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パイオニア高音質技術の集大成、サイバーナビ「Xシリーズ」。80周年モデルも
2018年4月18日 15:20
パイオニアは、高音質を徹底したサイバーナビ「Xシリーズ」を6月に発売する。7型液晶を備えた2DINサイズの「AVIC-CZ902XS」で、価格は248,000円。また、同社の創立80周年を記念し、特別仕様の付属品を同梱した80台限定モデル「AVIC-CZ902XS-80」も5月下旬に248,000円で発売する。
Xシリーズは、ノイズ環境が厳しいカーナビにおいても最上質の音を届けることを目的に始動した新プロジェクトにより誕生。コストを惜しまず、サイバーナビで長年培ったノウハウやテクノロジーを全て投入。MUSESブランドのオペアンプなど最高品位のパーツ採用に加え、独自の知見から電源周りの強化、音質に影響するノイズを徹底排除するための各部銅メッキパーツ、ビスまで使い分けるなど、試行と試聴を繰り返し、「パイオニアの叡智と技術力の集大成とも言えるカーナビ設計では前例のない高音質設計を実施した」という。
7型液晶を備え、地デジやDVD/CD、Bluetooth、USB、SDなどの再生に対応。ハイエンドカーオーディオの「カロッツェリアX」で培った音響技術や、ハイエンドホームオーディオ「TAD」より継承した技術開発思想を元に製品化された。
音楽再生では、約750万曲から、ストリーミングで気分や好み、ドライブ環境やシーンに合わせた楽曲をレコメンドして再生する機能「ミュージッククルーズチャンネル」に対応。気に入った曲はワンタッチで保存して、お気に入りの音楽を基にレコメンド曲を聴ける。月額300円だが、最大3カ月の無償使用権付きとなっている。
ナビの新機能として、スマホで行きたいスポットを探して、サイバーナビへ転送できる「MapFanコネクト」に対応。車に乗っていない時も、スポットの登録やルート探索などをあらかじめスマホなどで行なえ、車の中で検索/確認する手間が省ける。なお、MapFan連携などナビ機能の詳細は、僚誌Car Watchの記事で掲載されている。
原音忠実にこだわった音質設計&パーツ
オーディオ最優先の設計思想「マスターサウンド・アーキテクチャー」に基づき、高音質信号伝送を実現。高品質パーツを贅沢に採用しながら、無駄のないシンプルな回路構成やレイアウト、熱設計、流体設計、振動対策などパイオニアならではのノウハウやテクノロジーを駆使した。
往年の「カロッツェリアx」やハイエンドオーディオしか採用されなかった銅メッキシャーシを「サイバーナビXシリーズ」では、綿密な音質データ解析に基づき、国内市販カーナビとして初採用。
また、冷却ファンをカバーするヒートシンクや固定に使用するビスも銅メッキ処理。最適なビス配置により、ノイズ遮断効果や渦電流削減などを実現した。オーディオブロックに影響しないよう製品全体のノイズを完全コントロールするという。
オーディオ基板からアナログオーディオに悪影響を与えるデジタル映像やマイコンなどの回路ブロックは徹底してナビ基板へ配置。オーディオ基板とナビ基板の間には銅メッキ処理を施した中間シャーシを配置する高音質設計で、シャーシのインピーダンスをコントロールする。
冷却ファンによる振動ノイズを低減させるため、ファン自体を騒音が少ない静音タイプに変更。ヒートシンクのリアパネルの間に絶縁シートを挟み込み、カーナビ基板GNDのノイズをオーディオ基板GNDに流さないように処理した。
