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ケーブルレスで動けるHMD、Lenovo「Mirage Solo」を体験した

 Lenovoが5月11日に発売する、スタンドアロンタイプのVR用HMD「Mirage Solo」。4月24日にその発表会が開催され、実際にMirage Soloを体験した。ケーブルレスで利用でき、別途センサーなどを設置しなくても体の動きを検出する6DoFとの組み合わせで、従来よりも“気軽な”VRを実現している。

左がスタンドアロンタイプのVR用HMD「Mirage Solo」

 Mirage Soloの価格は、直販サイトで51,200円。4月24日から予約受付を開始している。ハードウェアの詳細は別記事で紹介している。また、同日に発表された、4K/180度VR動画が撮影できる「Lenovo Mirage Camera」も、別記事で掲載している。

 「Mirage Solo」は、Google Daydreamに対応したVR用HMD。装着者を撮影するカメラを配置したり、目印となる柄の壁紙を用意するといった事なく、HMDを装着するだけで動きをトラッキングできるのが大きな特徴だ。

 頭の動きをジャイロセンサー、加速度センサー、電子コンパスの組み合わせで、左右、上下を見る動きや、左右に首を振るという動きを検出する「3 Degrees of Freedom」(3DoF)。これに、前後に進む、サイドステップ、しゃがむ/立つ/ジャンプするという動作も検出できるようにした「6DoF」となる。これにより、動きのあるゲームの体験などを向上させている。こうした動きの検出技術には、Googleの「WorldSense」が使われている。

装着してみる

 外形寸法は204×269.5×179.9mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約645g。持ち上げた時に感じる重さは、PlayStation VRのヘッドセット部分(約600g)とあまり変わらない印象だ。

 内部にはバッテリなども入っているが、重量バランスも良く、フロントヘビーにも感じない。頭部に負担をかけにくい重量バランスも、開発にこだわった部分だという。

「Mirage Solo」。重心バランスは良好だ

 ケーブルレスで使える利点は、装着する際にすぐわかる。ケーブルが存在しないので、まるでヘルメットのような気分で、サッと持ち上げて、気軽に装着できる。装着時の重量バランスも良好で、後頭部にくるバンドのダイヤルを回して締め付けを強くすれば、前のレンズやディスプレイ部分がずり下がってくることもない。

 5.5型の液晶パネルを内蔵し、解像度は両目で2,560×1,440ドット。視野角は110度で、リフレッシュレートは75Hz。PS VRは1,920×1,080ドット/約100度であるため、それよりも高精細だ。同じコンテンツを比較したわけではないが、実際に体験しても、PS VRよりもやや高画質と感じる。

解像度は両目で2,560×1,440ドット。視野角は110度。
底部

 Androidベースのシステムとなっており、CPUにSnapdragon 835 VRと4GBのメモリを内蔵し、ストレージは64GB。OSはDaydream OSを採用している。

 このSnapdragon 835 VRは強力なプロセッサで、6DoFで検出した動きが、視界にほぼリアルタイムで反映される。首を振ったり、しゃがむなどの動きへの追従が滑らかであるため、体の動きと視界がマッチしない“VR酔い”になりそうな感覚も無い。

 Androidスマホのように、VRアプリの追加や、YouTubeで360度動画を見るといった使い方が可能。microSDカードスロットも備えており、256GBまで対応する。

左側面にmicroSDカードスロットも装備する
右側面にはイヤフォンジャック

 ダウンロードしたスノーボードのゲームをプレイしてみると、Mirage Soloの利点がよくわかる。滑り降りている途中に、障害物の木が登場。実際にしゃがむと、VR映像内の自分もしゃがみ、木を避けられる。ジャンプする時も同様だ。

 ケーブルが無いため、こうしたアクションに制約がなく、自然にプレイできるのが気持ちいい。ケーブルでパソコンやゲーム機と繋がっていると、ついつい「動き過ぎるとパソコンを倒してしまうのでは」などと心配してしまうが、そうしたストレスが無い。有線ヘッドフォンから、Bluetoothヘッドフォンに変えた時のような身軽さがMirage Soloの利点と言えるだろう。

 グリーの「釣り★スタ! VR」では、付属のリモコンを使い、魚影に向かって釣り竿を振れる。魚が餌に食いつき、釣り上げる時には、リモコンをクイッと上に引き上げる。発表会場で6人で戦うネットワーク対戦を体験。ゲーム終了後、釣果がよかった上位3人が表彰台に登れるのだが、表彰台の上で横を見ると、他のプレーヤーのアバターが見え、顔を近づけると実際に近寄れる。VRでオンライン上でのコミュニケーションも変化していきそうだ。

