鳥居一豊の「良作×良品」

第86回

狭い部屋でも100型級大画面ゴジラ! エプソン超短焦点PJ「EH-LS500」×「ゴジラ:KOM」

リビングでの使いやすさとデザインにこだわった家庭用超短焦点プロジェクター

4Kテレビの普及が進むにつれ、薄型テレビの画面サイズは40~50型が主流になりつつあり、最大サイズとなると80型クラスも登場している現在、大画面に関心をもっている人は多いだろう。しかし、薄型テレビの80型となるとまだまだ高価だし、なにより最近はテレビ放送をあまり見ない人も増えている。薄型テレビは電源を入れていないときは大きな黒い板なので、80型を超えるようなサイズとなると、電源オフ時の存在感の大きさが少々気になる人もいるだろう。

エプソンの「EH-LS500」

そこでプロジェクターの出番だ。大画面を前提とするならば、ディスプレイとしては薄型テレビよりも割安だし、使わないときも邪魔になりにくい。ふだんはスマホやタブレットでテレビ放送などを視聴しているが、週末に録り貯めていた好きな番組や映画などを見るときは大きな画面で迫力たっぷりに楽しみたいという人にぴったりなのだ。今回取り上げるエプソンの「EH-LS500」(オープンプライス/店頭予想価格29万円台後半/発売日未定)はリビング向きのシアターとしては最適なモデルだ。

とはいえ、薄型テレビに比べるとプロジェクターの人気はあまり高くない。設置が困難、電源オンですぐに映像が出ない、チューナーがない。などなど、薄型テレビと同じような使い方を考えると、マイナス面は確かに多い。しかし、EH-LS500は、そんなネガティブなイメージを払拭したリビングシアターのためのプロジェクターなのだ。

本機は超短焦点プロジェクターだ。従来ならば100型なら2~3mほどとなる投写距離を大幅に短くしたモデルのこと。最近は各社から登場してきているし、エプソンでも数年前から業務用モデルを発売していた。業務用モデルながら、海外では家庭用としても販売していたし、日本でも家庭用として使いたいという声も出ていた。そんな要望に合わせて、家庭用として設計した初のモデルだ。

投写距離は80型ならば約49cm。本体の奥行きで約23cmほど稼げるので、壁との距離は26cmほどで済む。これならば、壁際に置きっぱなしで使うことも可能だ。一般的なプロジェクターはよりコンパクトで、使わないときには片付けることもできるが、そのたびに設置・調整をするのは面倒。常設するにしても天井吊りなどは手間がかかる。置きっぱなしで使えて、邪魔にもなりにくい。日常的な使い勝手を大幅に改善したのが超短焦点プロジェクターなのだ。

EH-LS500。今回はリビングに調和するホワイトモデルを試用している。ブラックモデルもラインナップする。前面のカバーはファブリック生地を採用するなど、デザインにもこだわっている
EH-LS500(W)の前面カバーのクローズアップ。一見するとグレーだが、茶色と紺色の糸を組み合わせたもので、AV機器らしからぬ外観になっている。ちなみにデンマークの有名ブランドであるクヴァドラ製

サイズとしては、最近のコンパクトなモデルと比べると少々大きめだが、458×375×210mm(幅×奥行き×高さ)というサイズはフルサイズのオーディオコンポとほぼ同じ。ちょうどAVラックの上に乗るサイズ感だ。壁際に置いておけるので、サイズの大きさはあまり気にならないだろう。

家庭用モデルということで、デザインにもこだわっている。超短焦点プロジェクターは、画面の手前に置かれるため目に付きやすい。そのため、インテリアとの調和を含めて落ち着いたデザインに仕上げている。放熱口は各所にあるが、前面側は底面の目立ちにくい場所とし、サイドもルーバー風の形状としている。そして、高さ調整機構付きの脚部は、従来モデルのように脚部自体を回して高さを調整するのではなく、調整機構は本体部に内蔵して武骨な印象を極力減らしているのだ。これならば、インテリアにこだわったリビングに置いても違和感は少ないだろう。

