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シャープ、8K/30p記録のビデオカメラを国内初披露。AI超解像やミニLED 8Kも

シャープは10日、都内でプレス向けの新技術・新製品展示会を開催。折りたためるディスプレイ「フォルダブルOLED」を初公開したほか、世界最小の8Kビデオカメラ「8C-B30A」やRGB LEDバックライト型8Kディスプレイ、IGZO採用OLED、AIを使った超解像技術などを展示した。

RGB3色のミニLEDをバックライトに採用した8Kディスプレイ

なお、折りたためるディスプレイ「フォルダブルOLED」に関しては、別記事で紹介している。

6.18型のスマホ向け折りたたみディスプレイ「フォルダブルOLED」

8K/30p動画をSDカード記録するビデオカメラ「8C-B30A」

米ラスベガス開催のCES 2019にも出展していた、8Kビデオカメラ「8C-B30A」を国内初披露。ミラーレスカメラ風のデザインを採用し、レンズ交換式の8Kカメラとしては世界最小を謳う。日本や欧米地域を対象に、年内の販売を計画しており、価格は5,000ドル前後を予定。2006年に生産を終了した「液晶ビューカム」以来、13年振りの民生向けビデオカメラとなる。

8Kビデオカメラ「8C-B30A」

3,300万画素/7,680×4,320ドットを有する8K CMOSセンサーを採用。サイズは4/3型(約17.3×13mm)で、広島県にある福山工場で開発・製造された自社製センサーを搭載している。シャープはCCD、CMOSの両タイプを生産する数少ないメーカーでもあり、開発者は「他社に比べ市場のシェアは低いが、CMOSセンサーの感度性能は他社並み」と説明する。

8C-B30Aに採用する自社製8K CMOSセンサー(写真左)。現在はグローバルシャッター技術を搭載したCMOSセンサーも準備中で「グローバルシャッター技術は製造プロセス上、CCDの技術が重要になるため両タイプを長年製造してきたノウハウが活きる」と話す

映像圧縮にはHEVC(H.265)を採用し、8K/30p映像を本体のSDカードに収録することが可能。形式はmp4を予定しており、ビットレートは約200Mbps。撮影時間など、そのほかの具体的な仕様は現在調整中とのこと。

タッチパネルに対応した5.5型のワイド液晶モニターを搭載。「撮影時の構図決めや主な操作は、背面のモニターでタッチ操作できるようにする」という。電子ビューファインダーは非搭載。本体の側面には最新のHDMI端子を備え、ケーブル1本で8Kテレビに伝送できるという。

正面
背面のバリアングル液晶

ミニLEDをバックライトに採用した8Kディスプレイ

50ミクロンを上回るサイズの小型RGB LEDをバックライトに使った70型の8Kディスプレイを参考展示。

LEDモジュールが小さく、数千単位でのバックライトエリアコントロールが可能になるほか、3色独立のLEDを使うことで純度が高く、鮮やかな色再現が特徴。開発者は「暗部の引き込みは有機ELが優位だが、全白表示の輝度やピーク感は、ミニLEDやマイクロLEDディスプレイが優位」と話す。

同社は'08年、RGB LED光源を採用したフラグシップ液晶テレビ「XS1」を発売したが、その後のモデルは全て、一般的な白色LEDに切り替わっている。

「以前に比べてLEDチップは小さくなり、発光効率も大きく進化した。有機EL方式が高画質テレビとして確立しつつあるが、小型のRGB LEDを使った高画質ディスプレイという方法も改めて模索していきたい」としている。

8Kライブ配信や8K地上デジタル放送を見据えたAI超解像技術

データ量の大きい8K映像の効率的伝送と、再生時の高精度な復元を目的として、開発されている「AI超解像」技術も初めて公開された。

写真左が8Kオリジナル、中央が4Kダウンコン、右が復元された8K

これは、将来増えるであろう8K VODや8Kライブ配信での使用を想定したもので、配信側・受信側の両方の処理が必要となる。

具体的には、配信側は、8Kコンテンツを縮小・抽出し、4Kにダウンコンバートして伝送。受信側では映像データに対して伝送時に行なわれた縮小・抽出情報を加味したAI復元処理を施すことで、縮小前の8Kオリジナル素材と同等の画質を高精度に再現するという内容。

「ローカルなAI超解像と異なり、ネット網を使って配信先からのメタデータを活用する次世代のAI超解像技術だ。計算が膨大なため、現状は静止画1枚でも数秒かかる。次世代の圧縮技術や8Kの地上デジタル放送を見据えて準備を進めている」という。

IGZO技術を搭載した車載用の有機ELディスプレイや広色域フィルム

会場には、同社の液晶パネルに採用されているIGZO技術を、有機ELパネルにも展開したフレシキブルOLEDも展示されていた。

12.3型のフレシキブルOLED。プロトタイプは車載用途を想定したもの

現在の有機ELディスプレイには画素ごとに輝度のばらつきを補正する“補償回路”が内蔵されているが、同社のIGZO技術を使うことで、この補償回路の画素外設置を実現。IGZO技術を採用した有機ELパネルは、その空きスペースを使うことで、高輝度化や高画素化が可能になるという。

「今後はIGZO技術を採用した有機ELパネルの量産し、様々な分野へ自社の有機ELを展開したい」としている。

開発中の「広視野角フィルム」は、VAパネルの視野角特性を1.5倍に改善するもの。2台の70型8Kテレビ「LC-70X500」が置かれ、片方はそのまま、もう片方には新フィルムを貼ったプロトタイプが展示されていた。

通常のLC-70X500は、画面中心から顔を少しずらしただけで色が変化してしまうほど視野角が狭いが、新フィルムを使ったプロトタイプは、色変化が激減。画面の中心から30~40度傾いて視聴しても色変化が少なく、輝度がやや落ちる程度の変化しか感じられなかった。

製品に投入できるよう、現在鋭意開発中という。

左が通常のLC-70X500、右が70X500に新フィルムを搭載したプロトタイプ
この角度から撮影してもプロトタイプは十分に映像が判別できる
業務用の8Kカムコーダー「8C-B60A」。3,300万画素のスーパー35mm相当のCMOSセンサーを搭載し、8K/60p 4:2:2 10bit記録が可能
8Kテレビ用のLSIに実装されている8Kアップコンバート技術
IGZO技術を使った、31.5型の8K HDRディスプレイ(参考展示)。倍速の120Hz駆動にも対応し輝度は800cd/m2。写真はフルHDを16画面表示したもの
自社製のRGBレーザーを組み込んだモジュール。現在はType1サイズ。2020年を目処にType3の量産を目指す。赤・青・緑色のレーザーチップを量産する国内メーカーはシャープのみという
90型のシースルー液晶ディスプレイ。ショールームなどへの利用を見込む
8Kチューナー搭載AQUOSと同時発表された3.1.2chシステム「8A-C31AX1」。AQUOS 8KとはHDMIで接続。AQUOSが受信した22.2ch音声は、5.1ch音声に変換。その5.1ch音声を使い、本機の3.1.2chシステムで22.2ch音声をバーチャル再生する