藤本健のDigital Audio Laboratory
第830回
Steinbergの人気モデルUR22がUSB-Cオーディオ「UR-C」に進化。機能&音質をチェック
2019年12月2日 12:22
ヤマハが発売するSteinbergブランドのオーディオインターフェイス「URシリーズ」が一新し「UR22C」、「UR44C」、「UR816C」の3機種が発売された。
この新しいUR-CシリーズはいずれもUSB Type-C接続になるとともに、32bit INTEGERに対応。またUR22CにもDSP機能が搭載され、チャンネルストリップによるEQ・ダイナミックスの調整、ギターアンプシミュレータなどをDSPパワーで実現できるようになったのもポイント。実際、オーディオ性能としてどう変わったのかなど、チェックしていこう。
人気モデルが32bit整数とUSB-C対応に進化
国内で非常に高い人気を誇っているSteinbergのオーディオインターフェイス、UR22mkII。DAWであるCubase AIがバンドルされていること、Windows/Macだけでなく、iOS機器、さらには多くのAndroid機器でも利用できることから、エントリー向けオーディオインターフェイスとして数多く販売されてきた。
アメリカやヨーロッパでは、前回取り上げたFocusriteブランドのオーディオインターフェイスのシェアが大きいと聞くが、筆者が運営しているサイト、DTMステーションで今年9月に行なったオーディオインターフェイスのアンケート結果を見ると、Steinberg/ヤマハがトップシェアとなっており、国内でのヤマハの力強さ、Steinbergの人気の高さがうかがえる。
そのUR22mkII、まだUR22Cと併売されているが、今後はUR22Cに移り変わっていく模様だ。その新旧2機種を並べてみると、大きさはピッタリ同じだが、よく見ると、デザイン的にもいろいろ違いがある。見た目において大きく違うのはフロントパネル右側にあるメイン出力をコントロールするノブ。UR22mkIIでは全ノブが同じ大きさだったがUR22Cでは、メイン出力コントロール用だけ大きくなり、また電源を入れるとその周りがLEDで白く点灯するようになっている。
またUR22mkIIには無かったmonoというボタンが搭載されたのも使い勝手の面では大きなポイント。従来、ダイレクトモニタリング時には1chからの入力も2chからの入力もモノラル扱いとなり、センターで音がモニターされたが、UR22CではmonoをONにすると、UR22mkIIと同様になり、これをOFFにするとステレオとして1chへの入力がL、2chへの入力がRにモニターされる形となる。
一方、リアを見ると、USB Type BがUSB Type-Cになったこと以外は配置が少し変わった程度で大きく変わらない。
ライン出力はTRSフォンで、MIDIの入出力も装備するなど、入出力面はUR22mkIIをそのまま踏襲しているようだ。とはいえ、このUSB Type-Cは、前回紹介したFocusriteのScarlettシリーズなどとは異なり、USB 3.0にも対応している。それによって、電源容量が大きくなり、高音質化を実現しているのだとか。ただし、USB 3.0でないと接続できないというわけではなく、USB 2.0の端子にも接続できるし、これによってレイテンシーが変わるわけではない、とのこと。転送速度における余裕などを考えると、USB 3.0での接続がお勧めであるが、それによって不安定になるようであれば、USB 3.0端子に接続していてもUSB 2.0接続になるようドライバの設定で変更できるようになっている。
オーディオインターフェイスのスペックとして大きく変わったのが、ビット分解能。これまでのUR22mkIIなどでは24bitまでだったが、URーCシリーズでは32bit INTEGER(32bit整数)に対応。これにより、より広いダイナミックレンジでのレコーディング・再生ができるようになっている。
では実際に、オーディオ特性を測定するとどうなるのだろうか? 従来機種であるUR22mkIIと比較して違いがでるのだろうか? UR22mkIIについては、以前測定していたが、改めて最新のドライバを用いてそれぞれチェックしてみた。もっともドライバ自体は、UR22mkIIもUR22Cも共通で、Yamaha Steinberg USB Driver V2.0.1を用いている。いつものようにRMAA Pro 6を用いて44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzのサンプリングレートでの結果を掲載する。