天面にある電源ボタン。このほかに動作を示すインジケーターがある。表示もアイコン化して、AV機器っぽいイメージを最小限としている
側面から見たところ。開口部の上側はルーバー形状として、インテリア家電のような雰囲気に仕上げている
高さ調整可能な脚部は、調整機構を本体側に内蔵したダイヤル式。すっきりとした脚部として、武骨な印象をなくしている
天面にある投写レンズ。投写レンズの短焦点化に加え、2枚のミラーを使って光路を稼ぐことで超短焦点を実現した

プロジェクターは出画までの時間が長いことや、画面が暗く、明るいリビングでは使いにくいことが問題として挙げられる事が多い。だが、EH-LS500は、光源にレーザーを採用。最大輝度は4,000ルーメンで、ハイエンド級のプロジェクターに匹敵するスペックだ。レーザー光源は出画が早いことも特徴で、ランプ光源のモデルが出画までに数10秒、画面の表示までに数分の時間がかかるのに対し、電源を入れてすぐに出画し、画面も10秒足らずの時間で表示される。薄型テレビと同じように、見たいときにすぐに使えるのだ。

プロジェクターとしての基本的なスペックは、4K/60p表示やHDR規格に対応。表示素子は1,920×1,080ドットの液晶パネル3板式で、画素ずらし技術「4Kエンハンストメントテクノロジー」を用いて4K解像度相当の表示を実現している。レーザー光源の光出力を細かく調整できる特徴を活かし、ダイナミックコントラストで250万:1を実現した。プロジェクターとしても最新のスペックを備え、高輝度という点では最高レベルにある。

入出力端子は、HDMI入力を3系統、USB端子を2系統備える。ネットワーク接続のためのLAN端子も備えるが、Wi-Fiも内蔵するのでワイヤレスでのインターネット接続も可能だ。

EH-LS500の背面。電源や入出力端子などを備えている
入出力端子部の拡大。2系統のHDMI入力のほか、USB端子、オーディオ出力端子、LAN端子を備える

最後のポイントは、Android TV端末を内蔵できること。すなわち、見た目にはプロジェクター単体で、各種の動画配信サービスを利用できる。見たいコンテンツをGoogleアシスタントの音声入力で検索することもできるし、Chromecast built-inなので、スマホの画面をワイヤレスで表示することも可能だ。地デジなどのテレビ放送のチューナーは内蔵しないが、あまりテレビ放送を見ない、見るとしても見逃し配信やレコーダーで録画しておいてタイムシフト再生するスタイルならば、ほとんどデメリットはないだろう。

ファブリック製のカバーを外すと、左右にスピーカーがある。操作用のボタンのほか、フォーカス調整レバー、付属のAndorid TV端末をセットするためのスペースがあり、HDMI入力とUSB端子も備える
このようにAndorid TV端末を内蔵できる

Android TV端末は、スティック型の別体のものが付属するが、発売前に取材機をお借りしたこともあり、こちらは間に合わなかった。そのため、今回は試していないが、薄型テレビのAndroid TV採用モデルとほぼ同等のことができると考えていいだろう。

ここまでの紹介で、従来のプロジェクターと比べて、かなり使い勝手が改善されていることがわかるだろう。設置場所は壁際の邪魔にならない場所に常設でき、出画も早くかなりの高輝度、Android TV端末同梱で動画配信サービスなども幅広く楽しめる。しかも100型級の大画面だ。プロジェクターに関心はあるが、設置などの問題で敬遠していた人であっても、もはや躊躇う必要はないと思う。

実際に我が家の視聴室に設置してみた。

さっそく、お借りした取材機を視聴室に設置してみよう。サイズ自体はフルサイズコンポとさほど変わらないので、設置は簡単だ。電源やHDMI接続を済ませて電源をオンにすると、すぐにEPSONのロゴが現れた。この出画の速さはさすがはレーザー光源だ。

