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アベンジャーズ/エンドゲームはここで観ろ! 爆音・IMAX・ドルビー7劇場を1人で回った

劇場がありすぎて本当にいい劇場が分からない!

映画ファンにとって「映画をどの劇場で観るか?」は非常に大きな問題だ。自宅から一番近い劇場が大きな画面で、画がキレイで、音が良くて、座り心地のいい座席であれば、全然問題はないのだけれど、そんな理想的な劇場はなかなか見つからないものだ。

TOHOシネマズ、109シネマズ、イオンシネマ、HUMAXシネマ、、、近くに劇場ができるのは嬉しいけど、結局どこの劇場がいいのか? は誰も教えてくれない……

というわけで。元号が切り替わった2019年のゴールデンウィーク。何の予定も無く暇を持て余していた筆者は、悩める映画ファンの一助となるべく“画音のいい劇場”を探す安・近・短のぶらり旅に出ることにした。

4月28日から5月2日までの5日間で訪れたのは、1都2県7劇場。「都内最大級スクリーン」「関東最大スクリーン」「大手シネコン旗艦劇場」「都内唯一のdts:X館」「IMAXレーザー劇場」「爆音劇場」「関東唯一のドルビーシネマ」など、各社各様の特色を備えた劇場を選び調査を行なった。

選んだ素材は、今話題のアメコミ映画「アベンジャーズ/エンドゲーム」である。本作の作品評は筆者よりも詳しく、マーベル愛のあるファンの方々にお任せすることにして、ここではシンプルな劇場レビューに絞っている。

アベンジャーズ/エンドゲーム
監督:アンソニー&ジョー・ルッソ 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン (C)Marvel Studios 2019

「アベンジャーズ/エンドゲーム」の鑑賞はもちろんのこと、今後公開を控える作品をより高品位に楽しみたいと考えている方々が、劇場をセレクトする際の参考となれば幸いだ。

それでは早速、各劇場の印象をレビューしていこう。後半に、個人的にオススメする劇場トップ3を紹介する。

都内最大級のサイズ! ユナイテッド・シネマ豊洲のオーシャンスクリーン

一番最初に訪れた劇場は、東京都江東区にある「ユナイテッド・シネマ豊洲」のオーシャンスクリーンだ。オーシャンスクリーン(OCEAN SCREEN)は、横幅22.6m・高さ9.3mを誇る巨大なシネスコスクリーン。関東圏ではIMAX成田、TOHOシネマズ海老名などに継ぐ規模で、都内では最大クラスとなる。

ユナイテッド・シネマ豊洲が入る「アーバンドック ららぽーと豊洲」

場所は、三井不動産グループが運営するショッピングモール「アーバンドック ららぽーと豊洲」の3階だ。最寄りは、東京メトロ・有楽町線の豊洲駅。2番出口から地上へ出たら、前方左手方向にある建物を目指して3分ほど歩けば、“UNITED CINEMAS”のロゴを壁面に配したモールの入り口に到着する。あとは“サウスポート”の3階一番奥まで5分ほど歩けば、劇場エントランスにたどり着ける。

2006年10月に開業した劇場で、大小12の上映設備を備える。今回鑑賞したオーシャンスクリーン(10番館)以外にも、韓CJ 4DPLEXのアトラクション型シアター・4DX(7番館)や3D上映対応スクリーンがあり、また劇場ロビー奥には、東京湾が見える鑑賞者向けのプレミアラウンジや完全個室のVIPルームを用意するなど、豊洲という立地を活かした独自のサービスにも力を入れている。

ユナイテッド・シネマ豊洲のエントランス

前述した通り、10番館(定員415名)は横22.6×縦9.3mのシネスコスクリーン(シルバー)を採用する。スクリーン手前は緩やかな階段を設けたステージになっていて、俳優や製作者らが登壇するのに十分な空間が用意されている。

