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RME、低ジッタ化した「ADI-2 Pro FS」。Dante対応オーディオI/Fも

 シンタックスジャパンは、独RME製オーディオインターフェイス「ADI-2 Pro」のジッタ抑制精度を向上し、高音質化を図ったUSBオーディオインターフェイス「ADI-2 Pro FS」を7月25日より発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は205,000円前後。

ADI-2 Pro FS

 PCM 768kHzとDSD 11.2MHzの録音/再生に対応する従来機種(ADI-2 Pro)の機能はそのままに、フェムト秒単位の精度でジッタを抑制する独自のクロック技術「SteadyClock FS」を採用して高音質化を図る。また、一定時間経過でディスプレイやLEDを消灯する「AutoDark」機能も搭載し、リスニング時の妨げにならないようにした。

 RME製品の特徴はFPGA(プログラマブルなIC)をコアに搭載し、ファームウェアアップデートで回路を書き換えられることだが、SteadyClock FSとAutoDarkの追加に関しては、ファームウェア更新では実装できず、基板から変える必要があったという。

 上記以外の基本仕様はADI-2 Proから変更は無く、AKM(旭化成エレクトロニクス)の4ch仕様ADC「AK5574」をデュアルモノで使い、DAC「AK4490」をステレオ出力に1基ずつ搭載。前面の標準ジャック2系統で、ヘッドフォンのバランス接続もできる。SN比は120dB、歪み率は0.0003%、周波数特性0Hz~120kHz。

独自クロック技術「SteadyClock FS」で従来機種よりも低ジッタ化

 なお、SteadyClock FSは既発売の「ADI-2 DAC」(’18年4月発売)で採用している。ADI-2 DACはADI-2 Proから録音(AD変換)に関する機能を省いてDAC/ヘッドフォンアンプ機能にフォーカスしたモデルで、ヘッドフォンのバランス出力には非対応だが、イヤフォンに最適化したステレオミニの「IEM」出力を採用している。

既発売の「ADI-2 DAC」

RME初のDante/AVB対応IF。32ch対応1Uラック型コンバータも

 RMEは13日、「Musikmesse 2018」で披露した製品を中心とする新製品発表会を開催。RMEの共同創始者で、製品開発のトップであるマティアス・カーステンズ氏と、プロダクトマネージャーのマックス・ホルトマン氏が来日し、上記の「ADI-2 Pro FS」や「ADI-2 DAC」について説明した。

RME共同創始者で、製品開発トップのマティアス・カーステンズ氏
RMEプロダクトマネージャーのマックス・ホルトマン氏

 業務用デジタルオーディオ機器の新製品として、ネットワーク対応オーディオインターフェイス「Digiface Dante」と「Digiface AVB」、1Uラック型で32ch対応のコンバータ「M-32 AD Pro」「M-32 DA Pro」も紹介。いずれも価格未定で、日本での発売時期は2018年秋頃を予定している。

Digiface AVB(左)とDigiface Dante(右)
M-32 AD Pro
M-32 DA Pro

 Digiface Danteは、様々な現場で運用されているオーディオ・ネットワーク技術「Dante」に対応する、RME初のオーディオインターフェイス。LAN端子×4(プライマリ×2、セカンダリ×2)と、USB 3.0、BNCのクロック入出力を各1系統備える。

Digiface Dante

 多くのRME製品で採用してきた、AES/EBU信号を64ch分まとめて入出力できる規格「MADI」もサポート。Danteとあわせて、合計256chのオーディオデータの入出力が行なえる。4ポートのスイッチングハブとしても使える。

 USB 3.0でPC(Windows/Mac)と接続して使えるほか、スタンドアロンモードも備え、その際はDante-MADIコンバータとして機能する。また、モニタリング用のヘッドフォン端子はステレオのライン出力としても使える。

Digiface Danteの接続イメージ

 Digiface AVBは、音声/映像のネットワーク伝送規格「AVB」に対応する、RME初のオーディオインターフェイス。LAN端子、USB 3.0、BNCのクロック入出力を各1系統装備。256chのオーディオデータの入出力が低遅延で行なえ、48kHz時は最大128ch、192kHz時で最大32chの伝送に対応する。また、モニタリング用のヘッドフォン端子を備え、ライン出力にも使える。

Digiface AVB

 USB 3.0でPCと接続して利用する。RMEでは「AVBプロトコル・スタックを使ったオーディオ伝送管理をWindowsで初めて実現する製品」としている。なお、Macについては「(Macは)標準でAVBに対応しており、LAN端子を搭載したiMac Pro(2017)などがあればオーディオインターフェイスは必要ない」(カーステンズ氏)。

Digiface AVBの接続イメージ

 Digiface Dante/AVBのコントロールは、RMEのソフトウェアミキサー「TotalMix FX」から行なえる。無料アプリ「TotalMix Remote」を使ったネットワーク経由のリモート操作にも対応し、低遅延でCPU負荷も少ないのが特徴。アプリはiPadとWindows/Mac搭載のPC向けに提供し、2001年以降に発売した全てのRMEインターフェイスに対応する。TotalMix FXが動作するPCと、TotalMix Remoteが動作するiPadやPCが同一ネットワークに繋がっていれば、「自宅スタジオからライブ会場まで、使用する環境にかかわらずどこからでもTotalMixをコントロールできる」という。

無料アプリ「TotalMix Remote」。ネットワーク経由でDigiface Dante/AVBをリモート操作できる
TotalMix Remoteのデモ。PCとiPadを低遅延で連携させている

 1Uラック型の「M-32 AD Pro」と「M-32 DA Pro」は、MADIとAVBに対応する、最大32chを192kHzで伝送可能な多目的マルチチャンネル・フォーマット・コンバータ。

M-32 AD ProとM-32 DA Pro

 M-32 AD ProはD-Sub 25pin×4のアナログ入力、M-32 DA ProはD-Sub 25pin×4のアナログ出力で32ch入出力が可能。SN比は120dB(A)。出力レベル切替は+24dBu/+19dBu/+13dBuに対応する。

 共通インターフェイスとして、MADIオプティカル入出力とMADIコアキシャル入出力、LAN端子、BNCのクロック入出力、USB 2.0を各1系統装備する。

M-32 AD Proの背面
M-32 DA Proの背面

 従来機種「M-32 AD/DA」のユーザーから寄せられた要望をもとに、二重化電源を採用し、ネットワーク機能も強化。MacとEthernetケーブルでAVB接続し、Webブラウザからネットワークを介したコントロールを可能にした。AVB-MADIコンバータ機能も備える。

 前面パネルに液晶ディスプレイと32個のLEDを備え、ディスプレイで機器の接続状態、LEDの色(緑、黄色、赤)で入出力レベルを表示。LEDの上には、各チャンネル(1〜32ch)を識別できるトレーシングペーパーを挟み込める。例えばスタジオでボーカルやドラムなど、チャンネル名をマーカーペンなどで手書きしておくと、チャンネルごとの音声や信号レベルの状態が一目で分かるという運用例を紹介していた。LEDは消灯も可能。

前面パネルの液晶ディスプレイで接続機器のステータスを表示
LEDで入出力レベルを表示。各チャンネルを識別する、付属のトレーシングペーパーを挟み込む

 RMEでは今回発表した製品からAVBを積極的に採用している。ホルトマン氏はAVBを採用する利点について「他のオーディオプロトコルと違って対応機器同士のオーディオを通す領域が確保され、外部のインターネットなどのトラフィックの影響を受けない。そのため安定性に優れ、他のプロトコルよりも確実に速い」と話した。

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