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Astell&Kern、デュアルDACで99,980円のプレーヤー「A&norma SR15」

 アユートは、iriver Astell&Kernブランドのポータブルオーディオプレーヤー「A&norma(エーアンドノーマ) SR15」を7月下旬に発売する。価格はオープンプライスで、直販価格は99,980円(税込)。

A&norma SR15

 AKブランドでは既に、フラッグシップライン「A&ultima(エーアンドウルティマ)」の製品として「SP1000」を発売しているが、その下に「A&futura(エーアンドフューチュラ) SE100」、「A&norma(エーアンドノーマ) SR15」が追加。全部で3つのプロダクトラインとして今後展開していく。

A&norma SR15
左がA&futura SE100、右がA&norma SR15

 フラッグシップのA&ultimaは「AKの最先端テクノロジーを投影した最高峰かつ究極のプレーヤー」、「A&futura」はプレミアムラインとして「圧倒的な性能で新たな音楽体験を可能にするプレミアムHi-Fiクオリティ」、スタンダードな「A&norma」は「AKの哲学と技術を凝縮。Hi-Fiオーディオの出発点」と、位置付けられている。なお、「AK70 MKII」や「KANN」は併売となる。

3つのプロダクトラインの説明

 SR15のDACは、シーラスロジックの「CS43198」を左右チャンネル独立、デュアルで搭載する。「AK70 MKII」(79,980円:税込)も同じデュアルDAC構成だが、DACは「CS4398」を採用している。

【お詫びと訂正】記事初出時、“SR15のDACは、シーラスロジックの「CS43198」を左右チャンネル独立、デュアルで搭載する。これは「AK70 MKII」(79,980円:税込)と同じ構成”としておりましたが、「AK70 MKII」のDACは「CS4398」でした。お詫びして訂正します。(6月1日)

 クアッドコアのCPUも搭載。ユーザーインターフェイスも最新のものを搭載し、動作レスポンスも重視。快適な音楽再生が可能という。

 PCMは192kHz/24bitまでのネイティブ再生が可能。それ以上のデータは192kHz/24bitにダウンコンバートされるが、384kHz/32bitまでのファイルが再生できる。DSDは2.8MHzまでネイティブ再生が可能。176kHz/24bitのPCMへの変換再生となるが、DSD 5.6MHzの再生もできる。

 対応ファイル形式はWAV/FLAC/MP3/WMA/OGG/APE/AAC/ALAC/AIFF/DFF/DSF。内蔵ストレージメモリは64GB。microSDカードスロットも備え、最大400GBまでのカードが利用できる。

 ヘッドフォン端子は、2.5mm/4極バランスと、ステレオミニの2系統。出力レベルはアンバランスが2.0Vrms、バランスが4.0Vrms(負荷無し)。SN比(1kHz)は122dB(アンバランス/バランス)。

ヘッドフォン端子は、2.5mm/4極バランスと、ステレオミニの2系統
右側面

 ディスプレイは3.3型のTFT液晶で、解像度は480×800ドット。静電容量式のタッチスクリーンとなっている。側面に備えた物理キーで再生/一時停止、早送り、巻き戻しも可能。

 USB microB端子を備え、充電、データ転送に利用可能。USBオーディオ出力も可能で、トランスポートとして別のUSB DACへデジタル出力する事も可能。PCM 384kHz/32bit、DSDはDoPで5.6MHzまでの出力が可能。OTGケーブルは付属しない。PCと接続してUSB DACとしても利用可能で、PCMは96kHz/24bitまで対応。DSDファイルも再生できるが、PCM変換再生となる。

底面にUSB microB端子

 Bluetooth 4.1にも対応。コーデックはSBC/aptX/aptX HDに対応。プロファイルはA2DP/AVRCPに対応する。

 無線LAN(IEEE 802.11 b/g/n 2.4GHz)も搭載し、DLNAネットワーク機能「AK Connect」にも対応。プレーヤーとして、NASなどに保存した音楽ファイルをネットワーク経由で再生したり、スマホのアプリから遠隔操作も可能。据置きのネットワークプレーヤーとして使う事もできる。

 筐体はアルミニウム製で、カラーはダークグレイ。バッテリ容量は3,150mAhで、連続再生時間は約10時間。外形寸法は約99.7×57.5×16.1mm(縦×横×厚さ)、重量は154g。

 本体にケースは付属しない。別売オプションとして、レザーケースを用意。カラーはNeo Black、Charcoal Gray、Crimson Redを用意する。

ボリュームダイヤル
背面

音を聴いてみる

 試聴の前に、手にして驚くのはデザインだ。雰囲気は、これまでのAKプレーヤーと同じなのだが、ディスプレイが左に傾いている。メーカーの説明としては「左右どちらの手で持っても妨げられることなく、最適な位置でグリップできる絶妙な角度」とのこと。

 確かに、右利きの筆者が左手でプレーヤーを持つと、自然な手首の状態では、プレーヤーの重みで少し右に傾くので、左に傾いたディスプレイがそれを“補正”するような形になり、違和感は少ない。

 ただ、右手で持つと、本体が少し左に傾くため、左に傾いたディスプレイをさらに左に方向けているように見える。傾き自体はそれほどキツくないので、しばらく使っていれば慣れそうだが、最初はちょっと違和感があり、使っているとつられて首が左に傾いてしまう。

右手で持ったところ。下の写真のように、意識せずに持つと、画面がやや傾いて見える

 サウンドはAKシリーズらしい、ニュートラルかつワイドレンジ。使い慣れたCS43198を採用していることもあり、熟練の技を感じさせるような完成度の高いサウンドだ。

 印象的なのは、アンプの駆動力がアップしている事。イヤフォンのみならず、ヘッドフォンもしっかりドライブでき、特に中低域の制動力が高い。アコースティックベースが「ブォーン」と低く鳴る場面も、音がぼやけたり間延びせず、弦がブルッと震える細かさと、筐体が「ウォーン」と響く音で構成されているのがクリアに見える。「A&norma」は「AKの哲学と技術を凝縮。Hi-Fiオーディオの出発点」とされているが、サウンド全体の重心の低さ、安定感は、エントリー機を越えた上級モデルの風格だ。

左がA&norma SR15、右がAK70 MKII

 シーラスロジック「CS4398」のデュアルDAC仕様を搭載した、「AK70 MKII」と聴き比べると面白い。AK70 MKII自体、初代のAK70から、デュアルDAC化しつつ、アンプの駆動力も向上させたモデルだが、SR15は、そのアンプがさらに強化された印象なのだ。

 AK70 MKIIも、非常に完成度が高いサウンドなのだが、SR15の方が駆動力が高く、中低域のメリハリ、量感の豊かさ、パワフルさが別次元だ。全体的に躍動的で、音楽が楽しく聴ける。ボーカルの輪郭、立体感、背後の楽器との分離感もSR15の方が1枚、いや2枚上手に聴こえる。

 AK70 MKIIも、登場した時は「アンプが強力で大幅に進化したな」と感じたのだが、SR15を聴いた後で戻ると、平面的で素っ気ない音に感じてしまう。「同じデュアルDAC構成で、ここまで違うものか」と驚かされる。特に、能率の低い、鳴らしにくいイヤフォンやヘッドフォンを使っている人は、2機種の実力差を大きく感じることだろう。

 価格差はSR15が99,980円(税込)、AK70 MKIIが79,980円(税込)と、約2万円の開きがある。価格差は小さくないが、音を聴くと、「SR15を選んだ方がいいかな……」と納得するクオリティの違いは確かにある。