやそれ以上と感じる場面もあった。

ここ1~2年、TCLの画質向上は目覚ましく、同社のハイエンド機はすでに“安いだけのテレビ”ではなくなっている。しかも、同社の真のフラッグシップはX11Lシリーズ(アワードの出場規定が65型限定であるため対象外)であり、C8Lは“準フラッグシップ”に過ぎない。他はもっと危機感を持つべきだ。

有機ELテレビは、パナソニックのビエラが2年ぶりの大賞奪還を果たした。推しポイントは大賞コメント欄で記したとおりなので、ここでは、惜しくも大賞を逃したLG「G6」とレグザ「X990S」の2モデルの感想を述べたい。

LG G6は、今年も驚異的な色精度に驚かされた。YouTubeで公開しているマスターモニターとのシュートアウト映像を観ても分かる通り、両者の色の違いは見分けられず「色はほぼマスモニ」と言っても過言ではない。Netflixが全世界でレファレンスモニターとしてLG OLEDを使う理由も頷けるというものだ。また、4K/165HzやDSC、HDMI全入力でver2.1サポートなど、ゲーミング性能はいまだ他の追随を許さない。

そして、レグザX990S。ここ数年の画は何だったのか? と感じるほどに大化けした。暗く眠たかった映画モードは、煌びやかでコントラストに富み、画に奥行きを感じるようになった。作品の世界を壊していた眩しすぎる字幕の問題も修正され、派手だった色もかなりナチュラルに戻った。製品発表2カ月前の試作機でなければ、上位争いは接戦だったかもしれない。来年の戦いも楽しみだ。

阿部邦弘 プロフィール

オーディオ・ビジュアル専門誌の編集に約13年従事した経験を活かし、AV Watchでは主に映像系のネタを担当。リビングではレグザ77型有機EL、自室ではソニーBVM(液晶)およびPVM(有機EL)の24型2Kモニター、キヤノン17型4Kモニター、ソニー32型ブラウン管「QUALIA 015」を愛用する。オーディオはQUESTED&ATCコンビによるニアフィールドリスニング。マイブームは、ブックオフのCDコーナーで華原朋美「storytelling」およびglobe「globe」のソニープレス盤を探すこと。

4年間の総決算となった今年のアワード(秋山)

ホテルから審査会場に直行するのが当たり前となり、もはや夏の強化合宿状態となっているAV Watchアワードの審査。4回目となる今年は、その期間が14日間にまで拡大し、正直、完遂できるか不安だったが、こうして無事に結果発表の日を迎えることができて安堵している。

前回は10日間だった審査期間が、なぜ一気に延びたのか。それは、昨年の座談会の最後で予告したとおり、事前にテレビメーカー各社の方々をお呼びして、我々の審査方法を確認してもらう場を設けたからだ。

これまでもAV Watchアワードでは、採点表や3位以下の順位については公開しない代わりに、測定結果や比較動画を公開するなどして、審査の透明性は確保してきたつもりだ。しかし、それでも一部のメーカーからは、「AV Watchアワードは特定のメーカーを贔屓しているのではないか」という声が上がっていたのも事実だ。その疑惑を払拭するためにも、一度現場を見ていただく必要があると考えた。

当初はどれくらいの人数が集まるのか心配だったが、有り難いことに3日間で全社から参加があり、中には10人以上でお越しになったメーカーや、3時間近く滞在してバグフィックスを行なう技術者もおられた。昨今では、これだけの台数を集めたシュートアウトがAV Watchアワード以外に存在しないため、「大変貴重な機会」と逆に感謝の言葉を頂戴する場面もあった。

我々にとっても、非常に実りの多い3日間だった。特に、過去の審査において「なぜ、こういう画作りをするのだろう?」と疑問や苦言を呈することが多かったメーカーの製品について、実際に評価コンテンツを再生しながら意見交換を行なったことで、「狙いがあってそうしている」のか、「ワケがあってそうなっている」のかを理解し、共有することができたのは大きかった。そして、我々の審査についても贔屓や忖度が無いことはご納得いただけたと思うし、これを機にお互いの信頼関係を一層強固なものにできたのであれば、こんなに嬉しいことはない。

その象徴とも言えるのが有機ELレグザだ。これまで「暗い」「重い」「濃い」「ミカンせいじん」「観測者メタメリズム」と言われ放題だったが、ついに今年、それらを克服して完全復活を遂げた。僕らのレグザが帰ってきたのだ!

