レビュー
ソニー「WG-C20」で外出先でもスマホでフルHD番組視聴
SeeQVault対応でポータブルサーバーがレコーダ連携可能に
(2013/11/19 10:30)
スマートフォンで音楽や動画、電子書籍などを楽しめる環境は整ってきたが、コンテンツが増えれば増えるほど心配になるのが、本体やmicroSDカードのメモリ残量。これを気にせずたくさん持ち運びたい場合に使えるのが、ソニーのポータブルワイヤレスサーバー「WG-C20」だ。無線LANを搭載したストレージで、別売SDカードなどに入れたコンテンツを、スマホからワイヤレスで再生できる。
4月に発売された第1弾モデル「WG-C10」は、自分で撮った写真やビデオなど、著作権保護されていない手持ちのコンテンツを再生するのがメインだった。新モデルのWG-C20は、新たにnasneなどレコーダで録画した番組を持ち運んで外出先でも視聴できる「おでかけ転送」に対応。さらに、近距離無線通信のNFCにも対応し、ワンタッチでスマホと接続できるようになった。従来モデルと同様に、スマホのモバイルバッテリとしても利用できる。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は1万円前後。
今回は10月24日に発売されたAndroidスマートフォンのXperia Z1 SO-01F(ドコモ)と、nasneとの組み合わせで、新機能であるおでかけ転送を中心に試した。
SeeQVault対応で、SDカードのフルHD動画持ち出し/再生が可能に
利用の前に、まずは「おでかけ転送」対応機器の組み合わせを確認しておきたい。WG-C20へ「おでかけ転送」が行なえるのは、SCEのネットワークレコーダ「nasne」と、11月16日に発売されたソニーのBDレコーダ、BDZ-ET2100/ET1100/EW1100/EW510だ。
さらに、転送するためにはコンテンツ保護技術の「SeeQVault」(シーキューボルト)に対応したSDカードをWG-C20に挿入しておくことが必要となる。再生には、Xperia Z1などの対応スマートフォンを利用するか、他のスマートフォン + DTCP-IP再生アプリが必要。対応端末などの詳細は後ほど説明する。
「おでかけ転送」と視聴に必要なもの
・「WG-C20」本体
・SCE「nasne」またはソニー製BDレコーダ「BDZ-ET2100/ET1100/EW1100/EW510」
・SeeQVault対応SDカード「SR-16SA」など
・Androidスマートフォン(対応Xperia以外は、DTCP-IP再生アプリも必要)
WG-C20本体を見て最初に思うのは、Xperia Z1とほぼ同じサイズ/デザインということ。外形寸法は約144×71×9mm(縦×横×厚さ)で、Xperia Z1(144×74×8.5mm)と重ねてもほぼぴったりという大きさ。カラーもZ1に合わせたブラック/ホワイト/パープルの3色を用意する。従来モデルのC10(105×50×18.5mm)に比べて横幅があり、片手で持つことはできるが、シャツの胸ポケットに入れて運ぶのは厳しそうだ。重量は約135gで従来モデルとほぼ同じ。Z1の光沢ある表面に対し、C20はラバーのようなマットな仕上げになっている。
本体にあるボタンは電源とリセットボタンのみ。そのほかにはSDカードスロットとUSB端子2系統。USBは片方がC20の充電やPCからのデータ転送に対応したマイクロUSBで、もう片方はスマホなどに給電したり、USBメモリを接続するためのAタイプのコネクタ。表示は、無線LAN接続や充電などの状態を示すLEDインジケータを備える。ほとんどの操作はスマホから行なう。
録画番組を外出先などでスマホから視聴する方法は既にいろいろあるが、WG-C20を使うメリットは、スマホ本体のメモリを気にせずSDカードに入れて持ち運べる点。前述したようにサイズは“5型スマホ並み”だが、カバンなどへC20入れたままワイヤレスでスマホから視聴できるため、それほど気にならない。ストリーミング再生の「DTCP+」とも異なり、海外などモバイル通信環境が良くない時でも利用可能だ。
