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4K時代到来? 市場が立ち上がった「4Kテレビ」のこれから

'14年は放送など4Kコンテンツ拡充へ

 2013年のテレビ市場で、大きな注目を集めたキーワードは、なんといっても「4K」だ。

これまで特別なREGZA Xシリーズとして4Kを展開していた東芝は主力シリーズといえる“Z”の上位機としてZ8Xシリーズを展開、ソニーは6月にBRAVIA X9200A、10月にX8500Aシリーズと2ライン展開。シャープは、夏にAQUOSブランドのAQUOS UD1シリーズを投入するなど、50〜70型のテレビの主力シリーズの一部として4Kモデルがラインナップされた。これは今夏までの動きだ。

 そして、年末商戦に向けて、10月にはパナソニックがVIERA「TH-L65WT600」を発売、11月にはLGエレクトロニクスがLA9700シリーズを発売し、三菱電機を除く大手テレビメーカーが4Kテレビで出揃った格好だ。

 今夏から年末に向けて盛り上がりを見せた4Kテレビ。それだけが要因でないものの、地上デジタル完全移行のあとに大きく落ち込んだテレビ市場も回復の兆しを見せており、GfKの予測では来年2014年は前年比でプラスになるとしている。

 とはいえ、'13年の4Kテレビ販売台数は3万台程度と見込まれ、台数シェアではまだ微々たるもの。高価格帯の商品であることや、50型以下の製品がないことなど、本格普及に至るにはまだハードルはある。4Kはこれから普及するのか? 現状や課題、トピックなどをまとめた。

BRAVIA KD-65X9200A
REGZA 58Z8X
AQUOS UD1。LC-70UD1(左)、LC-60UD1(右)

4Kテレビの今日における意義は「大画面テレビの体験向上」

 「4K」というキーワードを簡単におさらいすると、4K/2Kとも呼ばれ、約4,000×2,000ドットの解像度をもつディスプレイや映像方式の略称だ。テレビの放送はフルHDの1,920×1,080ドット、もしくは1,440×1,080ドットだが、4K対応テレビにおいては、フルHD(1,920×1,080ドット)の4倍となる3,840×2,160ドットの解像度をもつものが主流だ。アスペクト比がフルHDと同じ16:9であること、解像度もフルHDのちょうど4倍となるため、スケーリングなどの処理がシンプルになることから、4K対応テレビといえば、この解像度になる。

BRAVIA「KD-55X8500A」
4K VIERA「TH-L65WT600」
LGエレクトロニクスジャパン「65LA9700」

 この辺りの状況については7月にも当時の状況をまとめた記事を掲載しているので、参照してほしい。また、AV Watchを熱心にチェックして頂いている方には、改めて説明するまでもないだろう。

 注意が必要なのは、現時点の4Kテレビは、「55型以上の大型テレビのトレンド」であること。下表の通り、各社の4K対応テレビは55型から84型の大画面モデルだ。

ソニー 東芝 シャープ パナソニック LG
シリーズ BRAVIA X9200A
X8500A
X9000
REGZA Z8X AQUOS UD1
ICC PURIOS
VIERA WT600 LA9700
サイズ 84型:KD-84X9000
65型:KD-65X9200A/8500A
55型:KD-55X9200A/X8500A
84型:84Z8X
65型:65Z8X
58型:58Z8X
70型:LC-70UD1
60型:LC-60UD1、LC-60HQ10
65型:TH-L65WT600 65型:65LA9700
55型:55LA9700
解像度 3,840×2,160ドット
映像エンジン 4K X-Reality PRO シネマ4Kシステム AQUOS 4K-Master
Engine PRO
(AQUOS UD1)
ICC
(PUIRIOS)
4Kファイン
リマスターエンジン
Tru-ULTRA
HDエンジン
HDMI 2.0 ○(AQUOS)
-(PURIOS)

