日立コンシューマエレトロニクスが7月1日発足

-薄型テレビに集中。2010年度黒字化を目指す


渡邊修徳社長

7月1日発表


 日立製作所のAV機器などのコンシューマ事業グループを分社した新会社日立コンシューマエレクトロニクス株式会社(HCE)が7月1日に発足。代表取締役に就任した渡邊修徳社長が会見し、事業計画について説明した。

 日立で薄型テレビやプロジェクタなどを展開していたコンシューマ事業グループを分社化。販売やマーケティングを担当する日立コンシューマ・マーケティング(HCM)との連携を強化し、マーケットニーズに直面する営業主導型事業運営体制への転換を図るという。

新会社では薄型テレビやプロジェクタを展開

 HCEは日立LGデータストレージ、カシオ日立モバイルコミュニケーション、日立コンシューマ・マーケティング、日立リビングサプライ、日立アプライアンスなどと並び、日立製作所のコンシューマ事業本部が全体を統括。同事業本部の責任者もHCEの渡邊修徳社長が務める。また、商品企画やマーケティングについても、各子会社が協力し、HCM内に新設された商品本部において相互の連携を深めていく。

 


■ 効率化で薄型テレビに注力。レコーダとビデオカメラは「自社生産停止中」

ビジョンは「Customer First」

 渡邊社長は、新会社のビジョンとして「Customer First」を掲げ、「お客様の期待を先取りできる真に強いメーカーを目指す」と宣言。経営方針として「高品質な製品とサービスの提供」、「営業主導型事業運営体制への深化」、「パートナーとの協業強化」の3点を説明した、

 顧客ニーズを取り入れた製品企画については、HCMの商品本部設立などの施策により、市場に合わせたスピーディな製品化を図る。一方、パートナーとの協業については、2008年から実施しているPDPのパナソニックからの全面調達や、LGとの光ストレージ合弁などを例に挙げ、地域や規模にあった事業運営を行なっていくとした。

 AV事業関連の2009年事業計画は売上高4,000億円を見込む。昨年の約5,600億円から大幅な減収となるが、収益改善を優先しており、2009年の下期に製品損益黒字化、2010年度には営業利益黒字化を目指すとしている。

 売上4,000億円には日立LGの光学ドライブや液晶プロジェクタなどのB2B事業なども含んでおり、B2Bの売上が70%、B2Cの売上が30%。民生向けが中心となるテレビ関連の売上は約1,600億円を見込む。

事業体制日立コンシューマエレクトロニクスの組織事業計画
薄型テレビの事業戦略

 薄型テレビは、日本国内においては、高画質やネット対応などの高付加価値化を図る。一方、米国や欧州、アジア向けについては外部調達を中心とし、「ローリスク経営を徹底する」という。中国については生産、販売チャンネルの効率化で対応する予定としている。

 商品力の強化と高付加価値化を目指す日本においても、新モデルなどで大幅なコストダウン施策を盛り込んでいる。例えば、Woooの新シリーズの映像エンジンは、従来プラズマ/液晶や上位モデルなどで4種類用意されていたものを、1種類に機能集約。開発や生産の効率を高めたという。

 販売については、エコポイントをはじめとする政府関連施策の充実もあり、これらに呼応した施策を推進し、シェア拡大を図る。エコポイントの効果については、「5月中旬から量販店が活性化してきた」としたほか、地域店についても 「ようやく浸透してきて、台数が伸びるようになった。例えばWooo UTについては、6月実績が前年比130%の伸び。完全にエコポイント効果と考えている」とする。特に地域店では、アンテナ設置工事などのサービスでもエコポイントが利用できることを重要視しており、「(地域店では)きめ細かなサービスが得意な店舗が多い。いい制度を作っていただいたと考えている。来年、再来年にかけて、ここを活かして地域店をサポートしていく」と語った。

 

 今後のテレビ展開については、「“ベスト”の製品はもちろん、“ベター”な製品に力を入れる」とする。「単に安いだけでな くて、コストパフォーマンスが良くて、本質的に良いというものをお客様は選択している。それに照準をあて、競争力がつくような方針で開発に取り組んでいる」とする。

 なお、薄型テレビ以外の民生向け機器のうち、レコーダとビデオカメラについては、「現在自社開発は止めている(渡邊社長)」とする。Blu-rayなどのレコーダについては、市場は拡大しているもののHDD/iVDR内蔵の薄型テレビ「Wooo」を中心に展開していることがその理由とする。また、ビデオカメラについては「Blu-rayのビデオカメラを発売していたが、2007~2008年にかけて“小型”がトレンドになった」などの要因を挙げた。ただし、一部の製品については外部調達で今後も展開するほか、研究開発は継続している。

B2B事業の事業戦略

 液晶プロジェクタや光学ドライブなどのB2B事業も強化。液晶プロジェクタは、高付加価値モデル拡大とともに、今まで手薄だったという低価格モデルを投入し、シェア拡大を目指す。日本と米/欧と中国でシェア約11%で、1~2位になっているが、販路拡大によりさらなるシェア拡大を図る。また、中国ではシェア18%でトップだが、今後は中南米やインド、中東などの新興国市場を開拓していくという。

 光ストレージについては、Blu-ray Disc市場の拡大にあわせて高付加価値モデルの構成比拡大を目指す。「シェア的には8年間ナンバーワンで30%を超えている。これを引き続き維持していきたい」と語った。


(2009年 7月 1日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]