シートピッチが広く、足下にかなり余裕のある座席も特徴だ。上映中、離席者が目の前を通るときは通常、足を脇にずらしたり、膝を持ち上げ足を引っ込めたりするものだが、10番館の場合はほとんど足を動かさずに離席者が通行できる。様々な劇場を訪れたことがあるが、通常席でこれほど足下に余裕があるのは珍しい。もちろん、今回鑑賞した7館の中で豊洲の席が最も広かった。

プロジェクターはNEC製の2K/DLP機。サウンドデザインはヤマハ監修とのことで、左右と後ろの3面にそれぞれ8個のクリプシュ製スピーカーを設置したドルビーデジタルサラウンドEX仕様になっている。壁面とペアシート部分の床は、レッドカーペットのような赤色だ。

なお、オーシャンスクリーンの鑑賞料金は通常の劇場と変わらず、「アベンジャーズ/エンドゲーム【2D/字幕版】」の場合は一般1,800円。鑑賞2日前の午前0:00から座席のネット予約が可能だ。

鑑賞したのは4月28日16時40分から上映の「アベンジャーズ/エンドゲーム【2D/字幕版】」。座席は中央からだいぶ右寄りの「H-30」

館内の照明が落ち、いざ本編が始まると、巨大なシネスコ映像が視界を覆う。しかし、その巨大サイズゆえプロジェクターのパワー・解像度不足を感じる。画面が全体的に暗く、コントラストが浅い。2K DI作品ではあるが、ディテールの描写も物足りない。これは、20mオーバーのスクリーンサイズで光量の低い2Kプロジェクターを1発しか使用していないためだろう。ラウンジの雰囲気や館内の座席、スクリーンサイズが良いだけに、少し残念な部分だ。ただ、ホームシアターでは決して味わえないこのサイズ感は、劇場鑑賞ならではの体験だろう。

TOHOシネマズのフラッグシップシアター 六本木ヒルズのTCX

2館目は、東京都港区にある「TOHOシネマズ 六本木ヒルズ」のTCXだ。TOHOシネマズはその名の通り、東宝が運営する大手シネコンチェーン。北は青森から南は鹿児島まで、計66館を展開。その中でも六本木ヒルズは同社の“フラッグシップシアター(旗艦劇場)”に位置付けられている。

「TOHOシネマズ 六本木ヒルズ」へ繋がる階段

TOHOシネマズ 六本木ヒルズへ行くには、東京メトロ日比谷線・六本木駅の1C出口が最も近い。1C出口から地上へ出て、森タワー脇をしばらく直進、階段を上れば、目の前は劇場玄関(3階)だ。改札から劇場エントランスまで、徒歩10分もかからない好立地の場所といえるだろう。

TCXは「Toho Cinemas eXtra large screen」の略称で、TOHOシネマズ独自規格の巨大スクリーンのこと。東京、千葉、大阪など全国13カ所のTOHOシネマズに導入されており、旗艦店である六本木のTCXスクリーンが最も大きい(横幅20.2m×高さ8.4m)。ちなみに、TOHOシネマズ 海老名の1番館には六本木よりも大きいスクリーン(横幅22.6m×高さ9.5m)なのだが、TCXの名称は使われていない。

TCXの鑑賞料金は通常の劇場と変わらないが、ドルビーアトモス上映の場合は追加料金(200円)が発生する。「アベンジャーズ/エンドゲーム【2D/字幕・アトモス版】」は、一般2,000円だった。鑑賞2日前の午前0:00から座席のネット予約が可能だが、有料会員の場合は3日目の21:00から先行予約ができる。

劇場ロビー

劇場ロビーは、高い天井と外光が入り込むガラス窓に囲まれた空間になっていて、明るく開放感がある。エスカレーターそばには、作品のポスターを投映した大きなガラス板があり、その表面を滝のように水が流れ落ちる演出が施されていた。

