トピック
デノン、山内サウンドが約1.5万円から味わえる「AH-C840NCW/C500W」。要注目、実はオープン型!?
- 提供:
- デノン
2025年4月4日 08:00
デノンから「AH-C840NCW」(実売19,000円前後)と「AH-C500W」(同15,000円前後)という、2つのイヤフォンが登場した。AV Watch読者なら、型番を見て「ああ、上位機が840で、下位モデルが500ね」と予想するだろう。だが、ちょっと待って欲しい。この新イヤフォン、かなり挑戦的なモデルで、単純に「どちらが上」とは言えない。いやむしろ、価格が安いAH-C500Wの方が、注目モデルと言っていいかもしれない。
どういうことなのか?
現在、イヤフォン市場には主に、耳栓のように耳奥まで挿入する「カナル型」、耳穴に蓋をするように装着する昔ながらのスタイルの「インナーイヤー型」、そして耳穴を塞がない“ながら聴き”できる「オープンイヤー型」の3種類がある。オープンイヤー型は、AirPodsからambieのようなイヤカフ型まで形状が様々だ。
製品によって音も様々だが、一般的には、「カナル型がもっとも低域をしっかり再生でき、遮音性も高いが、開放感は得にくく、外の音も聞こえない」。「オープンイヤー型は遮音性が無く、外に抜けてしまうので低域再生も難しい。しかし開放感があり、外音にもすぐに気がつくので安心」という傾向がある。インナーイヤー型は、カナル型とオープンイヤー型のちょうど中間という存在だ。
上記の特徴を、“音質”という切り口だけで見ると、「低域までしっかり再生できるので、音質ではやっぱりカナル型が良い」という評価になり、逆にオープンイヤー型は「外の音が聞こえてリモートワークや屋外での利用で安心感があり、便利だけど、低域は出ないので、音質はカナル型に劣るよね」という話になる。
そんな“常識”に挑戦したのが「AH-C840NCW」と「AH-C500W」だ。
前述の通り、実売価格を比較するとAH-C500Wの方が4,000円ほど安いのだが、なんとこの2モデル、搭載しているドライバーユニットはまったく同じ。大きな違いは形状で、AH-C840NCWはカナル型、AH-C500Wはオープンイヤー型という事。オープンイヤーのAH-C500Wには、アクティブノイズキャンセリング機能が無いのでちょっと安いのだが、“イヤフォンとしての中身はまったく同じ”というわけだ。
つまり、AH-C840NCWは「カナル型として音質を追求したイヤフォン」であり、AH-C500Wは「AH-C840NCWをオープンイヤー型バージョン」のような製品。これは珍しいラインナップだ。そして、音にどんな違いがあるのだろうか。さっそく2モデルを試してみよう。
2モデルに共通する特徴
まずは2機種で共通するポイントを見ていこう。
搭載するドライバーは、12mmのバイオセルロース・ドライバー。実はこれ、デノンの有線接続・最上位ヘッドフォン「AH-D9200」に使われている技術を、そのまま小さなイヤフォンに落とし込んだような新たなドライバーだ。
剛性と軽さを追求し、振動板の素材にバイオセルロースを使っているのが特徴なのだが、その振動板を保持しているエッジ部分にもAH-D9200の技術を投入。非常に柔らかい素材をエッジに使う事で、振動板のピストンモーションを阻害せず、綺麗に前後に振幅するようにしている。
細かい部分だが、音には非常に重要なポイントだ。前後の動きを邪魔する要素があると、振動板が波打つような動きになってしまい、それが音にも歪みとなって出てしまう。逆に、綺麗に振幅できると、振動板が高速に振幅しても、まるで振動板が空中に浮いているかのように滑らかに動ける。この“動きやすさ”が高音質に寄与するわけだ。
また、デノンの全製品のサウンドを監修する、“音の門番”的な存在のサウンドマスター・山内慎一氏がチューニングしているのも、2イヤフォンに共通する特徴だ。
イヤフォンでは、筐体内部の空気の流れを最適化するために、筐体に複数の穴を開ける事が多いのだが、その穴を、どんなメッシュで塞ぐのか、だけでも、音が大きく変化する。
