レビュー
ジェネレックのモニタースピーカーでアニメやゲームを楽しむ。SAM音響補正で激変!
2020年9月8日 08:30
引っ越しにより居住環境が大きく変わったため、新しいオーディオシステムを探すことになった。それまでは、PCやゲーム、Netflixやdアニメなどの映像サービスもすべて、27型のPCモニターひとつでこなしていたので、オーディオシステムも小型のものをPCモニターの近くに置くだけでよかった。
しかし新しい部屋では、55型の4K液晶テレビ(レグザ)が加わり、PS4などのゲームや映像サービスは、この大きな液晶テレビを使うようになった。テレビの薄い筐体に収まる内蔵スピーカーではさすがに物足りないと感じ、正確な音で楽しむためにも、テレビの隣に新たなスピーカーが欲しくなった。
筆者は、Genelec(ジェネレック)のモニタースピーカー「8010A」を2018年頃から使っている。当初は8010Aのペアだけで使っていたが、そのウーファーのサイズから、音楽を含めマルチに使うには低音域が不足していると感じ、1年後にサブウーファーの「7040A」を追加している。組み合わせているDACはRMEの「ADI-2 Pro」(Anniversary Edition)だ。
Genelecの8010Aなどのスタジオモニターは、一般にはアクティブスピーカーと呼ばれる、アンプをスピーカーに内蔵した製品だ。スピーカーそれぞれに電源が必要だが、アンプは不要で、DACのラインアウトと接続するだけで利用できる。映画のサラウンドフォーマットのデコードはそのままでは難しいが、シンプルな2チャンネルなら手軽にスタジオ・クオリティに触れられる。
Genelecのモニターは映像関係のスタジオでは多く採用されているし、音楽制作系のスタジオで見かけることもある。新しいスピーカーを買うにあたり、ADAM Audioのスタジオモニターも検討したが、Genelecの室内音響・自動補正システム「SAMシステム」に非常に興味があったので、オーディオシステムを追加するなら、このSAMシステムに対応したモデルがいいと思い、計画を練っていた。
そうした話を編集部にしたところ、「買う前に借りてみて、ホームオーディオとして使う場合でも有用なのか、自宅で試用してみてはどうか。ついでにそれを記事にして」と打診があった。すでに購入の意思は固めていたのだが、自宅にインストールしてみて初めて分かる点もあるだろうということで、借り受けて、気になっていた点をチェックしてみることにした。
届いた機材は、「8320APM GLM Studio」(実売税込16万5,000円、以下同)と、サブウーファーが「7360A」(28万2,480円)だ。DACとしてRMEの「ADI-2 DAC FS」(12万8,000円※Stay Home支援価格、通常は実売約16万5,000円)もお借りした。「8320APM GLM Studio」は、メインスピーカーの「8320A」と、自動の補正システムに必要なアダプターやマイクと、ボリュームコントローラーをセットにしたパッケージ。個別に買うより安価になっているので、SAMシステムを初めて導入するならありがたいセットだ。
サブウーファーについては、SAMシステム対応モデルでは最小の「7350A」(16万2,580円)を希望していたのだが、貸出機器の在庫の関係でひとまわり大きい「7360A」になっている。
DACの「ADI-2 DAC FS」は、通常は実売約16万5,000円だが、Stay Home支援として期間限定で値下げされており、流通の停滞もあって品薄が続く人気モデルだ。
RMEはスタジオ用機材を数多く手掛けるメーカーで、ヘッドフォンアンプにもフォーカスした製品群でコンシューマ向け製品も拡充しつつある。こちらもやはり華美ではなく、正確性を追い求めるスタジオ・サウンドだ。これ1台とスタジオモニターのスピーカー、PCだけで、ハイレゾ対応でスタジオ・クオリティのデスクトップオーディオが完成する。システム全体のコンパクトさと明瞭・正確なサウンドは、非常に大きな魅力だ。
個人的にすでに「ADI-2 Pro AE」を使っているため概要は理解しているが、とりあえず「ADI-2 DAC FS」に付属するリモコンは便利だ(笑)。また、このシリーズの液晶ディスプレイに表示されるアナライザーは非常にリニアで正確なため、音をチェックする際にも便利。超重低音域となる25Hzから表示できるため、各ウーファーのパフォーマンスのチェックにも重宝した。