鑑賞したのは5月2日9時15分から上映の「アベンジャーズ/エンドゲーム【2D/字幕・アトモス版】」。座席はプレミアボックスシート前の中央「G-24」

7番館は、ロビーからエスカレーターで5階に上がった右手奥にある。シート数521席の館内に入ると、グレー色に塗られた壁面が波を打ったように凹凸しており、しかも左右・背面・天井に設置されたスピーカー(Christie Vive Audio)の“縁”が緑色に発光していた。ウェーブ状の内装は音響を考慮したものなのかは分からないが、真四角な箱形が多い劇場とはひと味違うオシャレな空間だ。

ただし映像はインパクトに欠ける。コントラストが浅いうえ、鮮鋭さが感じられない。機器の状態が悪かったのだろうか。よく見たら、ピントがあまく字幕も“眠い”のだ。音声はアトモス上映でエフェクトの移動感や、四方を音が満たす包囲感はあるが、音の厚みや明瞭さがもっと欲しいと感じた。

関東最大サイズ! 成田HUMAXシネマズのIMAXデジタルシアター

3館目は、千葉県成田市にある「成田HUMAXシネマズ」のIMAXデジタルシアターを訪ねた。同劇場はIMAXデジタルシアターのためだけに別館を新築した稀な劇場で、そのIMAXシアター内には関東圏で最大となる横幅24.5m、高さ14mの巨大スクリーンが導入されている。

IMAX用に建てられた、成田HUMAXシネマズの別館

場所は、大型商業施設・イオンモール成田の敷地内に併設された「ヒューマックスパビリオン成田」の2階。最寄りは、京成電鉄の京成成田駅、もしくはJR成田線の成田駅だが、劇場までは直線距離で約2kmも離れているため徒歩はオススメしない。タクシー、もしくは「イオンモール成田行き」の直行バス(片道210円)を使うといいだろう。直行バスであれば、京成成田駅前にあるバスロータリーから乗車後、約20分程度でモールに到着する。バス終点の降り場から劇場ロビーまではほぼ一本道なので、迷うことは無いはずだ。

成田のIMAXデジタルシアターがオープンしたのは2012年。既に川崎や箕面、岸和田、福岡などにIMAX劇場が導入された後だったが、他のIMAXデジタルシアターを圧倒するスクリーンサイズや国内唯一の独立館ということもあり、開業当時は大きな話題を集めた。かくいう筆者も取材で参加したオープンイベントで虜になり、海外へIMAX遠征できない鬱憤をたびたび“成田詣で”で晴らしていた。同館で観た「インターステラー」の感動は、一生忘れないだろう。

IMAXがある別館への入り口

全10スクリーン中、IMAXデジタルシアターが入っているのは9番館(定員471名)。横幅24.5m、高さ14mのシルバースクリーンを採用し、2台の2K/DLPプロジェクターを同時使用することで、従来比1.6倍の画面輝度を実現。音響システムは独自仕様の6スピーカーで、4台はスクリーン背面、残りの2台は劇場後方の“隅”に天吊りされている。壁面は淡いブルーだ。

IMAXの鑑賞料金は一般2,300円。3D上映時は、これに400円(3Dメガネ持参の場合は300円)が加算される。「アベンジャーズ/エンドゲーム」の場合、IMAXデジタルシアターでは3D版のみの上映となるため、一回の鑑賞料金は2,600~2,700円とかなり高額となる。2日前の午前0:00から座席のネット予約が可能。

鑑賞したのは4月29日12時40分から上映の「アベンジャーズ/エンドゲーム【IMAX 3D/字幕版】」。座席はやや後方右寄りの「L-24」

観客を飲み込むような巨大スクリーンならではの臨場感は圧巻だ。全編IMAXデジタルカメラで撮影された「アベンジャーズ/エンドゲーム」の1.90:1映像は、IMAX劇場であればどこでも楽しめるが、スクリーンサイズがより大きい方がシネスコ比26%増の視覚的インパクトも増す。2Dカメラ撮影作品なのだから、3D映像ではなく2Dの大画面でじっくり鑑賞したかった。

一方で、IMAXレーザーなどの最新設備と観比べてしまうと、映像面で大きな格差が生まれているのは否めない。思い出の成田IMAX、大阪や池袋と同じ最上位システムに改修をしてくれないだろうか……。