開発陣に話を聞くと、いろいろな事情があったようだが、東芝時代のレグザユーザーである審査員3人からここまで酷評されたことには、忸怩たる思いがあったはずだ。スケジュールの都合上、量産前の試作機でのエントリーとなってしまったが、本気で大賞を獲りに来たことは一目で分かった。あれだけ言われてもなお、我々の言葉を信じてくれたのだ。これほど審査員冥利に尽きることはない。

AV Watchアワードには副賞が存在しないため、正式に表彰することは叶わないが、もし審査員特別賞が設けられていれば満場一致で選出されていたと思う。個人的にはこれが今年一番のトピックだった。それ以外にも印象に残った製品は幾つかあったが、そちらについては、後日公開される座談会の方をお読みいただきたい。

そして、最後にはなりますが、今年もAV Watchアワードにエントリーしてくださったテレビメーカー各社と、関係各位に重ねて感謝申し上げます。14日間、大変でしたが、これまでの4年間の総決算のような形になったのではないかと考えています。今後このアワードをどう拡張させていくか、すでに審査員と編集部の間でもアイデアを出し合っていますので、是非ご期待ください。来年も審査会場でお会いできることを楽しみにしております。

秋山真 プロフィール

20世紀最後の年にCDマスタリングのエンジニアとしてキャリアをスタートしたはずが、21世紀最初の年にはDVDエンコードのエンジニアになっていた、運命の荒波に揉まれ続ける画質と音質の求道者。2007年、世界一のBDを作りたいと渡米し、パナソニックハリウッド研究所に在籍。ハリウッド大作からジブリ作品に至るまで、名だたるハイクオリティ盤を数多く手がけた。帰国後はオーディオビジュアルに関する豊富な知識と経験を活かし、評論活動も展開中。愛猫2匹の世話と、愛車のローン返済に追われる日々。

大賞に選ばれた製品は、その年を代表する最高のテレビであると言い切れる(西川)

ソニーが液晶で4連覇、そしてパナソニックとLGが有機ELで互いに2勝を分け合う結果となった。主観評価だけでなく、数値測定も行なって審査しているのに、勝者の顔ぶれが固定化されてしまっているのは、やはり彼らが強いということなのだろう。今後、AV Watchアワードはどうなっていくのだろうか。

実はアワード初年度は、はっきり言って、あまり業界からは重要視されていない感じがあった(笑)。某業界関係者からは「好き勝手にやっているだけだろ」くらいのことまで言われたが、まあそれは予想していたことだ。たしかに初年度は「どうなるかわからないが、やってみよう」が出発点だったし。

ただし我々は、さまざまな製品に賞を贈り、みんなに花を持たせる「みんな仲良し1等賞」のようなアワードを目指したわけではない。編集部から説明されたのは「読者に本当にオススメしたい、いま最も優れたテレビを選び出す」こと。対象はテレビに特化し、授与する賞も大賞しか出さない。なので、大賞に選ばれた製品は、その年を代表する最高のテレビであると自信を持って言い切れる。

根拠はどこにあるのか。

それは、AV Watchアワードならではの、徹底した実機検証にある。

このアワードの審査員は、ひと筋縄ではいかない。全員がなかなかのひねくれた性格で、各社のテレビの実力を確かめるため、表示が難しい映像ソースをわざわざ持ち寄ってくる。しかも、ただ持ってくるだけではない。これを映したらどうなるだろう、とニヤニヤしながらテレビの前に集まるのだ。

しかも、本人たちは全員「この中では自分が一番、性格が良い」と本気で思っているのだから、余計にたちが悪い。そんな、ひねくれた自覚すらない審査員たちが泊まり込みで審査するのがAV Watchアワードなのだ。

実際、持ち寄った映像ソースをノミネートモデルで映すと、「この映像を映すとシーンの切り換えがおかしくなる」「階調が死ぬ」「黒再現が優先されすぎて小さな面積の高輝度が表示されません」などなど、珍現象が頻発する。アワード週間は、評価審査が半分で、半分くらいは市販製品のデバッグをしている感じになるときさえある。

で、初年度は、有機ELでLGが大賞を獲るというビックリな結果となった。これ、実は審査していた我々もビックリしたのだ。だって、予想していなかったのだから。

実際にテスト映像を見たり、他モデルと見比べたり、性能値を測定したりすると、たしかに2023年の初年度アワードではLGの有機ELテレビが優れていたのだ。前述したような不具合的な挙動はしなかったし、普通に弱点が少なかったから大賞になって“しまった”のだ。ちなみにこの年、他メディアでLGの製品に最高賞を授けたところなどなかった。

