レビュー
長時間フライトのお供に「JBL TOUR PRO 3」。機内エンタメを格上げ
2025年1月14日 08:00
JBLのフラッグシップTWS「TOUR PRO 2」を気に入っていた筆者。2024年10月に発売された新モデル「TOUR PRO 3」も発売日に購入し、直後のヨーロッパ出張に持参して新搭載の「トランスミッター機能」を試してみました。また、そこから更に3カ月を過ごした現時点での印象もお伝えします。
調べてみると、トランスミッター機能を持たないワイヤレスイヤフォンでも、単品のBluetoothトランスミッターを組み合わせて機内エンタメをワイヤレス化している人が少なくないようです。でも要するに私は何か理由を付けてTOUR PRO 3を買いたかっただけなので、今回はありがたくTOUR PRO 3のトランスミッター機能を利用してみます。
スマート充電ケースならではの使い心地
JBLならではのスマート充電ケースが便利だったのは、ケースのタッチパネルでイヤフォン側の音量を調節できるところ。これは飛行機の中でも活躍する機能で、機内エンタメ側の音量調節で機内アナウンスとコンテンツ再生の音量バランスを取り、スマート充電ケースで全体の音量を調節するという、まさに期待通りの使い方ができました。
これまで手持ちのイヤフォンを機内エンタメに接続する場合は、使用するイヤフォンによっては機内アナウンスが驚くほどの大音量になってしまうことがありました。安全上の理由から機内アナウンスの音量は常に一定の大きさで出力されるようになっているらしく、イヤフォンの感度によってはアナウンスだけが爆音になってしまうという理屈です。そのため以前はイヤフォンケーブルの途中に接続する音量アッテネーターを持参していましたが、TOUR PRO 3では不要です。
機内エンタメとの接続は、同梱のUSB-C~3.5mmケーブル(しまう場所がないので普段はパスポート入れに保管)に加え、別売の2ピン変換プラグを用意すれば大丈夫でした。機材によっては2ピン変換プラグが必要ないケースもあると思います。恥ずかしながら今回、この変換プラグを家に忘れてしまい、帰りの空港で購入するハメになりました。
スマート充電ケースではイコライザーや空間サウンドも選択できるため、映画を見るなら映画用に、音楽を聴くなら音楽用にカスタマイズできます。空間サウンドをオンにして音楽を再生してみると、音に包み込まれる感覚でリラックスできました。なお、トランスミッター機能の使用時も左側のハウジングをタッチして外音取り込みに切り替えられました。
好みのJBLサウンドが、傾向そのままブラッシュアップ。装着感も◎
もともと気に入っていたTOUR PRO 2、そして新たにTOUR PRO 3を選んだ理由は、そのサウンドが私の好みだからです。
音の圧(情報量)が強すぎず、サラッとした高音とモッチリした低音が心地よく感じます。特に低音表現がやみつきで、イヤフォンらしいダイレクトさとは少し異なる、スピーカーの周りの空気を動かして体を震わせてくるような低音が独特だなと感じます。心が揺さぶられるところがあります。
言うなればベースアンプの前に立って感じる空気の揺れであったり、バスドラムを鳴らすと空気が「ボン!」と蹴飛ばされてくる感じが見えてきます。EQで膨らませている音ではないので他の音域をマスクすることがなく、いわゆる“低音が強い”とは違います。低音を振動として体で受け取るような感覚が、イヤフォンでも雰囲気として味わえる気がするのです。
JBLと言えばジャズ……とよく教わりますが、私の感覚ではレッド・ホット・チリ・ペッパーズのようにリズム隊がタイトなバンドサウンドもハマります(アルバム「ステイディアム・アーケイディアム」を聴きました)。バスドラムの量感はもちろん、チャド・スミスがシバくスネアドラムにも体を貫かれるようなキレがあります。スネアドラムの音を構成する帯域は意外と広いので、低音か高音だけが出ていても本来のパワー感が出ないのです。
それとヴァン・ヘイレン「ライト・ナウ」のような、たっぷりした大きなロックビートも、バスドラムの余韻が楽曲のパワーを一層強く表現します。TOUR PRO 2より高域が伸びたことでシンバル類の表現にも余裕が増していると感じます。9月に見たサミー・ヘイガーの来日公演が脳裏によみがえりました。
というわけでサウンド的にはTOUR PRO 2でも十分に独特で楽しいのですが、TOUR PRO 3はその基本的なサウンドの傾向を大きく変えず、全体的なレベルが上がったなという感想を持ちました。前情報でBAドライバーが追加されると知ったときには「情報量が多くて耳が疲れる感じになったらイヤだな」と思っていましたが、店頭試聴により大丈夫だと確認できたので購入に至ったわけです。