骨太なサウンドもIMAX成田の特徴。セリフやLRのサウンドも厚みがあるし、スピーカーの数を感じさせないサラウンドも迫力がある。低音のパワーも十分で、全身に響くほどに強力だ。以前、別の劇場関係者から「隣接するテナントから“低音がうるさい”と苦情があると音量を下げざるを得ない」と聞いたことがあるが、IMAX成田のような独立館であれば、躊躇すること無く音量が出せるに違いない。

都内唯一のdts:X対応劇場。イオンシネマ シアタス調布のULTIRA

4館目は、東京都調布市にある「イオンシネマ シアタス調布」のULTIRAだ。

ULTIRAとは、大きなスクリーンと立体音響設備を完備したイオンシネマ独自のPLF。調布以外にも、関東、近畿、中国、九州エリアの系列11館に導入済みだが、その中でも国内では採用数が少ないdts:X音響システムを備えているのが“調布ULTIRA”の特徴でもある。ちなみにdts:X対応劇場があるのは現在、都内ではここシアタス調布だけだ。

イオンシネマ シアタス調布が入る「トリエ京王調布C館」

シアタス調布は、京王電鉄が運営するショッピングセンター「トリエ京王調布C館」の2階にある。最寄りは、京王線・京王相模線の調布駅。広場口から見えるビックカメラ(B館)脇の通りを直進し、道路を渡ってすぐのビルが目的地だ。改札から10分もかからずに劇場エントランスまで行けるアクセスの良さも魅力の1つだ。

シアタス調布が出来たのは'17年9月で、開業からまだ2年も経っていない比較的新しい劇場だ。526席を備えるULTIRA(10番館)のほか、4DX(6番館)、そして“飛行機のファーストクラスを凌ぐ”とする特別仕様の高級リクライニングシートを導入した「グランシアター」(3番館)など、全11スクリーンを備える。

劇場ロビー

今回視聴したULTIRA劇場は、2階ロビーを抜け、エスカレーターで4階に上がったフロアの突き当たりにある。横幅18.7m、高さ9mの大きなスクリーン(シルバー)も目玉の1つだが、それ以上に客席を3方向から取り囲むスピーカーの数に目を奪われる。

片側の壁には、中段10、上段6の小型スピーカーが設置されていて、背面にも3個(片側)のスピーカーが並べられている。劇場の公式Twitterによれば、スクリーン裏にもセンターとLR、ハイトLRと4台のサブウーファーを設置しているとのことで、10番館だけで合計47個のスピーカーが導入されているそうだ。スクリーン周辺の壁面は黒色で、座席後部に行くほど、淡いグレーとなるよう段階的にカラーが変わるようになっている。グランシアターとの差別化なのだろうか、シートは硬くやや簡素で幅も狭い。


鑑賞したのは4月30日8時45分から上映の「アベンジャーズ/エンドゲーム【2D/字幕版】」。座席は座席中央「J-18」

都内唯一のdts:X対応劇場なのだが、調布で再生する「アベンジャーズ/エンドゲーム」のデジタルデータの音声は7.1ch素材とのことだった。とはいえ、実際に鑑賞するとS/Nが良く、一音一音クリアなサウンドが心地良い。低音や芯の太さには欠けるが、3Dオーディオで無くとも効果音の作り込みをきちんと聴き取ることが出来た。プロジェクターは4K/DLP機と思われ、アップコンとはいえ2K劇場の画の眠さとは一線を画す。階調や色の再現、コントラスト感もこれだけ出ていれば十分だろう。今回は素材が対応しておらず、音響システムの実力が100%ではないと思うので、dts:X素材の映画が上映される際には、また来館したいと思う。

なお、ULTIRAの鑑賞料金は通常と同じで「アベンジャーズ/エンドゲーム【2D/字幕版】」は一般1,800円だった。座席のネット予約は、鑑賞2日前の午前0:15から。

