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「8Kは今後も継続。新BS2KとBS4Kはサイマルしない」。NHK説明会

日本放送協会(NHK)は18日、経営計画の修正案に関する説明会を開催。修正案の概要を説明したほか、「新BS2K(仮称)」と「新BS4K(仮称)」はサイマル編成ではない事、そして衛星波再編後も「BS8K」放送は継続する事などを明らかにした。

今回NHKが説明した経営計画修正案は、今月11日に公表されたもので、2021年1月の経営委員会で議決された3カ年経営計画の一部改訂版。

修正案では、'21年4月から実施してきた業務改革や関連団体の整理・統合を継続して進めつつ、地上・衛星契約の値下げやBSプレミアムの停波といった計画強化策を追加。さらに、長期化するコロナ感染症の問題やウクライナ情勢等による環境変化の加速を踏まえ、「信頼できる情報」の発信強化や地域インフラへの投資増を盛り込んだ。

NHK受信料1割値下げ、来年10月から。BSプレミアムは'24年3月末終了

現在のNHK経営計画(2021-2023年度)の概要

なお、この修正案は現在パブリックコメントを受け付け中。NHKは寄せられた意見を参考に、最終案をとりまとめ、来年度の事業計画と併せて総務省に認可申請することになっている。

1,500億円の繰越金を充当し、視聴者へ還元。過去最大規模の値下げ

説明会では、NHK経営企画局 局長の吉野真史氏が登壇。現経営計画の進捗状況や修正案の概要を話した。

まず現状については、業務、受信料、そしてガバナンスの三位一体改革を遂行しており、訪問営業の廃止や業務改革によるコスト削減('23年度までに550億円)、グループ数のスリム化(過去最大65団体→22団体)が着実に進んでいることを報告。

中でも、“巡回訪問営業”から“訪問によらない営業”へのモデル転換が効果を上げ、計画以上のコスト削減を達成。2022年度時点で営業経費を155億円削減(対2020年度比)でき、営業経費率においては初めて10%を下回る9.3%を達成できたという。

“訪問によらない営業”へと転換を図る

修正案では、当初の経営計画公表時に約束していた「衛星波の再編」と「受信料の値下げ」も追記。

まず、現在3チャンネル体制で運用する衛星波(右旋)は、来年12月1日実施の番組改定を機に、BSプレミアムチャンネルでの番組放送を終了。BS1は新BS2K(仮称)、BS4Kは新BS4K(仮称)へとチャンネル名称を変更し再スタートする。BSプレミアムは2024年3月末で停波する。

2023年12月1日に番組改定を行ない、衛星波(右旋)を2波体制に変更する

受信料については、構造改革や経営努力の成果を視聴者に還元すべく、来年10月分から、地上・衛星契約料金ともに1割の値下げを実施。支払い方法に関わらず、地上は月額1,100円(年額13,200円)、衛星は同1,950円(同23,400円)に料金を改定する。また学生を対象とした受信料も見直し、同一生計で離れて暮らす場合については受信料を原則免除する(従来は半額)。

2023年10月分から受信料を、地上・衛星共に1割値下げする

なお、2023年度の事業収入見込みは6,440億円となり、当初予定から440億円下方修正する。NHKでは、2026年度まで赤字予算を組んでおり、事業としては6,000億円を下回る規模までスリム化。2027年度での収支均衡を目指す。

2023年度の事業収入見込みを、当初予定から440億円下方修正する

吉野局長は「現経営計画の策定時点では、還元原資を700億円としていたが、一連の改革成果で1,500億円へと原資を積み増すこととした。結果、衛星は年間最大3,240円、地上は年間最大2,100円の値下げとなり、1割という値下げ幅は過去にない最大規模という位置付け。昨今の物価上昇も鑑み、少しでも視聴者の負担軽減に繋がればという思いもあるし、計画策定時に約束していた内容からさらに踏み込んだ還元策を打つことにした」とコメント。

「総務省の検討会でも指摘があるように、不確かな情報が溢れる時代の情報空間において、NHKへの期待がますます高まってゆくものと我々は受け止めている。こうした改革を更に前へ進め、そうした社会の要請にしっかり答えていけるようにしていきたい」と述べた。