(予定)
特徴 トリルミナス
ディスプレイ(65/55型)
大型サイドスピーカー
(X9200A)
タイムシフトマシン
TimeOn
4Kモスアイパネル
THX 4Kディスプレイ認定
光クリエーション技術
Display Port 1.2a
スマート連携
4:4:4対応
NANO FULL LED
デュアルプレイ
スライディングスピーカー

 これには理由がある。特に国内市場において、テレビの販売が落ち込む中、台数ベースでも金額ベースでも伸びている唯一の領域が、50型を超える「大画面」。その大画面市場における高付加価値化を狙ったものが、いまの4Kテレビだ。

 まず、大型製品のほうが4Kのような高付加価値製品を提案しやすいというのはもとより、実用上でも、50型を超え、大画面になればなるほど「(フルHDだと)画素が見えやすい」という問題がでてくる。「大画面の迫力体験」をアピールする一方で、画素が見えてしまう=画質に物足りなさが残る。4Kによる高精細化により、この問題を解決し、画質を含めた大型モデルの付加価値を向上するのが4K化の狙いだ。

 実際国内市場において、50型以上の薄型テレビに対する4Kテレビの割合は、2013年11月に数量ベースで12%、金額ベースで27%(GfK調べ)となり、数量・金額とも過去最大となったという。

 一方で、4Kテレビに懐疑的な声もある。代表的なものとしては、「4Kのコンテンツがほとんどない」、「フルHDで十分」などだ。確かに、4Kのコンテンツについては、放送やパッケージメディア側の対応が整っていない。現状はフルHDのBDや放送の4Kアップコンバートが前提だ。そのため、現在販売されている4Kテレビは、「4K解像度のコンテンツを見る」ことは当然だが、「フルHDのコンテンツを大画面で高画質に楽しむ」ことを重視している。

 各社は4Kアップコンバート技術の強化や、4K対応のLSI開発に力を入れている。地デジの高画質化に力を注いだ東芝REGZA Z8Xは「地デジを大画面で楽しむ」ことに徹底的にこだわった製品であり、ソニーのBRAVIA X9200A/X8500Aは、ソニー・ピクチャーズと協力しBDビデオで「Mastered in 4K」に対応。(フルHDの)BDビデオにテレビ側で4K相当の情報量を最大限復元できるような工夫を施すなど、各社がフルHDの高度な4K化に取り組んでいる。

Mastered in 4K

 デジタルカメラとの連携や、大画面を活かしたスマートテレビなども訴求されているが、4Kコンテンツの本格化が期待されるのは2014年以降と見込まれる。

4K放送で'14年以降の4Kコンテンツ制作が本格化?

 4Kテレビに懐疑的な意見で多いのが、「4Kコンテンツが少ない」という点。

 確かに、現時点では、4Kネイティブのコンテンツが少ないのは事実だ。ビデオカメラで撮影した動画や、YouTube動画などはあるが、映画やテレビ番組の配信サービスは殆ど無い。ソニーが米国でVideo Unlimitedによる4Kの映画配信をスタートしているが、日本では始まっていない。

 映画製作においては、ハリウッド大作を中心に4K化は進んでおり、上映環境についても、国内でも多くの劇場が4Kに対応。カメラから制作フローまで、かなり4K対応は進んできている。ただし、それは劇場で上映する「映画」の話。4Kで撮影した映画をそのまま記録して配布する一般の消費者向けパッケージメディアは存在せず、Blu-ray Discの4K規格は検討段階。また、インターネットを使った配信なども実験段階だ。

 だが、4K対応の準備は2014年に向けて確実に進んでいる。特に日本国内で大きいのが、2014年の4K放送のスタートという目標だ。総務省らが主導し、6月にテレビメーカーや放送/通信事業者などで構成される次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が設立され、「2014年に4K放送を開始し、2020年には4K/8Kを多くの視聴者が楽しめるようにする」というロードマップも策定された。そのため、堰を切ったようにTV局などが4K制作に参入している

 それらの成果が実を結ぶのは'14年以降だが、4K制作が映画だけでなく放送などに普及していくことで、裾野は確実に広がっていくだろう。映画は4K/24p(24フレーム毎秒)であったものが、放送/テレビ制作においては4K/60pになることも変化だ。