お気に入り第3位:109シネマズ菖蒲のIMAXレーザー

それでは、ここからは7劇場の中から筆者が特に画質や音質で印象に残った“お気に入り劇場ベスト3”を紹介していく。

第3位は、埼玉県久喜市にある「109シネマズ菖蒲」のIMAXレーザーだ。

菖蒲は、2009年6月に川崎、箕面と共に3館同時開業した“古参”のIMAXデジタルシアターだったのだが、今年4月に設備のリニューアルを実施。川崎、名古屋に続いて、国内3館目となる「レーザー光源の4K/DLPプロジェクター」と「12.1chのスピーカーシステム」を導入し、ハイクラスなIMAXデジタルシアター“IMAXレーザー”へと生まれ変わった。

109シネマズ菖蒲が入る「モラージュ菖蒲」

109シネマズ菖蒲は、双日新都市開発が運営するショッピングモール「モラージュ菖蒲」の3階にある。ハッキリ言って、アクセスは良くない。最寄りは、JR宇都宮線・東武伊勢崎線の久喜駅。西口のバスロータリーから「モラージュ菖蒲行き」の急行バス(片道210円)に乗ること25分前後。終点で下車後、細長く続くモールを端まで進み3階へ上がり、ようやく劇場エントランスに到着する。降り場からエントランスまで、10分は見た方がいい。122号線沿いで、駐車場(4,500台収容)もかなり広いので、マイカーがある方は車での来訪もありだと思う。

IMAXレーザーが入る11番館は、定員304名。横幅約17m・高さ8m超のシルバースクリーンが使われている。壁面は薄いブルー色になっていて、館内を見渡すと、左右、後方隅、そして天井にスピーカーが“天吊り”されているのが確認できる。その数は左右2・後方2・天井4の計8台。スクリーン裏の5台(SW含む)を合わせ、12.1chシステムということのようだ。IMAX成田の後方隅に設置されていたスピーカーに比べればだいぶ小ぶりな印象だが、それでもオーディオバブル期に見られた“3ウェイスピーカー”くらいのサイズはありそうだ。

IMAXレーザーの鑑賞料金は一般2,400円。3D上映時は、これに400円(3Dメガネ含む)が加算される。「アベンジャーズ/エンドゲーム」の場合、IMAXレーザーは3D版のみの上映となるため、一回の鑑賞料金は2,800円。鑑賞3日前の午前0:00から座席のネット予約が可能。残念ながら、IMAXレーザーの鑑賞に「ムビチケ」は使えない。

劇場のエントランス

ちなみに。だいぶややこしいことに、IMAXレーザー/GTテクノロジー(大阪)、IMAXレーザー(菖蒲など)、そしてIMAXデジタルシアター(成田など)の3D方式は全て異なるため、3Dメガネの共有はできない。

大阪のIMAXレーザーは2台の4Kプロジェクターで波長分割(ドルビー3Dと方法は同じ)、菖蒲のIMAXレーザーは1台の4Kプロジェクターで円偏光、成田のIMAXデジタルシアターは2台の2Kプロジェクターで直線偏光方式を採用するためだ。大阪のIMAXレーザーの場合は、そもそも3Dメガネの持ち出しは出来ないが、“マイIMAX 3Dメガネ”をIMAX劇場へ持っていく際は、円偏光か直線偏光かを一度確認することをオススメする。

写真左上が成田IMAXの3Dメガネ(直線偏光)で、右下が菖蒲IMAXの3Dメガネ(円偏光)。テンプル部分を見ると、円偏光のものには“with Laser”の文字が印字されている

十分な明るさと高いコントラストを兼ね備えた3D映像で、全編シャープでクリアな大画面映像が堪能できる。3D変換素材のため、書き割りにしか見えない不自然なシーンも幾つかあるのだが、上手く変換が決まったシーンでは、その奥行き感やオブジェクトの立体感は素晴らしい。円偏光になったことで、多少首を傾けてもクロストークが出にくくなっており、ほとんどの方は気にならないレベルだと思う。