型番の規則
ここでGenelecの型番の規則をおさらいしておこう。「スタジオ・モニター」製品に分類されるGenelecのスピーカーの中でも、最もシンプルな「クラシック・スタジオ・モニター」シリーズは、メインスピーカーが「80xx」、サブウーファーは「70xx」という数字になる。
この「クラシック・スタジオ・モニター」シリーズの筐体デザインを踏襲しながらSAMシステムに対応するのが「SAM コンパクト・スタジオ・モニター」シリーズで、メインスピーカーが「83xx」、サブウーファーが「73xx」となる。なおGenelecのスピーカーは、ほとんどがSAMシステムに対応している。
下二桁の数字はウーファーのサイズ(=ボディサイズ)で、「xx10」はウーファーが3インチ、「xx20」は4インチ、「xx30」は5インチ、「xx40」が6.5インチ、「xx50」が8インチ、「xx60」(サブウーファーのみ)が10インチなどとなる。なお「xx30」までは、ツイーターのサイズはどれも同じ。また、「SAM コンパクト・スタジオ・モニター」シリーズの最小モデルは「8320」、サブウーファーは「7350」で、例えば「8310」といったモデルは存在しない。
筆者がすでに使っている「8010A」は、最もシンプルなシリーズの、最も小型のモデルだ。借り受けた「8320A」は、SAMシステムに対応しつつ、ウーファーのサイズが一回り大きいモデルということになる。
Genelecスタジオ・モニターの音
個人がGenelecのスタジオモニターを自宅で使いたいという場合、価格や運用の面で、上記に挙げた「クラシック・スタジオ・モニター」シリーズか「SAM コンパクト・スタジオ・モニター」シリーズが現実的な候補になるのではないだろうか。
前述のように、筆者はすでに(SAMシステム非対応の)「8010A」とサブウーファーの「7040A」を愛用しており、その音には信頼を寄せている。また、届いた「8320A」の音を聴いて確信したのだが、少なくとも筐体デザインが共通のこの2つのシリーズでは、音のキャラクターは一貫している。ボディのサイズ(=ウーファーのサイズ)は、それを鳴らす空間サイズのためのバリエーションであって、聴こえる音のキャラクターは同じだと感じた。これはスタジオモニターとして「正確な音を出す」という基本にして最大の目標を、どのサイズの製品でも実現しようとしているからだろう。
その音に余分な味付けはなく、極めて正確だ。かといってドライでも分析的すぎることもなく、音楽でも映像でも「コンテンツに集中できる」音だ。音楽ならその演奏やメロディに、映像ならその内容に没頭できる。もちろん、意識的に聴けば「なぜこのバランス、配置にしたのか?」とマスタリングエンジニアの意図に思いを馳せることもできる。そこにあるのはGenelecの音ではなく、エンジニアが封入した音なのだ。
もっとも、こうした「スタジオサウンド」は、ホームユースにおいて良いことばかりではない。ドラムのスネアがスカスカになって収録されている曲は、包み隠さずスカスカに聴こえるし、SEにだけ妙に重低音が含まれているアニメは、ずっと重低音に違和感を感じながら観ることになる。
またリスニングポイントについても厳密で、理想的な音で聴ける場所はほぼピンポイントになり、そこを外れるとかなり特性は変わる。場所を決めた椅子に座る、リクライニングチェアの場所を動かさないなどの、小さな配慮は必要になる。スタジオモニターとは「作るための道具」であって、リビングを賑やかにしたり、不足を補って優しく聴かせてくれたりする道具ではなく、本質的にスパルタンな素性なのだ。
セットアップ
さて、自宅にやってきた一式をセットアップした……のだが、まず予定より大きいモデルになったサブウーファー「7360A」のサイズに驚いた。高さ527mm、幅462mm、奥行365mm、単体で27kgの重さがあり、5畳の部屋に入れるとド迫力だ。もっと大きな空間を鳴らすためのサイズで、見るからにオーバースペックなのだが……。
サブウーファーの迫力に怖気づき、まずはサブウーファーを除いた「8320A」だけを使用した。最初に、SAMシステムを適用せずに使用し、次にSAMシステムによる音響補正を適用して使用した。最後はサブウーファーの「7360A」を加えた上で、SAMシステムによる音響補正を適用して使用した。