この状態で、我が家のスクリーンに合わせて調整を行なう。ただし、基本的にはスクリーンを使う必要はない。プロジェクターに不可欠と思われがちなスクリーンだが、これは従来のプロジェクターでは光源の輝度が不足しがちなため、反射率の高いスクリーンが必要だったためだ。EH-LS500はレーザー光源で4,000ルーメンの高輝度なので、スクリーンによる補助は不要。リビングの白い壁に投写するだけで、かなり明るく鮮やかな映像が映し出される。壁に薄い色が付いている程度ならば、ホワイトバランス調整などで合わせることができる。模様の少ない無地の白に近い色の壁ならば、十分に使える。

スクリーンを使った方が画質的には有利だが、まずは壁への投写で大画面の魅力を存分に味わってほしい。これは、良質なスクリーンはそれなりに高価になってしまうため。超短焦点プロジェクターの唯一に近いデメリットに、スクリーンの平面性に対してシビアになるというものがある。要するにスクリーンに皺が寄ったり、歪んでいると、その歪みが目立ちやすいのだ。安価なスクリーンは皺が寄りやすいなど、平面性に難がある。安価なスクリーンを使うくらいなら、壁面に投写した方が平面性で有利になるくらいだ。

DIYで実現できる自作スクリーンとして、白い布や白い紙を使う方法もあるが、これもシビアに平面性を出すのがとても難しいのでおすすめしない。スクリーンにもかなり高価なものもあるので、こだわりだすとキリがない。超短焦点プロジェクターは導入のしやすさ、使い勝手の良さが大きなメリットなので、無理にスクリーンにこだわる必要はない。

我が家での設置では、常設されたスクリーンに映像を合わせるため、主に設置する台の高さを合わせるのが少々手間がかかったが、壁への直接投写ならばこれはほとんど問題とならないだろう。EH-LS500の場合は、やや斜め上方に映像が投影される(80型投写の場合、レンズの位置よりも約14cm上に画面の下端がくる)。このため、100型級の大画面投影だと画面自体の位置が高くなってしまいがちなので、見やすい画面の位置に合わせた低めのラックを組み合わせるのが良さそうだ。

自宅の視聴室の120型スクリーンに合わせて設置した状態。ちょうどよい高さの台がなく、ダンボール箱で代用している

120型に投影した状態での投写距離は、約75cm。本体部の奥行きがあるので、壁との距離は50cmほどだ。EH-LS500の投影サイズは48型~130型なので、ほぼ最大に近い画面サイズと考えていい。80型や100型ならばもっと距離は短くなるので、リビングに置いたとしてもそれほど邪魔にならない場所に設置できるのがわかるだろう。

画面の高さが決まってしまえば、後は非常に簡単だった。きちんとスクリーン(壁)に正対するように位置を微調整し、ズームでサイズを調整し、フォーカスを合わせただけだ。高さ調整のための脚部の調整機構を使って上向き、下向きに調整することもできるし、そのための台形補正機構もあるので、微調整も容易だ。ユニークだったのは、セットアップ時の調整用画面が、調整のためのガイドを兼ねていること。調整画面を見ると同時に、調整方法も確認できるのはなかなか冴えたアイデアだ。

セットアップ画面にある調整用の画面。四方と上側の中央にある縞模様でフォーカスを調整する。画面の形状歪みを修正する方法が中央にイラストでガイドされている

設置の基本はスクリーンの中央に水平な台に乗せ、壁ときちんと正対するように置くこと。超短焦点プロジェクターは壁際の邪魔になりにくい場所に置けるので、なるべく理想的な場所に設置したい。これを守れば、台形歪みのような形状歪みは解決できる。フォーカス調整のコツは、上側の3箇所(左、中央、右)のマークできちんとフォーカスが合うようにすること。EH-LS500Bは斜め上に投影するため、画面の下側のフォーカスが合いやすく、画面の上になるほどフォーカスが甘くなる傾向があるためだ。ひととおりきちんとチェックしてみたが、修正の困難な樽状歪み(タテ、ヨコの中央付近だけが膨らむ/痩せる歪み)もほぼ問題ないレベルだし、上側を含めて四方のフォーカスもピタリと合う。色収差も問題のないレベルなので、細かい微調整を繰り返すような手間はなかった。初心者でも問題なく設置と調整が行なえる簡単さだ。

