プレイバック2024
人生最高額の大散財。写真得意じゃないのに「ライカM11」買っちゃった by 編集部 酒井
2024年12月30日 12:30
今年6月、ひょんなことがきっかけでレンジファインダーカメラ「ライカM11」ととレンズを購入してしまった。写真が上手なわけでも、趣味にしているわけでもないのだが、ライカM11を手にしたことで、出不精だった筆者が週末に外へ出かけ、「写真って楽しいかもしれない」と思えるようになった。
購入のきっかけはYouTube。そもそもは今年3月ごろ、昨年購入したミラーレスカメラ「EOS R10」用の手頃なレンズを探していて、姉妹サイトのデジカメWatchをはじめ、ネットでいろいろな情報を集めていた。
そんなときに視聴したのが、カメラ機材を紹介している写真家・西田航氏のYouTubeチャンネル。EOS R10を購入する際にも参考にしたYouTubeチャンネルで、キヤノンやソニーのカメラ・レンズのレビューなどが豊富だった印象があり、「欲しいレンズに関するレビューがあるかも」と、久しぶりにチャンネルを開いてみた。
以前は目当てのEOS R10に関する動画だけチェックしていたので気が付かなったが、よくよく投稿動画を見ているとキヤノンやソニーに並んで、ライカに関する動画も多く投稿されていることに気がついた。「やはり、プロはライカなんだなぁ」と思いつつ、ついつい動画を再生。そこで紹介されているライカM11の作例を見て、その独特な仕上がりの写真に魅了され、ライカに興味を持つようになった。
そこに追い打ちをかけるように公開されたのが、ガジェット系YouTuberのひとり、瀬戸弘司氏がライカM11を購入したという動画。個人的にも初めてチャンネル登録した“YouTuberらしいYouTuber”が瀬戸氏だったので、「カメラに240万かけるって、YouTuberすげぇ」と思いつつ、久しぶりの“瀬戸弘司の動画”を楽しく視聴していたところ、そのなかで紹介されていた「0歳の息子をライカで撮れるのは今しかない」という視聴者のコメントが、妙に刺さってしまった。
というのも、当時我が家には14歳を迎えたばかりの老ラブラドール・レトリーバーがいた。まだまだ朝晩の散歩は元気に行くし、食欲も旺盛だったが、階段が登りづらそうなど足腰に老いも見えていて、「この子の元気な姿を写真に収められるのも今のうち。せっかくなら、あの独特な仕上がりの“ライカの写真”で記録したいな」と、ぼんやりと考えるようになった。
とはいっても、ライカM11の価格はボディ単体で100万円超。組み合わせるレンズ次第では200万円を超え、自動車が買えるくらいの予算が必要になる。そんな資金はまったくないし、愛犬も14歳にしては元気だったので、「今年は貯金して、来年(2025年)買えたらいいな」と年内の購入は見送るつもりだった。
ところが5月末ごろ、ライカが6月12日付けでの価格改定を発表。ライカM11ボディも139万7,000円から145万2,000円に値上げされることになった。「このペースで値上げされたら、来年には200万カメラになっちゃうじゃないの?」と思いつつ、価格改定のニュースを見にライカオンラインストアを開いたところ、見つけてしまったのだ。「最大60回・無金利ショッピングローンキャンペーン」の文言を……。
ライカM11ボディと、(ライカの中では)比較的手頃な価格の50mm単焦点レンズ「SUMMICRON-M f2.0/50mm」(41万8,000円)のセットで、合計金額は181万5,000円。もともと、この額の買い物を一括払いできるとは思っておらず、「ある程度の頭金を作って、金利分も考えて残りは12~24回払いで……」と思っていたところに60回・金利無料である。
181万5,000円を金利無料の60回分割払いで購入すると、月々の支払いは30,250円。頑張って節約すればなんとか賄えそうな金額に思える。少ない貯金を切り崩して頭金を作れば、月々の費用はもう少し抑えられるし、ちょうど分割払いしていたMacBookの支払いが終わり、ほんの少しだが余裕もできるタイミングだった。
ただオンラインで購入するには金額が大きいこと、なによりライカM11自体に触れたことがなく、“レンジファインダーカメラの撮影の作法”も分かっていなかったので、まずは実機に触れて、それから考えようと決意。価格改定前、最後の週末だった6月8日にライカ銀座店を訪れた。
当然、ここまで心が揺れている人間が実機に触れてしまえば「やっぱり止めよう」と心変わりするわけもなく、店舗を訪れて5分程度で「M11とレンズの在庫はありますか? ローンで買いたいんですが……」とスタッフに質問。ちょうどどちらも在庫があり、そこからはあれよあれよという間に手続きが進み、店舗到着から2時間もかからずにライカユーザーとなって店を後にした。
それまで週末は休日は部屋にこもってゲームに熱中する日々だったが、ライカM11を購入してからは、なるべくカメラ片手に外出するように。ある日は編集部のオフィスがある神保町から半蔵門まで、途中北の丸公園に寄り道しながら2時間かけて歩いたこともあった。
ライカM11を購入してから約半年が経ち、いまだに写真が上手いとはまったく思っていないし、写真が趣味だと言えるほどの自信もないが、「写真を撮るって楽しいかもしれない」と思える程度には、気持ちに変化が起きている。外出して、街をゆっくり散策する機会が増えて生活習慣にも変化が出てきた。
唯一、心残りなのは当時の愛犬の写真を撮るという目的が叶わなかったこと。ライカに興味を持った3月から、実際に購入した6月8日までの3カ月間で、愛犬の老化が急速に進んでしまい、ライカM11購入日の夕方に入院。翌9日には容態が急変して、この世を去ってしまったのだ。
ただ、ペットロスに耐えられなかった家族全員で議論し、夏の間に新たな愛犬を迎えため、“我が家の犬をライカで撮る”ことはできた。老犬だった当時の子とは違って、元気いっぱいにはしゃぎまわるパピー犬なので、ピントの合っていない写真が量産されるばかりなのだが……。
マニュアルでしか撮れないカメラを使うことで、改めてオートフォーカスや被写体認識が使えるカメラ・スマートフォンの便利さ・ありがたさも痛感している。