決して我々は逆張りをしたわけではない。評価の結果「大賞にせざるを得なかった」製品が浮かび上がっただけのこと。だから「大賞にせざるを得なかった」というのは最高の褒め言葉なのだ。

翌年からの我々のAV Watchアワードでは、毎回、「大賞にせざるを得なかった」モデルに大賞を確定させている。

ということで、今年も例年通り「大賞にせざるを得なかった」製品が浮かび上がりました。とりあえず今年、テレビ買うなら大賞製品だけでもチェックしておこう。

西川善司 プロフィール

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。東京工芸大学特別講師。monoAI Technology顧問。大画面マニアで映画マニア。3Dグラフィックスのアーキテクチャや3Dゲームのテクノロジーを常に追い続け、映像機器については技術視点から高画質の秘密を読み解く。近著に「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 改訂3版」(インプレス刊)がある。3D立体視支持者。

テスト概要

機種選定について

テレビメーカー各社がラインアップする4K液晶テレビおよび4K有機ELテレビの中から、「65型サイズの最上位モデル」を条件に、編集部がアワード出場モデルを選定。メーカーと出場モデルを交渉の上、最終的にシャープ、ソニー、ハイセンス、パナソニック、LG、TVS REGZA、TCLの7社から下記11台のテレビを借用・比較した。

AV Watchアワードで比較したテレビ製品

液晶テレビ
・シャープ「4T-65X9A」
・ソニー「K-65XR90M2」
・ハイセンス「RGB 65UXS」
・パナソニック「TV-65W97C」
・TVS REGZA「65Z990S」
・TCL「65C8L」

有機ELテレビ
・シャープ「4T-65S9A」
・ソニー「K-65XR80M2」
・パナソニック「TV-65Z95C」
・LGエレクトロニクス「OLED65G6PJB」
・TVS REGZA「65X990S」

テレビについては、市場で販売されている量産品の貸し出しを依頼。取材時(8月下旬)に販売されていなかった3モデル(ソニー「BRAVIA 8 II」、TVS REGZA「X990S」「Z990S」)に関しては、試作品を使用した。

セットアップについて

各テレビは開梱・設置後、工場出荷状態にリセットを実行。最新のファームウェアが提供されている場合は、アップデートを行なった。

また、測定と審査を行なうにあたり、8月中旬、メーカー関係者を会場に招き、会場の照明やテレビの設置状態、ケーブルの接続状況、表示不具合の有無などを確認してもらった。3日間で全7社・約40名のメーカー関係者が会場に訪れている。

レファレンスとして、ソニーの4Kマスターモニター「BVM-HX3110」を会場中央に設置。ソニーマーケティングに協力を依頼し、校正作業を実施した上で審査に使用した。

メーカーA社の確認の様子
マスターモニター校正作業中の様子

審査方法について

「放送画質」「配信画質」「BD/UHD BD画質」「音質」の4項目を重点的に審査。液晶テレビ6台を審査した後、有機ELテレビ5台を審査。審査時は、テレビを長机に乗せ、横一列に並べた状態で同じ映像を表示させて比較視聴した。

放送は照明あり(500lx前後)、配信は照明あり/なし、BD/UHD BDは照明なしと、視聴する内容に応じて照明環境を変更した。基本、明るさセンサーは照明ありの場合のみ使用したが、テレビの動作に気になる点があればセンサー入/切の映像も確認した。明るさを抑える省エネ設定などはすべてオフとした。

視聴時の映像モードは、「おまかせ系」(AIオート/オートAI/おまかせAI/AI自動/インテリジェントなど)、もしくは「シネマ/映画系」(シネマプロ/映画プロ/映画/FILMMAKER MODEなど)を選択。おまかせ系をもたないLGは「標準」、ソニーは「スタンダード」を選んだ。

放送はアンテナ線を分配して表示、配信はテレビ内蔵アプリを起動させて表示、BD/UHD BDはレコーダーからHDMI出力された信号を分配して表示している。

放送は、ブースターとアンテナ分配器を使い、各テレビのアンテナ端子へ接続。配信は1つのWi-Fiルータから各テレビへ無線接続した後、各テレビにインストールしたアプリを起動させて表示。BD/UHD BDに関しては、レコーダーのHDMI出力をHDMIスプリッターで分配し、各テレビのHDMI端子(eARC対応ポート)に接続した。