「8320A」単体で聴いてみる
「8320A」単体で聴いて感じたのは、ウーファーのサイズが「8010A」からひとまわり大きくなっただけなのに、かなりしっかり低音域が出ているということだ。
筆者が持つ「8010A」の再生周波数帯域は67Hz~25kHzで、3インチというウーファーのサイズから想像できるように、低音域はけっこう弱い。スタジオにおいて、声や特定の帯域の楽器だけを割り当ててチェックするのには問題ないかもしれないが、ホームユースで音楽を聴こうとすると低音域はかなりあっさりした印象になる。一方の「8320A」の再生周波数帯域は55Hz~25kHzで、筆者宅では視聴ポイントが「8010A」より距離が離れるものの、聴感上は思ったより低音域が出ていると感じる。
音楽がそれほど違和感なく聴けるし、ゲーム、動画配信サービスのアニメやYouTubeの動画コンテンツも、迫力不足とまでは感じない印象だ。
Genelecのスピーカーは、サイズが異なっても基本的な音のキャラクターは一貫している。少なくとも筆者が検討しているレンジでの焦点は、ウーファーのサイズとそこからくる低音域のパフォーマンス、あるいは空間に対する余裕の度合いになる。筆者は「8320A」と「8330A」のどちらがいいのか、事前には判断できなかったが、「8010A」からひとつのサイズアップでもしっかりと低音域が出ている「8320A」で十分だなと思う一方、この分だと「8330A」(45Hz~23kHz)はさらに低音域が出るんだろうな……という予測も成り立ってしまった。
ちなみにSAMシステム非対応の「8010A」には、特性をマニュアルで調整するディップスイッチが背面に用意されているが、「8320A」にそうしたスイッチは搭載されていない。微調整はSAMシステムを通して行なうのが前提となる。
「8320A」とSAMシステムの音響補正
次に試したのは「8320A」にSAMシステムによる音響補正だ。SAMシステムについては後述するが、リスニングポイントに対して、スピーカーのレベルと距離による遅延、室内音響を補正するイコライザーを自動的に計測・適用できるシステムだ。サブウーファーを入れた場合はクロスオーバー位相も自動的に調整する。ソフトウェア上では補正前と補正後に簡単に切り替えられ、効果の有無を確認することもできる。PCのソフトウェアで操作や管理を行なうが、スピーカー側に情報を保存できるため、計測後はPCと切り離した運用も可能だ。
「8320A」にSAMシステムの補正を適用すると、音は激変する。これは音質やキャラクターの話ではなく、反響やバランスの部分。その意図通り「違う部屋になったみたい」というのが正しい。
上記で「8320A」は「けっこう低音域が出ている」と感じていたが、補正後は非常によく整理された、見通しの良い低音域になった。これに比べると補正前はボワンボワンと反響して不透明だ。迫力がなくなった、と言い換えることもできるが、そこはスタジオモニター、迫力を出す装置ではなく正確な音を出す装置なのだ。決して低音域が失われたわけではなく、細かな低音までクリアに聞き取れるようになった。
中・高音域も、補正後はかなり変わった。ボーカルは明るくなり、前面に出てくるようになったし、高音域もカチっとした実体感・存在感が増した。補正前はステージが平面的だが、補正後は奥行きが出て立体的になる。映像コンテンツでも、特に映画など丁寧に整理されたコンテンツは、複雑な効果音やセリフの声がよく分離して、どれも綺麗に聴こえるようになる。
「8320A」「7360A」とSAMシステムの音響補正
最後は「8320A」にサブウーファーの「7360A」を加え、SAMシステムによる音響補正を適用した環境だ。サブウーファーは想定より大きいモデルを借りたということもあって、最終兵器感のある強い見た目だが、その音も悪魔的な最終到達地点だった。
SAMシステム対応モデルで最も小型のサブウーファーは「7350A」で、ウーファーは8インチ、基本の再生周波数帯域は22Hz~100Hzだ。ひとつ大きい、今回試用した「7360A」は10インチ、19Hz~100Hzである。筆者が持つ「7040A」は6.5インチ、30Hz~85Hzだ。
