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「YouTube Music」日本でスタート。広告付き無料、有料版は980円から

Google傘下のYouTubeは14日、音楽ストリーミングサービス「YouTube Music」を日本で開始した。広告付きの無料版と、広告無しでの音楽再生やオフライン再生などができる有料のPremium版も用意。月額はWebブラウザからの利用と、Android版が980円、iOS版が1,280円。

音楽ストリーミングサービス「YouTube Music」

詳細は後述するが、Googleが展開している「Google Play Music」との連携も発表され、Google Play Musicのユーザーは自動的にYouTube Music Premiumも利用できる事、さらに、今後徐々にGoogle Play Musicは収束し、最終的にYouTube Musicへと統合する事も予告された。

都内で発表会が開催された

YouTube Musicの概要

米国やオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツなどで2018年の6月からスタート、22の国や地域で展開しているもので、日本でも新たに開始される。ビデオ配信サービスのYouTubeではなく、「音楽のために作られた」音楽配信サービスで、ミュージックビデオだけでなく、アーティストのアルバム、シングル、リミックス、ライブ、カバーなど、多彩な音楽を用意。

ユーザーごとに、パーソナライズして音楽を提案し、新しい音楽との出会いを提供する機能も用意。ユーザーが現在いる場所なども考慮し、楽曲をオススメしてくれる。ジャンルや気分によって聴きたい楽曲など、多くのプレイリストを用意する。

Android版「YouTube Music」アプリのアイコン
YouTube Music - YouTube がつくった、新しい音楽アプリ

広告付きの無料版と、月額980円からのYouTube Music Premiumを用意。Premiumでは広告無しでの再生や、楽曲のダウンロード機能、バックグラウンド再生も可能。

なお、既に提供中の音楽配信サービス「Google Play Music」のユーザーは自動的にYouTube Music Premiumも利用できる。Google Play Musicは引き続き利用でき、これまでに購入した楽曲や、アップロードした楽曲、プレイリストも再生可能。

【お詫びと訂正】記事初出時、Google Play Musicで購入した楽曲やアップロードした楽曲を、YouTube Musicから再生できると記載しておりましたが誤りでした。お詫びして訂正します。(11月14日19時)

また、14日から「YouTube Premium」という動画のYouTubeも含めた有料プランをスタート。以前は「YouTube Red」として展開したもので、月額利用料金はWebブラウザ、Android版が1,180円、iOS版が1,550円。このプランに加入すると、YouTube Music Premiumの機能が利用できるほか、動画のYouTubeも広告無しで再生、バックグラウンド動画再生、オフライン動画再生が可能。新たに日本で提供される「YouTube Originalsコンテンツ」の視聴も可能になる。なお、家族6人までのアカウントで使えるファミリープランも用意する。

さらに、スマートスピーカーのGoogle Home、Google Home Miniを購入すると、2019年4月8日までYouTube Music Premiumを無料で試せる特典も提供される。

動画のYouTubeとYouTube Musicの違い

動画を配信しているYouTubeには、既に多くのレーベルやアーティストがミュージックビデオを投稿している。しかし、アルバムの中の楽曲など、ミュージックビデオが無い音楽はYouTubeで聴けない事も多い。

YouTube Musicのスタートに伴い、このYouTube上に、「アートトラック」と呼ばれる、ミュージックビデオの無い音楽が多数追加される。これは映像の代わりに、アルバムのジャケットなどの静止画を表示する楽曲データの事。洋楽、邦楽も含めて存在する。

これらのアートトラックは、動画のYouTubeを閲覧しているWebブラウザやスマホアプリからアクセスし、再生できるが、ミュージックビデオと比べてたどり着きにくい形になっている。ただし、アクセスできない制限が設けられているわけではない。

「YouTube Music」で映像の無いアートトラックを再生しているところ

一方で、YouTube MusicのWebブラウザページやスマホアプリでアクセスすると、このアートトラックとミュージックビデオにたどり着きやすいシステムやUIになっている。つまりYouTube Musicは、映像と音楽が大量に存在するYouTubeにおいて、音楽を楽しみやすくする“ビューワー”的な存在と言える。

追加されるアートトラックは、YouTube Musicの無料プラン利用者も再生はできるが、YouTube Music Premium加入者でないと再生できない楽曲も存在する。つまり、YouTube Music Premium利用者は、無料版ユーザーよりも、多くの楽曲が楽しめるようになっている。

追加されるアートトラック楽曲数や、無料プランとPremiumでの再生できる楽曲数の違いなどはアナウンスされていない。しかし、後述するようにGoogle Play Musicとの統合を将来的に予定しているため、「(YouTube Musicの楽曲数規模は)Google Play Musicの規模をイメージしていただきたい」(Google 日本音楽ビジネス開発統括 鬼頭武也氏)という。

