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NHK、受信料は「組織運営のための特殊な負担金。視聴の対価ではない」

NHK(日本放送協会)は17日、“受信料制度”をテーマとしたメディア関係者向けの説明会を実施した。会では、受信料の契約条件や割引の対象者など、基本事項を紹介。NHKの公共的価値への共感と理解を改めて伝えると同時に、受信料は“視聴の対価”ではなく組織運営のための“特殊な負担金”であること、4月からスタートしている割増金への考え方、そして訪問だけに頼らない新しい営業活動などを説明した。

受信料は、組織運営のための“特殊な負担金”

まず冒頭では、放送の体制と意義について説明が行なわれた。

日本のテレビ放送はこれまで、受信料を財源とするNHKと、広告料等を財源とする民間放送事業者が切磋琢磨する“二元体制”とすることで、質の高いコンテンツを制作し、放送によってあまねく全国へ届けてきた。

そして、放送法の下、各局が自らルールの策定や番組の編集、審議会等を設けることで自主独立と番組の適正性を確保。国民の“知る権利”に奉仕し、情報の多元性・多様性・地域性への貢献と健全な民主主義の発展に寄与してきた、と放送の意義を話した。

現在のNHKが作られたのは1950年。“全国にあまねく放送を普及させ、豊かで良い番組による放送を行なうこと”などを目的に、放送法に基づいて設立された特殊法人となっている。

放送法では、NHKがその使命を他者、とくに政府からの干渉を受けることなく自主的に達成できるよう、基本事項が規定されている。

NHKの財源となっている受信料制度は、NHKが公共放送としての業務を行なうために必要な経費を受信機の設置者に公平に負担してもらう、という考え方に基づいて設けられたもの。NHKの高度な自主性を財源面から保障するのが受信料制度、なのだという。

受信料の性格は、NHKという組織を維持運営するための“特殊な負担金”(1964年、郵政省の有識者会議の答申で定義された)。そのため、一般の動画配信サービスのような、番組を視聴するために支払う“視聴の対価”とは性格が異なる。したがって「見ないから受信料を払う必要はない、ということにはあたらない」という考え方だ。

受信料額の設定については、3~5年程度の期間で、事業運営の総経費に対し、繰越金の使用を含めた収入全体がつり合うように設定する“総括原価方式”が採られている。そしてその受信料額は、毎年3月に国会で行なわれる収支予算・事業計画の審議、承認を経て決定されている。受信料が変わっていないように見えても、実際には毎年度、国会で承認を経て額が決まっている。

NHKと比較されることが多い英国の公共放送BBCの場合は、BBCが受信料額を決定して国会に報告する方式を採っており、国民の代表である国会で額が決まるNHKとは異なる、という。

受信料の義務に関する法的な記載は、「放送法(64条)」と「日本放送協会放送受信規約(5条)」の2つに分かれている。前者は契約義務、そして後者には支払い義務を明記。「放送法には支払い義務の記載がないから、支払わなくてもよい」というのは誤解、だとする。

契約義務が発生する条件は、NHKの放送が受信できる設備を設置した場合。代表的な設備としては、チューナーを搭載したいわゆるテレビや単体チューナー、レコーダーなどで、チューナーを搭載したカーナビやワンセグ携帯、パソコンもこれに含まれる。なお、ラジオの受信設備のみを設置してる場合は、受信料の支払い義務は発生しない。

なお、現在総務省では、ネット時代に即したNHK業務を検討する有識者会議「公共放送ワーキンググループ」が開かれている。この会議の中では、仮にNHKが将来、番組のネット配信等の業務を放送と同じ扱いの“必須業務”へ繰り上げた場合、ネット接続できる“スマートフォン”などのような機器での受信料をどのように考えるかも議論されている。

ただ、会議に参加する委員からは、『単にインターネットに接続する機器を保有しているだけで受信料を払うというような制度は難しいのではないか』といった意見が出ており、一部報道にあった“スマホを持っているだけで受信料徴収”という話にはなっていない。

