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ピーク輝度4000の史上最高マスモニ爆誕。ソニー「BVM-HX3110」が凄すぎた

ピーク輝度4,000cd/m2を実現した「BVM-HX3110」

ソニーから、とんでもないディスプレイが誕生した。その名は「BVM-HX3110」。輝度、視野角、動画応答、映り込みといった表示装置としての基本性能を極限まで追求した最新の業務用マスターモニターだ。

自称・マスモニ愛好家としてこれまで、平面ブラウン管の「BVM-D24E1WJ」やシリーズ初の液晶「BVM-L230」、業界初の有機EL「BVM-E250」、初の4K有機EL「BVM-X300」、そして2層の4K液晶「BVM-HX310」など、代表的なモデルをくまなくウオッチしてきたが、HX3110は大アタリ。神機・X300を初めて凌駕した完成度の高さで、まさに全人類必見の史上最高のディスプレイと感じた。

HX3110は、どのようにして作られたのか。企画・開発者らに話を聞いた。

(写真左から)ソニー株式会社 Global Sales & Marketing イメージングマーケティング部門 ビジネスマネジメント2部 プロダクトマーケティング課 マーケティングマネジャー 岡泰弘氏
ソニー株式会社 商品技術センター 商品設計第1部門 商品設計1部 2課 統括課長 田中綾氏
ソニー株式会社 共創戦略推進部門 イメージング商品企画3部2課 商品企画リーダー 上村泰行氏
ソニーマーケティング株式会社 B2Bプロダクツ&ソリューション本部 B2Bビジネス部 AIソリューション企画MK課 プロフェッショナルモニターグループ 土肥明希乃氏
ソニーマーケティング株式会社 B2Bプロダクツ&ソリューション本部 B2Bビジネス部 コンテンツワークフローソリューション企画MK課 田中將平氏
※所属は取材当時のもの

輝度、応答性、視野角など基本性能を高めた標準機

BVM-HX3110は、ソニーがBVMシリーズとして展開するプロフェッショナル向けの“マスターモニター”だ。DCI 4K解像度(4,096×2,160)を持つ30.5型サイズの液晶モデルとなっており、販売価格は437万8,000円。2019年に発売したBVM-HX310の上位に位置付けられている。

マスターモニターとは、映像や信号の品質確認・評価を目視で行なうために使用する専用の映像装置のことだ。

色域や色温度、輝度やガンマなど、各種パラメータを“正確”に表示することができるため、例えば、映像が規格に収まっているか、クリエイターの映像演出やその効果が意図通りになっているか、が一目で確認できる。

また長期にわたってそれらの性能と精度を維持できるよう設計されており、かつ同型のモニターを2台、3台と複数台組み合わせた場合でも、全て同じ画が出せるように調整されている。

マスターモニターは入力された信号をありのまま、高精度に、長期に安定して映す、“標準機”かつ“測定器”としての役目を担っており、主にはカラーグレーディングやオンライン編集、品質管理、映像機器・光学機器・半導体の研究開発、デザインなどの現場で使われている。

正面
側面

厳密な管理・正確性が求められる場所での活躍が求められるマスターモニターだが、今回の新製品であるHX3110は、どのような狙いで企画されたモデルなのだろうか。

X300、そしてHX3110の商品企画を務めた上村氏は、「HX310ユーザー等の顕在要求と、潜在ニーズを満たすことを考えました。さらに“ユーザーの期待値を超える”ことを目標に、デバイスの進化を踏まえながら、更なる高輝度と高い黒再現性の両立、高速動画応答、広視野角、外光反射性能改善、IP対応、という5つの柱を掲げました。“ソニーだからこそできる史上最高のマスターモニターを作ろう”という意欲のもと、約5年の歳月をかけて完成させたのが、今回のHX3110なのです」と話す。

ソニー株式会社 共創戦略推進部門 イメージング商品企画3部2課 商品企画リーダー 上村泰行氏

全白1,000cdと有機EL並みの暗部を実現する二層液晶パネル

HX3110で大きく進化したのが輝度性能だ。従来の全白1,000cd/m2に加え、新たにピーク輝度4,000cd/m2を実現。太陽光や炎、レーザー光といった非常に強い光を発するオブジェクトを、リアルにディスプレイ上で再現できるようになった。

