藤本健のDigital Audio Laboratory

第1009回

2万円を切る、Steinbergのお手頃USB-Cオーディオ「IXO12/22」実力検証!

SteinbergのUSBオーディオインターフェイス「IXO12」(ブラック)、「IXO22」(ホワイト)

ヤマハから、Steinberg(スタインバーグ)ブランドのエントリー向けオーディオインターフェイス「IXO12」、および「IXO22」の2機種が1月下旬に発売された。同ブランドの人気オーディオインターフェイスであった「UR12」および「UR22mkII」の実質的な後継機にあたるもので、「UR22C」などよりも1つ下のグレードとなっている。

サイズはUR22mkIIなどより一回り小さく、コンパクトながら最高で192kHz/24bitの録音・再生にも対応する。価格的にも安く、IXO12の実売価格は税込みで14,300円前後、IXO22が19,800円前後だ。

どのようなオーディオインターフェイスなのか、UR22mkIIやUR22Cとの違いはどこか、そしてオーディオ性能はどうなのか、などをチェックした。

Steinberg「UR」シリーズとヤマハ「AG」シリーズ

オーディオインターフェイスは今や国内外含め数多くのメーカーが参入し、激しい競争が行なわれてきた結果、どれも高性能で差がなくなりつつあり、機能も近いものになってきている。いわばコモディティ製品ともいえるものになってきており、ユーザーも単に価格で選ぶ……というケースが増えているように思う。

そのオーディオインターフェイスを日本国内でけん引してきたのがヤマハだ。現在はヤマハの100%子会社となっているドイツSteinbergの「URシリーズ」は、この10年で大きなシェアをとってきた。

中でも膨大な数が売れたのが2in/2outの「UR22mkII」だ。他メーカー製品も含め、日本でもっとも売れたオーディオインターフェイスだろう。

UR22mkII

一方で、ヤマハブランドで展開してきた配信用のオーディオインターフェイス兼ミキサーの「AGシリーズ」も爆発的なヒットとなった。開発はどちらも日本のヤマハであり、ドライバも共通のものが使われていたが、それぞれで方向性を変えて打ち出したことで、用途でユーザーが分かれ、どちらも大成功を収めている。

そんなUR22mkIIも、UR22Cにバトンタッチしたことで、2022年に生産を終了。ただ性能的にはUR22Cのほうがワングレード上だったこともあり価格も少し上がってしまった。

またUR22mkIIのマイクプリアンプを1つに絞ったモデルであるUR12も生産終了となっていたため、ヤマハにエントリー版のオーディオインターフェイスがない状況がしばらく続いていた。

ちなみに、UR22mkIIとUR22Cの見た目もサイズもよく似ているが、機能面・仕様面で大きく3つの違いがある。

UR22C(写真上)とUR22mkIIの前面
背面

UR22mkIIではUSB TypeB接続だったのが、UR22CではUSB Type-C接続になっている。そしてUR22mkIIの入出力が最大で192kHz/24bitだったものがUR22Cでは192kHz/32bitとワングレード上になっている。

そして、機能面での最大の違いがDSPの有無。UR22Cでは、EQやコンプレッサなどを内蔵するとともにリバーブも装備。さらにギターアンプシミュレーターを搭載するなど、かなりの処理をオーディオインターフェイス本体内部で行なうことができるようになった。

ただ、こうした機能・仕様よりも、安いオーディオインターフェイスを求める人も多くいたのも事実。UR22mkIIとUR12がなくなってしまったことで、そのマーケットに向けた製品がヤマハにない、という状況がしばらく続いていたのだ。そこを埋める形で登場したのが今回のIXO12、IXO22というわけだ。

IXO12・IXO22の特徴

IXO12、IXO22共にホワイトモデルとブラックモデルの2種類があり、好みによって色を選べるようになっている。

IXO12とIXO22の違いはUR12とUR22mkIIの違いと同様で、どちらも2in/2outのオーディオインターフェイスながらマイクプリアンプがIXO12は1つ、IXO22は2つとなっている点だ。これはIXO12とIXO22のフロントパネルを比較してもわかるだろう。

IXO22(写真上)とIXO12の前面

ちなみにIXO12の入力の2chはギターアイコンがあることからもわかるとおり、基本的にハイインピーダンス入力専用。そのため、ラインインでのステレオ入力には非対応となっているのが注意点だ。

