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JEITA「強く反対する」。BDレコーダ私的録音録画補償金制度対象化

私的録音録画補償金制度へのBDレコーダ等の追加指定に関するJEITAの見解より

文化庁が私的録音録画補償金制度の新たな対象機器として、Blu-rayディスクレコーダーを追加する著作権法施行令の改正政令案を発表し、パブリック・コメントの募集を開始した事について、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)が23日、「政策としての合理性が無いものと考え、強く反対する」という意見書を発表した。

改正政令案については、別記事で説明している。

BDレコーダを私的録音録画補償金制度の対象に、意見募集開始

これを受けてJEITAは、「動画配信サービスの急速な普及などの社会環境の変化を無視し、20年以上前の制度を用いた機器課金という形で、消費者にデジタル放送への著作権保護技術搭載に係る負担に加えて『録画補償金の支払い義務』という二重負担を強いる政令案に対しては、政策としての合理性が無いものと考え、強く反対します」とコメント。

「司法判断が蔑ろにされ、関係者の合意を前提としてきた制度運用が歪められ、協議の前提であった『暫定的な措置』も担保されないような不透明なプロセスで政令指定が行なわれ、著作権保護技術でコピーがコントロールされていても尚、同じ補償金が課される事態となれば、今後様々な機器やサービスの事業展開を進める上でリスクとなり得るため、重大な懸念を持っている」という。

その上で、意見の前提となる経緯および環境変化として、私的録画補償金制度の導入経緯や、地上波デジタル放送で著作権保護技術(ダビング 10)を用いたコピー制御が導入されるに際して、補償金の対象とすべきか否か、権利者と消費者・機器メーカの意見が対立し、合意に至らなかった事や、「デジタル放送専用レコーダー」が政令で定める補償金制度の対象に該当するか否かが裁判で争われ、機器メーカ側が勝訴した事などを説明。

その後も、改めて文化審議会で議論されたが、合意に至らなかった事、有料放送や有料動画配信に加えて、テレビ番組の無料リアルタイム配信や見逃し配信など、地上波デジタル放送以外のコンテンツ流通・視聴が普及するなど、裁判当時から現在に至る社会環境変化の中で、今回対象となるブルーレイレコーダーの市場が大幅に縮小している事なども挙げた。

それを踏まえて、反対の主な理由として以下の3点を挙げている。

1.機器追加を行なう合理的理由が示されていない

・録画補償金制度の開始から約10年で機能停止、それから10年が経過しコンテンツ流通形態の多様化など社会環境も大きく変化した現在、あえて1990年代の社会環境を背景に制度設計された20年以上前の仕組みをそのままに、今回対象の機器追加を行なうことの必要性や合理性が、何も示されていない。
・令和3年2月以降、当協会は文化庁と協議を重ねてきたが、今回対象の「ブルーレイレコーダー」を追加すべき根拠として示されたのは、令和2年10月実施の私的録音録画の消費者実態調査での「HDD内蔵型BDレコーダー」における「過去1年間の保存データ容量に占めるテレビ番組の割合が5割以上の者が52%」等の結果である。これは①利用目的・理由②利用態様③保護技術の適用実態といった本制度での過去の機器追加における判断基準と判決に照らすと判断基準として全く合理的ではない上に、当該調査結果では「5割以下の者が 51%」も同時に存在しており、根拠の数値として極めて薄弱である。

2.著作権保護技術(DRM技術)が考慮されていない

・判決で「著作権保護技術が伴っているか否かは、補償金の対象とするか否かにおいて
大きな要素」と判示されたにも関わらず、「ブルーレイレコーダー」にDRM技術が搭載されていることが要素として全く考慮されていない。

・地上波デジタル放送にはダビング10というDRM技術が搭載され、そのコストは既に機器代金として消費者が負担しているにも関わらず、更に補償金まで消費者に負担を強いるのは二重負担となるため機器メーカの立場からは看過できない一方で、多様なコンテンツ流通経路がある中から、ダビング10の範囲内で複製が行なわれることを前提に、自らの意思で地上波デジタル放送を選択しているのであるから、権利者に「不当な不利益」が生じるなどあり得ず、制度の趣旨から補償は不要である。

・仮に、DRM技術があっても補償金対象とするのであれば、DRM技術に関する消費者の実際の負担済みコストを控除する形で、二重負担が生じない合理的な補償金を設定するといった手法も考えられる。協議の過程では、DRM技術の無かったアナログ放送当時と同等の補償金料率が文化庁から提案されるなど、「ブルーレイレコーダー」にDRM技術が搭載されていることが全く考慮されていない。

3.政令案の決定に至るプロセスが不透明である

・判決も示す通り、過去の機器追加においては常に関係者の合意を前提としてきた中で、今回対象の機器は、過去に文化審議会等で議論されたが合意に至らなかった。当協会は令和3年2月以降文化庁等と協議を重ねてきたが、11月29日を最後に協議が打ち切られており、上述の理由により文化庁との合意には至らなかった。

・協議の前提であった「暫定的な措置」について、全く担保もされていない中での政令案の決定となっており、将来的に他の機器等やサービスへの対象範囲拡大が生じ得ることを、当協会としては強く懸念する。

JEITAでは、「特に、負担を強いられることになる消費者の皆さまに十分に問題点をご理解いただき、多くの意見が文化庁に提出され、より適切な政策変更がなされることを期待します」としている。