転送/再生には、Android用の無料アプリ「おでかけ転送 for WG series」を使用する。ソニーモバイル製のXperia Z1/Z/A/AX/SX/GX/UL/VLなどでの再生に加え、DTCP-IPアプリのTwonky Beamでも再生可能。対応レコーダ/スマートフォンの詳細はソニーのサポートページで案内している。Twonky BeamアプリでのDTCP-IP再生は700円が必要だが、NTTドコモ端末ユーザー(~'14年3月31日)や、有償化以前から使用していたユーザーは無料で利用できる。なお、再生機器についてはZ1以外の端末でも試したので、その結果は後述する。
WG-C20が対応した「SeeQVault」は、東芝とパナソニック、サムスン電子、ソニーが共同開発した次世代著作権保護技術で、デジタル放送の番組をHDのままメモリーカードに保存できることなどが特徴。今回は、ソニーのmicroSDHCカード「SR-16SA」(16GB/実売5,000円前後)をSDカードアダプタに入れて使用した。
WG-C20の電源ボタンを3秒以上長押しすると電源とともに無線LANが起動。Z1などスマートフォンの無線LAN接続先として選択できるようになる。Z1などNFC対応スマホであれば、NFCマークの部分を重ねあわせると、無償アプリの「File Manager」をGoogle Playから呼び出してダウンロードし、もういちどタッチすると無線LAN接続できる。
このアプリは従来モデルのC10と同様にPCやデジカメなどのファイルを再生するものだが、C10で利用していた「PWS Manager」とは別なので、C10のユーザーも別途ダウンロードすることが必要。おでかけ転送も別アプリだが、転送時には無線LANセキュリティ設定が必須となるため、まずはこのアプリで設定しておく。アプリ画面右上のサブメニューで「設定」→「セキュリティ」を選び、「WPA2」に設定してパスワードを決めておく。また、LAN内のレコーダに接続するためには、C20をブリッジ接続するための「インターネット設定」も必要。アプリ画面から、家の無線LANルーターのSSIDを選んで設定する。
これらの設定後に、「おでかけ転送for WG series」をダウンロードして起動。File Managerのヘルプ画面をたどっていくとアプリのダウンロードページに行けるほか、直接Google Playから入手してもOKだ。
Xperia Z1との組み合わせで快適に視聴。他の端末での再生もチェック
Xperia Z1で「おでかけ転送for WG series」を起動すると、LAN内にあるサーバーを表示。そこからnasneやBDZ-ET2100などのレコーダを指定し、転送したい番組を選択する。番組名の下には録画日時や動画時間のほか、ファイルサイズと転送可能な回数が表示されており、ダビング10の番組だと「10回」と表示される。
番組名をタップすると画質選択が表示され、「HD画質(DR)」か「標準画質(AVC)」を指定する。開始する前に、選択した画質で転送した場合のファイルサイズも確認できる。先ほどの番組一覧で表示されていたファイルサイズは、AVCで転送した場合のもののようだ。なお、Xperia Z1はフルHDのファイル再生にも対応するが、ソニーの動作確認機器では、現時点でZ1(ドコモ/au端末)以外はサポートしていない。
実は筆者は最初、無線LANのセキュリティ設定(WPA2)を後回しにしていたのだが、おでかけ転送を開始しようとしても毎回エラーになってしまった。設定しないと転送そのものが行なえないようなので注意してほしい。なお、SDカードに転送した録画番組を、SeeQVault非対応のSDカードに試しにフォルダごとコピーしてみたが、著作権保護のため、当然ながらC20でも再生はできなかった。
実際に地デジでDRが約1GB、AVCが約140MBの10分番組を転送した場合、DRだと10分12秒かかったが、AVCでは1分35秒で終わった。また、BSデジタルの番組を転送したところ、DRで約11.5GBの30分番組だと、AVC変換時のファイルは300~500MB程度。時間はAVCで約5分30秒で転送できた。
フルHD液晶を持つXperia Z1で画質を比較すると、AVCでも番組の内容を把握するのに支障はないが、テロップの周囲や、輪郭の細かい線が表示されている時に、AVCだとモスキートノイズなど細かな乱れが出ていた。DRだと斜め線のジャギーもほとんど気にならない。ただ、DRだと番組によっては再生中に「動画を読み込み中」と表示されて何度か待たされることがあったのに対し、AVCでは一度再生できれば、引っかかることは無かった。