鑑賞したのは5月1日13時30分から上映の「アベンジャーズ/エンドゲーム【IMAX 3D/字幕版】」。座席はエグゼクティブシート前の中央からやや左側の「I-16」

音響もダイナミックで、図太いサウンドが全身に飛んでくる。天井付近にスピーカーを集中させた効果だろうか。実際の劇場サイズよりも、広く高い空間で聴いている感覚に襲われる。

迫力ある映像と観客を飲み込むようなサウンドエフェクトが続く後半の大合戦シーンは、まさに画と音の“お祭り”状態。この高精細な巨大映像と力強い立体音響が一度に味わえる視聴体験こそIMAX劇場の神髄だろう。IMAXデジタルカメラで撮影された本作であれば、一度はIMAX劇場で鑑賞すべきと思う。とはいえ、筆者はやっぱり2D版でじっくり観たかった……(2度目)。

細かい部分だが「アベンジャーズ/エンドゲーム」の字幕には、ニューシネマフォント(フォントワークス)が使われている。IMAXレーザー上映では、他の劇場とは異なり字幕の色がやや黄色になっていた。字幕が明るく目立ちすぎないよう、色を変えたものと思われる。

お気に入り第2位:シネマシティ シネマ・ツーのa studio

お気に入り劇場の第2位は、東京都立川市にある「シネマシティ シネマ・ツー」のa studioだ。

シネマシティは、全国に展開する大手シネコンとは異なり、独自のサービスと上映設備でコアな映画ファンから支持を集める“変わり種”の劇場だ。館内には音楽ライブ用のスピーカーを配し、独自の調整を施した「極上音響」や「極上爆音」上映を実施するほか、ハリウッドの新作映画だけでなく、旧作や単館系の小粒な作品まで幅広いラインナップを常時取り揃えている。

シネマシティのシネマ・ツー

シネマシティの上映設備は「シネマ・ワン」「シネマ・ツー」の2カ所。今回鑑賞したのはシネマ・ツーの方だ。どちらも最寄りは、JR中央線・青梅線・南武線が乗り入れる立川駅か、多摩都市モノレールの立川北駅となる。立川駅北口から伸びるペデストリアンデッキをまっすぐ進めばシネマ・ワン、そこからモノレール沿いまでしばらく歩いたところにあるのシネマ・ツーだ。シネマ・ツーでも北口から劇場エントランスまで徒歩10分もかからない。

劇場のエントランス

シネマ・ツーは2004年にオープンした“劇場ビル”で、1階から5階まで全5つのスクリーンを備える。今回鑑賞したa studioは、1階から地下1階にまたがった半地下劇場になっており座席数は384名。座席と座席の間にある小さな暖色ライトが館内を演出し、まるでテーマパークのイルミネーションのようにも見える。

3D対応のシルバースクリーンではなく、Stewart製のマットスクリーン「Snomatte 100」を採用。サイズはやや小振りで、横幅約10.5m、高さは4.4m。ソニー製の4Kプロジェクター「SRX-R320」が使われているという。

MeyerSound製サブウーファー1基(900-LFC)の下に、ラインアレイスピーカー6基(LEOPARD)をマウントしたPAシステムがスクリーン脇に吊されていて、スクリーンの下には3台の大型サブウーファー(1100ーLFC)が鎮座している。スクリーン裏にはセンターチャンネル用として9基構成のラインアレイスピーカー、左右の壁面には12台のサラウンドスピーカー(HMS-12)、そして座席後方には4台のリアスピーカー(MM-4XP)が設置されていた。

同劇場の十八番“極上爆音”版を鑑賞したが、料金は通常の劇場と変わらず、一般1,800円だった。鑑賞3日前からネットで座席の予約が可能。有料会員であれば4日前から予約ができる。

