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「ラブライブ!スーパースター!!」OP主題歌はボーカル分離に注目! 7月期注目アニソン
2022年9月29日 08:00
この原稿を書いている途中で、ANIPLEXとTOHO animationの大規模イベントがオンラインで開催された。ANIPLEXの方は有観客でも行なわれていたものの、世界中へのオンライン配信がメインで4万人以上がリアルタイムで視聴していた。最近は、オンライン配信をメインに据えたイベントも大小問わず日常になってきた。この状況に、地方民は拍手喝采を送っていることは想像に難くない。
一方で、リアルイベントならではの感動も体験してほしいし、魅力を伝える努力を業界側も続けてほしいと願うばかり。「(行けるけど)オンラインで見ればいいや」が主流になってしまうのは個人的にさみしいと感じる。
それはアニソンライブにしても然りだ。オンライン配信の音質向上は、Live Extremeをはじめ、めざましいものがある。それでも、現場の空気や温度は生であるからこそ味わえるものだ。本企画は、音楽的にも音質的にも注目のアニソンを紹介するもの。さっそく、今期の注目ソングをみていこう。
「ラブライブ!スーパースター!!」2期OP主題歌「WE WILL!!」(48kHz/24bit)
第一期の放送からちょうど一年。Liella!のメンバーをTVでまた見られる喜び。しかも、2クール目は、1年生が4人も加わり、待望の9人体制が実現。これぞラブライブ。
それにしても、スクールアイドルという同じをフォーマットを使ってもう3作目(厳密には4作目)というのに、何でこんなに面白いんだろうか。青春! 友情! 絆! ではあるが、いわゆる“スポ根”とは少し違う気もしていて、現代の価値観に合った工夫が見られる。40にもなるオッサンが何を言うのだと思われるだろうが、「夢を追うっていいなぁ」としみじみ感じてしまう。
NHKによる全国ネットだけに、この作品を見て上京を決意する業界志望の若者がいったい何万人生まれるのだろうかと思うと、次世代の才能を期待せずにはいられない。
主題歌は、新メンバーの4人を加えた9人で歌うポップで爽快なナンバー。作曲はアニメや声優への楽曲提供で活躍するMotokiyo。編曲は、一期と同じく山下洋平が担当する。
9人のボーカルの分離具合がくすぐったいほどの明瞭さで楽しめるのは、イヤフォンやヘッドフォンでの試聴だった。イヤフォンで聴いてみると、ユニゾンからソロパートまでオケと混濁せず、クッキリと浮かび上がる。スピーカーの場合は、広がりや躍動感はあるのでそこは楽しめる。
一方、バスドラやベースなどの中域寄りの低音がマシマシ気味で、量感が過剰に思えた。TVオンエア版はほどよい案配だったので、マスタリング上の演出かも知れない。小型のスピーカーで聴くと低音がしっかり出ている感じに聴こえて相性が良さそうだ。
他のアニソンと比べると音量が小さく感じられるかもしれないが、その分ボリュームを上げて聴いてみよう。「準備はいいかな 今すぐ~」のリズムパートが盛り上がっていく過程などグッとくる瞬間が随所に感じられることだろう。
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「プリマドール」OP主題歌「Tin Toy Melody」(48kHz/24bit)
keyによるメディアミックスプロジェクトがTVアニメ化。電撃G's magazineやキネティックノベルLite(Web版小説)での連載、フィギュアなどで展開してきた本作が、バイブリーアニメーションスタジオとの強力タッグで映像化した。
大戦から数年後の世界を舞台に、元兵器の自律式機械人形の少女たちが、喫茶黒猫亭で接客に歌にと大活躍。……と、一見ほのぼの日常萌えな作品かと思ったら、重厚な世界観設定と、重く切ない過去、人とオートマタの感動の交流など、「keyめ! やってくれる!」と膝を叩く展開がてんこ盛りであった。
来年に掛けて、前日譚や後日譚を描いたキネティックノベルが4作品リリース決定とのことで、「planetarian」ですっかり“鍵っ子”にさせられた筆者も目が離せない。
主題歌は、メインキャラクターたちによるユニット「シャノワール」が歌唱。作詞作曲は、keyファンにとってはお馴染みの麻枝准。編曲はMANYOが手掛ける。
