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デノン、上位機に迫る音質のUSB DAC搭載アンプ、SACD「1600シリーズ」
2016年9月28日 10:00
ディーアンドエムホールディングスは、デノンブランドのピュアオーディオ「1600シリーズ」として、SACDプレーヤー「DCD-1600NE」と、プリメインアンプ「PMA-1600NE」を11月上旬に発売する。価格はSACDが12万円、プリメインが15万円。カラーはどちらもプレミアムシルバー。
1600シリーズの音について、デノンのサウンドマネージャー・山内慎一氏は、「サウンドマネージャー就任以降、繊細さ、力強さ、大胆さといった要素を、“ビビッド”、“スペーシャス”というキーワードを定めて追求してきた。今回の1600シリーズは、それが軌道に乗ってきた仕上がりになっている」と、完成度の高さに自信を見せる。
また、2月から発売している2500シリーズを引き合いに出し、「2500は1つ上のグレードを狙ったモデル。(その技術を1600にも投入したことで)引っ張り上げられるように1600もワンクラス上の表現力を獲得している」という。
プリメインアンプ「PMA-1600NE」
USB DAC機能も搭載したプリメインアンプ。定格出力は70W×2ch(8Ω)、140W×2ch(4Ω)。全高調波歪率0.01%。
基本構造は従来モデルのPMA-1500REと同じだが、アンプの出力段に、微小領域から大電流領域までのリニアリティに優れ、大電流を流せるという「Advanced UHC-MOS FET」(UHC=Ultra High Current)を、シングルプッシュプルで搭載。他のアンプでは多数の素子を並列駆動して大電流を得る手法が多いが、その場合は素子の性能のバラツキによる音の濁りが問題となるため、あえて1ペアという最小単位の素子による増幅にこだわっている。
増幅回路はPMA-2500NEと同様に、ハイゲインパワーアンプによる一段構成。信号が通過する素子の数を減らすことで、純度の高いサウンドを実現するという。
電源回路ではトランスを大型化し、コアサイズと容量を大幅にアップさせ、電源供給の安定度を高めたという。
USB DAC部分は、「PMA-2500NEそのもの」とのこと。PCMが384kHz/32bitまで、DSDは11.2MHzまでサポート。DSDの伝送方式は、ASIO 2.0ドライバによるネイティブ再生と、DoP伝送での再生に対応。アシンクロナス伝送もサポートする。
PCから供給されるデータに混入するノイズをカットするデジタルアイソレータも搭載。ICチップ上に組み込まれたトランス・コイルを介して磁気によりデータ転送を行なうもので、入力側と出力側を電気的に絶縁。DACとデジタルオーディオ回路の信号ラインを絶縁する事で、DAC以降のアナログオーディオ回路に与える高周波ノイズの影響をカットしている。
デジタル入力用に、PCM 384kHz/32bitまでの信号に対応した、独自のデータ補間アルゴリズムによるアナログ波形再現技術の最新版「Advanced AL32 Processing Plus」も搭載。補間ポイントの前後に存在する多数のデータからあるべき点を導き出し、原音に近い理想的な補間処理を行なうというもので、デジタル録音時に失われたデータを復元できるという。ここで補間処理を行ない、後段のアンプブロックに信号が送り出される。
DACをマスターとしてクロック供給を行ない、デジタル回路を正確に同期させる「DACマスター・クロック・デザイン」も導入。マスタークロックをDACの直近に配置する事で、ジッタの発生を抑え、忠実な再生ができるという。クロックは44.1kHz系、48kHz系で個別に搭載。ジッタの発生を最小化している。
デジタル入力はUSB-Bに加え、同軸デジタル×1、光デジタル×2も装備する。
なお、デジタル専用トランスへの給電を断ち、デジタル入力回路の動作を完全に停止させる「アナログモード」も用意。前面にソースなどを表示するFLディスプレイを備えているが、その表示も消灯させる事ができる。
MM/MC対応のフォノイコライザーも搭載。フォノイコライザー、および入力回路、ボリュームコントロール回路、USB DAC回路、増幅回路、電源部、コントロール部がそれぞれ独立配置された6ブロック構成シャーシを採用。1.6mm厚の鋼板で構成するシャーシで、外部振動から信号回路を守り、各回路感の干渉も排除している。
ダイレクトメカニカル構造も採用。トランスやヒートシンクなど、重量物を直接インシュレータで支える思想。インシュレータには、高密度で高剛性なリブ入りタイプを使っている。
アナログ入力は、アナログRCA(アンバランス)×3、Phono(MM/MC)×1。出力は、アナログRCA(アンバランス:RECORDER)×1を搭載。IRコントロール入出力も備えている。
外形寸法は434×410×135mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は17.6kg。消費電力は295W。
SACDプレーヤー「DCD-1600NE」