FDR-AX1

 ユーザーが撮影する「プライベートコンテンツ」については、ビデオカメラも4K対応のハンディカム「FDR-AX1」をソニーから発売済みで、'14年にはその流れは更に加速するだろう。また、パナソニックもミラーレス一眼デジタルカメラでの'14年の4K対応を予告しているなど、4K対応を積極化するのは間違いない。むしろ心もとないのは4Kのビデオ編集環境。今のところ対応ソフトウェアが少なく、PCのパフォーマンス不足から編集やレンダリングに時間がかかるなどの課題は多い。

 ただし、PCなどで使える4Kディスプレイは、10万円程度のものが出てきており、注目を集めている。こうした周辺の状況が整備されることで、「4K」というフォーマット自体を後押しする効果は大いに期待できる。こうしたことからも2014年の4Kコンテンツ拡大は期待できそうだ。

「8K/4K放送待ち」は誤り。4K/8K放送は地デジを置き換えない

 4K放送のスタートが決まったことで、よく聞こえてくるのが「テレビを買うのは4K/8K放送が始まってから」という意見。しかし、この意見については、4K/8K放送の認識が誤っているといえる。

 というのも、「地デジは当面4K/8Kにならない」からだ。

 総務省や、放送業界、機器メーカーが協力し、「2014年に4K放送を開始し、2020年には4K/8Kを多くの視聴者が楽しめるようにする」というロードマップが決まった。しかし、これらの放送は衛星やIPTVやCATVといった伝送路を使うことを前提としているのだ。

 これから始まる4K/8K放送は、地デジのようなテレビの基本的な要素というよりは、BS/CSやIPTVのような付加的な位置づけといえる。

 官民の4K/8K放送推進をまとめた総務省の「放送サービスの高度化に関する検討会」においても、「国策として推進した地デジ移行が終わった直後に、消費者にテレビ買い替えを促すことはできない」との意見が相次いだ。そのため、とりまとめには「高精細・高機能な放送サービスを求めない者に対しては、機器の買い換えなどの負担を強いることは避ける」との文言が入れられた。つまり、「地デジ放送は当面大きく変わることはない」=「地デジは当面4K/8Kにならない」ということだ。

引用

地上放送についてはデジタル化が完了し、現行ハイビジョン方式(2K)の受信機が1億台に達し、衛星放送への加入もBS、CS合わせて2,000万件に達する状況となっている。こうした状況の中で、視聴者の混乱の回避と、新たなニーズの取り込みの両立を図りつつ円滑な普及を促進していくことが必要である。地デジ対応等の過程で既に2K対応のデジタル受信機やアンテナを購入した視聴者であって、新たに高精細・高機能な放送サービスを求めない者に対しては、そうした機器の買い換えなどの負担を強いることは避ける必要がある一方、高精細・高機能な放送サービスや、対応受信機を求める視聴者層のニーズに対しては、積極的に対応し、新たな市場の開拓に努めていくことが必要である。

・出典:放送サービスの高度化に関する検討会 検討結果 とりまとめ(P1)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000230953.pdf

NexTV-Fによる4Kリアルタイムエンコード/伝送デモ。4Kカメラの映像をリアルタイムでHEVCに変換して伝送。デコーダを経由してテレビに表示

 2014年にスタート予定の4K放送は、映像は最新技術のHEVC/H.265を採用し、解像度は3,840×2,160ドット/60pで、色信号は現在の放送と同じ4:2:0になる見込みだ。これを外付けのチューナユニットをHDMI(HDMI 2.0)で接続して、視聴する形になる。チューナユニットがどういう形で提供されるか、録画機能が付くのかなどについても現時点で確定した情報は無い。

 4K/8K放送はこれから始まるが、「今の地デジをすぐに置き換えるものではない」ということは覚えておいてほしい。

 そのため、ニュースやバラエティなど、通常のテレビ放送は、しばらくHDが中心となり、当面の4Kは、大きなスポーツイベントや映画など特別なコンテンツのためのものとなるだろう。とはいえ、放送が開始されることで、4Kネイティブコンテンツが増えてくるのは間違いないはずだ。

