ミニレビュー
SpotifyをAKプレーヤーのいい音で。新機能Open APPをSR15で試す
2019年1月17日 08:00
Astell&Kernのポータブルオーディオプレーヤーで、SpotifyやAmazon Music Unlimitedなどのストリーミングサービスの音楽が聴けるようになった。「A&norma SR15」など4機種に追加された新機能「Open APP Service」のおかげだ。
Open APP Serviceとは?
Open APP Serviceは、対応するAKプレーヤーに音楽ストリーミングサービスアプリ(Open APK)をインストールできる機能。SP1000を頂点とする“新時代のAKシリーズ”計4機種で、ファームウェアを最新バージョンにすると利用できる。
- A&ultima SP1000(Fw1.15)
- A&ultima SP1000M(Fw1.15)
- A&futura SE100(Fw1.15)
- A&norma SR15(Fw1.12)
※カッコ内は12月12日時点の最新ファームウェアバージョン
Open APP Service対応プレーヤー
また、アユートが取り扱うACTIVOのポータブルプレーヤー「CT10」(直販39,980円)も、ファームウェアアップデート(V1.10)によりOpen APP Serviceに対応する。
これらのAKプレーヤーはカスタマイズAndroid OSを搭載しており、本体に保存したハイレゾ音源の再生だけでなく、デフォルトでロスレス音楽ストリーミングの「Deezer」と「TIDAL」(日本ではサービス未提供)に対応している。
Open APP Serviceでは新たに、SpotifyやAmazon Music、AWA、KKBOX、SoundCloud、Pandora、Melon、Bugs、Music Mate、QQ Musicが利用可能。各アプリのインストールや使用については、Astell&KernやACTIVOの製品を取り扱うアユートのサポート外となるが、プレーヤーを無線LANに接続してこれらのサービスの音楽が楽しめる。手持ちのハイレゾライブラリだけでなく、ストリーミングサービスも聴きたい人には嬉しい機能だ。
既に他社製ハイレゾプレーヤーの一部でストリーミングサービスに対応しているものがあるが、AKプレーヤーでの使い勝手はどうだろうか? 今回は、ファームウェアVer.1.12を適用した「A&norma SR15」(直販99,980円。以下、SR15)に、SpotifyとAmazon Musicをインストールして、実際に使い勝手を試してみた。
「ハイレゾプレーヤーにストリーミングサービスを聴く機能は必要か?」と考える向きもあるかもしれないが、実際にスマートフォンと聴き比べてみると、DACやアンプがハイクオリティであるため、低音のグッと沈み込む感じや音の迫力はなかなかのもの。流石に高音質なハイレゾ音源には及ばないが、スマホとは段違いのいい音が楽しめる。
SpotifyとAmazon Musicのどちらもプレイリストを選んだり曲の再生/停止、選曲時もキビキビと軽快に動いて気持ちがいい。あらかじめ本体ストレージやmicroSDカードに聴きたい楽曲をダウンロード保存しておけば、ネットワーク環境が無くてもオフライン再生ができる。スマホアプリとほぼ変わらない操作感で、戸惑うことはまったく無かった。
用意された膨大なプレイリストを聴いて、自分の知らなかった良い音楽に出会えるのもストリーミングサービスの魅力。単体で完結しているハイレゾプレーヤーに、新たな音楽体験の場を増やせるわけだ。例えば「ハイレゾで買いたい曲」というプレイリストを作り、初めて聴いて気に入った曲をそこに追加して、後でハイレゾ音源を検索する時の参考にする、といった活用の仕方も考えられる。
音楽アプリのインストール方法
AKプレーヤーでSpotifyなどのストリーミングサービスを使うには、アプリの本体ストレージへのインストール作業が必要だ。また、利用したいサービスの登録アカウントをスマホやPCであらかじめ作っておくと、インストール後にスムーズに使い始められる。
アユートではOpen APP Serviceの利用方法として、Astell&KernのグローバルWebサイトに掲載されている情報(英文)を紹介している。同機能の利用に関する利用規約や免責事項が載っているほか、アプリインストール時にもプレーヤー画面に同様の警告画面が表示される。
インストールの手順は以下の通り。今回はSR15を使ったが、SP1000/SP1000M/SE100も作業の流れは共通だ。
- 使いたいストリーミングサービスアプリのAPKファイルを用意する
※Astell&Kernでは入手先の一例としてWebサイト「APKPURE」を挙げている - PCとSR15をUSB接続し、本体ストレージ内の「Open Service」フォルダにAPKファイルをコピー
- メインメニューの「サービス」から、コピーしたアプリを実行してプレーヤーにインストール