設定のメニュー。設置ガイドを選ぶと、調整用の画面が表示される。台形補正やズームなどの調整機構も一通り備わっている
台形補正の画面。タテヨコをきちんと補正する調整と、四隅を合わせる簡単な調整の2通りを選べる。スクリーンの中央に置けない場合、ラックの高さを合わせることができない場合の斜め投写時の台形補正に使用する
ズーム調整の画面。ズームは電動で本体側での操作はできず、メニューから操作する。基本的にはワイド側で使用すれば、投写距離も短くなる
デジタルピクチャーシフトの調整画面。ごくわずかな範囲だが、前後左右の位置を微調整できる

さらに正確な調整をしたい人のために、液晶アライメントやユニフォーミティーの調整も行なえる。液晶アライメントは、RGBの3枚の液晶パネルの微妙なずれを合わせること。一応確認してみたが、取材機では問題なるようなずれもなく、特に調整は行なわなかった。ユニフォーミティーは白の均一性のこと。画面の周辺まできちんと均一な白になるように調整できる。こちらは、画面の右端がやや青に寄っていたので、微調整をしている。このあたりは、初心者には難易度が高いし、必須の調整というわけではないので、念のため確認してみる程度で十分だ。あまりにひどい場合に調整をしてみよう。

なお、アライメント調整やユニフォーミィティー調整は、電源オンですぐに行なうのは厳禁。プロジェクター内部はけっこうな高温状態になるので、ある程度の時間(30分~1時間程度)をおいて、温度が安定してからでないと調整の意味がない。むしろ正常な状態を崩してしまうことになるので注意しよう。

液晶アライメント調整の項目。より精密な調整をするための上級者向けのモードだ
液晶アライメントの調整メニュー。調整する色(RまたはB)やパターン色を選択できる
ユニフォーミティー調整の画面。画面に表示された白いブロックを確認して、周辺の色の変化に合わせて調整する
ユニフォーミティー調整時の画面。調整可能なエリアを選んで、調整を行なう。こだわり出すとキリがないので、ある程度のところで妥協することも大事

いよいよ上映開始。待ちに待った「ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ」だ。

これで準備は完了。上映するのは「ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ」(以下「ゴジラKOM」)。国内版UHD BD、BDともに発売されているが、取材では、先行して入手していた海外盤のUHD BDを使用している。まず、国内版UHD BDについては一言、物申したい。何故、UHD BDはフィギュア付きのスペシャル版のみの発売なのか? さらに数量限定なのか?

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 完全数量限定生産 4枚組 S.H.MonsterArts GODZILLA[2019] Poster Color Ver.同梱
(C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

予感が働いたので発売の告知が出たその日に予約購入を済ませたが、その後数日で予約完売し、現在は入手困難。アマゾンには発売前の段階から中古品扱いでプレミア価格がついたスペシャル版が数多く出品される始末だ。メーカーがUHD BD単体では売れそうにないと考えるのは仕方がない面もあるが、数量限定だとUHD BDを欲しい人が入手できないこともあるだろう。欲しい人の手に行き渡らない可能性のある売り方をするくらいなら、完全予約限定か、クラウドファンディングで購入希望者を集めてから商品化した方がいいと思う。

