西田宗千佳のRandomTracking
第536回
驚くほどサイズが違う! 性能アップでも「お手頃」になった新Apple TV 4K
2022年11月2日 22:00
11月4日に発売される、新しい「Apple TV 4K(第3世代)」のレビューをお届けする。
日本でも映像配信が定着し、テレビ向けに低価格な「映像配信視聴機器(セットトップボックス、以下STB)」を取り付ける人が増えている。
低価格な製品が主軸ではあるが、日々快適に視聴するには、性能が十分にあるものを選ぶべきだ、と筆者は考えている。Apple TVは動作が速く、使い勝手がいい。
そんなApple TVがリニューアルした。どこが変わったのか、実機を見ていこう。
実はサイズが最大の変化点
「Apple TV、そこまで大きく変わってないんじゃないの」
そんな風に思う人もいそうだ。いや、意外と大きく変わっている。いや、本当に驚いたのだ。「サイズ」に。
製品発表があったとき、写真だけを見て「ああ、中身が最新のアーキテクチャになった感じか」と思った。だが、そうではないのだ。同じように見えて完全モデルチェンジなのである。
筆者は2021年モデルを日常的に使っている。それとちょっと比較してみよう。
新Apple TV 4Kはどこが進化したのか。リモコン刷新、画質最適化
ご覧の通り、全然大きさが違うのだ。重さも425gから214g(Wi-Fi+Ethernetモデル)へと、約半分になった。
Apple TVは、これまであまりサイズを変えずにきた。2010年発売の「Apple TV(第2世代)」から2021年発売の「Apple TV 4K(第2世代)」まで、ほとんど同じサイズだった。おそらくほとんどの人が「Apple TV」と言われて思い出すのはこのデザインのもののはずである。
だが、今回の第3世代では、底面積が一回り、高さも一回り小さくなっている。単体で見るといままで通りのように見えるが、比べると違いははっきりする。
その分、箱のサイズもかなり変わった。従来と同じく、付属品もリモコン(Siri Remote)と電源ケーブルで変化はない。
小さくなった理由は、第2世代には搭載されていた「ファン」がなくなったためだろう。空冷のための部品がごっそりなくなったために、本体サイズが軽く小さくなったわけだ。
性能は変わったが使い勝手は変わらず
実のところ、使い勝手にはほとんど違いがない。新機種に置き換えてみても差はほとんど感じられないのだ。正確に言えば、「前のモデルが非常に快適なモデルだったので、今回のモデルもそれ以上なのだが違いは見えにくい」ということだ。
昨年モデルである第2世代は、SoCとして「A12 Bionic」を使っていた。それに対して新しい第3世代は「A15 Bionic」になった。性能は向上しているそうなのだが、正直Apple TVの用途では差が見えにくいものだ。前のモデルでも十分に高速な操作性だったので、この点を気にして買い換える必要はないだろう。
データ形式として新たにHDR10+にも対応しているが、配信コンテンツではあまり使われていないこともあり、ここも差を体感するには至らない。
ファンレスになった、と言っても以前のモデルでもファンの音はまず気になることはなかった。どうしてもファンは埃を集めるので汚れやすい……という欠点はあるにはあったが、それも目に見えて汚れるほどのものではない。
ファンレスであるのが望ましいので、第3世代でファンがなくなったことは、小型化と合わせてプラスの要因だ。だが、それが前モデルからの買い替えを促すほどのものか、というと、そうではないように思う。
より多くの人むけに「コスパ改善」が最大の変化点
前モデルからの変化が「小型化」くらいであることがマイナスなのかというと、そこは誤解していただきたくない。
そもそもこのモデルは、より多くの人にApple TVを買ってもらうことを目指したモデルであり、第2世代からの買い替えはさほど想定していないだろう。
昨年発売された第2世代Apple TV 4Kは「一つの完成系」と言っていいほどよくできた製品だ。4K/HDR/60P、それにDolby Atmosと、現在の配信で必要とされる機能をひととおり備えていて、動作も速く、さらに、コンテンツの多いアップルのストアが利用できた。もちろん、NetflixやAmazon Prime Video、YouTubeなど、主要な映像配信はどれもアプリがあるので使える。TVerやNHKプラスといった、日本のテレビ系アプリがないのだが、それを重視しないなら、他のSTBよりも操作は快適だ。
リモコンも昨年のリニューアルにより、HDMI CECを使ってテレビの電源・音量などのコントロールも可能になり、ここも使い勝手向上の上で重要だ。
さらに、とにかくセットアップが簡単なのもプラスだ。iPhoneの利用者ならワンタッチでセットアップが終わるし、過去のApple TVからの環境引き継ぎもできる。この点は非常に大きな美点と言えるだろう。
今回は小さくなっただけでなく、価格も下がっている。
今回試用したのは「Wi-Fi + Ethernetモデル」で、ストレージは128GB。名前の通りイーサネットを搭載している。そのほか、ホームネットワーク規格の「Thread」に対応しているが、あまり気にする必要はない。これで価格は2万3,800円で、第2世代の上位機種から価格据え置きだ。
イーサネットとThreadに対応しない「Wi-Fi」モデルは、価格が1万9,800円と安くなっている。ストレージは64GBだが、これは第2世代の上位モデルと同じだ。前回の下位モデルは2万1,800円だったから、小さくなって速くなってストレージが倍になったのに2,000円値下がりした、ということになる。すなわちコスパ改善が最大のメリットなのだ。
さらに言えば、1年前と違い今は急激な円安の最中。iPhoneやiPadが値上がりする中、明確にバリューは上がっている、と言えるだろう。
ライバルはAmazonの「Fire TV Cube」。こちらの新製品が1万9,980円だから、かなりいい勝負である。あちらはイーサネット端子や、HDMI CECで操作するための「HDMI In」もあるが。
2万円近い価格は、数千円で買えるHDMIスティック型のSTBよりは確かに高い。しかし、冒頭で述べたように、機能面での満足度、日常的な快適さを考えると、このクラスのものを買っておいた方がいい。アップルはその点も考え、Apple TVの価格を抑えてきたのではないだろうか。変な話だが、円安がさらに進行して価格が上がる前に、欲しい人は手にいれるべきである。
なお、今回はリモコンに小さな変化がある。といっても、こちらは本当にパッと見ではわからない。サイズもデザインも機能もまったく同じだ。だが、1点変化がある。
充電用の電源端子が、LightningからUSB Type-Cに変わったのだ。若干コネクターサイズが変わっているのがお分かりいただけるだろうか? 本当にちょっとしたことだが、時代の変化を感じる点でもある。