また、転送ファイルのサイズは、2時間を超える映画だとDRでは15GB~20GB以上になってしまう。フルHD画質で観られるのはうれしいが、画質が多少落ちてもAVCのほうが実用的だと感じる。なお、転送完了後、C20の電源を自動でOFFにする設定も可能なので、就寝前に転送するといった使い方もできる。また、観終わった番組をアプリの操作で消去することも可能なので、画質を最優先するなら、こまめに消すという運用もアリだろう。
Xperia Z1は、内蔵チューナでフルセグ視聴できるなど、もともとAV機能が充実しているが、テレビ視聴にはイヤフォン出力兼アンテナケーブルの接続が必須であるほか、録画はワンセグになる。スポーツ中継などのリアルタイム視聴はZ1本体のテレビで観て、ドラマやニュースなど定期的に観たい番組はC20経由で、といった使い方が実用的と感じた。Z1など防水スマホなら、入浴中にも活用できそうだ。
続いて、Xperia Z1以外のAndroid端末でも視聴できるかを試した。使用したのは、ウォークマンの「NW-F887」や、iriverのタブレット「ITQ701 WOWタブレット 16GB」。
これらの端末にGoogle Playから「おでかけ転送for WG series」をインストールしたところ、番組の転送や、転送後の番組選択までは行けるが、番組名をタップしても再生が始まらない。アプリの設定画面を見ると、Xperiaには「DTCP-IPプレイヤー」の項目にソニー純正の「TV番組プレーヤー」が選択されているのだが、他の端末ではこの項目に何も表示されない。このアプリでの再生は、Xperia以外のAndroid端末ではできないようだ。
そこで、対応のDTCP-IPアプリとして案内されているパケットビデオの「Twonky Beam」を利用したところ、ウォークマンやiriverのタブレットから「WG-C20」をサーバーとして選択すると、問題無く再生できた。ただし、複数のスマホを使った場合でも、同時に2台以上で番組再生はできない。
そのほか、iOS用のDTCP-IP対応アプリも試したところ、第3世代iPad(iOS 6)のTwonky Beamや、アルファシステムズの「Media Link Player」、デジオンの「DiXiM Digital TV for iOS」でも再生できた。ただ、これらの他社製アプリを使った再生に比べると、最初の「おでかけ転送for WG series」+「TV番組プレーヤー」の方が、トリックプレイ時の安定性の高さや、番組読み込みの失敗がほとんど無い点などで、使いやすく感じた。また、iOS端末にはC20用の転送アプリが無いので、転送時にはAndroid端末が必要になる点には注意しておきたい。
デジカメ画像のシェアや動画/音楽再生対応。スマホの「給電専用モード」も
パソコンからSDカードやUSBメモリに転送した動画や音楽、写真を、アプリの「File Manager」を使ってAndroidスマートフォンで再生することも可能。なお、iOS端末でも対応予定としているが、今回試した時点では「File Manager」のiOSアプリは存在せず、Webブラウザからもアクセスできなかった。
Androidスマホでの再生対応フォーマットは、動画がMPEG-4(M4V、MP4)、QuickTime(MOV)、音楽がリニアPCM(WAV/AIFF)、AAC(AAC/M4A)、HE-AAC、MP3、静止画がJPEG、GIF、PNG、BMP。SDカード内にあるファイルから「写真を見る」や「ビデオを見る」などの項目を選ぶと、再生可能なファイルがリストで表示される。
音楽を再生したところ、アルバムのジャケットも表示できたほか、1曲が終わると自動で次の曲に進むので、たくさんのファイルを入れて連続で聴くこともできた。なお、アーティストごとの絞り込みはできないなど、スマホのWALKMANアプリのような細かな操作は期待できないので注意したい。
デジカメで撮影したSDカードをC20に挿入すれば、そこからスマホに画像をコピーしてFacebookなどのSNSに投稿することも可能。最大8台の端末からC20に同時接続できるので、撮影後の写真を、その場にいる友人に渡したい場合などにも使える。
PDFやテキスト、Word、Excel、PowerPointなどのドキュメントファイルは、リスト内に表示されるものの、File Managerで開くことまではできない。別途対応アプリがスマホに入っていれば、ファイル選択時に対応アプリ一覧が表示され、そこから選んで表示できる。
