レビュー

「学生でも買える」Polk Audio、“ほぼ10万円”のフロア型で始めるオーディオ

Polk Audioフロア型「ES55」

「家でもヘッドフォンはちょっと……」「かといってBluetoothスピーカーじゃアレだし……」と考えた結果、“ちょっと良いスピーカーが欲しい”と思っている人は多いだろう。そんな人達に最近人気があるのが、Polk Audioのスピーカーだ。理由は“コスパの良さがヤバい”からだ。

日本に再上陸してまだ日が浅いので“知る人ぞ知る”立ち位置のPolk Audioだが、創業は1972年、50年以上の歴史を持つ老舗かつ、バリバリのピュアオーディオスピーカーブランドで、2012年には米国市場でトップシェアを記録した事もある。

Polk Audioが普通のスピーカーブランドと大きく違うのは“勝負している価格帯”にある。AV Watch読者には説明不要だが、いわゆるオーディオメーカーのスピーカーというのは、ペア数百万円のハイエンドスピーカーが山頂に君臨し、その下に50万円くらいのハイクラスモデル、さらに下に25万円くらいのミドルクラス、入門モデルは10万円ちょっと……みたいなパターンが多い。

お金があればそりゃあハイエンドが欲しいわけだが、現実的には入門クラス、頑張ってミドルクラス……みたいな感じになるわけだが、そんな“常識”に「みんなが買える良い音のスピーカー作らなきゃダメじゃね?」と、反旗を翻したのがPolk Audioだ。

1971年、お金は無いが、情熱はあった2人の青年が“学生の自分たちでも買える良いスピーカーを作ろう”と家のガレージでスピーカー作りを開始。その姿勢と製品が評価され、やがて米国トップシェアのブランドへと成長した……というわけだ。

面白いのは、「ブランドが成長したから数百万円のハイエンドを作ります」とか言い出さずに、「GREAT SOUND FOR ALL」(素晴らしい音を全ての人に)という最初の理念を今でも維持。「アフォーダブル(手ごろな価格)なスピーカー市場」に注力し続けており、例えば日本では3つのシリーズを展開しているのだが、エントリーの「MONITOR XT」シリーズのブックシェルフ「MXT15」はペアで27,500円、日本展開モデルで一番高価な「RESERVEシリーズ」でも、中核のブックシェルフ「Reserve R100」はペアで77,000円と、比較的リーズナブルに抑えられている。

要するに「オーディオってお高いんでしょう?」と言われても「いや、そうでもないっす」と言ってくれるのがPolk Audioというわけだ。

オーディオ入門で一気にフロア型を選ぶ、という選択肢

「それなら、ペア10万円くらいでいっちょオーディオやってみるか」という気になってくる。代表的なモデルは以下の通りだ。

  • MONITOR XTシリーズ
    ブックシェルフ「MXT15」 27,500円(ペア)
    ブックシェルフ「MXT20」 38,500円(ペア)
    フロア型「MXT60」 33,000円(1台)
    フロア型「MXT70」 49,500円(1台)
  • SIGNATURE ELITEシリーズ
    ブックシェルフ「ES15」 46,200円(ペア)
    ブックシェルフ「ES20」 57,200円(ペア)
    フロア型「ES50」 48,400円(1台)
    フロア型「ES55」 63,800円(1台)
    フロア型「ES60」 82,500円(1台)
  • RESERVEシリーズ
    ブックシェルフ「R100」 77,000円(ペア)
    ブックシェルフ「R200」 103,400円(ペア)
    フロア型「R500」 77,000円(1台)
    フロア型「R600」 103,400円(1台)
    フロア型「R700」 132,000円(1台)

「せっかくだからエントリーじゃなく、ちょっと上のモデル」、「あんまりサイズは大きくなく……」と考えると、恐らく多くの人が「これよさそうだな」と思うのが、ブックシェルフの「ES15」(ペア46,200円)や、ブックシェルフ「R200」(ペア103,400円)あたりだろう。

Polk Audio SIGNATURE ELITEシリーズから、ブックシェルフ「ES15」
左がR200のブラウン

実際、この2機種は以前レビューも掲載している通り、どちらも価格を超えた実力を持つブックシェルフで、オーディオ入門として十二分の音質を持っている。

その一方で、ブックシェルフには1つの弱点がある。それが“設置にスタンドが必要な事”だ。いや、机の上やテレビ台上に置くのであればスタンドは不要なのだが、“ピュアオーディオとしてちゃんと床に設置して音楽を楽しもう”と思った場合、床に転がすわけにもいかないので、スタンドが必要なのだ。

