草なぎ&地デジカ、首相に「鳩山家にも地デジを」

-「デジタル放送の日」式典。エコポイント強化も検討


12月1日開催


 デジタル放送推進協会(Dpa/ディーピーエー)は1日、東京・新宿の京王プラザホテルにおいて、「デジタル放送の日」記念の集いを開催。鳩山由紀夫内閣総理大臣も出席し、放送、機器メーカーなど各業界関係者らとともに、2011年7月24日まで約600日となった地上デジタル放送への完全移行に向け、決意を新たにした。

来場した鳩山首相司会はテレビ朝日の坪井直樹アナウンサー

 記念式典に先立って行なわれた地上デジタル推進全国会議 第七回総会では、岡村正議長と成田豊幹事会座長が登壇。受信機の普及目標は、2009年9月の72%に対し、実績が69.5%と下回ったが、普及台数は2009年10月の目標6,040万台を上回る6,085万台に達したことを報告。成田氏は「普及世帯率を当初の目標カーブまで戻すための努力が必要」として、2010年末に世帯普及率96%、台数8,639万台という目標に向けた第10次行動計画を発表した。

 アナログ停波の認知度は、9月時点で89.6%と、3月の数値から増加はなかった。一方、直接受信が可能なエリアは、12月時点で1年前の'08年12月から約2ポイントアップの約98%となっている。第10次行動計画では、送信側の対策として、中継局の整備や難視聴世帯への対策などの取り組む。そのなかで、アナログ停波までの早い時期に、CATVのデジアナ変換を導入し、衛星を使った暫定的な難視聴対策の運用期間の終了と同時期の2015年3月末に終了することも計画されている。


地デジ対応受信機の普及目標と実績

 また、地デジ化への理解を得る活動としては、デジサポ(総務省テレビ受信者支援センター)での相談や支援体制などの活動を強化。地アナ終了計画の「アナログ放送の常時レターボックス化」を前倒しで進めることや、先にデジタル移行を行なったアメリカの事例を参考に、お知らせ画面の一斉放送なども検討される。そのほか、「地デジ移行に費用が必要」などと偽る悪質商法への対策として、その手口の情報共有や、正確な情報の伝達を行なうことなども含まれている。

 受信機器メーカーの取り組みとしては、全ての視聴者にとって使いやすい機器の開発や、アナログテレビからのリサイクル対策、需要量に応じた的確な供給などが求められる。


認知度と受信可能エリアの推移受信機普及に向けた、受信側の対策会場では岡村議長より行動計画案の採択の確認が行なわれ、拍手により満場一致とし、承認された


■ 鳩山首相「エコポイントの強化も検討」

 続いて行なわれた「デジタル放送の日 記念の集い」では、鳩山由紀夫首相が挨拶。新政権にとっても、2011年7月24日の地デジ完全移行は必達である旨を述べた。

鳩山首相

 鳩山氏は「まだ小さな頃は家にテレビが無かった。小学生の時に白黒テレビが来て、プロ野球や力道山のプロレスを楽しみにしていた。そのあとカラーテレビになったときは、クレイジーキャッツがカラフルだったという思い出がある」と自らのテレビとの関わりを振り返る。

 デジタル化に対しては「このことでどれだけ世界が変わるか、ということが理解されていない側面がある。強制的にデジタル化させられ、お金を払わされるのでは、という人も多いのでは。そうではないことを政府としても伝える責任がある」との認識を示した。

 また、「地デジ化のメリットとしては電波の周波数帯が圧縮され、新たな周波数を防災などに使えるが、国民には分かりづらい。私が一番変わると思うのは、世論調査など時間のかかるものがすぐに行なえる双方向性。“自分の意見が伝わること”は大きなことで、それによって人生を変えることができる。最近、行政刷新会議の“事業仕分け”で開かれた政治を目指しているが、同じようにテレビでも自分の思いが世界に伝わる、その素晴らしさをPRする必要があるのでは」との考えを表した。

 政府としての地デジ化推進への協力については、経済環境が悪化するなかで、各業界が目標達成に向け変化する必要があると理解を求めつつ、具体的には「エコポイントを強化する必要性も考えている」という対策を示し、「2年後の7月24日に、うまくいったね、と喜びを分かち合いたい。そうして新しい世界が国民に開かれることを政府の一員として約束する」と述べた。