この全白1,000cd/m2、ピーク輝度4,000cd/m2を支えているのが、ソニー設計の新型二層液晶パネルとバックライト部分駆動(ローカルディミング)技術だ。

5年前に掲載したHX310の記事にもある通り、ソニーは、HX310から2枚のセル(表示セルと内蔵セル)を使った特殊な液晶パネルを採用している。X300の有機ELパネルからHX310の液晶パネルに切り替えたのは、輝度性能の問題。液晶と違い、有機ELは現状、全白1,000cd/m2を比較的長期に安定して出力できる技術が道半ばなのだ。

2枚のセルを使う理由は、コントラスト性能を高めるため。互いのセルを独立して光をコントロール(調光)することで、表示セル(カラー)と内蔵セル(モノクロ)のコントラスト性能が“掛け算”され、液晶でありながら、100万:1という自発光デバイス並みの高コントラストを実現することができる。特に暗部描写への効果は大きく、液晶パネルとは信じられないレベルにまで暗部を沈めることができる。

HX3110においても、「既存モデルとの色再現性の一致、黒輝度、全白1,000cd/m2、長期供給、更なる高輝度化、視野角改善および高速動画応答の実現性をすべて勘案した結果」を踏まえ、HX310と同じ構造の二層液晶パネルが使われた。

HX3110のパネル構造
HX3110(左)とX300の比較。多少色味が違うが、硯や墨、墨汁の黒の沈み込みは、パッと見どちらが液晶でどちらが有機ELか分からないだろう

ただ、その内容は従来と大きく異なるという。

商品設計を務めた田中氏は、「HX310の時は、我々で指定した仕様で二層液晶パネルとバックライト、およびパネルを構成する光学部品をソニー専用のパネルモジュールとして、LCDパネルメーカーから供給を受けていました。そしてその後、我々が設計・製造したパネル駆動回路を、自社の工場でパネルに組み付ける工程を取っていたのです」。

「一方HX3110においては、我々がパネルメーカに設計協力した二重液晶パネルに加え、我々が選定・設計した光学部品類やバックライト部品を各々購入するカタチを採りました。パネルからバックライト、そして我々が設計・製造したバックライトも含めた駆動回路をパネルモジュールとして、自社の工場で組み立てることで、より高い性能と安定した品質を確保できました」と話す。

ソニー株式会社 商品技術センター 商品設計第1部門 商品設計1部 2課 統括課長 田中綾氏

また「アスペクト比17:9、DCI 4K/4,096×2,160ピクセルという部分は共通ですが、HX310は31.1型、HX3110は30.5型にサイズチェンジしています。もっと小さいサイズになる話も出たのですが、何とか説得して“30型以上”を死守してもらいました」(上村氏)。

FALD技術をマスモニに初転用。ピーク輝度4,000を実現した

ピーク輝度4,000cd/m2の達成に大きく寄与したのが、バックライトの部分駆動技術の導入だ。

AV Watch読者ならばご承知の通り、バックライトの部分駆動は、映像に合わせてLED光の強弱を部分ごとにコントロールする、民生用の液晶テレビにおいてもごく一般的な技術だ。

しかしマスターモニターにおいては、バックライト制御で発生しがちなハロー(光のにじみ、漏れ光)などの観点から、これまで採用を見送っていた。信号に本来存在しないハローが作業者に見えてしまっては、測定器としての役目を果たせないためだ。

ただ、「(コンテンツの制作現場からは)被写体の持つ質感を意図を持った映像表現として伝えるために、小面積の更なる高輝度を求める声が出てきていました。それに、既に市場には4,000cd/m2相当の作品も存在していたので、4,000cd/m2を再生する環境を我々も提供する必要がある、と考えたのです」(上村氏)。

そこで彼らが目を付けたのが、前述したバックライトの部分駆動技術だった。

幸い同社には、民生用テレビ・ブラビアで開発された「バックライトマスタードライブ」(Backlight Master Drive)という資産があった。チームはこのFALD(Full Array Local Dimming)技術を応用。バックライトの部分駆動と二重液晶の画素を組み合わせた駆動を新規に開発することで、マスターモニターとしての性能を確保。結果、(二重液晶でありながら!!)ピーク輝度4,000cd/m2という高輝度を実現させた。