御存知の通り、スタンドにもピンからキリまであるが、そこそこ良いものを選ぶと数万円したりする。上に乗せるスピーカーが数十万円なら「まぁそんなものかな」と思うが、コスパに優れたPolk Audioの場合、「上のスピーカーと下のスタンドの値段があんまり変わらなくね?」という妙な状態になったりする。

となると、興味が出てくるのがフロア型。ブックシェルフを買って追加でスタンドにお金をかけるなら、最初からスタンド不要なフロア型を選んでしまおうというわけだ。

そこで今回はフロア型の「ES55」(1台63,800円)を2台用意。これでオーディオを楽しんでみた。2台で10万円を超えてしまっているが、お店ではこれよりもう少し低価格なので、“ほぼペア10万円”で買える。

フロア型の「ES55」

ちなみにメーカーに聞くと、私と同じような理由でフロア型を選んでいる人も多いようで、Polk Audioはフロア型を買う人の割合が多いブランドでもあるそうだ。

ハイコスパだが、抜かりのない作り

フロア型のES55は、当然ながらブックシェルフより大きい。例えばブックシェルフのES20(216×354×375mm/幅×奥行き×高さ)と比べると、ES55は297×319×1,053mm(同)となる。

ただ、横幅と奥行きのサイズ差はせいぜい数十ミリで、メチャクチャ巨大というわけではない。イメージとしては「大きめのブックシェルフを、下にグイーンと伸ばした背の高いスピーカー」という感じであり、床の専有面積としては、ブックシェルフ + スタンドの時と、大差はないだろう。

ES55が属する“Signature Elite”は、価格を抑えながらも、かなりコストのかかった、高音質パーツが使われているのが特徴だ。

ユニットは、2.5cm径のツイーター×1基と、16.5cm径ウーファー×2基という2ウェイ3スピーカー構成。インピーダンスは4Ωで、感度(2.83V/1m)は89dBだ。

2.5cm径のツイーター×1基

ツイーターは40kHzまで再生できる「テリレン・ドーム」で、ハイレゾに対応。ウーファーは、ポリプロピレンにマイカ(雲母)を加えることで、軽量ながら剛性を高めた振動板を使っている。独自のダイナミック・バランス・アレイ・プロセスを使い、不要な共振の原因をピンポイントで取り除いているという。これにより、ES55では再生周波数帯域34Hz~40kHz(クロスオーバー周波数2.4kHz)というワイドレンジな再生能力を実現している。

16.5cm径ウーファー×2基

筐体としてはバスレフなのだが、背後にバスレフポートが無い。どこにあるのかな? と床に這いつくばって探すと、ES55の底部に空間があり、そこにピラミッドのような黒いシルエットが見える。

「ES55」の脚部
ピラミッドのような黒いシルエットが見える

さらに目をこらすと、ピラミッドの上に大きな穴が空いている。これは、Polk Audioの特許技術である「パワーポート」で、ピラミッドの上にある穴がバスレフポート。そこから出入りする空気の流れを、ピラミッドの滑らかな形状でスムーズに整え、ポート付近で発生しがちな歪みや乱流を抑えている。ちなみに、開口部の表面積を拡張する役割もあるそうで、一般的なバスレフポートと比べて約3dBの出力がアップするという。

ピラミッドの上に大きな穴が空いている。これが「パワーポート」部分だ

コスパに優れるスピーカーだが、筐体にも抜かりはない。MDFのボディを指で叩くと、コツコツと響きが少なく、剛性が高い事がわかる。安くて剛性が無いスピーカーだと、ボコボコと響いてしまうのだが、ES55ではそんな心配はない。MDFを厚くしているほか、内部にも補強がしっかり入っている。さらに、前面バッフルにはプレートがしっかりネジ止めされている。

筐体の剛性が高い
バッフルにプレートを配している

背面にも注目。スピーカーターミナルはバネ式ではなくネジ式で、ちゃんと金メッキ仕上げ。バナナプラグやYラグも接続できる。さらに、高域用・低域用の端子が独立しており、バイワイヤリングやバイアンプ駆動にもレベルアップできる仕様だ。こうした細かい部分にも抜かりがないのが、オーディオスピーカーとして評価できる部分だ。