鑑賞したのは4月30日15時20分から上映の「アベンジャーズ/エンドゲーム【2D/字幕・極上爆音版】」。座席は中央前寄りの「H-11」

“爆音”の威力は凄まじい。あまりの音圧と重低音に、最初頭が付いていかなかった。これでもかと濃密なサウンドが終始上半身を襲うが、耳が慣れてくればそんな爆音も、次第に気持ちが良くなってくる。

意外だったのは、想像以上に音が明瞭でクリアだったこと。ステレオ、センターはもちろん、他の劇場では聞こえなかった背景音までもすこぶる聞こえがいい。上映中「このシーンにこんな音が入っていたか?」という発見が何度もあった。明らかに他の劇場とは音のバランスが異なるが、ここでしか体感できない“極上爆音”であることは間違いない。

しかし筆者が驚いたのは音では無く映像のクオリティだった。無理のないスクリーンサイズということも起因しているのだろう、極めて明るく精緻な映像だ。エッジは細く、解像感が高い。色の透明感も7館の中で最も優れている。シルバースクリーンのような過度なギラつきも無いし、レーザープロジェクターに見られる不規則なスペックルノイズも皆無。空など、明るく平坦なエリアもキレイに投写されている。一般的な2D劇場画質と比べて、ベールを1枚も2枚も剥がしたかのようなクリアさと抜けのいい美麗な映像に、心底感動した。

IMAXのような大画面でもないし、ドルビーシネマのような劇薬的HDRや立体音響もないが、それらを差し置いても、a studioの高い上映品質は一見・一聴の価値があると思う。

お気に入り第1位:MOVIXさいたまのドルビーシネマ

そしてお気に入りの第1位は、埼玉県さいたま市にある「MOVIXさいたま」のドルビーシネマだ。

MOVIXは松竹マルチプレックスシアターズが運営する大手シネコンチェーンで、東北から中国エリアまで計25の直営劇場を展開中。今年4月には、国内で2館目となるドルビーシネマをさいたまに導入し、続く秋には都内初のドルビーシネマを丸の内ピカデリーに導入予定だ。

MOVIXさいたまが入る「コクーンシティ」

MOVIXさいたまがあるのは、JR京浜東北線のさいたま新都心駅そばにあるショッピングモール「コクーンシティ コクーン1」の2階。同駅改札を東口に進み、モール直結の歩行者デッキを5分ほど直進するだけで劇場エントランスに到着する。館内は、ドルビーシネマを含め全部で12スクリーンとなる。

劇場のエントランス

既報の通りMOVIXさいたまのドルビーシネマは4月26日にオープンしたばかりの“できたてほやほや”のスクリーンだ。ロビーを抜けて、各館へ繋がる通路を右手奥のスペースを改築した場所に、ドルビーシネマ劇場がある。

座席数は292席。スクリーンサイズは横幅13.92m、高さ5.8mとやや小さめだ。マット調の素材で、レーザー光源の4K/DLPプロジェクターを2台使って投写している。館内は天井、壁面、床、座席までブラック系で統一されていて、高輝度プロジェクターによる迷光対策が徹底されている。天井を見上げると、球状のスピーカー(2列×8個)が天吊りされていた。サラウンドスピーカーは左右の壁に埋め込まれているのか、一見して場所を特定することが出来ない。

ドルビーシネマは、鑑賞料金に一律500円の追加料金が必要。3D上映時は900円(3Dメガネはレンタル)が加算される。「アベンジャーズ/エンドゲーム」の場合、ドルビーシネマでは3D版のみの上映となるため、一回の鑑賞料金が2,700円だった。鑑賞3日前の21:00から座席のネット予約が可能で、有料会員は3日前の17:00から購入できる。ドルビーシネマの「ムビチケ」使用は現在、窓口購入に限定されている。

鑑賞したのは5月2日16時30分から上映の「アベンジャーズ/エンドゲーム【ドルビー3D/字幕版】」。座席は中央「J-11」。スクリーンが遠く感じたため、もっと前でも良かった

