日沼諭史の体当たりばったり!

家よ、丸ごとサウンドに包まれろ! パナソニックのAllPlay対応スピーカーを試す

 僕はとっても悲しい。2014年に商用サービスが開始し、2015年に機能強化して国内メーカーからも採用製品が登場し始めた規格「AllPlay」について、2016年になった今も、少なくとも日本では対応製品が劇的に増えることなく、おそらくほとんど注目もされていないからだ。

パナソニックのAllPlay対応機器3台をまとめて使ってみた

 AllPlayってなんぞや、と思う人もきっと多いことだろう。AllPlayは、Snapdragonをはじめとするモバイルチップセットで有名なクアルコムが推進するオーディオ伝送のためのプラットフォームで、要するに、この規格に対応していれば、メーカーや機種にかかわらず、音楽のストリーミング再生におけるインターフェースに互換性を持たせることができるのだ。

 それだけ聞くと「DLNAと似たようなものか」と感じるかもしれない。たしかに似ている部分もあるけれど、肝となるのは別のところ。ユーザー視点で簡単に説明すると、例えばAndroid端末やiOS端末からAllPlay対応機器を操作して音楽を再生しようとした時に、複数の端末から同時に複数の再生機器に接続し、どの音源をどの機器で再生するかを動的に選択できる、という点で、DLNAとは位置付けからして大きく異なる。Wi-Fiや有線LAN経由で制御、データ転送することから、遅延が少なく高音質なのも特徴だ。

 2015年にクアルコムがこのAllPlayを本格展開し始めると聞いた時、僕はすごくわくわくした。なぜなら、低遅延でかつ複数の機器を同時制御できるメリットを活かして、マルチチャンネルの再生も可能という話だったからだ。つまり、ワイヤレスサラウンドシステムの構築が容易に可能になるのではないか、と期待していた。

 ところが、である。そもそもAllPlayに対応するサウンドシステム自体がなかなか出てこない。国内メーカーで探すと、対応製品を販売しているのは日立とパナソニックの2社のみ。しかも日立は、正確にはHitachi Americaが取り扱うSmart Wi-Fi Speaker「W50/W100/W200」のみで、これらは国内では販売されていない。そのため、実質的に国内で入手できるAllPlay対応製品はパナソニック製のみとなる。

 そんなわけで、'15年からAllPlay対応製品を発売しているパナソニックだが、2016年にも新製品が登場。それが、「コンパクトステレオシステム SC-RS75」(実売52,800円前後)と「ワイヤレススピーカーシステム SC-ALL05」(実売27,000円前後)だ。

SC-RS75とSC-ALL05

 前置きがずいぶん長くなってしまったが、AllPlayの認知度がいまいち上がらないなか、いわば孤軍奮闘するパナソニックの2製品がどんな風に使えるのか、我が家に3台導入して試してみたのである。

CDプレーヤーにもなるハイレゾ対応「SC-RS75」とシンプルな「SC-ALL05」

 まずコンパクトステレオシステム「SC-RS75」の方から簡単に紹介すると、ワイドFM対応のFM/AMラジオ受信機能とCDプレーヤー機能を搭載する、ネットワーク対応のステレオスピーカーだ。実用最大出力は20W×2で、コンパクトな筐体に、低音をしっかりカバーする「ツイステッドポート」や、竹繊維を配合してクリアな音を実現するというフルレンジスピーカー、50kHzまでの高音域に対応するツイータが収められている。

コンパクトステレオシステム SC-RS75
上面手前にあるタッチ式のボタン。お気に入りボタンは、CD録音したデータの選択やラジオのプリセット選択などに使える

 50kHzまで出力することから分かるように、SC-RS75はハイレゾに対応する。CDプレーヤー部は音楽CD(CD-DA)だけでなく、CD-Rなどに書き込んだMP3ファイルの再生が可能。ユニークなのは、CD取り込み機能を備え、音楽を再生しながら内蔵の4GBストレージにリッピングし、その後は本体の5つの「お気に入り」ボタンを押すことでストレージ内の音楽を再生できる。いわば5枚の“CDジュークボックス“機能を搭載しているのだ。