そのため、AH-C840NCWとAH-C500Wのそれぞれに、メッシュの目が荒いもの、逆に密度が濃いものなど、数十個もの試作を用意。山内氏が、どの穴に、どのメッシュが最適なのかというのを、何度も試聴しながら、最適な組み合わせを選んだそうだ。
なお、イヤフォン全体の形状としては、どちらもスティック型だ。スティックは、口元の近くにマイクを設置できるので、通話品質を高められるという特徴もある。
Bluetoothは5.3に準拠し、コーデックはAAC、SBCと、LE Audioにも対応。新しい標準コーデックのAC3もサポートするほか、Auracastにもアップデートで対応予定。当然のように、マルチポイント接続もサポートしている。
「Denon Headphones」というアプリも利用可能になった。アプリでは、5バンドのイコライザーで音を好みに調整できるほか、タッチコントロールのアサイン・カスタマイズも可能となっている。
充電ケースはワイヤレス充電にも対応しているほか、厚みを抑えたコンパクトサイズにする事で、ポケットにも出し入れしやすくしている。また、充電ケースからイヤフォンを取り出す時に、イヤフォン横にスライドさせると取り出しやすい内部形状になっている。
AH-C840NCWのみの特徴
AH-C840NCWはアクティブノイズキャンセリング(ANC)を搭載しているのだが、このANCも進化。従来機「AH-C840NCW」よりもANC性能が向上すると共に、適応型のハイブリッドANCとなり、様々な環境下でも最適にノイズを抑えてくれるという。
実際に試してみたが、効果はかなり強力。エアコンの音が「コォオオーッ」と薄く聴こえる室内で、ANCをONにすると、その薄いエアコンの音が綺麗に消え、ほぼ何も聞こえなくなる。
屋外の幹線道路の近くを歩いてみると、通り過ぎる車のエンジン音はほぼ消え去り、「シャーッ」というタイヤが路面を蹴る音の高域部分だけが聞こえる。まったくの無音だと車の接近が本当にわからなくなるので、逆に少しだけ聞こえた方が安心感はある。
騒音が激しい地下鉄の中で使うと、車体やトンネル内で反響する「ゴオオオオー!」というノイズの、中低域が綺麗に消えて、上の方の「スーッ」という音だけが残る。レールの連結を超える時の「ガタンゴトン」も、中低域が消えて「ココンココン」という小さな高い音だけが少し耳に入るだけになる。
これらの消え残ったノイズも、音楽を流すと、まったく意識に入らなくなる。業界最強のNC能力!とかではないが、ANCとしてはかなり強力な部類だ。
何より関心するのが、ANC ON/OFFでの“音楽の音の変わらなさ”だ。
アプリやハウジングのタップで切り替えられるのだが、ほとんど音が変わらない。自分でON/OFF操作をしているので「ちょっと変わったかな?」とは思うのだが、ぶっちゃけ、誰かに操作されたら、いつ切り替えられたのかわからないだろう。
御存知の通りANCは、マイクで集音したノイズと、逆位相の音を作り出して再生し、ノイズを打ち消す機能だ。つまり、音楽を再生している時にANCをONにすると、音楽と同時に、それとは関係ない“ノイズ打ち消し音”も再生する事になる。“静かな空間で音楽が聴ける”というメリットはあるが、余分な音も再生しているという意味では、音質にとって悪影響は必ずある。
それゆえ、“強力なANC”と“高音質再生”の両立は難しい。十分な効果のANCを実現しつつ、ここまでANC ON/OFFでの音の違いを感じさせないように作り込んでいるAH-C840NCWは見事だ。聞けば、低域から中域のノイズを大きく抑える一方で、中高域に関しては、音楽の高域の伸びや、開放感などに繋がる部分であるため、NC性能をとにかく高めるのではなく、音質に影響を及ぼさない範囲でNCを効かせる設計になっているそう。このあたりは、便利さを追求しつつも、音質を第一に考えるオーディオメーカーらしいこだわりと言えるだろう。