4,000cd/m2でグレーディングした、特殊なカラーパターンを表示した
上写真の中央部分を拡大したもの。数字「4000」が見えれば、その輝度まで表示されている証。撮影の都合で白飛びしてしまったが、実際は緑や黄、赤など全て4000まで表示されていた

「業務用とブラビアの開発・設計部隊は異なりますが、大きな枠組みでは、同じ組織内で動いています。近年では技術情報の交換も、定期不定期を問わず活発に実施していまして、様々な面で交流を行なっています。今回のバックライトの部分駆動の開発は、その活動の一環で生まれたものです」(上村氏)。

なお、「全白1,000cd/m2以上は、目指さなかったのか?」という問いに対しては、「全白1,000cd/m2は人の目にも眩しいレベルですから、更なる全白輝度の向上を要求する声は聞いていません。それに、製品の冷却や消費電力、筐体の大きさや重量の増加等を勘案しますと、全白を1,000cd/m2以上にすることは、費用対効果が大きくないと今は考えています」(上村氏)とのことだった。

3台のBVMに4,000cd/m2の信号を入力した。写真中央のHX3110だけが、4,000cd/m2の明るさを再現できる
4,000cd/m2でグレーディングした映像を、3台のBVMに入力。HX310(左)とX300(右)は太陽光が描写できず、輪郭が飛んでいるが、HX3110(中央)は太陽の輪郭やレンズフレアまで描写できている
BVM-HX310の場合
BVM-HX3110の場合
BVM-X300の場合

液晶でもやればできる。高速テロップが全くボヤけない!

今回の進化ポイントで個人的に印象的だったのが「高速動画応答」だ。

今から10年以上の前の、まだプラズマテレビと液晶テレビがシェアを競い合っていた時代、液晶テレビ陣が力を入れていたのが動画応答改善だった。長くなってしまうので詳細は割愛するが、液晶テレビは液晶分子そのものの反応、データの書き込み時間、前の映像を表示し続けるホールド表示といった性質が影響し、他のデバイス方式よりも残像感を感じやすい。

このため液晶テレビ陣は、バックライトを点滅させたり、黒画面を挿入したりなど、様々な対策を実施。カタログや製品情報ページで、それら技術と効用を積極的に訴求していた。

中でもソニーは、4倍速表示/240Hz駆動のフルHD液晶テレビを2008年に世界で初めて発売。補間したコマで間を埋めてクリアな画に見せる「モーションフロー240Hz」であったり、4倍速表示とバックライトブリンキング(上から順に画像を消画させる)技術を掛け合わせた「モーションフローXR960」など、残像対策のトップランナーだった。

「モーションフローXR960」のイメージ図

しかしディスプレイのトレンドがフルHDから4Kに切り替わると、フルHDの4倍速パネルは消失。HDRによる高輝度性が重視させると、輝度の低下を招くバックライトブリンキングやインパルス動作も行なわれなくなった。

映像にウルサイ人間でなければ、現状の“2倍速パネル+α(補間挿入やエリア点滅)”でも特段気にならないのだろうが、テレビの大画面化で、液晶の残像感は再び目立つようになって来ている。また、最新テレビの144Hz対応についても、高リフレッシュレートなゲーム映像をそのまま表示するためのものであって、残像感改善のために導入しているものではない。

さらにこんなことを書くと身もふたもないのだが、そもそも液晶よりも残像に強いとされる有機ELでさえ、ブラウン管の“残像感レス”に追い付くことができていない(CRTの残像感を超えるデバイスは、未完に終わったFEDくらいのものだろう)。HX3110は、高解像・高輝度・広色域・HDR・HFRに注力する近年のディスプレイにおいて半ば後回しにされてきた残像感の低減にメスを入れたわけだ。

HX3110における残像感低減は、フレーム単位による黒挿入とバックライトブリンキングという、シンプルかつ正攻法な対策が採られている。

しかしその威力は強烈で、縦・横に高速移動するテロップ映像を流しても、文字の輪郭がぼやけず、残像もまったく無い。銀座交差点で撮影された車のナンバープレートも、クッキリと読み取ることができ、どのフレームから動体ボケ(素材自体のボケ)が発生しているのかがしっかり判別できる。これはHX310はもちろん、X300でも実現できなかったことだ。

HX310(左)とHX3110の比較。HX310のテロップが2重になっている
HX3110(左)とX300の比較。X300の車がぶれてしまいナンバープレートが読みにくくなっている