IXO12、IXO22ともコンピュータとの接続端子がUSB Type-Cになったという点ではUR22Cと同様。また、UR22CではiPhoneやAndroidなどのスマホと接続する際の補助電源供給端子がmicroUSBとなっていたが、IXO12およびIXO22ではUSB Type-Cへ変更された。

IXO22(写真上)とIXO12の背面
IXO22(写真上)とUR22Cの背面

一方で、DSPは非搭載であり、また入出力は192kHz/24bitであるという点では、UR12やUR22mkIIの仕様を踏襲している。一般的な使い方であればこれで十分といえるのではないだろうか?

IXO12とIXO22のサイズはピッタリ同じでアルミボディーのがっちりした筐体となっている点でもURシリーズと同様だ。ただし、フロントパネルとリアパネルは樹脂製となっている。

またほぼ同仕様であるIXO22とUR22mkIIを比較してみると横幅、高さは同じながら、奥行が60%程度になっていて、かなりコンパクトになった印象。

IXO22(写真上)とUR22mkIIのサイズ比較

持った感じは断然軽くなっている。調べてみるとUR22mkIIが850gであるのに対し、IXO22は450gなので、半分程度。ボディーサイズが小さくなったからなのか、数字以上に軽く感じる。

もうひとつUR22mkIIやUR22CとIXO22を比較した際の違いが、モニター機能。URシリーズの場合、MIXというつまみを左のINPUTに回すと入力音がそのままダイレクトモニタリングされ、右のDAWに回すとPCからの音になる仕様になっている。

写真上から、IXO22、UR22C、UR22mkII

そしてUR22Cの場合ステレオ/モノラルの切り替えスイッチがあって、片チャンネルから入力したマイクやギターをセンターに定位させることができたが、UR22mkIIではそれができないというネックがあった。またループバックについてはソフトウェア側でコントロールする形なのに対し、IXO22ではより簡単で分かりやすくなっているのだ。

UR22Cは、ハードスイッチではなくコントロール画面を用いてループバック設定を行なう

見ると分かる通りMONITORと書かれたボタンと3つのLEDがある。このボタンを押していくことでLEDの点灯が切り替わっていくのだが、一番左がループバック、真ん中がモノラル、右がステレオとなっている。URシリーズのようにダイレクトモニタリングとPCからの音のバランスを取ることはできないが、よりシンプルに切り替えが可能になっているという面では使いやすくなっている。

MONITORと書かれたボタンと3つのLED
ループバック
モノラル
ステレオ

入出力の音質とレイテンシーを検証

では、このIXO12、IXO22の音質性能はどうなのか? いつものようにRMAA PROを使ってチェックしてみた。ただし、IXO12は前述の通りステレオ入力に対応していないのでIXO22を使って44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzのそれぞれでチェックしたものが以下のものだ。

以前の記事でUR22mkIIとUR22Cの測定結果を載せているので、それと比較してみると分かるが、測定結果を見る限り、UR22Cよりも高性能になっている。聴いた感じでは似た雰囲気の音のように思うが、実はかなりいいオーディオインターフェイスといえるのではないだろうか?

IXO22の計測結果
サンプリングレート・44.1kHzの場合
サンプリングレート・48kHzの場合
サンプリングレート・96kHzの場合
サンプリングレート・192kHzの場合

一方、レイテンシーのほうも測定してみた。これに関してはUR22mkIIもUR22CもIXO22も同じドライバーを使っており、ドライバーのモードはLow Latencyに設定しているわけだが、レイテンシー性能はUR22C>UR22mkII>IXO22となっているようだ。もっとも1msec程度の差なので大きな違いではないので、それほど気にするものではないと思う。

ドライバーのモードは、Low Latencyに設定
IXO22のレイテンシー
128 Samples/44.1kHzの結果
32 Samples/44.1kHzの結果
32 Samples/48kHzの結果
64 Samples/96kHzの結果
128 Samples/192kHzの結果

以上、IXO12、IXO22についてチェックしてみたがいかがだっただろうか? 円高だった3~4年前と比較すると、オーディオインターフェイス全般の価格が上がっているわけだが、IXO12やIXO22がUR12、UR22mkIIのようなシェアを取っていくことができるのか、注目していきたい。

藤本健

リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto