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ソニー「VENICE 2」やDJI 4軸ジンバルシネマカメラなど。Inter BEE開幕

Inter BEE 2021

国際放送機器展「Inter BEE 2021」が17日、千葉県の幕張メッセで開幕した。期間は17~19日までで、入場は無料(登録制)。デジタルシネマ用カメラ「CineAlta」の新モデルで、新開発8.6Kセンサーを搭載した「VENICE 2 8K」などを出展しているソニーや、DJIなどのブースをレポートする。

ソニー

VENICE 2 8K

「VENICE 2」は2モデル展開で、8.6Kセンサーを搭載し、8K撮影が本体だけで可能な「VENICE 2 8K」と、前モデルのVENICEと同様の6Kセンサーを搭載し、処理能力などを高めた「VENICE 2 6K」をラインナップ。発売時期は2022年で、8Kモデルが2月、6Kが3月の予定。価格はオープンプライスで、実売想定価格は8Kが680万円前後、6Kが620万円前後。

VENICE 2 6K

映画業界で普及しているフォーマットX-OCNで収録する場合、従来のVENICEではメモリーレコーダー「AXS-R7」をVENICEの後部に取り付ける必要があった。VENICE 2では、本体にAXSを2スロット装備し、X-OCNや4K QFHD ProResでの収録が本体のみで可能。

筐体自体はわずかにVENICEより少し大きくなっているが、ほぼ同レベルの大きさに抑えており、VENICE+AXS-R7とVENICE 2を比べた場合、VENICE 2単体の方が全長でマイナス44mm、重量は410g軽量化。コンパクトなカメラで、機動的な映画撮影ができるのが特徴。これにより、従来のVENICE向けの撮影用アクセサリーの多くが、VENICE 2でも使用できる。

また、VENICEはセンサー部分の付け替えができるため、前モデルのVENICEを使っているユーザーが、追加でVENICE 2 8Kを買った場合、VENICEの6Kセンサーを取り外し、VENICE 2 8Kに取り付けると、VENICE 2 8Kを、VENICE 2 6Kとして使うことも可能。8K解像度が不要なシーンや、ハイスピード撮影が必要など、撮影状況に合わせて切り替えられるようになっている。

スーパー35mm CMOSセンサーを搭載した4Kカメラ「HDC-F5500」

VENICEは映画撮影をメインとしたカメラだが、スポーツや音楽ライブなどを撮影するシーンでも、シネマライクな、印象的な映像が求められる事がある。従来はそうした場合には、VENICEが使われてきたが、スポーツやライブ向けカメラの周辺機器が、VENICEで使えない事などもあり、新たにスーパー35mm CMOSセンサーを搭載した4Kカメラ「HDC-F5500」が開発された。今年の12月3日発売予定で、レンズはPLマウント。システム参考価格は約1,540万円。

システムカメラながら、スーパー35mmのラージサイズイメージセンサーを搭載したことで、浅い被写界深度の映像撮影を実現しつつ、グローバルシャッター機能や高感度・低ノイズにより、高品位なライブ映像収録に対応できる。多彩な映像表現を用いた音楽ライブや、ドラマ制作などへの利用を見込んでいる。

これら、ハードの新製品展示に加え、放送局の中継システムをクラウド化するIPソリューションの提案も活発に行なっている。ソニーでは、AmazonのAWSとの連携を強化し、クラウド中継システム「M2 Live」の提供を開始する。

クラウド中継システム「M2 Live」

放送・番組制作の現場では、放送波だけでなくライブ配信やオンデマンド配信など、映像を届ける手法が多様化。さらに、コロナ禍で、人が集まったり、移動したりすることを避ける必要もあり、クラウドとIPを使った効率化のニーズが高まっているという。

クラウド中継システム「M2 Live」は、AWS上でのソフトウェア提供サービス(SaaS:Software as a Service)として開発。2022年4月の提供開始を予定しており、参考サービス利用料は月額10万円から(価格は契約プランにより異なる)。

物理的なスイッチャーなどの機器を用意しなくても、パソコンやタブレットなどで中継制作を実現でき、設置の時間や場所の制約を低減できる。ネット配信や報道中継などのライブ映像制作用途を想定し、映像のスイッチング、テロップの重畳、動画ファイル再生など、多様な映像処理をクラウド上で行なう。

中継現場で映像をリアルタイムに切り替えて番組制作を行なう中継車などの役割がクラウド上に構築されるため、場所を選ばず遠隔からの番組制作ができる。

豊富な映像入力フォーマットにも対応し、SRTやRTMPといった汎用プロトコルにより幅広いカメラとの連携が可能。XDCAMメモリーカムコーダー「PXW-Z280」や「PXW-Z190」からはソニー独自のQoS技術に対応することで、より安定した映像転送が実現できる。スマートフォンに入力した映像を直接M2 Liveへ伝送するモバイルアプリも開発しており、機動性の高い撮影、伝送、配信システムとして使うこともできる。