Google 日本音楽ビジネス開発統括 鬼頭武也氏

なお、アーティストへの還元など、著作権の管理は動画と同様に、GoogleのContent ID システムを使い、適切に管理しているという。

前述のように、動画のYouTube上に存在しているサービスでもあるため、ユーザーが、ミュージシャンの楽曲を“歌ってみた”、“踊ってみた”動画も存在する。これらのコンテンツもYouTube Musicから再生可能。著作権の処理もContent IDで管理する。「UGC(ユーザーが作ったコンテンツ)も大事にしたいと考えており、UGCが存在する事がYouTube Musicの強みでもある」(鬼頭氏)。

YouTube Musicならではの機能とコンテンツ

YouTube Musicは、利用者の好みを学習。ホーム画面では、パーソナライズされた形で、1人1人におすすめの楽曲を提示するレコメンド機能を備えている。ユーザーが気に入りそうな新曲の提示も行なう。

ホーム画面

好みのプレイリストを再生する際も、AさんとBさんで同じ再生順にはならず、再生する人に馴染みのある楽曲から順序を変えて再生。よりスムーズに音楽に没入しやすいようになっているという。

プレイリスト再生画面

「ホットリスト」は、日本向けにローカライズされたメニューで、日本のユーザーが良く再生している曲を、システム的に解析してユーザーに提示するもの。つまり日本で流行っている曲やミュージックビデオが楽しめるページとなる。

ホットリスト

スマホの位置情報や時間情報も活用。自宅で作業している、通勤しているなど、ユーザーのいる場所にマッチする音楽を提示。朝と夕方では提示する曲も変化する。

ミュージックビデオが豊富にある事も踏まえて作られており、例えば、あるミュージックビデオを半分ほど鑑賞し、そこからスマホをポケットに入れて外出する際、アプリのボタンをタップすると、動画から音楽のみの再生モードにシームレスに以降。映像画面は静止画となり、音楽は途切れず、音楽再生モードで続きを聴き続けられる。

ミュージックビデオの続きを、音楽だけにして再生できる

楽曲検索機能も充実。アーティスト名、楽曲名だけでなく、歌詞からの検索も可能。楽曲名がわからないが、サビの歌詞だけはわかる、歌い出しの歌詞だけはわかるという場合に、歌詞を入力して検索すれば楽曲にヒットする。

いわゆるカタカナ英語で洋楽を検索する事も可能。例えば「リビオンアプレイヤー」と入力すると、Bon Joviの「Living on a Prayer」がヒットする。

Premium会員が利用できるオフライン再生時の音質は、低画質、標準、高音質の3段階から選べ、ビットレートはHE-AAC(aacPlus)の128kbps~320kbps。「Hi-Fiではない他の音楽配信サービスと同等の音質だ」(音楽部門プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏)という。ミュージックビデオのオフライン再生もでき、画質は音声のみ、中(360p)、HD(720p)から選べる。

オフライン再生での音質設定画面

オフラインミックス(一時保存)できる曲数は最大100曲まで。端末に保持する期間は30日。端末がオンラインになった際に、まだPremium会員だと認証されると、その時点から再び30日間保持できる。

オフラインミックス(一時保存)できる曲数は最大100曲まで

Google Play MusicはいずれYouTube Musicへと統合

Googleとして、Google Play MusicとYouTube Music、2つの音楽配信サービスを持つ形となるが、T.ジェイ氏は「Googleとしては、1つに統合したいと考えており、その先をYouTube Musicに決めた。YouTubeはミュージックカルチャーを醸成する場であり、今、何が起きているのか、過去に何が起きたのかわかるという優位性や、メディアとして既に皆さんに認識された場所でもある。論理的に選択しただけでなく、ファンや音楽にとって何が一番良いか考えた結果だ」という。

音楽部門プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

しかし、Google Play Musicがすぐに終了するわけではない。「いつか無くなるが、今すぐではない。(Google Play Musicのロッカー機能も含めて)ユーザーが移行しやすいシステムを開発し、投資も数カ月行ない、マーケティングもしていく。皆様からのフィードバックを受けながら調整していきたい。その上で、Google Play Musicのユーザーの皆様には、ロケーションによって変わるレコメンデーションやミュージックビデオのカタログなど、YouTube Musicならではの魅力を楽しんでいただきたい」とした。

発表会場では、飛行機の中やジムなど、利用シーンごとのイメージ展示も行なわれた