マルチプレイも可能な「釣り★スタ! VR」
釣った魚を、じっくりと眺められる「アクアリウム」モードも人気だという
付属のリモコン

ゲームだけではないVRコンテンツ

 Daydream OSでは、YouTube、AbemaTV、360Channelなどの動画視聴アプリを用意。Google Play Movie、Netflix、dTVなどの有料動画配信も利用できる。また、Mirage Solo購入者への特典として、5月の発売日から一カ月限定で、360ChannelのVR CRUISE有料コンテンツ7作品が半額になる。

 6DoF対応の新たなゲームとして、GugenkaとMirage Soloが連携、2018年秋に「このすば! めぐみんとおやすみVR」が登場予定。価格は960円(税込)。アニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」に登場するキャラクター、めぐみんに添い寝してもらえるというアプリで、「一日の疲れをめぐみんが癒し、優しく眠りへと誘ってくれるVRを予定している」という。

「このすば! めぐみんとおやすみVR」

 スクウェア・エニックスでは「PROJECT HIKARI」という、日本の漫画をVRで楽しむアプリを開発中。VR空間に、漫画のコマが浮遊するように現れ、それを次々と読みながら、物語を楽しむというもの。

 単に、映画のようにながめるだけでなく、コマに近づくと、コマの中の絵が良く見えたり、2Dのコマが、視点を変えると立体となり、見る角度によって背景やキャラクターの見え方が変わるといった演出が可能。

 キャラクターが光に包まれるようなコマでは、光がゆらめくエフェクトを実現するなど、静止画の漫画ではあるが、アニメのような動きのある演出にも対応できる。

「PROJECT HIKARI」のイメージ。コマに近寄ったり、視点を変えると、コマの中の絵が変化する

 スクウェア・エニックス テクノロジー推進部プロジェクト・リードの曹家栄氏は、「日本の漫画の世界をVR化したもので、日本のユーザーと親和性が高い。漫画のユーザーエクスペリエンスを保ちながら、最先端の技術でコンテンツを進化させたい」と、展望を語った。

 今年20周年を迎える国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」(開催期間6月4日~24日)ともコラボ。同映画祭では、VR部門「VR SHORTS」が新設され、その視聴用デバイスとしてMirage Soloが約20台提供され、作品の鑑賞に活用される。

 また、同映画祭が厳選したVR作品12本をMirage Soloの購入者に特別価格でレンタルする期間限定キャンペーンも計画されている。

 「ショートショート」の実行委員会委員長である俳優の別所哲也氏が、ゲストとして登壇。別所氏は、「映画にCGが使われるようになり、それが表現の幅を広げたように、VRや360度映像には、映像のカット割りすら変えてしまうような可能性がある。私はクリエイター側にいるが、VRの360度映像の中でどんな表現をするのか、奥行きをどう活用するのか、という話は、映像作家の中でも中心的な議論になっている」と語った。

「ショートショート」の実行委員会委員長である俳優の別所哲也氏
企業向けのコラボも紹介。ケーブルレスであるため、避難する際の行動も反映させやすい。リビングスタイルとの連携では、購入前に、その家具を設置すると、どのように見えるかの確認できる

VR普及には「簡単さ」、「リアルさ」、「コンテンツ」が必要

 レノボ・ジャパンのモバイル製品事業本部 田中大輔本部長は、VRの普及に不可欠な要素として「簡単さ」、「リアルさ」、「コンテンツ」の3つがあると説明。Mirage Soloはそれぞれの要素に対し、スタンドアロンであり、WorldSenseを使った動きの検出、そして前述のような日本のコンテンツパートナーとの連携で対応していくと説明。

左がモバイル製品事業本部 田中大輔本部長、右は別所哲也氏

 費用の面でも、「従来は(別途高性能なパソコンを用意すると)20万円、30万円とかかっていたのが、Mirage Soloでは約5万円。VRの楽しみ方のハードルを下げたと考えている。また、DMMと連携し、DMMいろいろレンタルにて、5月下旬からMirage Soloのレンタルも予定している。複数人でゲームをしたい時に、何台もMirage Soloを買うのではなく、レンタルでも楽しめる」とし、VR普及に向けて様々なハードルを低くしていく施策を説明。

 田中本部長は、らに、「Lenovoに対して皆さんは、パソコンのメーカーという印象を持っていらっしゃると思う。しかし、VRにも前向きに、真正面から取り組んでいく。グリーさんやスクウェア・エニックスさんのように、VRのコンテンツを充実させようとしているデベロッパーさん達は沢山いる。そうした皆さんに対して、我々は最高のハードを提供していきたい」と締めくくった。

VR普及には「簡単さ」、「リアルさ」、「コンテンツ」が必要