BS8Kは今後も継続。BSPの通常編成は来年11月まで。BS2KとBS4Kはサイマルしない

説明会では、受信料の値下げと衛星波の削減を中心に質疑が行なわれた。主な質問と回答は以下の通り。

――衛星波の整理によるコスト削減はどの程度のものか。

NHK:コスト削減がどの程度になるか、BS一波単体での試算は明らかにしていないが、440億円の下方修正に含まれるものと思ってほしい。

――BSプレミアム停波後の空いた電波帯はどのように活用するのか。

NHK:空いた電波帯は総務省へ返還する。NHKとして、その帯域を使うことはない。

民間4K/8Kチャンネル数は“24”目標。基幹放送普及計画変更へ

――地上契約の月額料金1,100円になった根拠と理由を教えて欲しい。世間ではNetflixなどのサブスクリプションサービス(サブスク)においても低価格なプランが登場している。

NHK:当初は「衛星料金の1割値下げ」を目標としてきた。一方で地上波のお客様に対しても同程度の値下げを行なうのが妥当と判断し、今回の結果となった。低価格なサブスクがあるというのも承知しているが、公共放送の受信料とサブスクの対価は違うものと認識している。

――受信料値下げによる還元はいいが、番組の質が低下する懸念はないのか。いま繰越金はどれくらいあるのか。

NHK:現在繰越金として積みあがっているのは、2,231億円(2021年度末時点)。うち1,500億円を今回の値下げで還元させていただく。収入が減って支出が上回る間、繰越金を充当する。我々としては、一刻も早くスリムで強靭な態勢を作り上げ、少しでも還元の繰越金を充当しなくてもいいような体質に生まれ変わっていく事を目指す。2027年度の収支均衡よりも前倒しできれば、理想とする体質改善ができたことになる。そうすれば、視聴者へのサービスもより効率的かつ合理的なコストで行なっていけると考えている。

繰越金の充当イメージ

――受信料還元(1,500億円)と、放送ネットワークインフラ維持への還元(700億円)とで、繰越金が底をつくのではないか。

NHK:1,500億円の繰越金は4年に渡り充当するもの。またインフラ投資の700億円も単年度で実行するものではないので、一気に繰越金が無くなることはない。受信料の公平負担をお願いする努力や番組作りにおける効率的な態勢を作るなど、原資を増やす取り組みは並行して行なう。

繰越金は、受信料の値下げのほか、環境整備に伴う投資や災害時等への対応にも充てられる

――スリム化しても番組の質は下げないとのことだが、新しいBS体制に移行するにあたり、強化したいと考えている部分はあるか。

NHK:新BS2K・新BS4Kを効果的に使い、視聴者の方が現行のBSに対して評価している部分をさらに伸ばしていく。例えば、いまBSプレミアムでは土曜夜間に特集番組を組んだり、BS1では国際情報やスポーツ、ドキュメンタリーを集中的に放送している。これらは視聴者の方々からの人気も高く、それがBSの強みとも考えており、それらをさらにブラッシュアップした形で強化して行く。

――それは具体的にどのような内容を考えているのか。

NHK:あくまで修正案で、番組改定の検討中であるため、現段階では詳細まで決まっていない。経営計画では新BS4Kを“世界に通用する多彩なコンテンツ・高精細クオリティを提供する”と記したが、例えば特集番組でも、今まで以上に4Kの特性や魅力、長尺を生かした大きな番組……世界に通用するような質の高い番組を作っていきたいと考えている。BS2Kの方については、“衛星放送の魅力を凝縮”とあるように、現状のBS1におけるドキュメンタリーやスポーツ、BSPにおける教養エンターテイメントやドラマ、音楽番組を展開してきたが、BS2Kではこれらを凝縮したような放送波にしたい。

2023年12月1日より始まる「新BS4K」「新BS2K」を含むチャンネルのイメージ

――4Kの普及状況を考えた時、衛星波削減の時期を遅らせる事は考えなかったのか。

NHK:確かに普及状況もあるが、逆にBS4Kをご覧いただくというような起爆剤にしたい。3波から2波にするということは4Kへのパワーシフトでもあり、これまで以上にBS4Kのチャンネルで魅力的なコンテンツを映すことに取り組めるとも考えている。そして、それがひいては4Kテレビ購入を迷っている方々に対して背中を押していけるようなきっかけにもしたい。我々としては当初の予定通り、衛星波を整理し、スリムで強靭な態勢でBS4Kに取り組み、新しい魅力的なコンテンツを打ち出していくタイミングにしたいと考えた。

