小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1106回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

あのButterflyが帰ってきた! アイワ「ButterflyNEO」

個人的大ヒットだったButterflyAudio

2022年にレビューしたaiwaのButterflyAudio「HPB-SW40」をご記憶だろうか。アームバンドからスピーカーを立ち上げて耳元で聞かせるという斬新な設計のイヤースピーカーである。ヘッドフォンともまた違う、空間的に広がりのある音像を展開することで、レビューしたあと個人的にも購入した。

今年はかなりの頻度で、仕事中のリスニングとしてButterflyAudioを使用した。装着すると見た目が奇抜なので、使用環境は家庭内に限られるが、かなりの音量で聴いているにもかかわらず家人の声かけにも反応できるなど、耳を塞がない系のメリットも享受できる製品であった。

そして2023年7月26日、第2世代となるButterflyシリーズ「ButterflyNEO」のクラウドファンディングがスタートした。目標金額が100万円と比較的少額であったことから、当日中に目標額に到達している。

早速筆者も応援購入したが、価格が14,300円に設定されているところ、超超早割30% OFFの10,010円で購入できた。最終的には到達率1,149%、金額にして11,495,770円でクラウドファンディングは終了している。

12月中旬より順次送付が始まったButterflyNEO

そして予定通り12月中旬より順次製品の送付が開始された。筆者宅には12月18日に到着したばかりだ。前作よりも大幅に構造が変更された第2世代の音を、早速聴いてみよう。

大幅に小型化されたボディ

ButterflyNEOの製品型番は「HPB-SW20」となる。初代よりも型番が小さくなったのは、やはりサイズ感が大幅に小さくなったというところからだろう。実際初代と比べてみると、大人と子供ほどの違いがある。

初代ButterflyAudioと比べると大幅に小型化された

まずパッケージからして小さい。初代は平たく折りたためるものの、フットプリントはかなり大きく、箱も大きくてビックリしたものだった。今回は一般的なヘッドフォンよりも断然小さくなっている。

パッケージは手のひらサイズで、一般的なヘッドフォンよりも小さい

設計としては大幅に変更され、ネックバンドではなくヘッドバンド式に変更されている。見た目も普通になり、装着しても奇抜な感じがなくなったのは一つの安心材料だろう。カラーもシンプルで、ボディ大半はグラファイト、ヒンジ部のカッパー塗装が印象的だ。

装着時の姿も違和感がなくなった

イヤーフックの先端にスピーカーを繋ぐヒンジ部があり、2段階に角度調整ができる。最大まで開くと、ButterflyAudio特有のスピーカーが耳から離れた状態に、1段閉じると耳にくっつく状態になる。初代ButterflyAudioはスピーカーを耳に押しつけることを想定していないので、スピーカー部にクッション素材が使われていないが、ButterflyNEOはスピーカーにスポンジが取り付けてあり、耳に押しつけることも想定されていることがわかる。

最大に開いたポジション
1段閉じたポジション

スピーカー部は、初代が10cm径の大型ドライバーを採用していたのに対し、NEOは34mm径と大幅に小型化した。ドライバは独自のDouble Resonance Driver(DRD)を採用。詳細は明らかになっていないが、内部に2つの振動ファクタを搭載するという。このドライバと信号処理技術は「Dedeking R&D」というところからのライセンスということで、自社開発ではないようだ。

軽量化も見逃せないポイントだ。初代が約340gだったのに対し、NEOはわずか60gに軽量化された。ヘッドバンド型は頭部への挟み込みと耳のフックで重量を支えることになるわけだが、装着しても重さという意味での負担は感じられない。

ロゴはかなり控えめで、左側にあるのみ

コントロール部はすべて右側で、再生・停止、前後スキップボタンの3つだ。再生・停止ボタンは二度押しすると、重低音モードへの切り替えとなる。デフォルトでは重低音モードONになっている。スキップボタンは、短押しでボリュームアップダウン、長押しで曲のスキップ・バックとなっている。

右側にあるコントロールボタン

充電端子はコントロール部の裏側にあり、USBコネクタではなく、マグネット吸着式の接点となっている。充電ケーブルも専用品となった。充電時間は約2時間で、連続再生時間は約12時間。

充電端子はマグネット式となった

Bluetoothバージョンは5.3で、コーデックはSBCとAACに対応する。

2タイプの音像が楽しめる

では実際に音を聴いてみよう。今回は先日亡くなった元Wingsのデニー・レインを追悼して、アルバム「Band On the Run」をApple Musicで聴いていく。

NEOではスピーカーの角度が2段階に設定できるが、これは個人の頭の形状に合わせるというよりも、2種類のサウンドが楽しめるといった設計のように感じる。開いた状態では、初代ButterflyAudioに近いポジションとなり、オープンな音像が楽しめる。

今回はデフォルトの重低音モードONで聴いているが、最初は低音不足のように感じたものの、2~3時間ほどエージングすると硬さが取れて低域も出てきた。初代は低域だけで6段階の調整ができたことを考えると、ONとOFFしかないのは物足りなく感じる。