包むようなシンセサウンドが音場を埋めている中、肉厚で押し出しのあるドラムが楽曲に重厚感を与えている。音数の多さもあって、音場が混雑気味であるが、イヤフォンで聴くとキャラクターたちのボーカルがすぐ近くに感じられて、祈りのようなメロディに引き込まれていく。他の企画に使おうとする度に、本作のためにとっておいてほしいとシナリオの丘野氏に言われ続けたという麻枝氏秘蔵の名曲はさすがの貫禄である。
女性ボーカルながら、ローがしっかりと入っていて、マイクへの距離感までもリアルに伝わってくるようだ。ストリングスは、バイオリンのみ生演奏となる。聴けばこのラインは生だと分かるので、じっくり何度もハイレゾで聴き込んでみよう。
- Amazon music HD:配信無
- Apple Music:配信無
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「異世界薬局」OP主題歌「夢想的クロニクル」(96kHz/24bit)
MFブックス刊行の同名ライトノベルを原作としたTVアニメ版。優秀な薬学研究者が過労のため急死し、異世界に転生。中世的な世界で行われていた医療は、迷信や誤った治療法で大変なことになっていた。
少年ファルマの姿に転生した主人公は、持ち前の薬学の知識で無双し女性にモテモテ!……とはいかないのがこの作品の面白いところ。最初は超人的な力により畏怖の念を集めていたファルマも、献身的な薬による治療を続ける内、本当の意味での信頼も勝ち得ていく。チート能力だけでは片付けられない前世の努力に裏打ちされた活躍ぶりは、転生無双ものが苦手な方にも楽しめそうな構成だ。
前世で妹を救えなかった悔恨は、まだ主人公の中に燻っているだろうし、ファルマとしてその過去を乗り越えるドラマは続編に期待したいところ。
主題歌は、今期2つの作品でOPタイアップを果たした声優の石原夏織が担当。作編曲はMotokiyo、作詞は只野菜摘。ファルマの、そして転生前の完治の想いを綴った、力強くも胸に刺さるナンバーだ。
本楽曲は石原のボーカルの生々しさが一番の聴き所だろう。音圧は控えめにしつつ、声の輪郭をリアルに誇張なく聴かせる印象。勢いのあるバンドサウンドに埋もれてしまうかもと思ったら、ボリュームを上げてみよう。それほど歌声は耳に刺さらないはずだ。
96kHz制作による情報量の多さは、声優ファンにはたまらない。まさに今ここで歌ってくれている感はハイレゾだからこそ味わえる。
ドラムとベースのリズムパートのグルーブは格別。ギター含めアタックがもっと残っているとなお良いが、全体的にライブさながらのエネルギーに満ちたオケとなっていて、どんどん音量を上げたくなる。スピーカーで部屋の空気を震わせて楽しんでいただきたい一曲だ。
- Amazon music HD:ハイレゾ配信(単曲配信のみ)
- Apple Music:CD音質配信
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秋は、文化や芸術、食欲の秋とも言われる。自分のようなオーディオ人にとって、秋はオーディオの秋だ。各地のオーディオイベントは、入場制限や事前登録制などを採用しながらも、以前のような活況を取り戻しつつある。
特に、アニソンとも親和性の高いポータブルオーディオの世界は、接触という意味で最も気を遣うイベント形態だっただけに、リアルイベントが復活しただけでも、ファンとって感無量ともいえる変化だったと思う。
秋に向けて、スピーカーで聴く方のオーディオイベントも各地で続々と開催予定だ。オーディオらしい音とは何なのか。同じメーカーのAとBの製品は何が違うのか等々、店頭ではなかなか確認が難しい、その真相をぜひ貴方の耳で確認して欲しい。(筆者も会場にいるかも知れないぞ)
【使用機材】
- NAS/ネットワークトランスポート「Soundgenic RAHF-S1」SSD 1TB(アイ・オー・データ機器)
- USB-DAC「NEO iDSD」(iFi audio)
- プリメインアンプ「L-505uXII」(ラックスマン)
- スピーカー「RUBICON2」(DALI)
- ポータブルプレーヤー「PLENUE R2」(COWON)/ HPH-MT8(YAMAHA) / IE 400PRO(ゼンハイザー)