これを見た感じでは、クロストーク性能などは若干UR22Cのほうが向上しているが、それほど大きく変わっていないように思える。数値上で見る限り、前回チェックしたFocusriteの第3世代Scarlett 2i2のほうが、だいぶ上になっているようだ。
ではレイテンシーのほうはどうだろうか? 実際にチェックする前に、設定したのが最新ドライバにおいて新たに追加されたModeというパラメータ。Low Latency、Standard、Stableという3つの項目から選択できるようになっており、Low Latencyを選ぶと、オーディオインターフェイスとコンピュータ間のレイテンシーを短縮することができるとのこと。
実はこのModeはUR22mkIIでも使えるようになっていたので、双方ともLow Latencyに設定して試してみた。これもいつものとおり、サンプリングレートが44.1kHzのときのみ128Sampleを設定した場合を試すとともに、全サンプリングレートにおいて最小のバッファサイズで試している。
結果を見ると、明らかにUR22Cのほうが小さくなっているのが分かる。この点だけを見てもUR22mkIIからUR22Cに乗り換えるメリットはありそうだ。
さらにUR22Cになって大きく進化したのがUR22mkIIにはなかったDSP機能が使えるようになった点。これまでもUR242やUR44、UR824などではDSP機能が使うことができ、利用可能なエフェクトなどはこれらのものと変わらないが、手ごろな価格のUR22Cでも利用可能になったメリットは大きい。
実際に利用できるエフェクトとしてはチャンネルストリップ、リバーブのREV-X、4種類のギターアンプシミュレータのそれぞれ。これらのルーティング設定などのためのdspMixFxというミキサーも利用できるようになっている。
UR22CにはDAWとしてCubase AI 10.5のライセンスが付属しており、無料でダウンロードできるようになっている。これを使ってみると、インスペクターにUR22Cという項目が現れ、ここから内蔵のDSPによるエフェクトを設定できるほか、dspMixFxもここから呼び出すことが可能で、これが表裏一体となっている。
上記の部分は、Cubaseのミキサー機能の中にDSP部分が統合される従来のUR44やUR242での方式と大きく変わっているため、やや戸惑うところだが、初めて使うのであれば、新しいUR-Cシリーズの方式のほうが分かりやすいように思う。
ここまでは主にUR22Cについて見てきたが、UR-Cシリーズ全体を見渡すと、他にも大きく変わった点がある。その1つがUR44Cにおいてもバスパワーで動作するようになった点だ。これまでUR44ではACアダプタを使わないと使うことができなかったが、UR44Cでは、USB Type-Cになったこともあり、バスパワー駆動が可能になったのだ。
UR44Cは6IN/4OUTで、マイクプリアンプを2つ搭載という仕様だが、それがバスパワー駆動で使えるようになったメリットは大きい。もっとも、UR44Cをバスパワー駆動するためにはUSB Type-C-Type-Cのケーブルを使った接続で、PC側もUSB Type-Cでの給電が必要になるとのこと。USB Type Aでの接続の場合は付属のACアダプタを使った給電をすることで動作する。とはいえ、無理やりUSB Type Aでの接続においてACアダプタを接続せずに試してみたところ、とりあえず問題なく動作させることができた。メインボリュームの周りのLEDが点滅状態となってアラートを出していたので、やはり正しい使い方ではないのだとは思うが、この状態で4チャンネル分のファンタム電源をONにし、DSPを使っても不具合は出なかった。
もう一つのUR816Cは16in/16outのオーディオインターフェイスで、さすがにこちらはバスパワーで動かすことはできないが、UR22C、UR44C同様に最大192kHz、32bit-INTEGERでの動作が可能で、8つのマイクプリを搭載した機材となっている。
このようにUR-Cシリーズは必要なチャンネル数に応じて3種類を選択することができるようになっており、いずれの場合でもDSPを使用できるなど、パワフルな機能を装備している。オーディオインターフェイスを初めて購入するという人にはもちろん、買い替えや追加の用途においても悪くない選択だと思う。