 また、前面のUSBポートにUSBメモリを差し込むことで、メモリ内の音楽を再生可能。さらにBluetoothスピーカーとしても利用できる。

正面にはUSBポートがあり、USBメモリなどを差し込んで楽曲再生できる。ヘッドフォン出力も用意
CDプレーヤー機能を搭載。WAV形式でCD 5枚分、または複数枚からなるアルバムではMP3形式で5アルバム分をリッピングして内蔵ストレージに保存しておける。容量は4GB
背面にはEthernetとFM/AMラジオアンテナ接続端子。左右に見えるのがツイステッドポートの出口

 もう一方のワイヤレススピーカーシステム「SC-ALL05」は、Bluetoothスピーカーにもなるシンプルなネットワーク対応ステレオスピーカーだ。直径6.5cmのスピーカー2つと、前向きと後ろ向きにそれぞれ1つずつ低音域を増幅する「パッシブラジエーター」を内蔵している。SC-RS75と比べて機能は少ないが、外部電源だけでなく内蔵バッテリーでの動作も可能となっている。本体はIPX5/7準拠の防水性能を備えて、キッチンや浴室などの水がかかる場所でも使えるなど、置き場所の自由度が高いのがポイントだ。

ワイヤレススピーカーシステム SC-ALL05
全ての操作系統は上面にあるタッチ式のボタンにまとめられている。こちらのお気に入りボタンの数字は、「AllPlay Radio」というインターネットラジオアプリの放送局のショートカットとして使える
背面には防水カバー
内部には有線LANポートとACアダプタ端子。水回りで使う時はしっかりカバーしておく必要がある

 この2つのオーディオ機器を使いこなす際に軸となるツールが、Android/iOS端末向けのアプリ「Panasonic Music Streaming」。LANに接続するための初期設定に加え、端末内の音楽ファイルを指定のスピーカーでストリーミング再生するミュージックプレーヤー機能、ボリューム調整機能などがあり、SC-RS75においてはラジオ、CDなどのソース選択も行なえる。

Panasonic Music Streamingでの初期のAllPlay対応機器登録設定
端末内の楽曲を、ボリューム調整しながら再生中

 なお、規格で仕様が決まっているAllPlay対応機器ということもあり、後述の“グループ化”以外の多くの機能は他のAllPlay製品のアプリでも同様にコントロールできた。例えばAllPlay対応スピーカー「Monster SoundStage」向けのアプリでもSC-RS75とSC-ALL05を制御できる。このあたりのインターフェースは、Google ChromecastやChromecast Audioに扱いが近いと言えるだろう。

「Monster SoundStage」用アプリでも制御できる

どれか1台、ではなく、複数台をぜひ組み合わせたい

 今回は、筆者の自宅にSC-RS75を1台と、SC-ALL05を2台導入してみたわけだが、結論から言ってしまうと、どれか1台を選ぶという議論は、これらAllPlay対応製品においてはあまり意味がないように思われた。なぜなら、1台だけ導入するのであれば、他のDLNA対応オーディオシステムやBluetoothスピーカーとほとんど役割としては変わらないからだ。なので、この2製品を選択するに当たっては、SC-ALL05を2台以上導入するか、あるいはSC-RS75と(複数の)SC-ALL05を導入するか、が前提になるのではないかと思う。

リビングに設置したSC-RS75
和室に置いてみたSC-ALL05

 なぜ複数台をおすすめするのか。その最大の理由は、AllPlayならではのグループ化機能にある。AllPlayでは、冒頭で書いたように複数の対応機器や出力先をコントロールできるようになっている。例えば、A、B、Cという3個のAllPlay対応スピーカーがあった時、Android端末内の楽曲をA、B、C全てのスピーカーから流したり、後でiPhoneからCのスピーカーだけ横取りしてNASに保管している楽曲を再生したり、といったことができる。もしくは、Android端末内に保存している楽曲をAから、Spotifyなどの定額音楽配信サービスの音をBから、iPhone内の楽曲をCから、という再生の仕方も可能だ。

 また、SC-ALL05の場合はステレオ再生だけでなく、LチャンネルまたはRチャンネルに割り振ることもできるので、1つ目のSC-ALL05をLチャンネルに、2つ目のSC-ALL05をRチャンネルに設定し、この2つのスピーカーをグループ化すれば、自在にレイアウトできるステレオシステムとなる。内蔵バッテリでも動作するから、屋外イベントでのBGM再生など電源のない場所で音場を広く取りながら使えるし、店舗などではスピーカーケーブルやLANケーブル配線の手間がなく、店内の隅から隅に配置できるというメリットもあるだろう。

各スピーカーを単体で、ステレオのまま使っている状態
SC-ALL05はLチャンネルやRチャンネルのみの音声出力にすることが可能
2台あるSC-ALL05をLとRに分けてみたところ
アイコンをドラッグすると……
簡単に2つのスピーカーをグループ化できる

 家庭では、全てのスピーカーをステレオ再生するようにして各部屋に置き、グループ化して同じ楽曲を再生させると、家の中を移動したとしても、常に同じ音楽を聞くことができるのが面白い。耳で聞く限り、スピーカー間での遅延も全く感じない。そこまでして音楽を聞きたいか、という疑問はもっともだが、しかし実際にこれを体験してみると、従来のように1箇所のオーディオシステムで再生していて、そこから離れた時の「聞きたい音楽が聞こえない」というストレスから完璧に解放されることがよく分かる。

トイレにもSC-ALL05
浴室にあるのもけっこう似合う
キッチンでもSC-ALL05

 音楽もそうだが、最もその効果が分かりやすいのはラジオかもしれない。普段からBGM的にラジオを聞いている主婦・主夫や自営業の方も少なくないと思うが、当然ながらラジオを流している部屋でしかその音を聞くことができず、部屋から出れば聞こえなくなる。好きな音楽や面白いトークはもちろん、合間に流れる交通情報やニュースを聞きたい時は、その部屋から離れるわけにはいかない。基本的には、常に聞いていたいならラジオを持ち運ぶか、複数のラジオをあちこちに置いておくしかないのだ(今はラジオ放送を振り返って聞けるradiko.jpのタイムフリー聴取機能もあるわけだが)。

 SC-RS75と(複数の)SC-ALL05があれば、そんな問題はすべてきれいに解決する。SC-RS75のFM/AMラジオ機能で聞いている内容は、グループ化した他のSC-ALL05などのスピーカーにも同期して再生できるのだ。SC-RS75ではノイズが入らないようにラジオアンテナを正しくセッティングしておく必要があるが、他のグループ化したスピーカーとの間はWi-FiやLANで通信するので、アンテナを気にする必要はない。Wi-Fiの電波強度の問題はあるけれど、筆者宅で3台とも5GHz帯のWi-Fi接続で使用したところでは、1階から2階まで、どの部屋に置いても音が途切れたりするようなことはなかった。

 ちなみにSC-RS75は、ラジオ放送だけでなく、CDプレーヤーでの楽曲再生、USBメモリからの楽曲再生、Bluetoothでの楽曲再生についても、全てグループ化したAllPlay対応スピーカーで同期再生可能となっている。

 したがって、今回のようにSC-ALL05と組み合わせる際には、SC-RS75をセンターコンソールのようにして音源の出し元とし、SC-ALL05をサウンドの出力先にするという使い方もできるだろう。家のあちこちにスピーカーを配置しておけば、まさに家を丸ごと音楽で包むかのようなサウンド環境に仕立てることができるのだ。SC-RS75から出る音が邪魔になるようなら、本体のボタンやアプリ上で個別に音量調整もできるので、ミュート状態にしてSC-ALL05だけで音を鳴らすのも良いだろう。

SC-RS75でのソース選択。CD、ラジオ、USBメモリなどからの再生を全て他のグループ化したAllPlay対応スピーカーから出力できる
ラジオの放送局をプリセットしたところ

使い勝手の良いパナソニックのアプリ。グループ化時の対応音源拡大が課題か

 先述の通り、どのAllPlay対応アプリもSC-RS75とSC-ALL05を制御できるが、やはり純正の「Panasonic Music Streaming」アプリは使い勝手が良い、という点は付け加えておきたい。基本的には純正アプリを利用するべきだ。

