プレイバック2024
うっかり自作キーボードに“沼った”この1年 by小寺信良
2024年12月24日 08:00
2024年を振り返ると、ネット界隈はAIの進化に翻弄されたように思う。チャット型、画像生成型、音楽生成型など様々なジャンルでAIブームが巻き起こり、PCはCopilot+対応で活気づいた。
一方コデラ的に今年沼ったものと言えば、AIとは全く無関係の分野であった。同業の西田宗千佳氏の影響で昨年のクリスマスにKeyChronの「K11 Pro」という左右分離型のキーボードを買ったのが運の尽き。
キーキャップを交換してみたり、キーアサインを替えてみたりといったカスタマイズが楽しくなってしまった。
そんなことをして3カ月ほど遊んでいたのだが、今年3月に東京出張した際、うっかり自作キーボードの聖地「遊舎工房」へ立ち寄ってしまった。
もう蜘蛛の巣に引っかかった虫と同じである。手足をからみ取られ、気がつくと左右分離型の自作キーボード一式を購入していた。「Corne Cherry Light」という、42キーしかないモデルである。初心者だからスイッチが少なければ難しくないだろうという、単純な理由だ。
暇を見つけては少しずつ組み立て、ファームウェアの書き込みでトラブったが、2週間ぐらいかけてようやく動くものになった。キーが少ないので、カスタマイズが重要になる。試行錯誤にまた2週間ぐらいが費やされた。
初めての自作キーボードで、そこそこ満足していたのだが、やはりキーが少ないことが問題となった。まず行き詰まったのが、数字キーがないところだ。レイヤーキーを押しながら最上段のキーで数字入力できるようにはしてあったのだが、数字を間違うというのは誤字がある以上に問題が大きくなる。あるいはパスワードなどに数字があった場合、文字が目隠ししてある状態で間違いなくその数字が打てているのかの確認ができない。
次の問題が矢印キーの配列だ。Corne Cherry Lightでは山型に配置する事ができず、仕方なく田の字に配列したが、過去こうした配列のキーボードが存在しなかったので、なかなか慣れない。やはり山型か、せめて横一列の配置じゃないとワチャワチャしてしまう。
さらに記号キーの入力には、ファンクションキーを押しながらアルファベットキーを押す、みたいな動作が増えてしまい、結果的にはやたらと手数が多いということに気がついてしまった。
そうなるともう少しキーが多い方がいいか、と欲が出る。気がつくと遊舎工房のネット通販サイトから、「Ergo68」というモデルを購入していた。組み立ては、Corne Cherry Lightよりもだいぶ簡単だった。
こちらは名前の通り、68キーである。数字キーもあるし、矢印キーも山型に配置できる。余ったキーにはマクロも仕込めるので、パソコンへのログインパスワードをマクロ化したり、特定の単語を選んでカギ括弧でくくる、コピーしたURLを括弧で囲む、みたいな作業も一発でこなせるようになった。
これを2カ月ほど使い倒していたのだが、どうも右手親指で押すエンターキーのポジションが悪く、微妙に負担がかかったようで、右の親指が腱鞘炎になってしまった。キーボードを使って腱鞘炎になるなど、初めてのことである。病院にも行ったが、ジジイなので治るのに時間がかかる。
その間、リハビリとして柔らかいキータッチで右手親指を使わないよう、キー荷重30gの「REALFORCE RC1」へ切り替えた。腱鞘炎は、結局完治するのに1カ月半ぐらいかかった。
その間、「Ergo68」のキースイッチを軽いものに交換したり、親指のキーアサインを見直したりと、1カ月ぐらいかけて調整して、ようやく負担なく使えるようになった。
元々古いメカニカルなキーボードが好きで、中古を漁っては買ってしまうので、一時期は14台ぐらい所有していたことがある。だがエルゴノミクスキーボードの「KINESIS」を使いはじめて以降、10年ぐらいはこれ1本だった。途中キーがへたってきたので一度買い直している。その間、集めたキーボードは売ってしまった。
それがまたこんな形でキーボードが集まり始めている。どうもキーボードを買うということに関しての閾値がバカになってしまっており、非常にマズい。現在も足もとに6台のキーボードが立てかけてあり、気が向いたら繋ぎ替える日々である。使う人間は1人、繋ぐパソコンも1台なので、どう考えてもこんなにキーボードはいらない。
いつかまた、どれかに収斂するときが来るのだろうか。それとも。