スピーカーターミナル

筐体の剛性を高めたり、スピーカーターミナルに高品質パーツを使っているのは、音を良くするためだが、結果的にこれらは高級感のアップにも繋がっている。おそらくオーディオをまったく知らない人が、ES55を見たら「え、これってウン十万円する高いやつじゃないの!?」と思うだろう。

迫力だけではない、確かな実力

マランツの小型ミニコンポ「M-CR612」

スピーカーを鳴らすアンプだが、マランツの小型ミニコンポ「M-CR612」(99,000円)を用意した。「本格的なオーディオなのにミニコンポ!?」と思われるかもしれないが、実はこのM-CR612、小さな筐体に8ch仕様のアンプICを搭載し、それをフルに活用して2chスピーカーを駆動できる、かなりマニアックで、ピュアオーディオ寄りなミニコンポなのだ。

アンプ機能だけでなく、CDプレーヤーやネットワーク再生機能、そしてBluetooth受信もできるなど、“省スペースでオーディオをはじめたい”という人にもマッチするコンポだろう。

まず、ES55を何の変哲もない壁の前に設置。M-CR612とスピーカーケーブルで接続し、スマホの「HEOS」アプリを用いて、Amazon Musicのハイレゾ音源を再生してみた。M-CR612には、トーンコントロールなどをバイパスして純度の高い再生を行なう「ソースダイレクト」機能があるのでこれを使っている。

お馴染み「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」(192kHz/24bit)を再生する。この楽曲の冒頭はキレの良いエレキギターの描写が目立つイメージがあるが、ES55で再生すると、ギターの鋭い描写と同時に、グォーンと沈み込むエレキベースの豊かさが迫ってくる。この低域の深さ、豊かさは、さすがフロア型スピーカーだ。

前奏に続いてドン・ヘンリーのボーカルが入ってくるが、それを聴いている時も、ベースとドラムの低域がしっかりと沈み、肺を圧迫するような豊かな音圧で響いてくれるため、音楽全体に安定感がある。イヤフォンやヘッドフォンで聴いていると、どうしてもボーカルの高音や、ギターのシャカシャカした部分にばかり意識が向いてしまうのだが、フロア型では下から上まで、バランス良く再生してくれるため、特定の帯域だけが目立つことがない。

この曲は、同じESシリーズのブックシェルフ「ES15」でも聴いた事があるが、それと較べても、ES55のサウンドには“どっしり感”がある。

ブックシェルフES15の音は、音場を広大に描き、そこにシャープにボーカルやギターの音像が定位し、聴いていて非常に気持ちが良いのだが、ES55ではそうした良さに、中低域が押し寄せる迫力が加わる事で、“耳で音楽を聴いている”だけでなく“体で浴びている感”が出てくる。これが、ライブ感に繋がり、自分の部屋がコンサート会場になったかのようなオーディオの楽しさが、より強くなる印象だ。

例えば、サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の「ムソルグスキー:組曲『展覧会の絵』」から「バーバ・ヤーガの小屋(Pictures at an Exhibition, M. A 24: X. The Hut on Fowl's Legs "Baba Yaga")」(44.1kHz/24bit)のような、迫力のあるクラシックを再生すると、フロア型らしい圧倒的にワイドレンジな音で、まるでコンサートホールの空間がこちらに押し寄せてくるような、圧倒されるサウンドを味わえる。このスケール感の大きさも、ブックシェルフではなく、フロア型ならではの醍醐味だろう。

また、いい意味で“低域が膨らみすぎない”のもES55の良いところだ。価格を抑えたスピーカーには、とにかく中低域を膨らませてドコドコ言わせて「迫力あるでしょ!」という製品もあるのだが、ES55は適度な締りがあり、不必要に肥大化しない。それが低域のシャープさにつながっている。このあたりも“ガチなピュアオーディオ用スピーカー”という印象だ。

さらなる高みを目指してバイアンプ駆動

前述の通り、M-CR612は8chのフルデジタルパワーアンプを搭載している。1chにつき2つのアンプを使い、出力としては4chを用意。スピーカーターミナルとしてはA系統、B系統の2系統を備えている。