しかも、多少のフリッカーは感じるものの、輝度の低下がまったく感じられない。聞けば、高速動画応答モード発動時でも、1,000cd/m2を実現しているのだとか。

これはひとえに、ピーク輝度4,000cd/m2を叩き出す強力なバックライトをフルスイングできるHX3110こそなせるワザなのだろう。ただ、液晶方式でここまでボケのない鮮明な動画像を見たのは衝撃。液晶もやればできたのか……。

視野角と映り込みにもメス。初のIP対応も

HX3110では、視野角および映り込みの改善も行なわれた。

視野角改善については、視野角性能でユーザーらから非常に高い評価を受けているという現行の4Kピクチャーモニター「PVM-X2400」と同等の視野角性能を目指し、視野角拡大フィルムと光学設計の最適化を行なったそうだ。

更なる「技術的詳細については、お答えできない」とのことだったが、「おそらくこの設計や素材を採り入れているディスプレイは、HX3110だけではないか」という。

また、映り込み低減用のAR(アンチリフレクション)コートもリニューアル。ARとは、“光の干渉”を利用することで外光の映り込みを軽減するもの。表面部分の細かな凹凸で光を乱反射させて映り込みを軽減する一般的なAG(アンチグレア)に比べて高価である反面、映像の精細感が失われず、斜めから見ても白っぽくならないなどのメリットがある。

X300、HX310においてもARコートを採用してきたが、HX3110ではそれらとも異なるAR部材を採用することで、さらに外光の映り込みを抑制。深い黒の描写とコントラスト性能を一層引き上げている。

HX310とHX3110の映り込み比較。HX3110の前でも同じようにカメラを構えているが、映り込みはほとんど見えないレベルに抑えられている

シリーズ初の「IP入力」対応に合わせて、信号処理系も全面改良された。

現在放送業界では、同軸ケーブルを使ったSDI伝送から、光ファイバーケーブルを使ったIP伝送へのシフトが進められている。IPで信号をやり取りした方が、SDIよりも少ないケーブル本数で大容量な伝送が可能だし、信号の多重化や双方向性、また汎用機器を使うことでのコストダウンが見込まれているからだ。HX3110では、HDMI、SDIのほか、別売のSFP28トランシーバーモジュールを用意すれば背面の専用端子に直接IP信号が入力できるようになっている。

「マスターモニターとしての品質の象徴であり、BVMに共通する12bit出力精度は、HX3110でも変わらず実現しています。また、追加ライセンスが必要にはなりますが、HDR→SDR、解像度、3D LUTを本機で変換して出力する機能も搭載されており、操作性も大幅に変更されています」(上村氏)。

なお、色域についてはBT.2020やDCI-P3に対応するものの、HX310を含む現行のPVM-X、LDM-Aシリーズと同じ色度点となるように設計されている。

「色域を個別に広げると、色温度の色度点を同じ値に調整しても、白色や肌色などの中間調が見た目で合わなくなってしまいます。また、赤・緑・青の単色も合わなくなります。我々はシステムトータルで使用するモニターの特性を考慮して、できるだけ色度点の値を合わせ、色が合うようにラインナップ展開をしています。このようにすることで、現場で我々の異なるモニターと組み合わせても、全てで同じ色を再現でき、シームレスな連携が可能になるのです」(上村氏)。

シリーズで同じ色度点になるよう、設計されているという
BVMの3モデルを並べたところ。色はほとんど変わらない

またHX3110では新たに、ウェーブフォームモニター(WFW)、ベクトルスコープ(Vector)、CIE1931 xy色度図のカラーガマットスコープ(CGS)などのスコープ機能が追加された。

特にWFWは、左側に入力信号のレベル表示、右側にHDR輝度もしくはSDRのコードバリューを表示可能。暗部確認用に0%から20%か、30%レベルを拡大する機能、黒潰れ・白潰れが分かるよう色付けする機能も備えている。

また、EOTF、ユーザーLUT、色域、伝送マトリクス、色温度など、設定値の異なる4画面を分割表⽰できる「Quad View機能」も、HX310同様に搭載している。

自発光デバイス殺しな液晶ディスプレイ、爆誕

HX3110、HX310、X300を横一列にならべ、ソニーが用意したデモコンテンツで3台の映像を同時比較することができた。

HX310からHX3110へと型名の控えめな変更という事もあって、視聴前は「実際の画はそれほど変わっていないかも?」と思っていたのだが、大間違い。HX310とHX3110は全くの別モノだった。