- 「サービス」の一覧からアプリを選んで立ち上げ、用意したアカウントでログイン
2番目の、PCからSR15へAPKファイルをコピーする方法は、OSによって異なる。Windowsの場合、エクスプローラー画面からSR15の本体ストレージが見えるので、「OpenService」フォルダを見つけてファイルを移せばいい。
macOSの場合は、Finder画面からはSR15のストレージにはアクセスできない。GoogleのPC用アプリ「Android File Transfer」を使い、SR15にアクセスして、OpenServiceフォルダにファイルを移す。Android File Transferのダウンロード先や使い方はアユートのWebページで紹介されている。
SR15にAPKファイルを移した後、本体画面からインストールを実行する。USBケーブルを外し、メニュー画面から「サービス」を選択。
先ほど追加したアプリのアイコンをタップし、免責事項の警告メッセージに同意し、インストールが終わるまで待つ。用意しておいたアカウントでログインできれば、準備完了だ。
SpotifyやAmazon Musicを快適に操作。利用時の注意点も
Spotifyのホーム画面や操作ボタンの配置は、スマホアプリとほとんど変わらず、使い慣れている人なら迷わず操作できるだろう。クアッドコアCPUを搭載しているおかげか、動作ももたつくことなくキビキビと動く。設定画面では、オンライン再生時の音質を低/標準/高/最高の4段階で切り替えられ、自動にすることも可能。オフライン時のキャッシュを本体ストレージ/microSDカードのどちらに保存するかも選べる。
筆者は月980円のPremiumプランを有料契約しており、ほぼすべての機能がSR15で使えた。試した限りで使えなかったのは、SNSへの再生楽曲のシェア機能くらいだ。
Spotify Connectにも対応しており、SR15で聴いている曲を同一ネットワークに繋がっている対応デバイスからストリーミング出力して、リモコン的な使い方ができる。また、SR15を据え置きプレーヤーのように家のオーディオシステムに繋ぎ、Spotifyアプリの入ったスマホから聴きたい曲を選んで再生させることも可能だ。
SR15のディスプレイサイズは3.3型のため、一般的なスマホと比べると当然画面は狭く、楽曲リストの一覧性もそれほど高くない。画面キーボードをタッチ操作してアーティスト名やアルバム名などを検索できるが、どちらかというと積極的に曲を探して聴くよりは、用意されたプレイリストを聴いていく使い方のほうが合っている。
Spotifyアプリを聴きながら、SR15に保存したハイレゾ音源の楽曲リストを見たり、プレイリストを整理するといったことも可能。その場合は上部ステータスバーのクイック設定(無線LANやBluetooth、イコライザーなど)の下に横長のミニプレーヤー画面が表示され、Spotifyのアプリ画面に戻らずに再生/一時停止や曲送り/曲戻しの操作が可能。
Amazon Musicアプリもインストールして使ってみた。Amazon Music Unlimited(プライム会員は月額780円)を契約している筆者のAmazonアカウントでログインしたが、こちらもスマホアプリとほぼ変わらない操作感だ。オフライン再生も行なえ、4種類の音質設定を切り替えたり、楽曲の保存先の変更もできる。
ストレージ内のハイレゾ音源がAmazon Musicアプリの「オフライン楽曲」として表示され、再生もできたのはちょっと面白かった。ただし、Amazon Musicの楽曲とローカルのハイレゾを混在させたプレイリストは作れなかった。そういうニッチな使い方は想定していないのかもしれないが……。
また、Amazonのミュージックストア機能をオンにすると、Amazonミュージックで販売されているMP3音源を、PCを使わずにSR15だけで購入して再生できた。
アプリを使っていて気になったのは、Spotifyで音楽を流したままでSR15のハイレゾ音源を再生すると、Spotifyの音楽が一時停止するのだが、その際にイヤフォン(ヘッドフォン)の左チャンネルから「ザーッ」とうるさい雑音が0.5秒ほど結構な音量で流れること。この現象はAmazon Musicでは起きなかった。根本的な解決策ではないのだが、Spotify側で一旦曲を止めてからハイレゾ音源を再生するようにしたところ、回避できた。Open APP Serviceでインストールしたアプリを使っていて起きた問題はサポート外となるので、その点は注意が必要だ。
音楽コンテンツの楽しみ方が物理メディアやダウンロード購入からストリーミングへと移り変わる中、AKプレーヤーにOpen APP Service機能が追加されたことで、これらのサービスが便利に使えることが分かった。AKプレーヤーの使い方が広がる魅力的なアップデートであり、SpotifyやAmazon Musicのユーザーは注目だ。