筆者が輸入盤のUHD BD版を入手したのは、単純に発売を待ちきれなかったからだが、他にももうひとつ理由がある。UHD BD輸入盤には、UHD BDとBDのセットとUHD BDと3D BD、BDのセット(スチールブック仕様)がある。国内版はフィギュアのついたスペシャル版はUHD BD、BD、DVD、特典ディスクのセットで、3D BDが含まれていない。3D BDは国内では未発売。当然スチールブック仕様を買ったのは言うまでもない。3Dソフトは一般には定着せず、現在販売されている薄型テレビはすべて非対応だ。

それでも、プロジェクターユーザーや3D対応の薄型テレビを愛用している人はそれなりにいて、筆者のように2D版と3D版の両方を買っている人もいるだろう。BD以降になってディスクが売れないのは動画配信サービスが主流となった今では仕方がないが、今なおディスクソフトを買っている人の中には、UHD BDや3D BDの発売を熱望する筆者のような人は少なくないと思う。たくさん売れるディスクを発売するのではなく、確実に買いたいという人のいるディスクを発売する。流通形態もそれにふさわしい方法をきちんと検討するべき段階にあるのではないかと思う。

話題がそれた。「ゴジラKOM」の国内版UHD BDが買えない人は、輸入盤UHD BDを買えば済むかというとそうではない。輸入盤には日本語字幕がないのだ(UHD BD、BD、3D BDのすべて日本語字幕なし)。Dolby Atmos音声については、国内版BDでも収録しているので、迫力のある音を満喫したい人は国内版BDがあればいい。だが、UHD BDの4K映像もかなり素晴らしいし、HDR10に加えて、ドルビービジョン、HDR10+にも対応しているので、映像ソフトとしても高スペック。映像もよりじっくりと楽しみたい人は輸入盤UHD BDをさらに買うというのがベターなプランだ。こう言ってはなんだが、所詮は怪獣映画なので、3度も見れば字幕なしでも問題なく視聴できる。少なくとも3度以上見るようなヘビーなファンは輸入盤も購入するといいだろう。

そろそろ上映を行なおう。使用したプレーヤーはパナソニックの「DP-UB9000」で、スクリーンはオーエスのピュアマットIII。AVアンプやスピーカーは視聴室の常設のシステムだ。まずは画質調整から行なった。画質モード(カラーモード)は4種ある。視聴はいつも通りの暗室で行なっているので、「シネマ」を選択した。ちなみに「ダイナミック」や「ブライトシネマ」といったモードは暗室では明るすぎるほど。さすがは4,000ルーメン。リビングなどの明るい環境でも十分に楽しめる輝度パワーがある。

EH-LS500の画質メニューにある「カラーモード」の選択画面。ダイナミック/ブライトシネマ/シネマ/ゲームの4種類が用意されている

「シネマ」を選択し、画質調整を少々行なった。これは、EH-LS500の画質に問題があるというわけではなく、HDRコンテンツの高輝度をプロジェクターで楽しむには微調整が必要だということ。これはどんなプロジェクターでも同様だ。このあたりをきちんと行なうことで、プロジェクターでも薄型テレビに負けないハイコントラストな映像を楽しめる。

まず、「シネマ」ではレーザーライト出力が50%だったので、100%にした(のちに微調整で90%とした)。HDRの強い輝きのためにレーザーライト出力をフルパワーを前提とした。画面が明るくなったぶん、コントラスト感が不足したので、コントラストを50から70とした。

一番大事なのが、「ダイナミックレンジ」の調整。HDR10とHLGのそれぞれで16段階でダイナミックレンジを調整できる。目安としては、初期値の「8」が最大輝度500nitがターゲットで、最大の「16」で最大輝度1万nitがターゲットとなる。「ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ」のUHD BDのHDR10映像は、最大輝度が1,998nit、平均輝度が414nit(DP-UB9000の表示で確認)だったので、それに合わせて「12」を選んだ。このあたりは、いちいち最大輝度を調べる必要はなく、明るいシーンと暗いシーンでチェックして、見やすい画面の明るさになるように選べばいい。調整の順番としては、「ダイナミックレンジ」の調整が最初で、次にコントラストなどの調整を行なうようにする。

