ニュース

映像を現実のように体験、アイキューブドが「I3C」開発。SDRでも明るく表示

 アイキューブド研究所(I3研究所)は、映画やテレビ番組などの映像を、まるで現実のように認知できるようにするという映像クリエーション技術「I3C(Integrated Intelligent Interaction Creation)」を発表した。これまでの同社技術のコンセプトを包含した集大成として提案。テレビやプロジェクタなどを含め、様々な用途を検討するという。

I3C技術

 同社は、現実の風景を見たときの“認知”の働きと同等の体験を映像で得られるという「ICC(Integrated Cognitive Creation/忠実光景創造)」を2011年に発表し、シャープの4K液晶テレビ「ICC PURIOS(ピュリオス)」にも採用された。2013年には、プロジェクタ向けに新しい映像空間の価値を提供するという「ISVC(Intelligent Spectacle Vision Creation/体感光景創造)」も開発している。

 簡単に説明すると、ICCは「全ての風景にピントが合う」、ISVCは「風景に自分が取り込まれる」というもの。

 これに加え、未発表だったが2015年3月には、大映像空間における新たな映像の楽しみ方を提案するという「ICSC(Interactive Cast Symbiosis Creation/相対光景創造)」も開発。「風景と自分の関係が認知できる」というもので、2D映像ながらリアルな立体感が得られる点などを特徴としている。

これまでの同社技術
ICCで風景の全体にピントが合った状態(右)
ISVC処理を行なったもの(下)。単にアップコンバートしたもの(上)に比べて、写真下部に追加されたカヌーの人が風景と一体になっているという
ICSC処理を行なった例。風景と自分の関係が認知できるという

 これらの技術のコンセプトを受け継ぎつつ、全く新しい技術として発表したのが今回のI3C。具体的な処理の詳細は明らかにしていないが、映像を“受け身”で観る従来の形ではなく、その人が実際にこれまで見た体験/記憶などを含めて“味付け”できるという。そのための方法として、「全ての風景にピントが合う」ことや、「映像圧縮/伝送などの過程で失われた光を戻す」といった変換を行なっている。

 他の既存技術と異なる点として近藤哲二郎代表取締役は、「エンハンス処理ではなく、映像全体へ均質に光量を上げていく。フィルタは一切使っていない。畳み込みのような処理は一切使っていないのが苦労した点」としている。

I3C処理を行なうボックス(左)。右は今回のデモ再生に利用したプレーヤー
I3C技術でのアプローチ
I3研究所 近藤哲二郎代表取締役

 なお、同社の従来技術はHDから4K映像への変換に合わせて適用する形だったが、今回は4Kカメラで撮影した映像などに4Kのまま適用する形で進められている。現時点では数が少ない高品質4Kコンテンツの拡充にも寄与すると見ている。

映画のデモ構成
放送コンテンツのデモ構成
写真のデモ構成

 I3C技術の提供方法は、ICの形でメーカーなどへ出荷するのか、テレビなどをメーカーと共同開発するかといったことについては、今後検討するという。

右が比較用に用いた4K液晶テレビ。左はI3C処理した映像を表示した業務用モニター
I3C適用後の映像(忠実モード)
体感モード
相対モード
タブレットでパラメータを調整

 トレンドになりつつあるHDRへの対応については、「皆がやることはやらない方針」としており、UHD Blu-rayのHDR映像を、液晶テレビでHDR表示したものと、業務用モニターでSDR映像にI3C技術を適用した映像を比較するデモを行なった。HDRが明暗のメリハリを分かりやすくするのに対し、I3Cでは遠くの風景の明るさや解像感などもハッキリと再現できている点などをアピールした。

 また、スカパー! 4Kの放送向けに25Mbpsに高圧縮された4K/60p映像にも適用。ベースバンド(非圧縮)映像と比較し、圧縮したコンテンツ向けにも効果が大きいという点をメリットとして強調した。

 さらに、新たなデモとして静止画への適用例も紹介。プロが撮影/現像した5,760×3,840ドットの静止画と、アマチュアが同じカメラ本体と低価格なレンズに付け替えて撮影したデータにI3C処理を行なったものを比較。海岸から遠くの富士山を撮影した写真では、手前の波の細かさや、岩肌の細かさ、遠くの富士山などを、アマチュアの写真でも鮮明に表現できている点などを紹介した。

静止画への適用例。左がプロの撮影/現像、右がアマチュア撮影後にISVC処理を施したもの
ISVCを適用した静止画の拡大