SDカードからの再生/コピーだけでなく、スマホ側から写真を転送することも可能。File ManagerにはSD/USB/ローカルを切り替えるタブがあり、ローカル(右端)を選ぶと、スマホで撮影した写真や動画など表示。ここから選んでC20にコピーできる。複数選択して同時転送したり、コピー後にスマホ内の元ファイルを消すといった設定も可能。スマホのメモリ容量がいっぱいになった場合などの緊急退避先として活用できそうだ。C20に挿入したSDカードのメモリ残量やバッテリ残量を、File Managerで確認することもできる。
パソコンのWebブラウザから、C20の本体設定も可能。パソコンの無線LAN接続先としてWG-C20を選び、WebブラウザでC20のIPアドレスを入力すると、本体にアクセスできる。セキュリティなどネットワーク設定のほか、本体ソフトウェアのアップデートや、DLNAとNFCのON/OFFなども切り替え可能。ただし、Webブラウザ画面でSDカードのファイル再生や転送といった操作は行なえない。C20の電源をOFFにすれば、パソコンのSDカードリーダーとしても使える。
なお、前述した通りiPhone/iPad/iPod touchでは、現時点で写真などのワイヤレス再生/転送はできないが、iOSアプリも今後提供予定(iOS 6.0以降対応)とのことなので、早く登場することを期待したい。
C20のもう一つの大きな機能は、スマホの外部バッテリとして使える点。ユニークなのは無線LANをOFFにする「給電専用モード」。電源と無線LANのON/OFFは前述した通り電源ボタン長押し(3秒以上)で、ON時にボタンを短く押す(0.5~1秒)と、給電専用モードへ移行。もう一度短押しすると無線LANがON、長押しなら電源OFFとなる。
給電専用モードにすると出力は最大1.5Aまで対応し、急速充電が可能。手元の第3世代iPadでも、無線LAN ON時は充電されなかったが、給電専用モードだと充電を開始した。なお、C20のバッテリ容量は3,000mAhで、連続使用時間は、SDカード内のMP3再生時で最大10時間としている。
外出先での録画番組視聴が手軽に
SDカードへの「おでかけ転送」に利用している著作権保護のSeeQVault(SQV)は、まだ対応機器が少ないが、今後の広がりによっては、録画番組を楽しむための自由度の広がりに期待が持てるものだ。例えば、テレビやUSB HDDがSQV対応になれば、テレビを買い替えても録画したUSB HDDを付け替えて視聴できるようになったり、スマホ本体のSQV対応により、機種変更後も著作権保護コンテンツをmicroSD差し替えだけで継続利用できるといったことが想定されている。
SQV対応のmicroSDカードは、ソニーストア価格で16GBが4,480円、32GBが7,980円とやや高価(いずれもClass 4)だが、もっと普及して低価格化されれば、SDカードを差し替えて多くの番組を楽しめるようになっていくかもしれない。
C20でおでかけ転送できるレコーダは、今のところnasneとソニーの最新BDレコーダに限られているが、これはnasneなどがDLNA/DTCP-IPの「ダウンロード型ムーブ」(スマホからの操作でダビング/ムーブできる)に対応しているため。DTCP-IPダビングできる市販レコーダ/USB HDD録画対応テレビの多くは「アップロード型ムーブ」(レコーダの操作でダビング/ムーブする)のため、C20へのおでかけ転送ができないのが現状だ。
ただ、「CEATEC 2013」のSQVブースレポートでもお伝えしたように、アップロード型の機種でも持ち出しできる解決策として、ダビング操作をPCから行なえるソフトも開発中だという。提供時期や方法などは明らかにされていないが、このソフトが使えるようになれば、ほとんどの録画対応テレビやレコーダでおでかけ転送が可能になるだろう。
スマホ用のワイヤレスサーバーは各社から既に様々な製品が登場し、多機能化の競争もひと段落してきた。そんな中、ソニーの第2弾モデルであるWG-C20はレコーダ連携という新たな魅力を加え、さらに用途が広がった。Xperia + nasneのユーザーには特におすすめできるほか、スマホ操作だけで番組転送/視聴/消去できる手軽さで、より多くの人にとって“実用的な番組持ち出し”を可能にする製品だと言える。
WG-C20(ブラック) | WG-C20(ホワイト) | WG-C20(パープル) |
SR-16SA(16GB) | SR-32SA(32GB) |