割引で年656億円の受信料を還元。免除額は年553億円

受信料の契約は、住居などが該当する「世帯ごと」と、事業者など住居以外の場所が該当する「設置場所ごと」の2タイプ。

世帯の場合、同一生計であれば、住居内に受信設備が複数台あっても、カウントは1契約。敷地内に別住居があり、そこに受信設備がある場合でも、同一生計であれば1契約となる。ただし生計が異なる場合(単身赴任や学生の一人暮らしなど)や別荘を持つ場合は、別の契約が必要になる。

会社など事業者が受信設備を設置した場合は、設置場所ごとの契約が求められる。例えば、100室あるホテルに100台のテレビを設置した場合は100契約が必要。テレビを搭載した観光バスや営業車であれば、その台数分の契約が必要になる。ただし、住居と繋がった店舗や小規模工場等の場合は、住居と合わせて1契約でよい。

NHKによれば、2021年度末時点で、受信契約は4,155万件。うち地上のみの契約が1,952万件、衛星も含む契約が2,202万件。

支払い区分別では、全体の約59%が口座振替で、継続振替が約20%。近年伸長しているというクレジットカード等継続払は約18%に伸ぼる。残りの約3%は、1年以上支払いが滞っている未収の割合となる。今後はキャッシュレス決済での支払いも検討していくという。なお、訪問による集金は2008年10月に廃止されている。

受信料には、さまざまな割引制度が用意されている。

主なものとしては、ホテルや全国に支店を持つ事業所など、10件以上の衛星契約の受信料を一括支払いする際に適用される「多数一括割引」、ケーブルテレビ等の一部利用者が該当する「団体一括割引」、単身赴任や学生、別荘などに適用可能な「家族割引」、2件以上の受信機を持つ事業者が該当する「事業所割引」などがあり、年間656億円の受信料を視聴者へ還元しているという。

なお、社会福祉施設や学校などの受信設備においては、受信料は全額免除。生活保護の受給者や障がい者、社会福祉施設入居者なども免除の対象となる。これによって、年間553億円の受信料が免除されているという。

2倍割増金制度は「個別事情に配慮し、適切に運用していく」

今年4月からスタートした、割増金制度についても説明が行なわれた。

割増金の対象者は、解約・免除で不正が認められた場合。そして、受信設備設置後も、期限までに受信契約を申し込まなかった場合となる。申し込み期限は、設備を設置した月の翌々月の末日。仮に4月に設置した場合は、6月末までに受信契約の届け出が必要になる。割増金は、所定の受信料の2倍に相当する額が請求される見込み。

この割増金に関してNHKでは、該当者に一律に請求する事は考えていないとのこと。まずは受信契約についての理解を得るために最大限努力しつつ、個別事情に配慮し、適切に運用していくという。

なおNHKによれば、今年4月から運用が始まったばかりで、申し込み期限である2023年6月末を迎えていないこともあり、これまで割増金が適用されたケースはないとのこと。また今後割増金が適用された場合、それを公表するか否かも決めていないという。

新しい営業施策を導入。「訪問営業をすべて辞めるわけでない」

NHKの公共的価値への共感や、受信料支払いへの理解を促すための営業施策に関しても、説明が行なわれた。

基本的には、コロナ禍前のような巡回型の訪問営業スタイルからは転換する方針で、訪問営業に代わるものとして、インターネットでのデジタル広告や不動産会社や電力・ガス事業者など外部企業との連携を強化する。

さらに、受取人の氏名が記載されていなくても、受取人の住所や居所が記載されていれば、その住所や居所に郵便物を送付できる「特別あて所配達郵便」も活用。受信料制度の案内を、去年1年間で約1,200万通を送付しており、今後は徐々に発送エリアを拡大していく。

ただ、こうした訪問以外のさまざまな取り組みを進めるものの、「訪問営業をすべて辞めるわけではない」とのこと。

「状況に応じて視聴者に直接お会いして、受信料制度の意義等を説明する機会も必要。視聴者と直接・間接の両面でコミュニケーションを図り、受信料の支払いに理解をいただけるよう取り組み、公平負担に努めていく」としている。

なお、訪問営業には、法人委託と個人委託(地域スタッフ)が存在するが、法人委託は今年9月末をもって全ての契約を終了する予定。残る個人委託の数は、600名弱という。