型番としては「DCD-1500RE」の後継機となるが、前述の通り上位モデル「2500NE」や「SX11」の流れを継承した技術を多数投入したモデルとなる。
ディスクドライブは、DCD-SX11で採用したドライブ「Advanced S.V.H. Mechanism」をベースとしながら、このモデルに特化した専用の基板を新たに開発。上位モデルはアルミダイキャストトレーを使っているが、1600NEはザイロントレイのモールドメカを採用。トレイの排出メカ部のクオリティなどを向上させているという。
ピックアップの制御やデコードを担う回路を最短、最小化する事で、余分な電流やノイズの発生を抑制。メカを低重心化する事で、回転により内部から生じる振動を低減。外部からの振動にも強い構造になっている。
CDやSACDに加え、DVD-R/-RWやDVD+R/+RWに記録したDSDの5.6MHzファイルや、最大192kHz/24bitまでのPCMデータも再生可能。
「DACマスター・クロック・デザイン」も採用。マスタークロックをDACの直近に配置し、余分なジッタの発生を低減。クロック電源の根元には、高周波インピーダンス特性に特に優れた音質用導電性高分子コンデンサを配置。44.1kHz系、48kHz系、それぞれに個別のクロック発振器を搭載している。これらのクロック回路の構成や、使用パーツのグレードは2500NEと同等だとう。
デジタル録音時に失われたデータを復元するという、独自のデータ補間アルゴリズムによるアナログ波形再現技術の最新版「Advanced AL32 Processing Plus」も搭載する。
オーディオの電源基板の整流用平滑コンデンサは、DCD-SX1のブロックコンデンサをベースにした高品質コンデンサを採用。幾つも試作を行ない、サウンドマネージャーの山内氏からOKが出たものを採用しているという。
アナログ基板にも新規のコンデンサ投入。緑色のコンデンサで、「部品メーカーと一緒に作り上げたもの。塗装にもこだわりがあり、青や赤、黄色なども試したが、音質的にこの色に落ち着いた。スリーブの色だけでも音が変わる。また、メーカー名や型番などの印字でも、それに使う塗料が音を濁し、音が変化してしまう。そこで、必要最低限の、極性や容量などしか刻印していない。非常に協力してもらったメーカーさんの名前も、デノンの名前すら入っていない」(グローバル プロダクト ディベロップメント プロダクト エンジニアリングの出口昌利氏)と、音質を第一にしたパーツだという。
ディスクの回転や電源トランスの振動、スピーカーの音圧による空気振動などを防ぐために、振動抑制構造のダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクションを採用。振動体の電源トランスを脚部の間近に配置する事で、振動を直接グランドに逃し、周辺回路への不要な振動の伝搬を防いでいる。ドライブメカはシャーシ中央の低い位置に配置する事で、低重心化を図っている。
インシュレータは高密度で高剛性なリブ入りタイプを新たに開発。「従来モデルのインシュレータも悪くないものなのでそのまま新モデルでも採用しようかと考えたが、最終的にはアンプでも使っているような、より高密度なものを新たに作った」(出口氏)という。
出力端子は同軸デジタル、光デジタル、アナログRCA(アンバランス)を各1系統装備。IRコントロール入出力も備えている。付属のリモコンを用いて、PMA-1600NEなどのデノン製アンプも操作可能。ネットワークプレーヤーのDNP-2500NEやDNP-730REと接続すると、スマホアプリを使った操作にも対応できる。
外形寸法は434×329×135mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は8.2kg。消費電力は24W。
音を聴いてみる
スピーカーに、B&Wの「802 D3」を使ったデノンの試聴室で、「DCD-1600NE」と「PMA-1600NE」のサウンドを試聴した。
SACDとアンプを組み合わせた時と、アンプのPMA-1600NEとPCを接続し、USB DACを使って音を出した時で、共通する“1600シリーズ”の音は「ハイスピードで高分解能」という印象だ。
低域も含め、トランジェントが非常に良く、もたついたり不必要にボワッと膨らむ部分は一切ない。解像度の高さも相まって、切れ込むような、目の覚めるような鋭い再生音だ。
この傾向は、新たにサウンドマネージャーに就任した山内氏が手がけた2500シリーズと非常に良くにており、デノンの新時代を感じさせる音になっている。
2500シリーズとの違いとして、主に低域方向の音の厚みが2500シリーズのほうが分厚く、上位モデルらしい凄みがある。だが、1600シリーズが痩せたキツイ音というわけではない。あくまで両シリーズを比較した場合の違いであり、1600シリーズ単独では、ゆったりとした芳醇さも備え、質感も豊かに描写できる基本的な再生能力の高さが実感できる。逆に言えば、2500シリーズのハイスピードなサウンドの魅力を、価格を抑えた下位モデルでも楽しめるのが1600シリーズの特徴と言えるだろう。