前述のように、SAMシステムによる音響補正は非常に強力で、滑らかかつフラットな特性に可能な限り近づけるようになっている。「7360A」のその見た目から、いったいどんなド迫力の重低音が出るのかと無意識のうちに警戒していたが、そもそもそのようなキャラクターは、スタジオモニターの目指すところではない。SAMシステムで補正された環境では、不快な反響もなく、この大きなサブウーファーもあくまで縁の下の力持ち、ジェントルなメンバーに徹しているのだ。悪く言えば、拍子抜けしたといってもいいが、落ち着いて聴いていくと、そこには見過ごし難い魅力も潜んでいる。
30Hz以下の重低音ともなると、もはや耳で聴くというより“腹で聴く”レベルだ。だがこの領域には全体のニュアンスに影響を及ぼす、決定的な隠し味とでもいうべき魅力があるのも確か。バスドラムにも、ウッドベースにも、シンセサイザーのドラムやベースにも、本当は存在していた「最後のひと欠片」のニュアンスが加わるのだ。ゲームや映画では、SEや爆発音に聴いたことのない地響きのような音が加わる。
例えばPS4で「デス・ストランディング」をプレイしたが、頻繁に利用する、オドラデクでセンサーを打つ「デューン」という音でさえ、地響きのようなニュアンスがわずかに加わる。ゲームの効果音は自然界にない手作りの音も多いので、以外なところに重低音が潜んでおり、そうした音を発見する楽しみもあった。
すこし事情が異なるのは動画配信サービスでのテレビアニメだろう。恐らくテレビ放送向けの調整ということだと思うが、どのような場面でも重低音域が綺麗にマスクされている作品は多い。ただすべての作品ではなく、スパイス的に妙に重低音を盛り込んでいる作品もあって、ばらつきがある。「ADI-2 DAC FS」のディスプレイで正確な音の分布を視認できるが、SAMシステムで補正されたサブウーファーのある環境なら聴き取ることもでき、そうした作品に潜む密かな音響ポリシーもすべて明らかにできる。
音が小さい場面も特筆すべきで、小さく擦るように叩いているバスドラムの音も“見えてしまう”し、「そんなに優しいタッチでウッドベースを弾いていたのか」と、奏者の繊細な表現を初めて感じ取れた曲もある。
SAMシステムでサブウーファーを加えた際に行なわれる、クロスオーバー位相の調整効果もかなりすごい。メインスピーカーとサブウーファーが非常に滑らかにつながるため、周波数的にはシステム全体がひとつのスピーカーとして鳴っているように聴こえる。サブウーファーの悪い意味での存在感は、このシステムにおいては綺麗さっぱり消えてしまうのだ。
後述するGLMソフトウェアでは、音響の補正後に、サブウーファーのバイパスのオン・オフも切り替えられる。バイパスした場合はメインスピーカーから低音域が再生される。ここでチェックしていくと、重低音域だけでなく、低音域全般でサブウーファーが仕事をしていることがわかる。サブウーファーがオンの場合、明らかに低音域全般に余裕が出るほか、ボーカル域は宙に浮いたように存在感が出て、ステージはより立体的になる。バイパスして「8320A」のみにすると、低~中音域の分離がそれまでよりあいまいになり、ステージの立体感も後退してしまう印象だ。
筆者がSAMシステム非対応の「7040A」を購入して痛感したのは、サブウーファーの位相のマニュアル調整は、素人にとってかなりハードルの高い作業ということ。そもそも「正解の状態」「目指すべき状態」を経験値として持っていないし、見様見真似で調整してみても、聴感上は違和感が残ったり、反響を補正しきれなかったりする。
SAMシステムは強力で正確だと思えるし、個人宅であってもぜひとも導入したいと思えるシステムだ。サブウーファーを導入する予定があるなら、SAMシステムは絶対に必要だと感じた。
補正に使うGLMソフトウェア
SAM(Smart Active Monitor)システムのセットアップについても触れておきたい。このシステムは、室内音響の特性をマイクで録音し、レベル補正や遅延補正、イコライザーを適用することで、簡単に正確なモニタリング環境を実現できるというものだ。
「8320APM GLM Studio」には、メインスピーカーの「8320A」に加えて、必要なユニットがすべてセットになっている。具体的には、PCとスピーカーをつなぐユニットの「GLMネットワーク・アダプター」、専用のマイク「8300A キャリブレーション・マイクロフォン」、マイクホルダー、USBケーブルだ。
