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Adobe Premiere Pro「音声のテキスト化」ついに搭載

アドビは20日、ビデオ製品をアップデート。Premiere Proでは、音声書き起こしの「Speech to Text」機能の追加や、Apple M1チップのネイティブ対応がついに実装された。「エッセンシャルグラフィックス」の機能も拡充したほか、シーン編集検出機能の高速化などが行なわれる。

「Speech to Text」機能は、撮影された動画内の音声を読み込み、Adobe SenseiをはじめとしたAI技術により文章の書き起こし、キャプションの作成までを行なえる機能。これまでは「早期アクセスプログラム」に申し込むことで使用可能となっていた。Premiere Proユーザーは、最新版にアップデートすることで利用可能。

ヘッダーバーに追加される「キャプション」メニューを選択し、「トランスクリプト」タブの「書き起こしを作成」をクリックすることで、作成画面が表示され、オーディオトラックや言語を設定して「録音する」で音声認識が始まる。処理にかかる時間は、「取り込んだ動画の収録時間とほぼ同じくらい」としている。

認識が完了するとテキストが表示され、ウインドウ内の「キャプションを作成」で、サブタイトルトラックが作成、動画内にキャプションが表示される。テキストウインドウ上で文章の修正やテキストの結合・分割などが行なえ、動画上で使った言葉に対して補足できる。

キャプションのデザインなどを編集できる「エッセンシャルグラフィックス」には、複数シャドウの追加や、背景のカスタム機能を拡充。エッセンシャルグラフィックスパネルのシャドウの欄に「+」マークが追加され、選択することで2つ以上のシャドウを重ねられるようになる。キャプションの背景機能では新たに角を丸くできるカスタム機能を搭載した。

エッセンシャルグラフィックスパネルのシャドウの欄に「+」マークが追加
シャドウを複数追加できる
キャプションの背景は角を丸くできるようになった

従来キャプションの作成などに使われていた「レガシータイトル」の廃止に向け、すでにレガシータイトルで作成したデータをソースグラフィック化し、エッセンシャルグラフィックで編集できるようになる機能を追加。レガシータイトルを選択した状態で「グラフィック」メニューに追加された「レガシータイトルのアップグレード」「すべてのレガシータイトルのアップグレード」の項目を選択することで、変換できる。

「レガシータイトルのアップグレード」を行なうことで、エッセンシャルグラフィックスで編集可能になる

レガシータイトルで使用できた機能については、エッセンシャルグラフィックス内で利用できるように順次移行中。レガシータイトルは主に日本での利用率が高い機能であるため、日本のユーザーの声を元に、要望の多い機能から移行しているという。

前回実装したグラデーション機能と、今回実装の複数シャドウ、背景のカスタマイズも、レガシータイトルを使っていたユーザーの要望によるものとなっている。

なお、レガシータイトルの廃止時期はまだ未定で、機能の移行後、ユーザーの声を聞き取りながら時期を決定するという。

また今回のアップデートでは、1つのファイルに結合済みの動画に対して、Adobe Senseiがシーンを検出して、クリップマーカーやファイルの分割ができる「シーン編集検出」を最適化。Windows/macOSでは最大2倍の高速化、Apple M1チップ搭載macでは3倍近い高速化を実現した。

Apple M1チップのネイティブ対応版も今回初の本実装となる。M1搭載Macでは、インテル版と比較して、アプリ起動から書き出し、編集処理まで平均77%高速化を実現している。ベンチマーク結果など詳しくは別記事を参照のこと。

アドビ、Premiere ProがApple M1ネイティブ対応

ベータ版で新UI。「読み込み」「編集」「書き出し」3フェーズでわかりやすく

Premiere Proは、ベータ版にてインターフェイスの刷新を行なった。ソーシャルビデオのような新しいタイプのビデオコンテンツに対応したものを目指すとしており、長い準備期間をかけて、編集プロセスを改善し、強化したワークフローを新たに生み出すとしている。