イヤーピースはS、M、Lの3サイズに加え、Sサイズながら、傘の部分が少し長い「Long S」も同梱。より耳奥にしっかり挿入したいといった場合に活用できる。イヤーピースの素材は医療用グレードのシリコンを使っている。装着感はソフトで、異物感やストレスは少ない。カナル型なので、装着安定性も高く、耳穴にフィットするサイズをしっかり選べば、装着したまま小走りしたり、強く首を振っても抜け落ちない。
AH-C840NCWを聴いてみる
Google 9 Pro XLとペアリングし、Amazon Musicから「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生する。
冒頭から驚くのは、ベースの低音だ。低音がズシンと低く沈み込み、その響きが肉厚に迫ってきて、迫力があるのだが、それだけでなく、弦をつまびいた時の「ブルブル」、「ベチン」と震える細かな音まで、ソリッドに描写される。
これだけ肉厚な中低域が出ているにも関わらず、中高域はそこに埋もれず、音の輪郭もシャープに描写される。この“低音の迫力と解像度の両立”は、まさに振動板が激しく振幅した時でも歪みが少ない、フリーエッジのバイオセルロース・ドライバーの効果だろう。
音が広がる空間もかなり広い。先ほど、「カナル型は一般的に開放感が少ない、閉塞的な音」と傾向を説明したが、ぶっちゃけAH-C840NCWには当てはまらない。カナル型である事を忘れさせる、ボーカルやピアノの余韻が気持ちよく広がっていく描写は、チューニングした山内氏が追求する“ビビッド & スペーシャス”を感じさせるサウンドだ。
低重心で安定感のあるサウンドでありながら、高域の抜けも良いので、再生する音楽ジャンルを選ばない。最高に気持ち良いのがフュージョンの「フォープレイ/Foreplay」。「ズズーン」と、地底から響いてくるようなベースの低音に体をまかせ、肉厚な中低域に体をマッサージされているかのような聴き心地。温かな音の波に身を任せて、目を閉じたくなる気持ち良さだ。
AH-C500Wが目指した世界
デノンにとっては初のオープン型となるAH-C500Wだが、イヤーピースを使わずに快適な装着ができる形状を実現するため、ミリ単位で筐体を削り、理想的な形状を追求するなど試行錯誤を繰り返したそうだ。
実際に装着してみると、耳穴手前の空間にスポッとハマる感覚で安定している。首を振ったり、かしげたりしても耳から落下しない。歩いたり小走りしても大丈夫だ。階段を駆け上るような事をしなければ、そう簡単には落ちない安心感がある。
ただ、耳の形状には個人差があるため、私よりも落下しやすいという人はいるだろう。可能であれば購入前に、店舗や試聴イベントなどで試着するのが安心だ。
音楽を流していない時の外音の聞こえ方は、「音量は小さくなるが、ほぼ外の音がそのまま聞こえる」と言って良い。駅のアナウンスや、隣の人に話しかけられる、玄関のチャイムが鳴るといった音にも容易に気がつく。ただ、聞こえる外音自体は小さくなるので、作業に集中するためのイヤフォンとしても効果はあるだろう。
「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生すると、思わず「おおっ!」と声が漏れる。オープン型で今まで聞いたことがないレベルの、しっかりとしたベースの低音が耳に入ってきたからだ。
さすがに、地を這うような「ズシン」という低音は無理だが、「グォン」と重さのある中低域がしっかり聞こえる。そのため、音楽全体で見た時のバランスが非常に良い。オープン型でありがちな、高域だけが耳に入る、スカスカしたハイ上がりな音ではない。音楽がちゃんと楽しめる音が出ている。これは感動だ。
もう1つ、気持ちが良いのは高域の描写。「月とてもなく」では、ボーカルやピアノの響きが、左奥の空間へと広がっていくのだが、オープン型のAH-C500Wで聴くと、広がっていく響きが、イヤフォンの外の空間にも広がり、溶け合って消えていくように聞こえるのだ。
開放感が凄いので、“イヤフォンを耳に着けている”という事を忘れてしまう。まるで、自分が映画の主人公になり、映画の世界でどこからともなくBGMが流れてきたような……そんな気分になる。