DACは、歴代のカロッツェリアで採用してきたバーブラウン製32bitアドバンスト・セグメント方式のDAC ICをフロント/リアそれぞれに独立搭載。SN比-123dBで、ジッターやデジタルノイズを抑制している。また、国内市販カーナビ初となる、新日本無線製のMUSESオーディオ専用高音質オペアンプを6基搭載。
オーディオ部の電源を安定化させ高音質を実現する「パイオニアフルカスタムオーディオ電源用アルミ電解コンデンサー」は、電解液の調合比やスリーブカット構造などパイオニア独自のノウハウにより開発。スリーブ材質にも手を加え、コンデンサー自体の振動を抑え込むことでリニアリティ溢れる緻密なサウンドを再現するという。
電源部は、精緻に組み上げた高音質トロイダルコイルにより強化。I/V変換回路、LPF回路、プリアウト回路に、オーディオ機器に最適な立山科学製「非磁性体抵抗」を採用する。
そのほか、正確なクロック波形を生成し、ジッター成分を徹底排除する超低位相雑音特性を持つ水晶振動子を採用した「サウンドマスタークロック」や、デジタル信号処理演算時の音質劣化を徹底排除する「高性能Tripleコア浮動小数点DSP」、ボリューム段での音質劣化を排除するため「パイオニア専用高性能電子ボリューム」を搭載する。
主要ハードキーのAV/HOME/NAVIは、蒸着によるローズゴールド塗装で高級感を演出。左右ハードキーはピアノブラック塗装。フラットパネル周囲のフレームにもピアノブラック塗装を施している。
ハンドル部に装着してナビを操作できるスマートコマンダーには重厚感と快適な操作性を融合したサイバーナビ シリーズ専用のデザインを採用。ロータリー部には蒸着によるローズゴールド塗装を施し、スティック部には重厚感あるブラックメタリック処理を採用。操作時に光るホワイトLEDも備える。
HOMEメニューとオープニングには専用画面を用意。「ハイエンド・オーディオの静寂感とサイバーナビの先進感を演出する」という。専用パッケージとして、新日本無線のSound Quality Reportなどを同梱。専用形状の個装箱に収納される。
通信モジュールやレコチョク利用権などを加えた80周年記念モデル
2018年にパイオニアが創立80周年を迎えることに合わせて、カロッツェリアから80周年記念モデル「AVIC-CZ902XS-80」を発売。同社は1938年創業で、スピーカー事業を祖業とし、オーディオ事業やAV事業へも拡大してきた。車載オーディオ事業には1963年から参入。車載CDプレーヤーや市販GPSカーナビを世界に先駆けた商品を開発するなど、カーエレクトロニクス製品を幅広く展開している。
高音質化を徹底した新モデルのサイバーナビ「Xシリーズ」をベースに、通信モジュールやケーブル、レコチョクの使用権など様々な同梱品を加えた80台限定モデルを用意。本体に専用オープニング画面をプリインストールしている。
同梱品は、電源ケーブル、外部入出力ケーブル、3年保証、通信モジュール(3年分付き)、レコチョクプリペイド10,000円分、カーナビ画面フィルム、本革特製マニュアルケース、シリアルナンバープレート、レコチョクBESTライトプラン無償使用権最大1年分で、専用個装箱に封入される。
なお、8型/ラージサイズ「AVIC-CL902」や7型/200mmワイド「AVIC-CW902」などの新機種も発表。これらの製品は別記事で掲載している。
Xシリーズで目指した音とは?