画質調整のメニュー一覧。基本的な画質調整機能をきちんと備えている
HDRの高輝度を満喫するため、レーザーライト出力はフルパワーが基本。視聴では90%とした
HDRコンテンツで不可欠な「ダイナミックレンジ」の調整。HDR10、HLGのそれぞれで16段階の調整ができる

続いては、「イメージ強調」で精細感を微調整した。超解像とディテール強調を調整できるが、プリセットも5つ用意されており、基本的にはプリセットから選ぶだけで好みの精細感に調整できる。EH-LS500は画素ずらしによる4K相当の表示なので、ネイティブ4K解像度を持つプロジェクターと比べると、精細感はやや劣る。そこで、こうした機能で精細感を高めてやるのだ。UHD BDの4K映像は、見慣れた有機ELテレビと比べるとやや精細感が不足気味だったので、初期設定のプリセット2からプリセット5へ変更した。これだけでも精細感としては十分。2Kのコンテンツの場合は、プリセット5ではやや強調感が目立つので、プリセット2や3を選ぶと良さそうだ。もちろん、マニュアルで細かく追い込んでもいい。

「イメージ強調」の画面。基本的にはプリセットから選ぶだけでOKだ
「イメージ強調」のマニュアル調整で超解像を選択したところ。高域と低域の両方を個別に調整できる
「ダイナミックコントラスト」は、画面の明るさに合わせて動的にレーザー出力を可変し、コントラスト感を高める機能。初期値は「標準」だが、「高速」でも違和感がなかったので、「高速」を使った
「映像処理」は、「きれい」と「高速」が選べる。ゲームなどで役立つ低遅延モードと言える。BD再生などでは「きれい」のままでいい

本作はかなり暗いシーンが多い映画だが、きちんと調整を行なうことで、暗いシーンでも見通しがよく、ゴジラの放射能火炎やギドラの雷撃のような眩しい光も力強く描いた。プロジェクターはドルビービジョンやHDR10+には今のところ非対応だが、HDR10でも十分に優れたハイコントラストな映像を楽しめた。有機ELテレビと比べれば、絶対的な黒の締まりは差があるが、映画を見始めてしまえば気にならないレベルだし、なによりも明るいシーンが力強い。これはやはり4,000ルーメンのパワーだろう。

レーザー光源の色合いも不自然なところはなく、むしろ発色の良さは有機ELと遜色がない。カラーブレイキング(色割れ現象)が生じない三板式のメリットもある。液晶パネルの階調性のスムーズさも好ましいし、画素ずらしによる4K表示もカリカリのCG映像にならず、適度に自然なフィルムらしい感触があり、映画にはよくマッチする。

じっくりと本編を見ていこう。見どころは数限りなくあるが、やはり南極の氷の中に封印されていたギドラが復活する場面が序盤の見どころだ。テロリスト集団が南極のモナーク基地を襲撃しギドラの復活を試みるが、モナーク側もそれを阻止するために基地に侵攻する。基地内はかなり暗いシーンが続き、人の表情もモニターや照明の影響で赤みがかるなど場面によって変化する。暗部は階調性もよくきちんと見通せるし、表情の色合いの変化も自然だ。

そして、氷を爆破してギドラの封印が解かれる。崩れ落ちる氷の奥から3つの首を持ったギドラが姿を現す。迫力満点の画面だが、120型の大画面となるとスケール感がまるで違う。最強の怪獣と呼ばれるだけの風格と迫力を感じる映像だ。

ちなみに、暗室で観ていると、目の前にあるEH-LS500の白いボディが投写光を受けてわずかながら光っているのがわかる。決して煩わしいほどではないが、目の前にあるので気になる。ブラックボディのEH-LS500(B)も発売されているので、暗室で使うことが多い人はこちらを選ぶといいだろう。