2021年10月には、フジテレビやサガテレビと共同でリモート映像制作ワークフローによる効率的なライブ番組制作の実証実験も実施された。

タッチパネルにも対応しており、直感的な操作ができる

ソニーではM2 Liveだけでなく、ファイルベースのクラウドソリューションとして、映像制作業界に向けた効果的なメディア管理・運用を実現する統合プラットフォーム「Ci Media Cloud Services」を導入。今後導入予定のカメラ連携クラウドサービス「C3 Portal」や、異なるマイクロサービスを自由に構築可能なクラウドソリューション「Media Solutions Toolkit」をAWS上に展開している。

C3 Portalの展示。スマホ用アプリ「C3 Portal App」を使うことで、カメラとUSB接続したスマホから、撮影素材をクラウドに自動的に転送可能。スマホ内蔵カメラを中継用カメラとして使用できるアプリ「XDCAM pocket」もサポートしており、5Gミリ波帯対応スマホ「Xperia PRO」と組み合わせた場合は、HDMI入力からのストリーミングも可能

プロ向け4K液晶モニターの新製品として、10月に発売されたばかりの「PVM-X3200」も展示。同社ピクチャーモニターシリーズとして最大サイズの32型で、価格は209万円。a-Si TFT アクティブマトリクスLCDパネルを採用。解像度は4K/3,840×2,160ドット。パネル表示フレームレートは48/50/60Hz。

全白時1,000cd/m 2 の高輝度性能を実現しており、マスターモニター「BVM-HX310」と同一色域を持つ広色域パネルになっているのが特徴。映像制作ワークフローにおける一貫した色再現を可能としている。

PVM-X3200
サイズ展開が豊富になったピクチャーモニターシリーズ
フルサイズミラーレス一眼カメラ「α」を搭載可能なドローン「Airpeak S1」も展示された

システムファイブ & DJI

DJI Ronin 4D

システムファイブのブースでは、10月に発表されたDJIのシネマカメラ「Ronin 4D」や、アクションカメラ「Action 2」、11月に発表されたドローン「Mavic 3」の実機を展示。中でもDJI Ronin 4Dは世界初展示となっている。

Ronin 4Dは、フルサイズセンサー搭載Zenmuse X9ジンバルカメラ、4軸安定化機構、LiDARフォーカスシステム、映像伝送&制御システム等を統合した撮影システム。ラインナップと価格は6K対応カメラがセットの「6Kコンボ」が869,000円、8K対応カメラの「8Kコンボ」が1,320,000円。6Kコンボは12月発売で、8Kコンボは発売日未定。

フルサイズセンサー搭載のZenmuse X9ジンバルカメラは、「X9-8K」と「X9-6K」の2種類を用意し、シネマ品質の撮影が可能。H.264コーデックに加え、両モデルともApple ProResとProRes RAWの内部収録ができる。X9-6Kは最大6K/60fpsと4K/120fpsでの撮影に、X9-8Kは最大8K/75fpsでの撮影に対応する。

X9のレンズマウントは交換可能で、DJI独自のDLマウント、Leica Mマウント、その他フランジバックが短いマウントを装着できる。

撮影中のイメージ

さらに、非常に強力なジンバル機能をカメラに統合している。垂直方向のカメラの揺れを効果的かつ能動的になくすZ軸を、従来の3軸ジンバルに追加。業界初とするこの技術により、歩いたり、走ったり、さらには激しく動き回ったりしても安定した動画を撮影できるとしており、ブースではその効果を試せる。

階段や凸凹した地面でも、撮影者の歩行から揺れの影響を受けない滑らかな撮影ができ、ドリーを使わずにワイドなスライダー撮影も可能とのこと。

DJI Ronin 4Dのデモ InterBEE - AV Watch
民生向けドローンのフラッグシップモデル「Mavic 3」。ハッセルブラッドと協業した新しいデュアルカメラシステムでは、2,000万画素の4/3インチCMOSセンサーと35mm判換算で24mmの広角レンズに加え、162mmの望遠レンズを搭載。さらに、飛行時間も46分まで拡大させた

その他

ATOMOSのブースでは、8月に発売した8K RAW収録対応の5型HDRモニターレコーダー「NINJA V+」を展示。キヤノンの8K対応ミラーレスカメラ「EOS R5」に接続して、8K ProRes RAW収録を実現している。

5型HDRモニターレコーダー「NINJA V+」

展示ホール8の「InterBEE CREATIVE」ゾーンでは、次世代の映像制作手法として注目を集めているインカメラVFXの撮影デモ展示を実施。リアルタイム3DCG映像をLEDビジョンに表示し、その前に役者などを配置して撮影するもので、その利点を体験できるデモになっている。

インカメラVFXの撮影デモ展示

キヤノンのブースでは、デジタルシネマカメラ「EOS C70」や業務用4Kビデオカメラ「XF605」のほか、放送用レンズ、動画性能にも注力したフルサイズミラーレスカメラ「EOS R3」(2021年11月下旬発売予定)などを出展。業務用8KカメラとEOS R5を用いて、ブルーインパルスの飛行シーンや、R5を使って撮影したコックピット内の8K映像などを、8Kディスプレイの「DP-V5580」で表示するデモも行なっている。

業務用8KカメラとEOS R5を用いて、ブルーインパルスを8K撮影