 引き続き、政府と各業界の代表者が登壇。それぞれの意向と、政府や他業界への要望などについて述べられた。

衆議院の委員会で出席できなかった原口一博総務大臣に代わって登壇した内藤正光総務副大臣。「海外における日本方式の地デジの採用で、将来的には、コンテンツの共有などが行なえるという意味でも、地デジの完全実施は遅らせるわけにはいかない。残された1年7カ月、さらに力を入れて取り組みたい」地上デジタル推進全国会議の岡村正議長(東芝相談役)。「エコポイントが追い風となって受信機の普及が大きく伸びており、制度の延長を期待する。重要な点は、こうした制度の活用とともに政府、製造、流通など関係業界がしっかり取り組むこと」NHKの福地茂雄会長。「電波カバー率は98.5%となったが、これからは、画一的ではなくピンポイントの対策が必要。地図で等高線を見て『受信できるはず』と思っていた場所が、実際行ってみると木が電波を邪魔していたというケースもあった。NHKの中では、実質的には“あと1年”しか残っていないと考え、デジタル化の成功を目指す」
民放連の広瀬道貞会長。「前の政府は地デジ移行の作業で2年間に2,000億円が必要と試算していた。今年度900億円は割り当てられるかと思っていたが、“仕分け人”たちは、その約半分にするとの決定を下し、『本当に必要なものは工夫するから』との話だった。今日の鳩山総理の発言に注目していたが、安心するに足りる内容だった。さすがは理系の見識を持っている。最後までよろしくおねがいします」JEITA会長の大坪文雄氏(パナソニック社長)に代わって出席したパナソニックの坂本俊弘副社長。「エコポイントは、受信機の売上だけでなく、グリーン、流通、リサイクルなど各周辺産業で雇用維持など波及効果をもたらしており、実施していない欧米との販売格差は歴然としている。来年度も継続をお願いするとともに、メーカーとしては使いやすく、省エネに優れた機器の開発に努め、リサイクルも責任を持って処理するよう取り組む」Dpaの間部耕苹会長。「ようやく活動が軌道に乗ってきたが、あと1年が正念場。これまでの活動を実のあるものにするため、関係者の協力が必要」


■ 地デジカの質問で「鳩山家はアナログ」が発覚

 セレモニーでは、鳩山首相に対して、地デジ推進キャラクターの草なぎ剛さんと、地デジカによる“公開質問”も行なわれた。「地デジカを知っていましたか」という質問に対して総理は「知っていたけど草なぎさんが中に入っていると思っていた」と切り返して会場の笑いを誘う。

草なぎさんらの質問に答える鳩山首相

 ところが、地デジカからの「総理の家はデジタル対応テレビですか」という問いには、意外にも「まだですよ」との回答。「首相官邸のテレビが地デジ対応というのを最近知った」とのことで、先ほどの力強い発言があっただけに、会場からも驚きの声が漏れた。草なぎさんらに「これを機にデジタル化しては」と促されつつ、気を取り直して2人と握手を交わし、「地デジ化に向けて、政府も地デジカをサポートしたい。草なぎさんを先頭にがんばりましょう」と呼びかけた。

 CMだけでなくテレビ番組でも共演し、「地デジカの言葉が分かる」ことから今日の“通訳”を務めた草なぎさんは、最近の地デジカについて「ギャグの返しもできる」とその才能に感心した様子。「総理と会って緊張している」という地デジカだったが、「最近ハードワークで少し疲れた。草なぎ君より人気でごめんね」とのことだった。

 Dpaの活動では、9月に「地デジで親孝行」と題したキャンペーンを実施。敬老の日に故郷の親に対応テレビなどを買って親孝行することをすすめ、購入者に抽選でプレゼントが当たるなどの施策が行なわれていた。その中で、募集された“地デジで親孝行”をテーマにした川柳の最優秀作品も発表された。

 草なぎさんは、出演CMのフレーズでもある「地デジカ、住んでますか」という質問を、地デジ推進大使の各局アナウンサーにぶつけたところ、もちろん全員「住んでいます」と回答。草なぎさんの自宅にも「たくさん住んでいる」とのことだったが、実家にはまだ住んでいないという。今回の親孝行キャンペーンは終わってしまったが、これを機に、実家にテレビを贈ることも前向きに考えているとのことだった。

地デジで親孝行の川柳の優秀作品最優秀作品。会場で表彰も行なわれ、表彰状と、副賞の32型液晶テレビが贈られた
大使を務める各局アナウンサーからの「デジタル放送ニュース」として、各方面の最新情報が説明された海外で、既に日本方式の地デジを採用することが決まった5カ国のうち、ペルー、ベネズエラからの政府関係者が登壇した。ペルーのフローレスさんは「ワンセグでより多くの人に放送を見る機会を与えられることが大きい」とコメント。ベネズエラのアセベドさんは「日本と機器開発などで協力関係を築けることが大きな決め手」と述べた建設中の東京スカイツリーの現状も報告。高さは8月に200mを超え、2010年夏に350mに達する見込み。完成後に準備ができ次第、関東平野に電波を提供予定とする
全国52カ所ある「デジサポ」の活動報告も行なわれた。高齢者への丁寧な説明や、難視聴対策での補助金の申請方法の説明などで、感謝の声が届いているという「地デジ芸人」のテツandトモと、「地デジで元気娘」の2人による、岩手県盛岡市でのイベント会場からの中継も。テツandトモは、「あずさ2号」の替え歌で“2011年7月24日からテレビはテレビはアナログから旅立ちます~”と熱唱北島三郎さんによる「地デジで元気音頭」で市民も盛り上がっていた


(2009年 12月 1日)

[AV Watch編集部 中林暁]