暗室での上映中のイメージ。レーザーの光で天面がわずかに光っているのがわかる

復活したギドラは北米大陸南部に進出する。台風とともに襲来する姿も神秘的だが、まさに怪獣の王のように翼を広げて雄叫びを上げる姿がカッコイイ。金色に輝く身体の艶や、雷光のような怪光線を四方に放つ姿はなかなかの風格だ。本作は巨大な怪獣のバトルを描く映画なので、大スクリーンで見ることを前提にしたかのようなカットがとても多い。構図としての美しさは画面サイズに依存しないのだが、実際に大画面で見ると、その迫力は大きく違ってくる。映画を見ているような迫力で、しかもディテールのみっちりと詰まった高精細な映像が迫ってくる。

100型級の大画面投写をするプロジェクターは、2K解像度が主流の時代は画素の隙間が視認でき、格子状というかメッシュ越しに映像を見ている感があった。特に液晶パネルはDLPと比べると画素ピッチが広いので、メッシュ感が目立ちやすかった。しかし、現代の画素ずらし技術による4K相当の表示になると、メッシュ感や画素が見える感じはなく、絶対的な黒の締まりを別にすれば有機ELテレビの画面がそのまま拡大されたと感じる映像になる。これは見応えがある。黒の締まりにしても、数年前のモデルよりも黒の締まり自体は向上しており、黒浮きというイメージはない。これはレーザー光源を採用したメリットもあるだろう。

プロジェクター情報を表示したところ。4K(3,840×2,160)で、HDR10信号を表示していることが確認できる

我らがゴジラはギドラと対峙するものの、そのパワーに圧倒されつつあった。しかも、新兵器として登場するオキシジェン・デストロイヤーの一撃を受けて、瀕死となって海の底に沈んでしまう。そんなゴジラは、海の底にある海底神殿の奥底で傷つき倒れている。ギドラに対抗できるのはゴジラのみという考えで、モナークや芹沢博士がゴジラを救うべく、深海へと向かう。深い暗黒の海中で無人機を使って探索する面々が、海底神殿の神像を発見する場面はなかなかホラーな感じでいい。

実際、真っ暗な海から女性像の顔が現れる場面はちょっとびっくりする。暗黒の海の再現も十分だし、薄暗い神殿の内部へと入っていく場面でも、暗部の再現性は十分。階調がなめらかなので、黒の中に浮かぶ神殿の彫刻や岩のような質感もしっかりと描かれる。

神殿内は一転して空洞のような場所で、海水はなく、空気もある。そこに降り立ち、エネルギー源となる核弾頭を運ぶのが芹沢博士。海底火山のマグマで真っ赤に染まった神殿の階段を昇っていく芹沢博士の姿が泣かせる。ガスでくもった神殿内の奥でゴジラのうなり声が響き、その頭部が見えてくる。横たわりながらも、ジロリとにらむ眼光にはまだ力がある。ゴジラとの邂逅を果たし、芹沢博士もろとも核弾頭は爆発。そしてゴジラが蘇る。

感心するのはマグマや炎の真っ赤な再現で、階調感も含めて熱の伝わる映像だ。赤から黄の色の変化は、有機ELテレビでもメーカーによる画作りの差が現れやすい部分で、赤みが強かったり、逆にオレンジがかってしまうといった差が出やすい。プロジェクターでもそれは同様だが、EH-LS500の映像は階調感も含めて実に自然な色合いだ。赤い光で照らされた芹沢博士の表情もスムーズだ。こうした発色の良さはEH-LS500の大きな魅力だ。

さて、舞台は変わって、野球場のスタジアムに飛来したギドラを追って、復活したゴジラが現れる場面だ。雨が降り注ぎ、破壊された街の瓦礫やホコリの中から姿を現すゴジラは実にカッコイイ。画面が大きいのでその巨大さも倍増する感じだ。全編そうなのだが、サブウーファーからも轟音が出て重量感たっぷりの音響と相まって、ゴジラとギドラの巨大な怪獣の激突が大スケールで展開する。やはり大画面は良い。Dolby Atmosの雄大な音場再現にふさわしい迫力と臨場感がある。

3D版でさらに臨場感たっぷりの映像を満喫したい!

