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“テレビない人へNHK配信”の社会実証、前田会長「将来の日本のためになれば」

NHKの前田晃伸会長は9日、定例記者会見において、総務省から要請を受けて2022年の実施を予定している“ネット配信の社会実証”について言及。通信と放送が融合する時代の中で、放送法の規制がある日本は世界の中で遅れており、基礎的な社会実証を行まわないことには前に進まない、と実施の意義を説明した。また今回の社会実証を受信料制度の見直しにつなげる可能性を問われると、「いまのところ、そういうことを前提に行うということではない」と答えた。

既報の通りNHKは、社会的役割の検証を目的に、テレビの非保有者やNHK未契約者でもメールアドレスなど連絡先情報の入力でNHKプラスが限定利用できる社会実証を検討している。

前田会長は、社会実証について「詳細はこれから詰めますが、どういう形でやればいいかいろいろと考えさせていただきたいと思います。将来の日本のためになるような社会実証になればと思っております」とコメント。

インターネット配信サービスの拡大は、民放から肥大化批判が高まるのではとの記者からの質問については、「いつも肥大化のご指摘はあるんですけど、私ども中期経営計画で肥大化しないような計画を作りましたし、収入がたくさん上がった場合には受信料で還元するという形にしましたので、この仕組みを入れている限り肥大化はしないと思います」と答えた。

また、社会実証の対象とされている“テレビを持たない人たち”をどのように見つけるのか、という質問に対しては、「どういう方を対象に社会実証をするか、その選び方によるんですが、テレビがない方には『ない』と言っていただかないと困るんですけど、人選も含め、これからどうしようか考えている最中です。ないことを証明するのは難しいんです、確かに。(中略)学生の調査をしても、持ってない人もいますし、持っていても見ないという人もいるわけです。いろいろな調査があるが、どういう形で組み合わせて社会実証するか、これから半年間、悩まなければいけないところです」とした。

東京2020大会の視聴数は、NHKプラス開始以来最多を記録

会見では、東京2020大会期間中に実施した、ネット配信などの取り組み結果についても説明が行なわれた。

NHKプラスにおいては、オリンピック期間中のID登録が増加。期間前と比べ、2~3倍の申請数を記録し、8月末の累計申請数は約218万件となり、6月末に比べ約30万件増えたという。

最も多く視聴されたのは、オリンピックの開会式。同時配信と見逃し配信を合わせた当日の視聴UB数、ユニーク・ブラウザ数をみると、NHKプラスの開始以来最多を記録。競技では野球やサッカーなどが多く観られ、その結果、オリンピック期間中の視聴UB数は通常週の3倍近くに増えたという。

また全33競技・921本・3,456時間配信した「NHK東京2020特設サイト」では、ライブストリーミングが一番多く見られ、ライブストリーミングの動画再生回数で比較すると、前回のリオ大会よりも7倍の利用があったとのこと。

なおオリンピック・パラリンピックの放送実績は、オリンピックが総合テレビで約250時間、Eテレで約200時間、BS1で約400時間、BS4Kで約220時間、BS8Kで約210時間の計約1,280時間。ラジオ第1は約200時間。パラリンピックにおいては、総合テレビで約170時間、Eテレで約60時間、BS1で約180時間、BS4K/BS8Kはサイマルでそれぞれ約90時間の計約590時間。ラジオは約80時間だった。