散歩しながら「くるり/California coconuts」を聴いたのだが、まったりとした曲の雰囲気が、暖かくなってきた外の世界の穏やかさと溶け合い、とにかく気持ちが良い。気持ちが良すぎて何度もリピート再生した結果、かなり遠くまで歩いてしまった。
この気持ちよさの源泉は何だろうかと考えたのだが、開放的なだけでなく、やはり低音がしっかり鳴るという点が大きいだろう。テンポを刻むベースのラインが、音楽を下支えしてくれるので、安心してビートやグルーヴに身をまかせられる音になっている。
また、ダイナミック型ユニット×1基というシンプルな構成であるため、低域から高域まで音色や解像感が変わらないメリットもある。人の声やアコースティックな楽器が、生っぽく描写され、リアリティがある。
AH-C840NCWの部分でも書いたが、AH-C500Wの解像感・分解能の高さも特筆すべきレベル。「米津玄師/Plazma」冒頭の、乱れ飛ぶSEやコーラスが、開放的に広がり、空中の様々な場所に定位する。まるで音の妖精が、頭のまわりを舞い踊っているようだ。
その音像から発せられた音は、空間へ広がり、外の空間へと融合していく。部屋の中で聴いていると、イヤフォンではなく、スピーカーから出た音を聴いているような気分にもなってくる。
もう1つ面白いのは、“ボリュームの値で、聴こえ方が変わる”事だ。
外の音が耳に入るイヤフォンなので、音楽のボリューム値が半分以下であると、外の音がメインで耳に入ってくる。つまり、車の音や人の話し声などがしっかり聞き取れつつ、その背後に薄くBGMのように音楽が流れている……という聴こえ方だ。
しかし、そこからボリュームを上げていくと、音楽がメインになり、「いい曲だな」とか「じっくり聴こう」という気分になる。その時でも、薄く、外の音は耳に入っている。それからさにボリュームを上げると、低音もよりパワフルになり、外の音は気にならなくなり、「この曲は最高だぜ!」という気持ちがメインになっていく。
まるで、“外の音”と“音楽”という2系統の入力を、ミキサーでコントロールしているような感覚だ。つまり「音楽は薄く流しつつ、作業をメインに頑張ろう」という「ながら聴き」姿勢と、「外のことはどうでもいいから、音楽に没頭しよう」という「本気聴き」モードを、ボリューム一つでリニアに調整できる。この便利さが、AH-C500Wの大きな魅力と言っていい。
映画や動画を鑑賞する時のイヤフォンとしても、かなり良い。
最近ハマっている「シャングリラフロンティア」というアニメをスマホで鑑賞しながら、AH-C500Wを使ったが、壮大なバトルのBGMが遠くに広がり、それよりも近い位置に主人公のサンラクら、登場人物たちの声が聴こえる。
アニメ世界のスケールを、さらに広げてくれるような開放的なサウンドは、さながら“ホームシアターイヤフォン”と言ってもいいレベル。巨大モンスターと戦って建物が崩れる轟音も、低音がしっかり出るAH-C500Wなので、迫力たっぷり描写してくれる。これはオススメの使い方だ。
同じドライバーを採用しながら、違う世界を見せてくれる2モデル
結論として、AH-C840NCWは“迫力と解像度を兼ね備えた高音質イヤフォン”であり、それをより味わうために“高いANC性能も備え、音楽に没頭できる”製品に仕上がっている。この音とANC性能で、実売19,000円前後という価格は、かなりコストパフォーマンスが高い。
音色もナチュラル。カナル型ながら、閉塞感も少なめなので、多くの人にオススメできる。新たな定番TWSの登場と言っても、良いだろう。
そんなAH-C840NCWの“オープンバージョン”と呼べるAH-C500Wは、“ながら聴きできるのに低音もしっかり出る”イヤフォンとして、稀有な存在と言える。ながら聴きの便利さを使いつつ、時には音楽をじっくり聴きたい……という人に、AH-C500Wはオススメだ。
また、屋外を歩きながら、開放的なサウンドで、低音もしっかり出る本格リスニングが可能なのは、AH-C500Wならではの魅力と言える。個人的にも、この気持ちよさだけでAH-C500Wを選ぶのもアリだと感じる。イヤフォンの新たな魅力に気づかせてくれる……そんな新しさを感じる意欲作だ。