また、SAMシステムに必須ではないものの、「GLMネットワーク・アダプター」に接続できるボリューム・コントローラー「9310AM」もセットになっている。マイクスタンドは別途用意する必要がある。
金属製でズシリと重いボリューム・コントローラーについては、今回試用したRMEの「ADI-2 DAC FS」のようなボリュームコントロール機能が付いたDACと組み合わせる場合は、接続しなくてもよい。また、ボリューム・コントローラーのケーブルにはステレオミニプラグが使われているが、ボリュームの値をアダプター(経由でスピーカー)に送信するもので、音楽再生時の信号経路とは無関係だ。
「GLMネットワーク・アダプター」と各スピーカーは、LANケーブル(対応スピーカーには同梱)で接続し、補正データをやりとりする。順番は関係なく、デイジーチェーン(数珠つなぎ)でつなぐだけだ。
補正にはWindowsとMacに対応のソフトウェア「GLM 3ソフトウェア」を使う。GLMはGenelec Loudspeaker Managerの略で、SAMシステムの中核となるソフトウェアだ。筆者が試用したバージョンは3.2.0。ソフトウェア自体は無料でダウンロードできる。UIは日本語表示に対応していないが、詳細な日本語マニュアルがPDFで提供されている。スタジオ関係者向けなので専門用語も多いが、セットアップと自動補正の計測程度ならそれほど苦労せず理解できる。
補正の開始前には、接続されているスピーカーのアイコンをグリッドに並べて、おおまかな配置を再現する。それをグループとして登録した後、中央のマイクのアイコンをダブルクリックすると測定と自動解析が開始される。
補正する部屋の環境については、デフォルトでは左右対称な(部屋の真ん中に配置している)環境が想定されている。しかし筆者の環境では、右側のスピーカーだけ壁際のため、「Each symmertical Left-Right pair shares the same equalizer settings.」のチェックを外した。これ以外はデフォルトの設定のままだ。
マイクを使った自動測定の際には、「ンブオウゥィィピッ」と低音から高音まで一気に出るスイープ音が出る。かなり大きな音量なので留意しておく必要がある。各スピーカー1回ずつで、スイープ音自体は2秒ほどだ。なお、マイクを使う際には周囲を静かにしておく必要があり、騒音が大きいとエラーダイアログが出て補正を開始できない。
サブウーファーをシステムに入れた場合、スイープ音による補正の後に、クロスオーバー位相を調整するためのモードに移行する。開始すると「ボオォォォ」とクロスオーバー帯域の低音が出るが、こちらもかなり音は大きい。いくつかの帯域をチェックするため、時間は1分半ほどかかる。
補正が終わると、グラフやパラメータで補正内容が表示される。キャラクター変更としてここからさらに任意でイコライザーに変更を加えることも可能だが、専門的な知識も必要なため、今回の試用ではそこまで行なっていない。
補正や変更を加えた後は、そのデータをスピーカー側に保存するかどうかを選択できる。電源が自動的に切れる時間や、復帰する際の入力感度も変更できる。スピーカーに補正データを保存すれば、LANケーブルや「GLMネットワーク・アダプター」は外してもかまわない。
いつかはSAMシステムのサブウーファーが欲しい
一通り聴いてみて、サブウーファーを加えてSAMシステムで補正した環境には、知ってしまったら後戻りできない、悪魔的な魅力を感じたというのが正直な感想だ。しかし価格的には、サブウーファーを追加すると2倍になってしまう。ひとまず「8320A」だけでやりすごしつつ、時期を見てサブウーファーの「7350A」を追加するというのが当面の計画になりそうだ。
メインスピーカーを「8330A」にサイズアップすれば、サブウーファーの必要性は後退すると思われる。あるいは、サブウーファーを絶対に導入しない・できないということなら、「8330A」を選ぶだろう。
しかし、サブウーファーにしか出せない、20Hz前後の「最後のひと押し」の音を知ってしまった現在、メインスピーカーがどのようなモデルでも、結局いつかはサブウーファーが欲しくなってしまうのではないかと感じている。そうすると、今回のような比較的近い距離の配置(一辺が1.5mの三角形)では、メインスピーカーは「8320A」で十分ではないか、というのが個人的に得た結論である。