装着感についてはTOUR PRO 2から変わらず、アップルAirPods Pro 2のように片手で簡単に装着できる便利さが気に入っています。イヤーピースは新たにフォームタイプも付属していましたが、せっかくの低音のワイルドさが少し吸われてしまう印象で、シリコーンのものに戻しました。私の場合サイズはMかLで迷うところ、Lのほうが密閉感があって低音の唸りもフルに味わえるものの、ひとつ小さなMで音がわずかに抜ける感じもユルくて心地いいなと思い、今はMを装着しています。
普段使いしたいレベルに向上したANC
今回乗った飛行機には、ANC機能付きのヘッドフォンが用意されていました。しかし、効果としてはTOUR PRO 3のほうが圧倒的に強かったです。音楽を鳴らさず耳栓代わりにして眠れるレベルです。従来のTOUR PRO 2は“耳栓”としてはヨワかったので嬉しいところ。装着状態が変わったときのアダプティブANCの反応も早くなった感じがします。
持参していたAirPods Pro 2(Lightning)と比較すると、どちらもノイズキャンセリングのレベルは満足な水準にあるものの、TOUR PRO 3のほうが通り抜ける音域が少し狭いような印象。フライト中に聞こえる音は、AirPods Pro 2が「フォー」であれば、TOUR PRO 3は「サー」という感じでした。移動中に寝るならTOUR PRO 3を選びたいです。ただ、一つだけ欲を言いたい部分があるので次に述べます。
音声プロンプトの音がデカすぎてビックリ
ここまで述べた通り全面的に気に入っているTOUR PRO 3。一つだけアップデートを待ち望んでいるのは、ペアリング成功時などに鳴るサウンドガイド(音声プロンプト)の音量です。かなり音がデカくてビックリします。TOUR PRO 2の頃から気になっていたものの、2はノイズキャンセリングが強くないので音量差が小さく、ビックリ度がまだ低めでした。これ、スマホアプリかスマート充電ケースから音声プロンプトの音量を選択できるようにしてほしいです。切実に。
おそらく私はイヤフォンの再生音量が小さめで、適正と感じるガイド音量には個人差もあるかもしれません。でも私はこれが鳴るたびにビクっとしてしまい、フライト中も電池残量の警告音に叩き起こされました。これが数千円のイヤフォンなら贅沢言いませんが、実売4万円するJBLの“フラッグシップTWS”ですから、ファーストクラスと言わないまでも、ビジネスクラスぐらいのおもてなしをひとつよろしくお願いしたいところであります。
とはいえ、私自身でも試行錯誤はしています。サウンドガイドを音声にしてみたり、言語を変えてみたり。ムキになって11言語を全部聞いてみた結果、かろうじて中国語(普通话)が少しだけビックリ度が低い音だったので、今はそうしています。おかげで音が鳴っても何のガイダンスなのかはわからない状態ですが、そもそも接続先デバイスの画面でペアリング状況はわかるので、完全無音でも問題ありません。
ちなみに、Bluetoothの遅延についてもチェックしてみました。iPhone 14 Proと「YouTube」アプリでは遅延がはっきりと感じられますが、スマートオーディオ「ビデオ」モードにするとかなり改善します。
トランスミッター機能では、もともとビデオモードと同じぐらい遅延は小さめでした。MacBook Proを使って3.5mm~USB-CとUSB-C~USB-CケーブルのそれぞれでYouTube動画を見てみたところ、接続方法による差は感じられませんでした。
イヤフォンの旅、ひとまず着陸?
検証したとおり、トランスミッター機能の挙動は期待通りでした。今後の旅には欠かせない存在になりそうです。イヤフォン自体もTOUR PRO 2からワイルドな低音というキャラクターを継承しつつレベルアップし、ノイズキャンセリングの強化など、日常性能も他社の上位機種に並ぶぐらいに高められていることが実感できました。着け心地がとても軽くて疲れないので、家でも原稿を書いたりする作業中によく着用しています。
JBLイヤフォンの音色はSBC/AAC接続でも寂しさを感じず、圧縮音源やBluetoothに合っているキャラクターだと思うので、高音質コーデックを使えないiPhoneユーザーの私でも損した感が少ないです。これであればメインのイヤフォンとして1台持ちをするにも十分そうですし、今後セール価格で3万円ぐらいになったりすると、イヤフォンに詳しくない人にも薦めやすいかなと思っています。特に楽器演奏が好きな人には、一度この低音表現を味わってみてほしいです。