 特にスピーカーシステムのグループ化とグループ解除がドラッグ&ドロップ操作で直感的に行なえ、個別の音量調整だけでなく全体の同時音量調整が可能なのもポイントが高い。1点だけ気になるところがあるとすれば、NASなどのネットワーク機器に保管しているCD音質以上のファイル(ハイレゾ音源を含む)を、グループ化したスピーカーシステムから再生できないことだ。

3つのスピーカーを全てグループ化することも可能
音量はスピーカーごとに調整でき、最下部のマスターボリュームで全体の音量をスライドさせられる

 スマートフォン内のハイレゾ音源をグループ化したスピーカーから出力することはできるが、NASから選んだハイレゾ音源は、選択時にデータが大きすぎる旨の警告が表示され、再生できない。しかし、例えばAllPlay対応アプリの「BubbleUPnP」では、NAS上のハイレゾ音源もグループ化したスピーカーで問題なく再生できる。Panasonic Music Streamingであえて独自に制限を加えていると考えられるが、使い勝手の面からも、可能な限り再生できるデータの範囲は広げてほしいところではある。

NAS上のハイレゾ音源やCD音質の音源をグループ化したスピーカーから出力しようとすると、警告が表示され再生できない
「BubbleUPnP」なら問題なくNAS上のハイレゾ音源も再生できた

AllPlayが新しいリスニングスタイルを実現することは間違いないが……

 AllPlay対応のSC-RS75とSC-ALL05は、単体だとその真価がわかりにくい。しかし、複数台を組み合わせることで、これまでにない音楽の楽しみ方を追求できることは間違いない。一般家庭で複数台導入できるか、というと、SC-RS75が実売5万円前後、SC-ALL05が実売2.5万円前後で、セットにすると7万円程度の出費にはなるので、手に取りやすい価格ではないかもしれない。SC-ALL05が2台でも5万円程度だ。

 AllPlay“だけ”を考えると高価かもしれないが、SC-RS75は、CDジュークボックスやハイレゾ/ネットワーク対応オーディオシステムとしての魅力もあるし、SC-ALL05もユニークな防水ワイヤレススピーカーとして扱えるので、AllPlayだけ、が目的で選ぶものでは無いのかもしれない。ただ、ユーザー体験という意味で、AllPlayの「家全体がサウンドに包まれる」ような感覚、をできるだけ多くの人に味わって欲しいとも思う。

 定額制音楽配信サービスが出そろい、音楽との付き合い方も変わりつつあるように思うが、定額で聞き放題というのは、考え方によっては24時間音楽を再生しっぱなしにしておける、ということでもある。例えば「Spotify」と「レコチョク BEST」はきっちりAllPlayにも対応していて、気軽にSC-RS75やSC-ALL05から音楽を流すことができる。実際に筆者宅でも、BGMとしてあまり耳障りにならないアンビエントミュージックをSpotifyで常時再生し、リラクゼーションショップのような雰囲気を満喫していたりもする。

SpotifyではAllPlay対応機器を指定して出力できる。ただし、この機能が使えるのはプレミアムユーザーのみ
Spotify再生中は本体の液晶ディスプレイにも「SPOTIFY」と表示される

 AllPlayがこれから広がっていくのかは、まだわからないが、鍵を握っている機器があるとすれば、テレビではないだろうか。テレビ音声を離れた場所でも出力できれば手元スピーカーになるわけだし、SC-ALL05のような配置の自由度の高いスピーカーと組み合わせることで音質を向上させたり、サラウンド環境を作りやすくなることも考えられる。もしくはスマートフォンやNASに保管している楽曲をリビングのテレビから流すことで、テレビをオーディオシステム代わりに活用することも可能だろう。映像との同期をどうするかという問題はありそうだけれど……。

 いろいろと面白い応用方法が思いつくだけに、AllPlayにはもう少し注目されてほしいし、パナソニックだけでなく他社の様々なAV機器で採用されることを願っている。DLNAやBluetoothではなしえない、もっと日常に寄り添うようなリスニングスタイルを、AllPlayで実現できているのだから。

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SC-RS75SC-ALL05

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。