同社は18日、2018年のカロッツェリア新商品発表会を開催し、新サイバーナビや、カーオーディオ、ドライブレコーダなどの製品を披露。レーシングドライバーの小林可夢偉選手も登場し、トークショーを行なった。
パイオニア販売の蒲生宣親社長は、パイオニア創業80年について「音を中心に多彩な領域でエンターテイメントを追求し、創造しつづけた歴史。カロッツェリアブランドをけん引してきたサイバーナビは1997年に誕生以来、高い技術開発力で、ユニークな発想を元に先進価値を提供し、カーナビの歴史を切り開いてきた」と説明した。
新モデルについては「これまで培った技術、ノウハウを惜しみなくつぎ込み、音質にさらに磨きを掛け、エンターテイメントの幅を一層広げた新たな価値をサイバーナビとして誕生させた。感動と楽しさ、便利さを皆さんに感じていただけると自負している」と述べた。
パイオニア 市販事業部 事業企画部 市販企画部 マルチメディア企画1課の内田有喜氏は、Xシリーズの徹底した音へのこだわりと、MapFan連携による効率的なルート探索などを中心に説明。
Xシリーズで目指した音については「すべてのカーナビを超越した最高の音の音楽体験を届ける。サイバーナビはこれまで音質を評価されてきたが、Xシリーズの音作りは“高音質”を意識していない。単に音が良い、質が高いというのではなく、音楽を聴くことを感動の領域まで飛躍させることをテーマに開発した」と説明。
ノイズ対策として銅メッキパーツを多用した点については「車の中でノイズが全く無くなるということはないが、流れをコントロールしている。市販カーナビでは初の銅メッキシャーシを採用したほか、注目してほしいのはビス。右側面はすべて銅メッキだが、左側は通常のビス。銅ビスはノイズを引き寄せる特性がある。本体の中心より左側に重要なパーツがあるため、右側にノイズを逃がしている」とした。
内部は上にナビ基板、下にオーディオ基板を配置。ヒートシンクの上に絶縁シールを張り、上下のノイズの回り込み防止に徹底して取り組んだという。さらに、背面のファンを留めるネジも、Xではない通常モデル902シリーズは1本だが、Xでは2本使用。「細部まで徹底して作りこんだので、ネジ1本の効果を聴き分けられるレベルになった」と述べた。
通常の902シリーズとXシリーズとは約10万円という価格差があるが、Xシリーズについては「80周年を機に最善を尽くしたモデルにするためには、通常のものづくりでは、コストも時間も見合わない。今後、サイバーナビの音を象徴するモデルとして新たなシリーズを起こした」とした。
小林可夢偉「車がオーディオルームに」
ゲストとして登場した小林可夢偉選手は、パイオニアのサイトで展開している「カーライフに、スパイスを」というコンテンツに登場。愛車の“音響リノベーション”を行なってきた。
これまで、ナビの変更やサブウーファの追加などアップデートを重ねた中で、「1つ1つ変えるごとに音が変わり、もっとやりたいという気持ちにさせてくれた。音はレーシングカーに似ているところもあり、突き詰めていけばいい音を完成させられる」とした。
音楽にこだわりが深く、DJもこなす小林選手は「家にオーディオルームを作る人もいると思うが、車が僕の中で一番いい音楽ルーム。人に迷惑もかけない。朝、仕事へ向かう前に音楽を聴くと気持ち良く1日をスタートできて、その日のエンジンのかかり方が違う。朝ごはんも大事だが、耳から入れる情報で気持ちよくその日を過ごせる」という。
新モデルXシリーズをデモカーで聴いた感想は「ボーカルがプライベートで耳元で歌ってくれているんじゃないかと思えるくらい。ぜひ色々な人に聴いてほしい。これ(車)がオーディオルームでいいよね、と思える」とした。
聴いてみた
サイバーナビのXシリーズを、スバル「レヴォーグ」に装着したデモカーで試聴した。パワーアンプはカロッツェリアXの最上位RS-A09Xを3台使用。スピーカーユニットは2ウェイセパレートシステムTS-Z1000RSのツイータとウーファに、サブウーファのTS-W1000RSで構成。
井筒香奈江が中島みゆきをカバーした「時代」は、イントロ部分の耳元に囁きかけてくるような温度感がそのまま伝わるだけでなく、音の消え際の描写も繊細。ヘッドフォンでよく聴いた音源だが、ダイレクトに耳や頭の中へ届くヘッドフォンとは異なり、目の前に立体的な音像が浮かぶ。車の中にいることを意識させない自然な音の広がり感と明確な定位のバランスが良い。
ドラマーのスティーヴ・ガッドが70歳当時にリリースした「70ストロング」の「WRITTEN IN STONE」は、ゆったりした曲調の中でもドラムのアタックが俊敏かつ力強く響く。過度に低音を強調せず、全帯域に渡って芯の強い音が全身に迫りくる。
振動やノイズを徹底して排除したことが、無音に近い静寂と繊細な音との境目を丁寧に描き分けている。音の空間表現力についても、新たなサウンドマスタークロック回路によるジッターの排除や、MUSESオペアンプを6基搭載して表現力を高めたという効果を実感できた。