2019年に発売されたHX310は、確かに輝度が伸びたし、暗部も液晶とは思えないレベルまで沈むのが魅力だった。ただ、いまになって白状すると、X300と比べるとHX310はやはり黒浮き感が拭えず、おまけにX300独特の強烈なコントラストが生み出す解像感に比べて画が甘く感じられるなど、どこか平坦に見える液晶っぽさが残っていたのだ。

しかしHX3110は、ローカルディミングにより暗部の再現性が劇的に進化。黒が一段、いや三段階くらいギュッと締まって、X300とほとんど見分けがつかないレベルになった。また、高いコントラストによって見た目の鮮鋭感が倍増。画に奥行き感が生まれ、HX310の進化版と言うよりもまるでX300のような画に近づいた印象だ。

ちなみに、型名HX3110の意味は「HXのHがHDR、XがCrystal(Xtal)、31が30.5型のパネルサイズ、10は従来機の延長線上ではなく、パネルも回路も大幅な進化を遂げたメジャーチェンジを意味している」とのこと

さらに明部が突き上げられることによって、従来ならクリップされて再現できなかった太陽の様子も、丸い輪郭であったり、周辺に拡がる光線が滑らかな階調で色褪せずに再現されるようになった。

そしてひと際驚いたのが、微細な光の描写。例えば、太陽光の反射する水面の輝きであったり、宙に散らばる打ち上げ花火の星、暗がりに浮かぶ街のネオンや車のテールランプなど、従来であれば、自発光デバイスの御家芸だった“画素単位の光の煌めき”までも、しっかり再現されていた(もちろんその周辺にハローはない)。そのリアルな光景は、ディスプレイの黒縁の小窓から現実世界を肉眼で見ているかのようだ。

いやはや、二重液晶×ローカルディミング×ARコートの合わせ技で、自発光デバイスのうま味すら食べてしまうとは。まさに自発光デバイス殺し……“有機ELキラー”なとんでもない液晶ディスプレイだ。

はっきり言って、高輝度性能や暗部の描写、コントラスト、階調性、ユニフォーミティ、パネル制御、動画応答、映り込みなど、基本性能は完璧で、現状間違いなく史上最高クオリティのディスプレイになっている。基準器としての役割はもちろんのこと、今後数年は、すべてのハイエンドディスプレイが目指すべき指標となるだろう。

月額98,000円(税別)からHX3110がリースできる「S.Broad Program」

と、ここまでHX3110をべた褒めしてきたが、販売価格は437万8,000円。もし前述した残像感低減機能が欲しい場合は、追加で高速動画応答ライセンス「BVML-F10」(22万円)を購入する必要がある。

市場には、マスモニちっくな安価な製品も登場してきてはいるが、輝度が不足していたり、輝度が高いだけでFALDの精度が悪く暗部が正しく再現できなかったりと、どれも本当の意味でマスモニの代替になるクオリティに達したものがない(期待して見にいくと、いつもガッカリするレベルだ)。

と考えれば、400万オーバーのマスモニ価格も仕方がないのかもしれないが、だとしても高級車一台分の価格。スタジオや企業ではない、我々のような愛好家でも何かいい方法でゲットできる方法はないのか。

マーケティング担当の土肥氏によれば、「『S.Broad Program』という、リースプログラムがある」とのこと。これはソニー製の放送業務用機器とそのメンテナンス、保険をAll-in-Oneパッケージにして、廉価な支払いで利用してもらうことを目的に用意されているものだという。聞けば、法人だけでなく、個人も利用できるのだそうだ。

ソニーマーケティング株式会社 B2Bプロダクツ&ソリューション本部 B2Bビジネス部 AIソリューション企画MK課 プロフェッショナルモニターグループ 土肥明希乃氏

当該のホームページを覗いてみたところ、HX3110も同プログラムの対象モデルとなっており、3年のリース契約の場合、月額98,000円(税別)から利用可能らしい。

筆者と同様、HX3110の魅力に憑りつかれたなら、一度プログラム内容を確認してみてもよいかもしれない。

プロフェッショナルモニター:BVM-HX3110 商品紹介【ソニー公式】
阿部邦弘