M-CR612の背面

この4chをフルに活用する場合は、バイアンプ接続に対応したスピーカーと組み合わせ、ツイーターとウーファーをそれぞれ独立したアンプで駆動、干渉を排除した「バイアンプ接続」ができる。

「バイアンプ接続」の模式図

ES55のスピーカーターミナルを見てみると、ツイーターとウーファーでターミナルが分かれており、出荷時にはこのターミナルが金色のプレート(ジャンパープレート)で接続されている。このようなターミナルの場合、プレートを外し、ツイーター用とウーファー用、個別にM-CR612とスピーカーケーブルで接続すれば、バイアンプ接続ができる。

ジャンパープレートを外して
バイアンプ駆動してみる

どのくらい効果があるのかな? と半信半疑で再生ボタンを押したのだが、驚くほど効果がある。

同じ「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」を再生すると、細かい音がより細かく、クリアに描写されるようになり、ボーカルの口の動きや、ギターの弦が震えている様子などがクッキリ聴き取れる。

効果があるのは高域だけではない。深く沈み、気持ちよく張り出していた低域の描写も細かくなっており、ベースの「グォーン」の中にも、弦が「ブルブル」と震えている様子が聴き取れる。まるで自分の耳の性能がアップしたような感覚だ。

この変化には、アンプに余裕が生まれたり、ユニットからの逆起電力の低減なども関連していると思われるが、それに加えて“ジャンパープレートを使っていない事にいよる情報量の増加”もありそうだ。というのも、ジャンパープレートを使わず、より高音質な短いケーブルを使ったジャンパーケーブルに変えるだけでも、音がかなりクリアになる事がよくある。

ああ……オーディオ沼に沈んでいく

音のグレードがグンとアップしたので、音楽を聴くのがもっと楽しくなる。同時に、「もっと手を加えたら、どんな音に進化するだろう?」という好奇心が湧き上がってくる。

パソコンまわりに使った吸音材が何枚か残っていたので、それをスピーカー背面の壁に貼り付けてみた。壁全部を覆うほどの枚数はなかったのだが、何枚か貼り付けるだけで、音の余分な響きが明らかに減っていくのがわかる。

壁に貼り付ける吸音材

貼り付ける前と、貼り付けた後で比較すると、目の前に広がる音場に“深さ”が生まれる。吸音材を使う前は、左右に広がるだけだったステージに、奥行きが生まれた事で、ステージが立体的に聴こえる。空間が立体的になるだけでなく、その中央に定位するボーカルや、左右に位置する楽器の音像も立体的になる。例えるなら、歌手が“カキワリ”から“ちゃんとした人間”になった感覚だ。

例えば「ダイアナ・クラール/月とてもなく」で聴き比べると、吸音材を使ったほうが、空中に浮かぶダイアナ・クラールの口の位置や、細かな動きがより明瞭になり、同時に、お腹から出ている低い声がよりしっかりと聴き取れるようになるため、「口だけ空中に浮かんでいる」感覚から、「このへんにお腹がある人間がちゃんと立っている」感覚へと変化する。

また、余分な反響音が減った事で、静かな空間から、アコースティックベースの低域がブルンブルンと押し寄せてくる時の、音の細かさがより聴き取れるようになる。先程のバイアンプ接続による“音質の向上具合”が、吸音材を組み合わせた事で、より分かりやすくなったわけだ。

こうなってくると止まらない。「もっと吸音材を増やしたらES55の実力をさらに引き出せるのでは」とか「もうちょっとES55を内振りにすると定位が良くなるのでは」と、記事そっちのけで細かなセッティングに没頭してしまう。

単に音楽を聴いて楽しむだけでなく、もっとリアルな音で、もっと感動できる音で楽しむにはどうしたらいいか考え、実践し、音の変化を楽しむ……。苦労と言えば苦労なのだが、この試行錯誤こそオーディオ趣味の楽しさと言えるだろう。

映画やゲームでも活用してみる

迫力のある低音も再生できるES55を、オーディオだけで使うのはもったいない。そこで、壁にプロジェクターで映像を投影。映画を見たり、ゲームをプレイしてみた。

なお、M-CR612はBluetooth受信機能があるので、例えばスマホで表示しているNetflix映画の音をM-CR612から再生する事もできるが、Bluetoothでは少し遅延があるため、プロジェクターのアナログ音声出力をM-CR612の入力に繋いだ方が良いだろう。M-CR612には光デジタル入力もあるので、テレビと接続する時はこちらを使うと便利だ。