一方高域表現は、初代よりも大幅に向上している。音のエッジがはっきりするので、全体的な解像感の向上が感じられる。初代は音楽再生用というよりもテレビやネット配信などの動画コンテンツ視聴用として設計されているが、NEOは音楽再生用にチューニングされているのがわかる。

音の広がりという点では、初代ButterflyAudio同様のコンセプトは感じられるところではあるが、音像を空間に描くような感覚は減退しているのが残念だ。やはりある程度面積があるスピーカーから3~4cm離して聴いていた前作と比べると、ドライバー径が小型化して接近位置になったことで、音が点音源的になったことが要因かもしれない。ある意味物理でぶん殴っていた感のある前作からすると、方法論としてはかなり洗練されたものの、効果は一歩減退した。

スピーカーを1段倒して耳に近接させた状態に閉じると、音の表情は一変する。一般的に良好とされているバランスよりも低域がかなり強くなり、開いた状態のOFF感と比べて、かなり音がONになる感じが強い。新方式のドライバーもかなりゴリッとした低音が出せるユニットに仕上がっており、新ドライバーの真骨頂を楽しむならこちらのポジションだろう。

ただここまで耳に近接していると、一時期流行ったイヤーフック型ヘッドフォンとあまり変わらない。まあ耳を押さえつける感じや、耳たぶに引っかかっている負担感は少ないが、そもそもスピーカーを耳の近くに浮かせて聴かせるというコンセプトではなくなる。

装着の安定性はもう一歩

装着の方法が大きく変わったことが、今回のポイントである。前作が主に重心を首から肩で受け止めていたため、長時間装着していると首や肩が凝るというデメリットがあった。それを全体的に軽量化してヘッドバンド型にしたことで、首や肩への負担はなくなっている。

初代の装着方法。長時間使っていると首や肩に負担がかかるという評判だった

ただ装着位置の安定性という意味では、後退したのではないかと思う。NEOを装着した状態を鏡で見てみたが、10数分も装着していると、次第に後ろのヘッドバンド部が下がってくる。

そうなるとスピーカー部も、耳前にあるヒンジを中心に回転して下がるため、耳穴を芯で捉えなくなる。音像的には高域の解像度が下がってくるというデメリットがある。また見た目にかなりズルッと装着しているように見えるので、せっかくの見栄えの良さが減退する。

ドライバー部にもう少し重量があれば前後のバランスがとれたのかもしれないが、軽量化したために後ろの方が重くなってしまったのだろう。後頭部のバンド部が長さ調整できるようになっていれば、天秤としての長さが短くなるので、バランス調整ができたかもしれない。

前回との違いとして、首を振っても音像がずれないという点がメリットとして上げられている。だが個人的に、これはメリットではない。前作はネックバンドから直接スピーカーが立ちあがっていたため、確かに首を振ると音像は付いてこない。

だがそれはある意味、ナチュラルなヘッドトラッキングだったのだ。頭を動かしても音像が付いてこないという効果により、固定された立体的な音像空間がより強く認識されていたのだ。今回はこうした音像の固定感がなくなったことで、空間オーディオ的な感覚が大きく減退した。ユーザーの意見を取り入れたということだが、初代で際立っていた重要な個性を台無しにしてしまっている。

首・肩への負担は、ドライバーを小型・軽量化したり、ネックバンド部を幅広にして重量を分散させるなどのアプローチもあったはずだ。すでに初代モデルは生産終了しており、もうこの独特の音像は手に入らない。非常に残念だ。

総論

初代ButterflyAudioから大幅に小型化して再登場したButterflyNEO。前作で課題とされていた、首かけゆえに首や肩が凝る、首を振ると音像が付いてこないという「欠点」を、軽量化と装着方法を変えることでクリアした。

それがゆえに、初代が持っていたダイナミズムや空間表現は大きく減退することとなった。初号機を自分でも購入して愛用しており、装着感が向上した次世代機に期待していただけに、この差は非常に残念だ。とはいえ、初めてこれを聴く人には斬新に感じられるだろう。ただ初代はもっと凄かった、と申し添えておきたい。

今回採用された小型ドライバーは優秀で、耳から距離があっても低音の減衰が少なく、こうした超オープンなスタイルに最適化されている。また一段ポジションを閉じて耳の近くで聴くと、低音がよく出る一方で全体の解像感が低域に埋もれることもなく、普通のヘッドフォンとしても優秀だ。欲を言えば、重低音モードのON・OFFだけでなく、もう少し細かく段階があっても良かった。

初代のような奇抜さがなくなったことで、使いやすくなった点は評価できる。人が居るところは閉じて小音量で、一人の時は広げて大音量でと、1台2役で使えるのもメリットだ。この超オープン型とも言えるイヤースピーカーに取り組んでいるのはaiwaだけなので、ぜひこの方式で3世代目、4世代目とチャレンジを続けてほしい。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。