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iBasso、ローム製DACデュアルの旗艦プレーヤー「DX320」

「DX320」(ブラック)

MUSINは、iBasso Audioのオーディオプレーヤーハイエンドモデル「DX320」を、6月29日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は220,000円前後。カラーはブラックとブルー。このDX320と前モデル「DX300」で使用できる真空管アンプカード「AMP13」も同日に発売する。価格はオープンプライス、店頭予想価格は38,000円前後。こちらもカラーはブラックとブルーを用意する。

DX320

2021年1月発売の「DX300」をベースに、DACチップをロームのオーディオ用ICシリーズ「MUS-IC」のフラグシップである「BD34301EKV」に変更し、デュアルで搭載。あわせてオーディオ回路を刷新することで「これまでにない新しい音色を実現した」という。

DACチップは「BD34301EKV」をデュアルで搭載

最大768kHz/32bitまでのPCM、22.4MHzまでのDSDの再生が可能で、MQA 16xデコードにも対応した。対応音声ファイルはMQA、APE、FLAC、WAV、WMA、ACC、ALAC、AIFF、OGG、MP3、DFF、DSF、DXD、DST。

引き続き、ローカルファイルの再生に特化した「Mango OS」と、汎用性に優れニーズの高い「Android OS」のDual OSを採用。Android OSのバージョンは10から11にアップデートされている。

SoCはQualcomm製「Snapdragon 660」を採用。メモリ容量は6GB、ストレージ容量は128GB。microSDカードスロットも備える。

自社開発の「FPGA-Master」テクノロジー」を採用し、つねにオーディオ処理を最優先に実行する、安定した動作を実現した。FPGAは、さまざまなオーディオ処理専用の制御装置として動作し、SoCからのデータ受信やDACチップを始めとする各装置への送信、そしてクロックの生成・管理といったオーディオ処理の中心となる。

マスタークロックとしては、Accusilicon製の高精度フェムトクロックを2基搭載し、単一のソースから生成されたクロックをDACと同期。「ジッターを極限まで排除した非常にクリーンなオーディオシステムを構築することに成功した」という。

電源は中国で特許を取得したデュアルバッテリー設計。SoCやDACチップ、アンプ部といった内部の電力を必要とする装置は、それぞれに必要とされる電源供給量が異なるため、単一のバッテリーを使用して電力供給を行なう場合には電源への負荷が増大し、デジタル回路とアナログ回路が互いに悪影響を及ぼすノイズを発生させるため、音質低下の要因になるという。

このデュアルバッテリー設計では、内部のデジタル部とアンプ部には、それぞれ個別のバッテリーから電源供給が行なわれ、アンプ部に安定して力強い、またデジタル部からの干渉を受けないクリーンな電源供給を実現している。最大連続再生時間は約10時間。QC3.0、PD3.0のふたつの急速充電規格に対応し、最速2.5時間で充電が完了する。

アンプカードは交換できる

DX300と同じく、アンプカードは交換が可能。ディスクリート設計の標準カードである「AMP11 MK2s」のほか、別売りの“iBasso Super Class Aアンプ回路”と謳う「AMP12」、後述するNutube真空管を搭載した「AMP13」にスイッチすることができる。

標準で付属するAMP11 MK2sは、「AMP8」のディスクリート回路をベースに改良したもので、3,5mmシングルエンド、2.5mmバランス、4.4mmバランスと3規格のジャックを備える。これら3端子はすべてライン出力ができる。

最大電圧出力は7.1Vrms、32Ω負荷時の最大出力レベルは1,200mWで、強いパワーを必要とするイヤフォンやヘッドフォンも簡単にドライブできる。

6.5型、2,340×1,080ドットのベゼルレスディスプレイを搭載。画面上部にはLEDインジケーターを備え、再生している音楽のレートや充電状態を一目で確認できる。自社開発の標準ミュージックプレイヤーアプリ「Mango player」には、細やかな調整が可能な高精度イコライザ機能も搭載した。

USB 3.1規格のType-Cポートも備え、WindowsやMac、スマートフォン、タブレットと接続してUSB DACとして使うこともできる。同軸出力も用意し、384kHzまでのPCM、DoP方式で5.6MHzまでのDSD出力が可能。Wi-FiやBluetooth 5.0にも対応。

ボディはアルミ合金製で、外形寸法は162×77×17mm、重さは310g。USB Type-Cケーブルや同軸デジタルケーブルなどが付属する。

「DX320」(ブラック)
「DX320」(ブルー)

AMP13

「AMP13」

KORGとノリタケ伊勢電子が共同で開発した真空管「Nutube 6P1」を搭載したアンプカード。DX300とDX320で使用できる。Nutube 6P1は従来の3極真空管と同様に動作し、真空管特有の豊かな倍音を生み出しながら、従来の真空管と比較して大幅な省電力化・小型化・高耐久性を実現している。

一方でNutubeは、出力される信号は強力とは言い難く、また発生するノイズをコントロールすることが難しいことが設計上の問題点だったといい、AMP13では通常のオーディオプレイヤーで用いられる2チャンネルアンプではなく、3チャンネルアンプを採用。出力されるグランド信号を「OPA1622」オペアンプで増幅することで、ノイズフロアを大幅に低下させるとともに流れるエネルギーを向上させ、Nutubeのパフォーマンスを引き出している。

Nutube 6P1の電圧増幅には限りがあるため、より高い出力レベルを実現するためにさらに二段階の増幅を行なう。出力端子は一段目の電流増幅後の信号を出力する低ノイズの「ローノイズ出力端子」と、二段目の増幅後の信号を出力するハイパワーの「マキシマム出力端子」と、計ふたつの3.5mm出力端子を装備。出力はローノイズ出力端子が2.5Vrms、マキシマム出力端子が4.1Vrms。

高性能なLinear Technologyの「DC-DC コンバーターチップ」を要所でふたつ採用し、さらに別のチップふたつを組み合わせ、合計4つのDC-DCコンバーターを搭載する。Nutubeから出力される信号のバッファには東芝製「2SK209-電界効果トランジスタ」を採用。

そのほか信号のグランドとシールドのグランドを分離することでノイズ干渉を防止しているほか、アンプ回路に適切な負帰還をかけることにより、効果的に歪みの低減と周波数帯域の拡張を行なっている。JRC(新日本無線)製の超低雑音オーディオボリュームも採用。

製造されるすべてのAMP13は、Audio Precision製高精度オーディオ・アナライザーでテストされ、AMP13 と同じ基盤上に3つのマルチターン・ポテンショメータが取り付けられた“特別な検査機”を使って、Nutubeの性能を引き出すためのマッチングとチューニングが行なわれているとのこと。