――チャンネルが減ることで、番組数はどれくらい削減されるのか。減らす・残す番組の選別をどう決めるのかも教えて欲しい。

NHK:改定の検討中であるため、番組の数については決まっていない。ただ、現在の業務改革の中でジャンル管理というものを導入している。これは地上・衛星を問わず、番組の重複や同系番組の有無を確認すると共に、作り方の改革を行なうことで、全体の制作量の圧縮・最適化を図るもの。また選択と集中という観点から、強化すべき番組はさらに強化し、視聴者の方々に受け入れてもらえるような作り方も進めている。新BS2K・新BS4Kに関しては、番組をどう配置するかも含め検討中であるため、決まり次第改めて案内する。

――右旋の衛星波が整理される中、左旋のBS8Kはどうなるのか。

NHK:8Kテレビの普及がまだ進んでいないという状況もあり、放送のみならず放送以外の機会……例えば、受信公開やパブリックビューイングなど、そうした場も活用しながら、貴重な文化財や優れた芸術を超高精細映像で記録し未来へ伝えるなど、社会貢献を行なうメディアとして引き続き役割を果たしていく。総務省の4K・8K放送の政策ロードマップが更新されない限り、引き続きBS8Kは左旋での放送を続けていく。

――BS8Kは、社会的に役立つとされるジャンルを中心とした放送内容になるという事か。

NHK:それだけではないが、そうしたジャンルを中心にしながら放送を続けていく。

――8K番組の制作コストは、2Kや4Kの比ではないと思うが、どのようにコントロールするつもりか。

NHK:8K放送も開始からまもなく4年目になり、制作の能力やノウハウもだいぶ蓄積されている。従来通り上限を決めながら合理的なコストで優れたコンテンツを制作していく。

――2024年3月末に停波するBSプレミアムについて確認したい。経営計画では、2023年12月1日以降「画面上の周知等」とあるが、これは何を意味しているのか。BSプレミアムでの実際の番組放送は2023年11月30日までで、以降は静止画等の案内が表示されるだけと考えてよいか。

NHK:「画面上の周知等」とは、テレビ画面上での文字スーパー等により、「ご覧いただいているBSプレミアム(103ch)は2024年3月末で終了する」ことを知らせるほか、新BS4K・新BS2Kの案内などを行なっていくもの。視聴者の皆さまに、新しいチャンネルに円滑に移行していただくことを目的にしている。なお、新しいチャンネルの周知については、BSプレミアムの画面上だけでなく、総合テレビやインターネットなども活用し丁寧に伝えていく。

また、2023年12月1日以降、BSプレミアム(103ch)でどのような放送をしていくかは、現状では決まっていない。2023年12月1日から2024年3月末までの期間については、BSプレミアムの3月末での放送終了することを知らせるとともに、視聴者の皆さまの利便性や視聴習慣を考慮し、これまでご覧いただいていた番組の移設先等の案内も含め、新BS4K・新BS2Kの案内を丁寧に行なって行く予定。

――新BS2Kと新BS4Kの編成内容はどうなるのか。サイマル放送なのか、新BS4Kはピュア4Kなのか、24時間放送に拡大されるのかなど、決まっている範囲で教えて欲しい。

NHK:改定の検討中ではあるが、新BS2K、新BS4Kともに経営計画に記したチャンネルイメージを基に編成することになる。よって、基本はサイマル放送は行なわない方針だ。そのほかの事項については決まり次第お伝えする。

――経営計画では“将来的には1波への整理・削減も視野に入れて検討”とあるが、具体的なスケジュール等は決まっているか。

NHK:衛星波を2つに再編した後、お客様がどのように楽しまれるのかを分析する必要がある。また4Kテレビの普及率がどこまで進むのかも勘案しながら検討を進めることになるため、今の段階ではスケジュール等の詳細は決まっていない。

――2025年度を目途に、音声波を現在の3波(R1/R2/FM)から2波(AM/FM)にするとのことだが、計画の進捗状況はどうなっているか。

NHK:現在、聴衆者の方への調査やどのような番組が聞かれているか、デジタルでの展開等もあるので、全体状況を鑑みながら、どのような整理・削減が望ましいか検討している段階。詳細はまだ決まってない。

――2Kチューナーしかない家庭の場合は、2Kのチャンネルが減り、さらに4K/8Kを観ることができないのに一律の衛星受信料を払うことになる。この点をどう考えているか。

NHK:先ほど新BS2Kと新BS4Kでサイマル放送はしないと答えたが、正確にはシステム上、サイマル放送できない構造になっているためだ。懸念されている点に関しては、BS4Kで放送した番組などは、日時をずらしてBS2Kでも視聴できるように編成を工夫するなどの対策を検討している。