「トップガン マーヴェリック」を見てみたが、2chとはいえ、さすがフロア型。ダークスターが飛び立つシーンでは、本当に風圧が体に感じられるのではと思うほど、エンジンの轟音と切り裂く風の音が押し寄せる。同時に、巻き上げられた砂が、パラパラと細かく落ちてくる音が聴こえるほど解像度も十分に高い。

5.1chなどのホームシアターと比べ、ステレオスピーカーではサラウンド感は味わえないのでは? と思われるかもしれないが、ES55のようなちゃんとしたスピーカーで再生すれば、前方だけでなく、体の左右まで包み込まれるような音場の広さを実感できる。映像だけでなく、音でも映画の世界にしっかり入り込める。この音を体験すれば、多くの人が「これもうホームシアターじゃん」「2chで十分じゃん」と思うだろう。

人気FPSゲーム「Apex Legends」もプレイしてみたが、これも臨場感が凄い。いつもはゲーミングヘッドフォンで遊んでおり、正直言って音の情報は「あっちから銃声がしたので敵がいるのかな?」という“索敵”にしか使っていなかったのだが、ES55で聴くと、本当にゲームの世界に入り込んだような、部屋が戦いのフィールドにテレポートしたような感覚が味わえる。

安全ゾーンを求めてフィールドを移動している時も、風の音で“屋外の広さ”が描写されるし、敵に襲われて洞窟のような場所に逃げ込むと、音の反響や風が消えた事などで空間の“狭さ”が音から伝わってくる。臨場感が高まると、自分が本当に戦場で戦っている気分が高まり、楽しいと同時に、ちょっと怖い。

ちなみに「R99」という連射性能が凄い武器があるのだが、ヘッドフォンでプレイしていた時は「バララララ!!!」みたいな銃撃音だと思っていた。しかし、ES55で聴くと「ズボボボボボ!!」というような大迫力のサウンドになり「おっわ!!」と驚きの声が漏れる。無数の連射音の中にあっても“弾丸の重さ”みたいなものが、音でしっかりと表現されており、非常に気持ちがいい。ちなみに気持ちよくて撃ちまくるのだが、ほとんど敵には当たらなかった。

「学生でも買える」が「超本格的サウンド」

ES55を使っていて感じるのは、とにかく「コスパの良さ」だ。「学生でも買える良いスピーカーを作ろう」という理念を現在も貫き通しているのがPolk Audioの特徴だが、「安いからドンシャリでもいいでしょ」とならず、音はピュアな本格クオリティなのが評価できる。「こんな値段で、こんな音のスピーカーを出されたら、他社はたまらないだろな」と心配になってくる。

確かにES55の1台63,800円、実売でペア約10万円という価格は、Polk Audioのブックシェルフと比べるとちょっと高価だ。同じSignature Eliteシリーズでも、ブックシェルフ「ES15」(ペア46,200円)や「ES20」(ペア57,200円)を選べば安く済む。しかし、それらに1~2万円のスピーカースタンドを追加すると、ES55との価格差は小さくなる。

そう考えると、数万円プラスするだけで、スタンドが不要になり、ES55の雄大なサウンド、パワフルな低音が手に入ると考えると、「最初からフロア型を選んじゃおうかな」という気にもなってくる。もちろん、デスクトップ設置であればブックシェルフの方がオススメだが、例えば、テレビの隣に置く事を考えるのであれば、ES55のようなフロア型の方が利点が多いだろう。

日本の住宅では、フロア型をガンガン鳴らすと近隣の迷惑になる事もあるが、「低音が出すぎて困る」という場合は、イコライザーを使って低域を少し控えめにするといった工夫も可能だ。

限られた予算とスペースで、最高に音楽が楽しめる環境を構築するのがオーディオ趣味の醍醐味だが、コスパに優れたPolk Audioのスピーカーであれば、アンプなど、他の機材やアクセサリーに使える予算が増やせる事にもなる。そう考えると、より自由度の高いオーディオ趣味を楽しむ上で、心強いブランドと言えそうだ。

(協力:ディーアンドエムホールディングス)

山崎健太郎