4Kにより多様化が見込まれる「テレビ」

 余談だが、JEITA(電子情報技術産業協会)では、2012年12月に4Kテレビについての呼称や定義についてのガイドラインを策定している。3,840×2,160ドット以上の解像度を持つテレビを「4K対応テレビ」と定義。4K放送(現時点では開始していない)に対応したテレビを「4Kテレビ」と呼ぶよう求めている

 現在発売されているのはJEITAの定義に則ると「4K対応テレビ」だ。'14年以降の4Kテレビがチューナを内蔵するかはまだわからないが、地デジのように「テレビに当たり前に入っている機能」とはならない可能性は高い。

 一方、4Kの使い道として、「放送」に縛られないのが最近の4Kテレビの特徴といえる。

4K VIERAはDisplayPort 1.2a搭載による4K/60pゲームプレイを訴求

 例えばパナソニックの「TH-L65WT600」は、4K/60p入力対応のHDMI 2.0端子を備えるほか、DisplayPort 1.2aを装備。PCゲームなどの4K/60p入力が行なえることなどをアピールしている。キャッチコピーでも「テレビを超えた新しい4K」として、映画、ゲーム、写真、ネットサーフィンなど「4Kの可能性をテレビだけで終わらせるな」とアピールし、「テレビ」が単なる放送受像機にとどまらない多目的ディスプレイであるという視点を鮮明にしている。

 LGの「LA9700」では、4K放送に採用予定の次世代映像方式「HEVC/H.265」のデコーダを内蔵している。対応サービスが具体的に決まっているわけではないのだが、外付けのデコーダを用意すること無く、テレビ一台で4K映像配信サービスなどによる4K映像を楽しめるようになる予定だ。

 また、従来のHDMI 1.4では、1本のケーブルで伝送できる映像信号は4Kの24fps/30fpsまでで、4K/60fpsの映像伝送が行なえなかった。しかし、9月にHDMI 2.0が発表され、多くの4K対応テレビがアップデートで、HDMI 2.0に対応した。こうした状況整備により、4K放送やディスプレイ応用の幅が広がったといえる。

 こうした例からも、4K対応チューナの搭載/非搭載は、それほど重要な問題とは思われない。むしろ、4Kという広大なキャンバスの上で、どのようなサービス像を描いていくか、様々な可能性を探っている段階といえる。4Kの普及で期待されるのは、高画質だけでなく、こうした「テレビ以外」の多目的ディスプレイとしての広がりだ。

サイズの多様化も? 2014年の普及拡大へ

東芝がCEATECに出展した40型の4K REGZA

 用途の多様化とともに、期待されているのが「画面サイズの小型化」だろう。AV Watchの4Kテレビの購入意向アンケートでも「低価格化」、「コンテンツ普及」の次に意見が多かったのが、「50型以下の画面サイズ」への期待だった。

 映画の迫力という意味では、50型以上の大画面でより魅力を発揮する4Kだが、薄型テレビの中級〜上級機で人気の高く、台数が出るのは40〜50型クラスだ。実際に東芝はCEATECで、40型や50型の4K試作機を披露し、マスターモニター的な用途提案なども行なった。2014年以降は、もう少し小さなサイズの製品が出てくる可能性は高い。

 各社のテレビ開発者に話を聞くと、40型未満では映像の迫力やコストなどの面から4K化は現実的でないとの声が多い。ただし、PCディスプレイでは、20型台で4Kの製品も登場し始めているし、また映像制作用のマスターモニターも20〜30型台だ。4Kの裾野が広がってくれば、こうした製品の民生向け展開なども行なわれるかもしれない。

 2013年は各社が4Kテレビに参入し、国内のテレビ市場で一定の地位を得ることとなった。4K放送を控え、さらなる拡大が見込まれる4Kテレビ。2014年はどのような広がりを見せるだろうか。

(臼田勤哉)