プロジェクターのもう一つの魅力である3D版も見てみた。EH-LS500は3D映像に対応する。別売の3Dメガネがあれば、3Dコンテンツも楽しめる。3Dメガネは無線タイプで、ソニーのVPL-VW500ES用に購入した無線式の3D眼鏡がそのまま使えた。エプソンも無線方式の3Dメガネ(ELPGS03 定価1万円)を発売しているが、汎用の無線方式の3Dメガネでも問題なさそうだ。3D映像は若干のクロストーク(映像がブレたような二重像になること)はあるが、見づらいほどではない。クロストークが気になる場合は、3D明るさ調整で映像を暗くすると緩和できる。映像サイズを合わせるほか、見やすいように3D奥行き調整も行なおう。

「3D設定」ここでは、3Dの奥行き調整や映像サイズ、3D明るさ調整などが行なえる

調整を済ませると、クロストークも気にならないレベルだし、3D明るさ調整は暗めとしているが、もともと輝度パワーが高いので、画面が暗くなるようなことはない。3D BDなので、4K HDRの高いコントラストは望めないが、BDの映像としてはかなり優秀な映像だ。

大画面でしかも3Dとなると、どうなるか、ゴジラやギドラが“分厚く”なるのだ。3Dの立体感としては映像が飛び出すような見せ方はあまりなく、奥行きが深くなる方向。これは元々の3D映像がこうした自然な見え方を意識しているものだと思う。もちろん、ゴジラとギドラが激しくバトルを繰り広げる足元で、人間たちが動き回るような場面では目の前にいる人間と奥に立つ怪獣の巨大さが際立ち、自分がその場にいるような感じになる。

ゴジラやギドラをクローズアップすると、ゴジラのゴツゴツとして体表のデコボコ感が際立つし、頭部はもちろん、腕や巨大な尾の肉厚さがよりしっかりと感じられ、ますます巨大に見える。UHD BD版に比べるとディテール感はやや不足するのだが、トータルの迫力や怪獣映画としての見応えでは3D版に軍配が上がる。3Dはやっぱり楽しいなと、改めて実感した。

4K時代こそ、プロジェクターの時代。高精細なコンテンツだからこそ、大画面が欲しくなる

4K HDRに対応し、投写距離や設置場所の問題、出画の遅さといったプロジェクターの使いにくさを解決したEH-LS500は初めてのプロジェクターとして最適なモデルだと思う。65型を超える大画面テレビの価格を考えれば、価格は割安感があるほど。しかも、Android TV端末同梱で単体でテレビのように使えてしまうのもうれしいところ。大画面テレビは欲しいがまだまだ価格は高い。プロジェクターは使い勝手が悪そう……などと思っている人はぜひともEH-LS500を体験してほしい。大型量販店やAV専門店などはもちろん、丸の内にあるエプソンのショールームでも展示しているので、年末年始の休暇などで見に行ってみるのもいいだろう。

4Kコンテンツが十分に普及し、4Kテレビも順調に売れている。しかし、画面に顔が触れるほど近くまで寄っても画素が見えない4K映像の映像の密度は大きな画面でないと実感することは難しい。55型の有機ELで4K映像を見ていた筆者でも、こうした120型の大画面で映像を見ると、まだまだ見落としていた情報がたっぷり詰まっていたことに気付く。あえて言おう。4Kコンテンツは80型や100型級の大画面で見るべきだと。薄型テレビの大画面モデルもかなり身近な価格になっているし、EH-LS500のようなプロジェクターがある今ならば、実現は可能だ。ぜひとも可能な限り大画面を求めてほしい。ゴジラはシリーズを重ねるほどに巨大になっているのだから、それを見るテレビも同じく巨大なサイズで楽しんでほしい。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。