従来は「新規プロジェクト設定」で動画の設定を細かく指定してから、全ての作業がスタートしていたが、新UIでは、編集プロセスを「読み込み」「編集」「書き出し」の3つのフェーズに分けることで、Premiere RushユーザーなどがPremiere Proを使い始めた場合にもわかりやすくなったという。

新UIでは、新規プロジェクトを選択すると、まず読み込みモードのウィンドウが開き、素材一覧にPCのローカルフォルダや外付けHDDなどが表示。Premiere Pro内で直接プレビューしながら素材となる動画を選んで取り込める。

読み込みモード画面

従来、最初に行なっていた設定については、取り込んだ素材で一番多かったものに合わせて自動で設定。例えば、フルHDの素材が3つ、4Kの素材が1つの場合はフルHDの設定に、動画が4つ、静止画が1つの場合は動画の設定になる。なお、これらの設定は取り込み後に手動で変更できる。

ヘッダーバーは、ホームボタンと「読み込み」「編集」「書き出し」の3つが並び、従来配置されていた「エフェクト」「オーディオ」などの項目は全てワークスペースに格納される。このデザインはAdobe Creative Cloud全体で共通したデザインとなるため、Photoshopなど別の分野のソフトを使っていたユーザーがPremiere Proを使い始めた際にも機能の把握がしやすくなる。

編集モードはヘッダーバー以外はほぼ変化していない

書き出し時にはYouTubeやTwitterといった、書き出した後にアップロードしたいサービスを選択することで、それらに適応した設定で書き出しが行なえる。複数選択できるほか、ローカル保存用の設定も同時に行なえ、複数のファイルを同時に書き出せる。

書き出し時にYouTubeやTwitterなどを選択することで、アップロードに適したファイルを書き出せる

UIの改善についてもユーザーからのフィードバックを受けながら、長い時間をかけて段階的に進め、製品版に実装していくという。ベータ版はCreative Cloudのカテゴリ欄、ベータ版アプリケーションからダウンロードできる。

After Effectsベータ版にマルチフレームレンダリング

After Effectsではベータ版にて、マルチフレームレンダリングに対応。オプションに追加される「プレビューにマルチフレームレンダリングを使用」を選択することで、プレビューとレンダリングを高速化を実現する。

プレビューは最大3倍高速化。レンダリングは、After Effectsがリソースの使用を自動的に調整しすることで、ハードウェア上で可能な限り最速でレンダリングできる状況を作るという。

また、レンダリングの進捗状況や完了を伝える通知機能を搭載。Creative Cloudのデスクトップアプリやモバイルアプリに情報を提示するほか、レンダリングの完了をメールで通知することもできる。

通知のイメージ

Adobe Media Encoderを使用した書き出しも最大3倍高速化。また、バックグラウンドでレンダリング中でもコンポジションの編集が継続できるようになる。

Character Animatorはカメラで全身の動きをトラッキング可能に

Character AnimatorもApple M1チップにネイティブ対応。パペットやアートワークの読み込みは2倍に、ワークスペースの切り替えは3倍に高速化する。

ベース版には、ベースとなるキャラクターをカスタマイズしてパペットを簡単に作成できるパペットメーカーと、特別な機材を必要とせずに全身の動きをトラッキングできるボディートラッカーを追加。

パペットメーカーは、ベースを選択後に、ヘアスタイルや色、肌のトーン、服のデザイン、アクセサリーなどを組み合わせてパペットを作成できる機能。自身の動きと声に合わせてリアルタイムに動くキャラクターが簡単に作成できる。

パペットメーカー

ボディートラッカーでは、ノートPCの備え付けカメラやWebカメラで全身をトラッキングできる。Adobe Senseiにより、ユーザーの全身の動きを判別し、キャラクターの全身を動かすことができる。

ボディートラッカー