投写された瞬間から、映像の次元が違う。ドルビーシネマはHDR素材で、他の劇場はSDR素材なのだから当然とも言えるが、拡く豊かな階調、色数に富んだ濃厚なカラー、極めて高いコントラスト、深く沈み込んだ黒の表現など、目が醒めるほどにビビッドで鮮烈なHDR映像に目が釘付けになる。まるで採れたての果実を搾った100%ジュースとでも形容したらいいのか、これまで劇場で経験したことのない濃厚な画だ。一度この味を身体が覚えたら、他のどんな映像も薄味に感じてしまう“劇薬”に違いない。

インフィニティ・ストーンの輝きやヒーロー達が身にまとうスーツの光沢感などもHDRならではの描写なのだろうが、3時間視聴していて一番効果が大きいと感じたのは、各キャラクターの“瞳”だ。命が宿るとはこのことで、瞳に光沢感があるだけで人物の僅かな表情の変化や心の機微まで一段とリアルに伝わってくる。本編後半、女性キャラが涙するシーンがあるのだが、どの場面から目にうっすらと涙をためていたのか、ドルビーシネマのHDR版を観て、ようやく把握することが出来た。

しかし、ドルビーシネマも完璧ではない。問題は3Dメガネだ。

ドルビーの3Dは、RGBの波長を分割する方式を採用している。原理上クロストークが無く、RGBレーザープロジェクターとの組み合わせで以前よりも更に明るく鮮明な3D像が得られると言われている。しかし3Dメガネが合わないと色収差のような色ズレや、左側に赤色、右側に緑色が被ったりする。気にする箇所は人それぞれだとは思うが、筆者はクロストーク以上に色の被りが気になってしょうがない。

ドルビー3Dのメガネ。ドルビー3D採用劇場は、都内だとT・ジョイ SEIBU大泉が有名

また普段使用しているメガネとの相性も悪かったのだろう。色ズレのない箇所で3Dメガネを固定することができず、上映中3Dメガネを両手で常に固定しなければならなかった。しかも乱反射でメガネ下部が常に曇ったように見え、位置を少しずらしたり、ひっくり返して装着したり“3Dメガネのベストポジション探し”に悪戦苦闘。筆者の場合は手の甲で3Dメガネの下を支える&光の侵入を防ぐようにして両手固定するのがベストと分かったが、3時間もその格好を続けることができず、結局色被り・乱反射有りの状態で鑑賞することになった。だから、何度でも言おう。2D版を上映してくれ!!(3度目)。

特色ある劇場は他にも!? 7月には池袋IMAX、秋には丸の内ドルビーシネマも!

以上が視聴した7劇場の個人的感想だ。

「IMAXデジタルカメラ撮影なのに、IMAX劇場がお気に入り1位じゃないのかよ」とか、「どうして六本木ヒルズを選んだ!? 日本橋や日比谷に行け」とか、「関東だけじゃなく、もっと遠出しろ」など、たくさんのご意見、ご批判はあると思うが、今回はあくまで関東圏の中から筆者の嗅覚でセレクトした劇場における、個人的な見解ということでご容赦願いたい。

ちなみに、今回ピックアップした劇場以外にも「重低音体幹上映」を行なうシネシティ ザート静岡、「LIVE ZOUND」を展開するチネチッタ川崎、つくば/木更津に導入されているUSシネマのPLF「ADMIX」、関東2位のスクリーンサイズを持つ「TOHOシネマズ 海老名」など、特色ある劇場はまだまだ存在する。

加えて7月には、池袋の再開発エリアに「グランドシネマサンシャイン」がオープンし、IMAXレーザー/GTテクノロジー、BESTIA(シネマサンシャインのPLF)、4DX、ScreenXの4種が導入。そして秋には、丸の内ピカデリーにもドルビーシネマが導入されることになっている。関東圏の映画ファンにとっては、嬉しくも悩ましい劇場の選択肢が増えることになるだろう。

7館目鑑賞中に発生した腰痛が治り、また10連休が訪れた際は、もっと上映時間の短い作品を実験素材に選んで、2度目のぶらり旅に出ようと思っている。

阿部邦弘