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オーディオプレーヤー初、“ESSとAKM”2種類のDACを内蔵「A&futura SE200」
2020年6月26日 11:00
アユートは、Astell&Kernのハイレゾプレーヤーのプレミアムライン「A&futura」第2弾モデルとして、「A&futura SE200」を7月17日に発売する。オーディオプレーヤー史上初という、ESS(ES9068AS×2)とAKM(AK4499EQ×1)、2種類のDACチップを1つの筐体に搭載した「マルチDAC」プレーヤーとなる。価格はオープンプライスで、直販価格は239,980円(税込)。カラーはMoon Silver。
SE200専用のリアルレザーケース「A&futura SE200 Case」も同日に発売。価格は13,980円(税込)。ブラックとブラウンの2色ラインナップで、ブラウンはアユート直販サイト「アキハバラe市場」限定販売。
「誰もまだ試したことのない史上初の一台を作ろう」というコンセプトで、2種類のDACチップを搭載した「マルチDAC」構成としているのが特徴。ESSの最新DAC「ES9068AS」を、左右独立したデュアルDAC構成で採用。さらに、最上位モデル「A&ultima SP2000」に採用されている、旭化成エレクトロニクスのフラッグシップDAC「AK4499EQ」もシングル構成で同時搭載した。なお、ESS最新の「ES9068AS」を搭載した初のプレーヤーでもある。
異なる2種類、3基のDACチップを組み合わせることで、DACによる音の違いが楽しめる。なお「2種類のDACを適切に実装する為、開発期間及びチューニングに通常の2倍の時間を費やした」という。
イヤフォン出力は、ステレオミニのアンバランス×2、2.5mm 4極バランス×2を備えている。
ESSとAKM、2種類の異なるDACチップの特性の違いを最適化する為に、1つのアンプ回路ではなく、複数の異なる独立したアンプ回路設計を採用。AKMとESS、それぞれにアンバランス接続とバランス接続、各チャンネルの信号を独立させ、且つ完全に分離した専用のアンプ回路設計とすることで、互いに干渉しない優れたサウンドを実現したとする。
さらに、DACメーカーが提供する様々なDACフィルターを選択することも可能。聴く音楽の種類に合わせて最適なDACを選ぶだけでなく、自分好みのサウンドプロファイルを選択することで、サウンドをさらにカスタマイズできる。
高速信号処理を可能としたOcta-Core CPUを採用。PCM 384kHz/32bit、DSD 256(11.2MHz/1bit)のネイティブ再生をサポート。超高解像度音源を的確に再生するため、独自のレーザーグラウンドエキスパンションテクノロジーにより、ノイズフロアを限りなく抑えたサウンドを実現した。
仕様面も、前モデルの「SE100」から進化。内蔵メモリは256GBへ強化され、microSDカードスロットとの併用により大量の音楽データを保存可能。連続再生時間はSE100が最長約11時間であったのに対し、SE200では連続最長約14時間(ESS)を実現。
出力はアンバランス 3Vrms、バランス 6Vrms(AKM)と高出力化し、よりパワフルな再生が可能となった。
ボリュームホイールにLEDを搭載。赤、緑、青、紫など様々なカラーの光を表示することで視覚的な効果だけではなく、再生に使用しているDACや現在再生中の曲のビット深度、ボリューム調節状態を表示する。例えば、ESSはグリーン、AKM使用時はオレンジ、ESS&AKMはイエローとなる。
USB Type-C(USB 3.0)による急速充電、高速データ転送に対応。USB DAC機能も搭載する。ネットワークオーディオ再生「AK Connect」にも対応。MQAフォーマット音源の再生もサポートする。BluetoothのプロファイルはA2DP、AVRCPに対応。コーデックはSBC、aptX、aptX HDに対応する。
筐体デザインは、SE100と同様に台形のアイデンティティを維持しつつ、大胆な曲線を組み合わせた。台形ボディの側面にある曲線をブレンドしたデザインは、2種類の異なるDACを1つの統一したプレーヤーに融合させた発想を表現。ボリューム周辺部分は、使用されている2種類のDACを象徴するように、側面のカーブと調和し、柔らかな光を反射させている。
天面と背面には「セラミックプレート」と呼ばれる新素材を初めて採用。従来のガラスとは異なり、天面と背面に深くやわらかい光が流れるという。アルミボディに合わせて精密に加工されたセラミックプレートも採用する。
外形寸法は132.2×76.9×15.8mm(縦×横×厚さ)、重量は約274g。ディスプレイは5型のカラーで、解像度は720×1,280ドット。
音を聴いてみる
最も気になる、DACによる音の違いをチェックしてみた。まずはどちらもアンバランスで聴いてみる。ESSのサウンドは清涼感があり、音場の空間が広く、奥まで見通せる。finalの「B1」を使っているが、ホワイトノイズが少し聞こえる。
コントラストを強調するサウンドではなく、極めて描写は自然だ。ボーカルが中央にスッと立ち上がり、背後に並ぶ楽器の主張は控えめだ。
AKMのDACに切り替えると、低域に馬力が出たような印象。音圧が強くなり、音が前へとパワフルに押し出される。それでいて、描写は細かく、弦楽器やアコースティックギターの音にしなやかさがある。空間に広がる音の余韻も、消え去る間際まで丁寧に描写する。
音にパワーがあるため、広い空間でシャープに音を描写するESSとのキャラクターの違いが面白い。AKMの方が、音の密度が高く、逆に言えば“詰め込まれた感”がある。しかし、前へ前へと出てくるボーカルや楽器の音の背後に注意を向けると、音場空間は広く描写されており、立体感はある。
いろいろな楽曲を聴いていくと、ロックやJAZZなど、熱気が欲しい音楽にはAKM、クラシックや、女性ボーカル+ピアノのようなシンプルな楽曲にはESSがマッチするような気がする。
「マイケルジャクソン/スリラー」では、冒頭のドアが「ギギギギーッ」ときしみながら開く音が、音圧豊かなので、AKMの方が“怖い”。コツコツと響く足音、雷の音も鮮烈でインパクトが強い。
ESSの場合は、ドアのきしむ音も、雷の音もちゃんと鳴るのだが、その背後の空間の広さと、そこにビュービューと吹き荒れる風の音に意識が向く。空間全体を俯瞰して聴いているような感覚だ。
こうした描写の違いは、EQやデジタルフィルターの設定を変えた変化とは次元が違う。楽曲に合わせてDACを変えるというのは、たしかに面白い体験だ。
バランス接続で比較すると、密度感がミッチリしていたAKMでは、その凝縮感が緩和され、空間描写寄り、ある意味ESSの描写に近くなる。ただ、その広い空間に定位する音の1つ1つのパワフルさに“AKMらしさ”が残っている。
ESSをバランス接続で聴くと、イヤフォン振動板の制動力がアップするためか、低域にパワフルさが出る。クールな描写に熱気が少しプラスされる感覚で、こちらもバランス接続の方がさらにサウンドクオリティがアップする。アンバランスでも悩ましいESSか、AKMかの選択だが、バランス接続ではさらに甲乙つけがたい。「どちらも聴けるプレーヤーでよかった」と感じる。