アンテナ線とHDMIケーブルは、それぞれメーカー・シリーズ・長さを統一している。電源はテスターを使って極性を確認した後、同一ブランド・同一型番の電源タップから供給した。

測定方法について

パネル性能の測定には、キャリブレーションサービスを展開する株式会社エディピットに協力を依頼した(テレビのキャリブレーションは行なっていない)。

テレビの「おまかせ系(無い場合は標準)」「シネマ/映画系」モードを中心に測定。輝度と色域に関しては、より高い数値を得るために「ダイナミック/あざやか系」モードを測定した。

測定時は、パターンジェネレータでSDR信号とHDR信号を出力させてテレビに入力。カラースペース(BT.2020)、ガンマ/EOTF、RGBバランス、色精度(デルタE)、10% Window(ピーク輝度)、100% Window(全白輝度)などを、ソフトウェア「Calman Ultimate」で測定した。

測定にはコニカミノルタ「CA-410」、Colorimetry Research「CR-250RH」を併用した。

測定環境は全暗。テレビは全モデル、工場出荷時にするため一度初期化した後、センサー系の機能のみ全てオフに変更。映像のパラメータを含むそのほかのメニューは触らずに、初期設定(メーカーのデフォルト値)で測定した。

測定と審査を8月下旬に行なった都合上、TVS REGZA「X990S」「Z990S」、ソニー「BRAVIA 8 II」の3機種に関しては量産前の試作機を使用した。

測定は何度か実施し、最も良い数値をセレクト。測定値で異常が見られた場合は、機器の状態や設定、接続などを見直し、テレビやPC、ジェネレータの再起動などを実施した。それでも変化が見られない場合は、メーカーに問い合わせを行なった。

測定データ一覧

液晶テレビ
・シャープ「4T-65X9A」
・ソニー「K-65XR90M2」
・ハイセンス「RGB 65UXS」
・パナソニック「TV-65W97C」
・TVS REGZA「65Z990S」
・TCL「65C8L」

有機ELテレビ
・シャープ「4T-65S9A」
・ソニー「K-65XR80M2」
・パナソニック「TV-65Z95C」
・LGエレクトロニクス「OLED65G6PJB」
・TVS REGZA「65X990S」

主に使用した機材・ソフト一覧

マスターモニター
・ソニー「BVM-HX3110」

ソニー マスターモニター「BVM-HX3110」

BDレコーダー/プレーヤー
・パナソニック「DMR-ZR1」

パナソニック BDレコーダー「DMR-ZR1」

ゲーム機
・マイクロソフト「Xbox Series X」
・ソニー・インタラクティブエンタテインメント「PlayStation 5」

AVプリアンプ
・マランツ「AV10」

HDMI分配器
・ラトックシステムズ「RS-HDSP4-8K」

HDMIケーブル
・エイム電子「UH-21」シリーズ
※UH-21シリーズは在庫限りで販売終了済み。後継品は「UH2」シリーズとなる

ラトックシステムズの分配器「RS-HDSP4-8K」と、エイム電子のHDMIケーブル「UH-21」シリーズ

アンテナ分配器
・DXアンテナ「8DMLS」

アンテナケーブル
・サンワダイレクト「500-AT001-5BK」

照度計
・横河計測「51011」

交流電力計
・浪越エレクトロニクス「DEMO-W6」

分光色彩照度計
・セコニック「C-7000」

照度/輝度計
・コニカミノルタ「CA-410(CA-P427)」

分光放射計/分光光度計
・Colorimetry Research「CR-250RH」

キャリブレーションソフト
・Portrait Displays「Calman Ultimate」

ビコム「青森 ねぶた祭」
6,600円 VUB-5718 YouTube動画

UHD BD
・「青森 ねぶた祭」
・「マリアンヌ」
・「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」
・「アリ―/スター誕生」
・「スピードレーサー」(海外盤)
・「グリーン・ナイト」(海外盤)
・「デューン 砂の惑星PART2」
・「すずめの戸締り」
・「8K空撮夜景 SKY WALK TOKYO/YOKOHAMA」
・「Spears & Munsil Ultra HD ベンチマーク(2023)」

BD
・「魔女の宅急便」

放送
・NHK総合「列島ニュース」「午後LIVE ニュースーン」「首都圏ネットワーク」「NHKニュース7」など

ネット動画
・Netflix「シティーハンター」(Dolby Vision)
・YouTube【公式】アニメ「ポケットモンスター」第1話「ピカチュウ誕生!」(アニポケセレクション)

AV Watch編集部