ニュース

TAD、500万円のフラッグシップスピーカー「TAD-R1TX」。天童木工とコラボ

テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TADL)は、ハイエンドオーディオ「Reference」シリーズのフラッグシップスピーカー「TAD-R1TX」を7月下旬より発売する。価格は1本500万円。カラーは、エメラルドブラック(EB)とベリルレッド(BR)の2色を用意する。

TAD-R1TX(エメラルドブラック)

12年10月に発売した、最上位スピーカー「TAD-R1MK2」(3ウェイフロア型/税込367万5,000円)の後継機種。

独自の同軸ドライバー「CST」や、TLCC振動板を採用したウーファーなど、TAD独自のオーディオ技術はR1MK2をベースとしながら、材料やフィルター、形状変更などの細部をブラッシュアップすることで音質を向上。加えて、高級家具メーカー・天童木工と共同制作による高精度なエンクロージャーを採用することで「Referenceシリーズにふさわしい風合いと美しさを両立した」としている。

TAD-R1TX(ベリルレッド)

16cmミッドレンジコーンと、3.5mmドーム型ツイーターを同軸に配置した、独自のCSTドライバーを搭載。音響中心を同一にして、クロスオーバーにおける位相特性と指向特性を一致させることで、250Hz~100kHzの広帯域再生能力と、全帯域での指向放射パターンが両立。明確で安定した定位と自然な音場空間表現を可能にしたという。

ミッドレンジとツイーターには、独自の蒸着法で加工したベリリウム振動板を使用。材料強度と均一性を可能にし、高域共振の減衰特性を実現している。コンピューター解析による独自の最適化手法「HSDOM」をツイーター形状設計に採用することで、分割共振を高精度にコントロールしつつ、100kHzまでの超広域再生性能をもたせた。

独自のCSTドライバー

25cmウーファーは、航空機などにも使用する軽量で高剛性な発泡アクリルイミドをアラミドファイバーで挟み込んだ構成の「TLCC振動板」を採用。高レスポンスでカラーレーションのない素直で豊かな再生を特徴とする。

新モデルでは、ウーファー細部を変更。サスペンション設定(ダンパー素材変更)や、ボイスコイル補強材料の変更に加え、磁気回路に独自のOFGMS回路を搭載した。OFGMSは、プレートにスリットを設け、磁気ギャップの磁束密度を一定にすることで、幅広い振幅時の動作安定と高い駆動リニアリティを実現するもの。結果「低域の微小レベルの応答性が向上し、低域特性の最適化につながった」という。

ウーファー構造

新たに、エンクロージャー成形や加工、仕上げを高級家具メーカー「天童木工」(山形県天童市)が担当。“日本古来より伝わる匠の技術”を活かした成形・塗装方法を取り入れることで、バッフル・ヘッドのカーブ形状を最適化し、より高精度に仕上げた。

エンクロージャーの基本思想はR1MK2を継承。異素材を組合せたラミネート構造材をエンクロージャーに使用し、横隔壁を骨格にするとともに周囲を強固なパネルにするなどフレーム構造とモノコック構造のメリットを活かすことで、静的・動的強度と制振効果を最大限に高めている。

またエンクロージャーは厚さ21mmのバーチプライウッド(樺合板)で強固な枠組みを構成し、高周波加熱プレス成型した厚さ50mmの側板を張り合わせて形成。ティアドロップ形状を継承しつつスピーカーヘッド部分を丸みのある形状とすることで、強度を高め、音の回折をさらに低減するとともに、不要共振と内部定在波を低減した。

エンクロージャーの上部。R1MK2からカーブ形状や加工・成形方法を変更。従来よりも高精度で強固な組立となった

エンクロージャの外観部(突板)には、天然木の「ポメラサペリ」を採用。塗装は、ダイアフラムに使用するベリリウム原料の希少鉱石「ベリル」に由来する、深みのある緑の宝石をイメージした「エメラルドブラック」と、ベリリウムから成る赤い宝石をイメージした「ベリルレッド」の2色を用意。天童木工の熟練した職人が約30工程を経て仕上げるという。

従来カラーに近い「ベリルレッド」(写真左)と「エメラルドブラック」(写真右)

再生周波数帯域は、21Hz~100kHz。クロスオーバー周波数は250Hzと2kHz。出力音圧レベルは90dBで、最大入力は300W。インピーダンスは4Ω。

外形寸法は554×698×1,293mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は150kg。強化段ボール梱包となり、梱包重量はR1MK2から20kg減の177kgとなっている。

スピーカーターミナル

'19年は“Reference”シリーズを強化。秋にはM600の後継機も

TAD-R1TXの発表会には、TADL代表取締役社長の永畑純氏が登壇。

「TADの最初の製品“TD-4001”が発売されたのが1979年で、今年はちょうど40年を迎える。今日発表する“TAD-R1TX”は、技術の継承と進化を続けてきたフラッグシップスピーカーの7年振りのモデルチェンジだ。細部にこだわった技術の“深化”に加えて、約10年前からコラボを望んできた天童木工さんとの共同制作エンクロージャーを取り入れた。節目に相応しいモデルが出来上がった」とコメント。

TADL代表取締役社長の永畑純氏

さらに同氏は、モノラルパワーアンプ「TAD-M600」の後継機種を開発中であることも表明。「M600が発売されてから10年を迎える今年、初のモデルチェンジを予定している。M600のコンセプトでもある“象”“必”“匠”を継承しつつ、これまで蓄積してきた技術ノウハウを投入し、新世代のフラッグシップパワーアンプに相応しい製品を現在開発している。今回はモノラル仕様だけでなく、ステレオ仕様も予定している。秋の発表を楽しみにしていて欲しい」と語った。

会場に展示されていた「TAD-M600」の後継機