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NHKネット同時&見逃し配信の実施基準を改定。“受信料の価値向上”図る

NHKは、地上放送のテレビ番組をインターネットで同時配信する「常時同時配信」と、1週間程度いつでも観られる「見逃し番組配信」の実施に向け、インターネット活用業務の実施基準を改定。その素案に対する意見募集を9月11日から開始した。受付期間は10月4日まで。実施基準の見直しは、「遅くとも2023年度末まで」に行なう予定。

既報の通り、今年5月に国会で可決した改正放送法では、NHKによるテレビ放送の、インターネットでの常時同時配信を認めることなどが盛り込まれている。受信契約者と家族は、追加の負担不要で放送を補完するネット配信を視聴可能になる予定。

「なぜいまNHKが常時同時配信を行なうのか」という理由については、「放送を太い幹としつつ、インターネットも活用して、多様な伝送路で、視聴者のみなさまに、公共性の高いコンテンツや情報を『いつでも、どこでも』受け取っていただける環境を整え、視聴する機会を増やすことが、NHKの存在意義にも関わる重要なミッションだと考えている」としており、災害など緊急事態が起きた時に、必要な情報を確実に届けるための手段と位置付けている。

「見逃し番組配信」実施の理由については、「NHKの豊富なコンテンツを、スマートフォンやタブレットなどを使って、視聴者のみなさまがそれぞれの場所や環境、スタイルで楽しみ、日々の暮らしに役立てていただくという、新たな価値を提供したい」としている。

放送と見逃し配信、有料のNHKオンデマンドなどで互いに補完することで、「受信料で制作したコンテンツをこれまで以上に効果的に活用していただけるようになる」という。

常時同時配信と見逃し番組配信のサービス利用に際し、「受信料制度を毀損しないよう、受信契約の有無を確認する認証の仕組み」を導入予定。事業所契約については、利用者の特定や限定が難しいことを理由に、「引き続きの検討課題とし、当面、サービスの対象とはしない」としている。なお、視聴履歴などのデータは、目的外の利用などは行なわない。

各サービスの具体的な利用申し込みや、認証の方法についても案内。NHKの受信契約者は、PCやスマホのサイトやアプリでID登録を行ない、利用申し込みをすると利用可能になる。その後、本人確認のために登録住所にハガキが届き、確認コードを入力するとID登録が完了。1つのIDで受信契約者とその家族(同一生計)がサービスを利用できる。なお、同時視聴には上限が設定される。

NHKの常時同時配信/見逃し番組配信の利用申込みと認証の流れ

インターネット活用業務に必要な費用については「抑制的な管理に努める」としており、新たに実施する常時同時配信と見逃し番組配信、既存業務の「基本的業務」は受信料収入の2.5%以内に抑えることを取り決めている。提供する番組やサービスなどを定期的に点検し、必要性や有効性がなくなったものは提供を終了させるルールも設ける。

一方で、法令や社会的な要請などに対応するため「公益性の観点から積極的な実施が求められる業務」については、基本的業務の費用上限とは別に、必要な経費を適切に見積もって、効率的な実施に努めるという。その具体例としては、海外の人たちに日本を正しく理解してもらうための国際発信や、改正放送法で努力義務とされた民放との連携/地域番組の配信、字幕や手話CGなどのユニバーサルサービスの実施に向けた先導的な取り組み、2020東京オリンピック・パラリンピックにかかる経費などを挙げている。これらの業務は、上限額を実施基準に明記して、その中で抑制的に管理するという。

既報の通り、8月からは民放公式テレビポータル「TVer」を経由したNHK番組の見逃し番組配信も開始。今後も「これまで放送で培ってきた民放との二元体制を堅持し、互いにメリットになる連携を一層深めていくことは、視聴者・国民のみなさまに多様な価値を提供することにつながる」としている。そのほか、「地方向け放送番組の提供」なども注力する方針。

'19年度中のサービスについては、「認証に係る措置の円滑な実施に資するよう、設備への負荷等を確認するため」に、総合とEテレの同時配信を一日あたり17時間程度実施。また、2020オリンピック・パラリンピック東京大会期間中は、常時同時配信のメッセージを非表示、見逃し番組配信を一般に利用可能にする。具体的な内容は、'20年度の実施計画で明示する。

前述の通り、今回発表されたNHKインターネット活用業務の実施基準(素案)に対して意見募集を開始。専用メールフォームまたは郵便で受け付けており、NHKのサイトでは10月4日午後6時まで実施。郵送は10月4日消印有効。意見は2,000字以内。